地下から出てきた才蔵達……
「や、やっと地上か……」
「随分長い事、穴倉の中にいた気がする……」
「つか、この女はいつまで気を失ってんの?」
「ったく……
伊佐那海!おい、伊佐那海!」
「……?
才蔵?
!!そうだ、蛇!!」
気が付いた伊佐那海は、素早く起き上がり辺りを見回した。
「あれ?ここ外?
!?
そ、その怪我……」
才蔵達の怪我を見た伊佐那海は、申し訳なさそうな顔を浮かべて、才蔵達の傷を見た。
「どうってことねぇよ……
言ってるだろ?傍の借りがあるうちはってよ!」
(どうってことねぇだぁ?!俺が助けなかったら、ヤバかったくせに……)
「うむ。お主が無事でよかった……
それが何よりだ」
「それに、アンタだけが狙われてるわけじゃない。
私も狙われの身だ。」
「幸魂……」
「……」
才蔵が呟くと、明日花はそっぽを向き目を合わせぬようにした。
「明日花、幸魂とは何だ?」
「……別に何で」
「今更、何でもないじゃ済まねぇんだよ!」
「……」
「明日花」
「……」
観念したのか、明日花は服の下に隠していた鎖で繋がれた勾玉を取り出し、才蔵達に見せた。
「峠の茶屋で言った通り、幼い頃住んでた神社で母さん達にキツク言われて身に着けている」
「神社ってのは、さっき言ってた公智神社って神社か?」
「その通り」
「誰にも見せるなと……」
「いや……
見せないようにしたのは、二年前からだ。それまでは、別に見せてもいいけど決して、外すなって母さんが……」
「二年前?何でまた?」
「……教える気はない。
それに、教えるのはここまでだ」
「明日花!!お主、まだ自分の身の危険が分かっとらんのか!!」
「うるさい!!
自分の身くらい、自分で守れるって言ってるでしょ!!」
「守れぬ時があるだろ!!さっきもそうであっただろ!!」
「筧さん、止せ!」
「女に跨れた男に、言われたくない」
「!!いい加減にせい!!」
「オッサンに、説教される覚えはない!!」
「!!」
“パーン”
「!!」
堪忍袋の緒が切れた十蔵は、明日花の頬を平手打ちした。叩かれた頬を押さえながら、明日花は顔を下に向けた。
「筧さん、やり過ぎだ!」
「……くせに」
「?」
「何も知らないくせに、勝手なことばかり言うな!!」
「明日花」
「この魂のせいで、母さんは……
母さんは、死んだんだ!!」
「?!」
その言葉を放つと、明日花は息を切らして力なくその場に座り込んだ。明日花の口から紫苑の事を聞いた才蔵と伊佐那海は、ふと十蔵の方に顔を向けた。十蔵は固まり、顔を曇らせた。
「どういうことだよ?!白ガキ!!
じゃあ、あの化け狐の女は!!」
「言った通り、二年前に死んだ!」
「何で死んだんだよ!!次会ったら、この俺が殺るはずだったのに!!」
「恨むなら、あの半蔵を恨め」
「あの、覆面野郎!!」
「……
フゥ……
今更、どうこう言ってる場合じゃねぇ……」
「才蔵?」
「狙われている物が、その簪だ。
それに、その勾玉も」
「……奇魂。
神主様が、アタシにくれたもの……」
「……」
「へぇ……それかい」
その声が聞こえ、後ろを振り向こうとした瞬間真上を何かが飛び去り、その何かに乗っていた者が伊佐那海を奪った。
「伊佐那海!!」
「才蔵!!」
目の前に着地したのは、馬に乗ったあの政宗だった。
「去る前に、一つ質問に答えろ。
そこのガキ!お前、その羽織りどこで手に入れた?」
「……」
「答えろ!!」
「おい、明日花どう……?!」
何も答えない明日花に才蔵は目を向けると、明日花は怯えきった表情で政宗を見つめており、体は怖がっているのか震えていた。
(震えている?!何でだ!)
「ガキ!!人のしつも」
「知人から、譲り受けたものだ!!」
息を切らし、明日花はそう言い放った。その答えを聞いた政宗は、明日花を見つめ不敵な笑みをこぼした。
「(人違いか……)
奇魂……
この伊達政宗が、貰い受けた!!」
「才蔵!!」
「伊佐那海!!」
才蔵は追いかけようと立ち上がろうとしたが、傷を負っているせいで上手く体を動かすことができず、去っていく政宗に手を伸ばした。
「伊佐那海!!」
「待て!!」
(何で……何で、こんなに怖いの……
アイツを見た途端……恐怖しかなかった……何で…)
フラッシュバックで蘇る記憶……
だがその記憶は、全く身の覚えのない記憶ばかりであり、明日花は戸惑い政宗が去った後も、未だに恐怖心が消えないでいた。
(……何かあったって言うの?私に……)
気が抜けたのか、明日花は力なくその場に倒れ、気を失ってしまった。明日花が倒れた音に気付いた十蔵は駆け寄り、明日花の体を起こした。
「白ガキ、死んだのか?」
「いや、気を失っただけだ。恐らく、まだ体に残っていた毒が効き出したのだろう……」
明日花の体を支えながら、十蔵は地面を叩きながら悔しがる才蔵の後ろ姿があった。
「(伊佐那海!!またお前を、守れキレないのか!!)クッソオオオオ!!」
伊佐那海をあっさり連れ去られてしまった悔しさから叫んだ才蔵の声は、出雲大社一帯に響き渡った。