どんな力?
『さぁ……それは分かりません。
けど、君は僕と紫苑の子供です……きっと、強い子になりますよ。明日花』
目の前に突如現れた水の壁……その壁を、雷之介は切り裂いた。
「水!?」
(この技……まさか?!)
「……!
光坂流木術百狼砲弾!!」
地面から狼の形をした木々が生え、一斉に雷之介達を攻撃していった。
雷之介達が怯んでる隙を狙い、鎌之介は鎖を回し風を起こした。風は彼等に当たり、それぞれ木に体を当てた。
「ンの野郎……なめやがって」
「ナメてるのはそっちだ」
地面に踵落としをする明日花……その瞬間、地面が揺れ水月と風介が座っていた地面から、木の根が生え二人を串刺しにした。
「風介!!」
「水月!!」
「お前等に一族の名は飾らせない。
お前等は、私が殺す」
「テメェ!!
図に乗るのもいい加減にしろ!!」
「光坂流氷術ツバメの舞!!」
「光坂流雷術百雷白虎!!」
ツバメの姿をした氷と虎の姿をした雷が、明日花目掛けて突進してきた。
氷と雷の技を避ける明日花だが、体の至る所に技が当たり傷を作った。しかし、傷を作っても尚、明日花はその場に立ち二人を睨んだ。
「その目付き……本当に隊長に似てるな」
「……」
「これで最後だ……氷柱!」
「了解!」
「光坂流氷術奥義百槍飛翔!!」
「光坂流雷術奥義双竜雷刀!!」
空から落ちてきた氷の槍に、竜の形をした雷が纏い明日花を中心に降り落ちた。
「光坂流木術奥義千本妖花舞!!」
地面から巨大な木が生え、てっぺんに不気味な色をした花が咲いた。開花した花から、無数の針のように尖った枝が氷と雷の槍に向かって飛び出した。枝は槍を砕きそれと共に散っていった。
「この技は……」
「お前等に、勝ち目は無い」
いつの間にか、雷之介と氷柱の背後に明日花は立っていた。二人は振り返らず、問い掛けた。
「テメェは、何者なんだ……一体」
「……木術使い元武田軍副隊長・光坂紫苑の娘。
名は光坂明日花」
「あす……か」
二人の頭に蘇る過去……
お腹を擦る紫苑……彼女を囲い座る雷之介達。
『アンタに子供が出来るとは……』
『優と私の子だよ』
『本当にいんのか?子供』
『いるよ。まだ小さな命だけど……
春頃には生まれるって……』
『名前は決めたの?』
『もちろん!
優と考えてね』
『どんな名前なんだ』
『この子の名前は……
明日花』
胸を貫かれた雷之介と氷柱……同時に口から血を吐き、仰向けに倒れた。雷之介は何かを呟くと、ゆっくりと既に息が無い氷柱の手の上に手を乗せ、そして静かに息を引き取った。
二人の血が付いた槍を振り払いながら、明日花は二人の亡骸を見つめた。
『明日花……テ……メェか……
やっと……思い出し……た』
(……母さん)
ふと二人の姿が一瞬、自分を庇い死んだ母・紫苑の姿と重なって見えた。
「伊佐那海!!」
清海の声が聞こえた明日花は、すぐに彼の元へ駆け寄った。社は焼け焦げ跡形も無くなっていた。
「伊佐那海!!答えよ!!伊佐那海!!」
瓦礫を探る清海……才蔵達は、社の焼け跡を見ながら唖然としていた。
焼けた屋根を、明日花は蹴り砕いた。そこには何もなく辺りを見回し、社の裏手にある茂みの方へ歩んだ。歩むと茂みの一部に、何かが滑り落ちた跡がありゆっくりとそこを覗いた。
「……才蔵!」
「?」
「さっさと、ここにいる女引き揚げろ!」
「?!」
「いたのか!?」
「痛ったぁ……才蔵!!どこぉ!!」
気が付いたのか、伊佐那海は滑り落ちた拍子に撃ったのか、お尻を手で抑えながら才蔵の名を呼び叫んだ。清海は泣きながら喜び、崖下へ降りようとしていた。
才蔵達が伊佐那海を救っている中、明日花は雷之介達の面を一つずつ砕いて行った。全てを砕き終えた彼女は、亡骸の上に何かを投げた。すると亡骸から苗が生え小さな木へと成長した。
(……じゃあね)
「明日花ぁ!!帰るぞぉ!!」
鎌之介の叫び声に、明日花は彼等の元へ駆けて行った。その様子を、木の上からあの鳥の面を着けた者が眺めていた。