「全く、勝手過ぎなんだよ。アンタ等」
「テメェ、本気で四人を相手にするつもりだったのか?」
「だから、ここに来る前に色々と仕掛けをしたんだけど……
どうやら、必要なくなったみたいだし……」
明日花が指を鳴らすと、木々が風も吹いていないのにざわめき揺らいだ。
(一体、どんな仕掛けしてたんだ…このガキ)
「それより、アンタはさっさと伊佐那海助けな。恐らく彼女、その奥の社の中だ」
「オメェはどうすんだ?」
「コイツの相手をする。
一族の裏切者……とくにその頭だったら、尚更だ」
「一族でもねぇお前に、言われたかねぇ。
紫苑のガキだっていうなら、父親は誰だ?」
「……いない」
「?」
「生まれる前に死んだ。
兄ならいるけど」
「兄?ますますおかしい……
紫苑は、戦時中体に傷を負ってガキの産めない体になったと聞いている……」
『明日花は赤ん坊の頃、紫苑が身を置いていた神社の境内の神木の前に捨てられていたんだ。
その時拾ったのが、紫苑と元武田軍の隊長を務めていた男だった。
紫苑は、明日花を自分の子として育てることにした』
ふと幸村の言葉を、才蔵は思い出した。
「まぁ、そんな事はどうでもいいか……
俺を楽しませろよ?紫苑の倅というのならな!!」
大剣を勢いよく、明日花目掛けて雷之介は振り下ろした。明日花はすぐに槍を組み立て大剣の攻撃を受け止めた。そして指を鳴らし、地面から木の根を生やし彼に攻撃した。
「才蔵!!早く!!」
「言われなくとも!!」
「そうはさせるか!!氷柱!」
「光坂流氷術氷壁!!」
社の周りに、氷の壁が立ち才蔵の道を塞いだ。
「!!」
「そう簡単には、渡さないわよ。大事なお宝なんだから」
「テメェ!!」
振り返ろうとした時、才蔵の元へ雷之介が襲い掛かり攻撃してきた。才蔵はすぐに剣を抜き、攻撃を受け止めた。
「何でテメェが!!」
「悪いな……分身の術、得意何で」
雷之介の背後には、もう一人の彼と戦う明日花の姿があった。
「?!」
「俺等一族は、特殊な技を使うのは知ってんだろ?
その一部の技だ」
才蔵達の戦を、近くの木の上から何者かが見ていた。鳥の面を着け黒い羽織を、風で靡かせる人影……
その頃、社の中にいた伊佐那海は自力で縄を解き戸の前に立ち何とか戸を開けようとしていた。だが戸は、先程氷柱が放った氷の技により、ビクともせず開けなかった。
「(何で開かないの?)
才蔵!!才蔵!!」
戸を叩く伊佐那海……だがどんなに叩いても、戸は開く気配がなかった。
「そんな……」
その時、地面から水が静かに湧き出てきた。その水の音に気付いた伊佐那海は、恐る恐る振り返った。
「!!」
そこにいたのは、鳥の面を着けた人の形をした水だった……水人は、怖がる彼女の頭に手を置き、しばらく伊佐那海を見つめた。
(この人……全然、怖くない。何か才蔵と一緒にいるみたい)
頭から手を離した水人は、裏手にあった戸に手を掛けた。戸はしっかりと凍り付きビクともしなかった。すると水人は、印を結び手から水の刀を作り出し、その戸を切り裂いた。
「開いた!?」
水人は刀を消すと、切り裂かれたとに向かって指差した。
「……ありがとう!」
伊佐那海は、礼を言うと急いで社を出て行った。水人は彼女を見送ると、跡形も無く姿を消した。
戦いを続ける才蔵達……それぞれを相手していた時、才蔵達が相手に攻撃を入れた。その瞬間、彼等の面が攻撃に当たり砕け、素顔が現れた。
「面が!!」
「クソ!!」
「主がいない所で、面を割られるのは一族のご法度。
割られた以上、死んでも首取らないとね?私達の」
「テメェの面を割ってやるよ!!
光坂流水術水手裏剣!!」
手裏剣の形をした水を、水月は明日花に向かって投げ飛ばした。すると彼女の前に、木の根が伸び攻撃を防いだ。それと共に明日花は、面を外し腰に着けた。
「面を自分で!?」
「悪いね。
主に仕えてるのは、母さんだけ。私はまだ、誰にも仕えてない……だから、自由に取れるの」
明日花の素顔を見た雷之介達は、一瞬固まり目を疑った。
「嘘……だろ」
「隊長にそっくり……」
「じゃあ、本当に紫苑の?」
「我が名は光坂明日花……
武田軍隊長と副隊長の間に生まれた、子供だ」
「?!
テメェ等!!全員、このガキに集中攻撃だ!!」
「何?!」
「明日花!!危険!!」
「才蔵は早く、伊佐那海を!!」
腰に着けていたケースから短剣を取り出し、明日花は一斉攻撃してきた雷之介達の攻撃を防ぎながら、才蔵に言い放った。彼女に言われ、才蔵は剣をしまいながら、社の方へ向かった。
「もう、女などに興味はない!!
貴様を殺すまでだ!!」
「殺せるもんなら殺しな!!
光坂流木術針山双根!!」
地面から生え伸びた根が、雷之介達を襲った。
彼等はすぐに避け、別々の場所へ着地した。その中、水月は動かなくなった灯乃の火縄銃を手に取り、社に向かって放った。社の壁に当たった球は、火を放ち一瞬にして火に包まれた。
「!?」
「う、嘘……」
「伊佐那海……」
燃え盛る社を見つめる才蔵と清海……明日花は、一瞬社に気を取られた。その隙を狙い、雷之介は手に雷の剣を作り出し明日花目掛けて振り下ろした。
その気配に、明日花はすぐに気付き振り返ったが、目の前に刃が迫っていた。
(ヤバい!!油断した!!)
「明日花!!」
危険を察知した佐助は、彼女の元へ駆け寄ろうとしたが、それを水月が止めに入った。
“パーン”