不意に避けた才蔵は、すぐに体制を整えようとした瞬間、下から半蔵の攻撃が来た。しかし、才蔵はその攻撃が見えたかのように、体は傷ついたもののすぐに避け、後ろへ下がった。
(見える……これなら、いける!!)
「どうやら、先日よりはやるようですね?」
その一方、蛇の繭の中にいる十蔵と桜割は……
「さあ、どうして差し上げましょうか?」
桜割は十蔵の体に跨っていた。十蔵は身動きが取れぬように、手足首に蛇が巻き付かれていた。
「この、離れぬか!!」
「無駄ですわ、動けませんわよ?」
そう言うと、桜割は十蔵の耳元に口を近付けさせ、何やら呪文のような言葉を放った。
「これで、あなたは私の術の中……
全ての権限は、私にありますのよ?」
(この女、幻術使いか!!)
「本当は、あなたをたくさん可愛がって差し上げたいのですが……
時間をかけるなと、上から言われておりますの」
半蔵と激しい戦闘を繰り広げている才蔵………
(昔は、こうやって闇の中で、生きるために人を殺していた……
だが今は、俺を信頼して任してくれたオッサン(幸村)のためにも、負けるわけにはいかねぇ!!)
突然、才蔵の動きが速くなったことに気付いた半蔵は、悪戦苦闘した。すると才蔵は持っていた剣を持ち直した。
「瞬光!!(手応えあり!!)」
才蔵の技は、見事に半蔵に当たった。半蔵の顔に着けていた布が破れ、半分髪が出て、口元を隠していた布が切れてしまった。
「へ!!ざまぁ見ろ!!」
「このガキが!!」
キレた半蔵は、刀を持ち構え才蔵に攻撃した。才蔵は防いだはずだったが、体のあちこちに傷を負ってしまった。
「?!」
傷を見ていた才蔵の背後に半蔵は回り込み才蔵を蹴り倒した。蹴り倒した才蔵の頭に、半蔵は足を乗せ、動けなくした。
(やべぇ!!)
「火生三昧!!」
半蔵が放った攻撃は、地面に押し付けられていた才蔵の背中に命中した。
「さて、これで終了!!」
止めを刺そうと、刀を向けた……
その時。
「巨旋風!!」
「妖枝術!!」
その声と共に、入ってきた階段の方から大風が吹き荒れ、さらに壁がある方から不気味な色をした先の尖った枝が飛んできた。
「何?!」
「?!」
「誰です!!」
(この風に、あの木の術……まさか!!)
「言ったはずでしょ?アンタは、私が殺すって!!」
声がした方に顔を向けると、そこには蛇で噛まれた場所を手で押さえながら、ふら付く足で立ちあがる明日花の姿があった。
「明日花!!」
「じゃあ風は?!」
「まさか、この間の……」
「ったく、カッコ悪いな忍者!!そんなんじゃ、つまんねーだろ?!」
錘が付いた鎖を、回しながら階段を下りてくる一人の若者……
「また、真田の勇士ですか?!
揃いも揃って、よくも邪魔を!!」
「真田ぁ?何だそれ?
んなもん、知らねぇっつの!!」
鎖を振り回し、階段から降りてきたのは山賊の鎌之介だった。
「つか、誰の許可を得て俺の物(才蔵)で遊んでんだっつう話だよ!!
ただで済むと思うなよ!!この、覆面野郎!!」
「俺の物?!」
「才蔵となあ、命かけてギリギリで闘り合って!!最っ高に!!楽しく!!血ィ垂れ流して、ぶっ飛べんのはこの俺だけなんだ!!んでなあ、絶好の際に、この俺を殺していいのは、こいつだけなの!!分かったか?!」
「……ただの変態か」
「んだと!!
気色悪い覆面野郎には、言われたくねぇっつうの!!
喰らえ!!巨旋風!!」
半蔵目掛けて鎌之介は技を放ったが、半蔵は難なく避け鎌之介の腕を斬った。鎌之介は何が起きたのか分からなく、斬られた腕を見た。
「バッカ!!後ろだ!!」
才蔵の助言で、鎌之介は後ろからきた半蔵の攻撃を鎌で防いだ。防いだと同時に、鎌之介は半蔵の持っていた二本の刀の束を鎖で結び、動けなくし鎌を振り下ろした。
だが、半蔵は攻撃が来る前に鎌之介の腹に蹴りを入れた。鎌之介の動きが鈍くなった隙に、半蔵は二本の刀を持ち構え鎌之介を斬りつけた。
「んの野郎!!
さっきから、パンパン斬りやがって!!ムカつく!!」
「テメェの戦い方が悪いからだろうが!!何で、接近戦なんだよ!!バカ!!」
「何で、テメェにバカ扱いされなきゃ、いけねぇんだよ?!」
「バカだろ!!テメェ、自分の技の利点が全然、分かってねぇ!!」
「んだと!!」
「二人揃って殺られたくなきゃ、俺の後ろから援護しろ!!」
「何命令してんだよ!!このく」
「光坂流木術枝手裏剣!!」
二人の後ろから、数本の先の尖った枝が二人を横切り半蔵目掛けて飛んできた。半蔵はその技を、刀で切り防いだ。
「何ですか?一体。
まさか、最後の反攻ですか?」
後ろで、ふら付く足で立つ明日花に半蔵は睨み付けた。明日花は腰から鎖で繋がれた槍を取り組み立て構えた。
「反攻?
これは単なる、敵討ち!!」
そう叫ぶと、明日花は一瞬で半蔵に近寄り、槍を振り下ろした。半蔵はその攻撃を二本の刀で防いだ。
「多少は、変わったようですね?
あの時とは、比べ物にならないくらい力が増しているうえ、技までも使いこなせるようになったとは」
「私の力は、アンタに対する憎しみで増大するんだよ!!
光坂流木術木龍砲弾!!」
地面から出てきた根は、龍の姿へと形を変え半蔵に突進してきた。その攻撃を防ごうと、半蔵は二本の刀を前に構え攻撃を止めた。
(何という、力!!)
「(明日花だけに任せられねぇ!!)
鎌之介!!この戦い終ったら、テメェが泣き入れするまで遊んでやっから付き合え!!」
「(?!泣き入れするまで!?)
ほ、本当だろうな?」
その一方、十蔵は鎌之介が放った技をお蔭で術が解け、自由に体を動かせるようになり桜割に反撃をした。
「体が動けば、女ごときに!!」
「女ごときですって?!
心外だわ!!甘く見ないでくださいませ!!」
桜割は十蔵の体に、まるで蛇のように自分の体を絡み付けた。
「私は、蛇使いの桜割!!
私の四肢も蛇の如く強い力で締め上げますのよ?例え、男のあなたでも逃れることは叶いませんわ!!」
自分の体を締め付け、十蔵を苦しめる桜割……
桜割は口から毒の刃を出し、十蔵の首に突き刺そうとした。
「お覚悟!!」
(やむ終えん!!!)
“バーン”
「!!」
“バンバン……バーン”
銃声の音と共に、十蔵の体に絡み付いていた桜割は十蔵から離れ力なく、その場に倒れた。
「し……仕込銃?!
何て、たくましい殿方……」
その言葉を最期に、桜割は動かなくなってしまった。十蔵は外れた右肩を押さえながら、動かなくなった桜割を見下ろした。
「覚悟ある闘士を……『女』扱いして、済まぬ…」
「火生三昧!!」
突進していた木龍を刀で粉々に切り刻んだ後、半蔵は明日花のすぐ目の前まで近寄り攻撃した。目の前にきた半蔵に、成す術もなく明日花は半蔵の攻撃を喰らい壁に叩きつけられた。
「明日花!!」
「やれやれ……やっと、大人しくなりましたか」
「この野郎!!」
「由利鎖鎌奥義風神掌!!」
鎖を回し、明日花に近付こうとする半蔵に鎌之介は風を放ち阻止した。
「!!全く、忌々しい風ですね!!」
「その白ガキは、才蔵と同様この俺の物だ!!」
半蔵が鎌之介に気を取られている隙に、才蔵は剣を持ち半蔵の脚目掛けて振った。だが半蔵はその攻撃がお見通しの様に飛び跳ね、刀を振り下ろそうとした。その瞬間、鎌之介は錘が付いた鎖を投げ飛ばし、刀の攻撃を防いだ。
「(この二人、上手い事やるものだ……しかし)
お勤めの邪魔は、許しませんよ?」
刀を持ち直し、半蔵と才蔵の剣が当たり鋼が叩く音が響き渡った。それを狙って、鎌之介は半蔵に風の攻撃を仕掛けた。その風を半蔵は、二本の刀を振り下ろし風を叩き切った。
「終わらせます!!」
「光坂流木術四方拘束!!」
刀を振り下ろそうとした半蔵の腕に、突如地面から木の根が生え絡み付いた。その攻撃に半蔵は目を後ろに向けると、ふら付く足で立ちあがり術を放った明日花の姿があった。
「まだ反抗する力が、あったとは!!」
「アンタは、私が殺す!!
風男!!そいつの刀を二本、鎖で絡み付けろ!!」
「俺に、指図すんな!!」
言われながらも、鎌之介は錘の着いた鎖を半蔵が持っていた刀に巻き付け使えなくした。それを見た明日花は、槍を構え半蔵目掛けて振り下ろした。
それと同時に、才蔵も剣の束に巻いてある布を取り、半蔵の腹に刃を向けた。
「一閃!!」
「会心突き!!」
その瞬間、半蔵の体が切られそのまま地面に、力なく倒れた。
「やった?」
「ったぁ……やってやったぜ!!この野郎!!ハハ……ハハ…ハ…」
力が抜けたのか、才蔵はその場に座り込んでしまった。明日花も緊張が解け、槍を持ったままその場に座り込み、倒れている半蔵を見つめた。
(本当に終わったのか……
何か、まだ終わってないような気が……)
「ダッセェ!!何ヘバってんだよ!!」
「テメェだって、ヘバってんじゃねぇか(何でいんだよ、こいつ)」
「うっせえな!俺が来なかったら、ヤバかったくせに!」
「母さんに負けた割には、結構強かったんだ」
「んだと!!人に勝手に命令しやがって!!」
「そっちこそ!!私がアンタの物だって、誰が決めたのよ!!」
「この俺だ!!文句あるか?!」
「大ありだ!!だいたい……痛!!」
傷口に激痛が走った明日花は、痛んだ箇所を押さえその場に膝を付いた。
「言い合ってないで、早くここから出るぞ!!才蔵!!」
気を失っている伊佐那海を抱えた十蔵は、才蔵達に言い放った。才蔵は明日花を担ぎ急いで外へと出て行った。