BRAVE10   作:花札

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罠から抜けた才蔵達の前に、現れた少年……


現れるなり、いきなり自分を雇えと言い出した。


必然の遭遇

「ひやぁー、凄いなぁ!

 

オイラの罠を、全部交わしたのはオジサン達が初めてだよ!

 

 

どこの人?!名のある武将なんでしょ?!」

 

 

幸村に話す少年……

 

その後ろから、才蔵は少年の頭を力強く殴った。少年は頭を押さえながら、後ろを振り返った。

 

 

「痛ってぇ!!

 

何すんだい!?」

 

「何が痛ぇだ!!人をはめやがって、このガキ!!」

 

「うわーん、お姉ちゃーん!」

 

 

泣きながら、少年は伊佐那海に抱き着いた。

 

 

「才蔵、小さい子いじめちゃだめだよ!!」

 

「いじめる?!

 

さっきの罠見ただろ!?

 

 

俺達じゃなきゃ、死んでたぞ!!」

 

「皆怪我がなかったから、良いじゃない!

 

許してあげようよ!」

 

「火薬のにおいがしてたけど、やっぱりただのガキじゃなかったって訳か。

 

大したガキだ、アンタ」

 

 

そう言いながら、明日花は伊佐那海に抱き着いている少年の頭を撫でた。それに続いて、伊佐那海も少年の頭を撫でた。

 

少年は才蔵の方を振り向いて、舌を出して馬鹿にした。

 

 

(この馬鹿女共、空気読みやがれ!!自分も殺されかけといて……

 

明日花の言う通り、ただ者じゃねぇんだぞ、このガキャあ!!

 

 

……まぁ、もともと空気読めなかったな伊佐那海だけは……

 

オッサンなら……)

 

「いやいや、小さいの。

 

なかなかやりおるの!危うく、串刺しになるとこだったわい!」

 

 

扇子を広げて、高笑いをする幸村……

 

そこへ、明日花が引いていた馬を連れてきた六郎が、馬を宥めながら怒鳴った。

 

 

「笑い事ではありません、若!!」

 

「童、名は?」

 

「望月六郎ってんだ!六番目の子供だから、六郎!」

 

「六郎?」

 

「ほーう。

 

苗字があるが、武家の者か?」

 

「ううん!苗字は自分で付けた!

 

オイラ、侍になりたいんだ!

 

 

そのために、ずっと腕を磨いてきたんだ!!罠の仕掛けと爆薬の事に掛けちゃ、誰にも負けないよ!!

 

役に立つ自信があるんだ!!」

 

「それで、ここを通る者の力を試しておったのか。

 

面白い童だのう」

 

「自分が仕える人は、自分で選ぶ!強い人じゃなきゃ、嫌だもんね!

 

オジサン達は、見事合格!

 

 

オイラ、ついてくよ!」

 

「このくそガキ、何勝手に決めてんだ!

 

とっとと家に帰れ!親が心配してるぞ!」

 

 

そう言いながら、才蔵は六郎の頭を叩いた。それを見た伊佐那海は、六郎のもとへ駆け寄り才蔵を見上げた。

 

 

「才蔵!!」

 

「強く叩いちゃいねぇよ!」

 

「こいつ、親いないんじゃないの?」

 

「え?」

 

「そのお姉ちゃんの言う通りだよ。

 

 

親なんかいない!オイラ、今まで一人で生きてきたんだ!」

 

「いないって……」

 

「おおかた、口減らしかなんかで、捨てられたんだろ」

 

「幸村様、連れてってあげようよ!可哀想だよ」

 

「何が可哀想だ!

 

口減らしなんて、よくあることだ。んなの、いちいち拾ってたら、キリがねぇ!

 

今まで一人で生きてきたんだろ?じゃあ、これからもがんばれ!」

 

「才蔵、酷ーい!」

 

「何とでも言え!

 

ついてこられるよりマシだ」

 

「こーら」

 

 

才蔵の肩を、幸村は扇子で叩き才蔵の肩に手を回し、顔を近付けた。

 

 

「心が狭いのう、才蔵。

 

それでは、女子にも嫌われるぞ」

 

「……雇う気じゃねぇだろうな?オッサン…

 

こんな得体の知れねぇガキ」

 

「童にしては、見上げた度胸だと思わんか?

 

儂は感心したなぁ」

 

「若!どういうおつもり」

「口を出すな、六郎!

 

 

童!儂はお前が気に入った!

 

この真田に仕えることを許す!」

 

「ホント?!」

 

「幸村様!」

 

「しかし、京へは連れていけん。

 

 

清海、鎌之介、お主らこの童を連れて上田へ帰れ。

 

そもそも、残れと言いつけておったろう」

 

「はーあ?!

 

誰のおかげで助かったと、思ってんだ?!俺は俺の好きにさせてもらう」

 

「拙僧も伊佐那海と共におりたいのだが……

 

男の中に、女子二人では不安でたまらん」

 

「大丈夫だ清海。

 

私はともかく、このうるさい女を襲う男は才蔵以外いない」

 

「その言い方なんなの?!」

 

「使えねぇ奴等だなあ!

 

言うことも聞けねぇのかよ」

 

「その使えねぇ奴に助けられたのはどこのどいつだ!?あ!?」

 

「言ったな」

 

「止さんか、お前等。

 

六郎、止めろ」

 

「御意」

「ハーイ!」

 

「!?」

 

 

二人の返事を聞いた幸村……

 

二人の六郎は、目を合わせた。

 

 

「やっぱり、同じ名前かぁ」

 

「そういえば……

 

同じ名前とは、不便だのう」

 

「オイラ、何て呼ばれても構わないよ!

 

だいたい『六郎』何て名前ダッサイし!」

 

 

それを聞いた明日花は、吹き出し笑った。そんな明日花に六郎は頭を叩いた。

 

 

「ダサいかどうかは別として、儂にとっての『六郎』は一人しかおらんからなぁ……

 

ふーむ……

 

 

『弁丸』

 

今から、お前を弁丸と呼ぶ!良いか?!」

 

「ハイ!!」

 

「何を、考えておられます!?」

 

「何が悪いんだ?六郎。

 

別にいいじゃん、幸村のガキの頃の名前なんでしょ?」

 

「ですから、このような者にもったいないことを!!」

 

「怒るな六郎!」

 

「いずれにしろ、京へは連れて行けませんよ!」

 

「この先の宿場において、京の帰りに拾うさ。

 

なあに、全ての出会いは必然であろうよ。

 

 

鎌之介、清海、面倒くさいからお主等もついてまいれ」

 

「おお!!」

 

「イヤッホー!!」

 

「オッサン!!」

 

「またうるさいのが増える」

 

 

 

 

“パキ”

 

 

「!!」

 

 

突然、小枝を踏む音が聞こえその方向に皆顔を向けた。茂みの中から人一人乗せられるほどの狼が一匹現れた。

 

狼は歯を剥き出しにし、獲物を捕らえたかのような目で才蔵達を睨み唸り声を上げた。

 

 

「な、何だ?!この山犬!!」

 

「何か、怒ってるよ!!」

 

「お前が罠なんかしかけるから、住処が荒らされたと思って怒ってんだよ」

 

「オイラのせい!?」

 

「しかし、この大きさ以上ではないか?!」

 

 

その時、狼は突然走り出し才蔵達の後ろにいた明日花に飛び乗った。

 

 

「明日花!!」

 

 

後ろを向く才蔵……

 

 

「止めろ!!バカ!!おい!!舐めるな!!」

 

 

飛び乗った狼は、明日花の顔をなめながら尻尾を振り喜んでいる様だった。狼の顔を退かしながら、起き上がる明日花に才蔵は話しかけた。

 

 

「お前の飼い犬か?」

 

「んなわけないでしょ?

 

私が飼っているのは、コノハだけだ。

 

つーか、コイツ犬じゃなくて狼だ」

 

「でも、明日花ちゃんに凄く懐いてるよ」

 

 

「いやぁ……

 

懐かしいにおいがしたと思ったら、やっぱりお前達だったか」

 

 

その声がした方に目を向けると、そこに同じ狼を一匹連れた、頭に布を巻き黒い髪を腰まで伸ばした男がいた。

男は狼に釣られながら、幸村達に近付いた。

 

 

「よう、真田の倅に海野の倅、久しぶりだなぁ」

 

「誰だ?儂はお主の様な男は、知らんぞ?」

 

「私もです」

 

「ま、覚えてなくとも無理はない。

 

お前に会ったのは、お前がまだ幼少の頃だからなぁ……

 

海野家は、お前さんが赤ん坊の頃にあった。

 

 

しっかし、大層な殿方になったもんだなぁ」

 

「おい、オッサン」

 

「?

 

何だ?伊賀の者を雇ったのか?真田の倅」

 

「雇われてねぇよ!!

 

お前、目ぇ見えてねぇだろ?」

 

「凄いねぇ、お前。

 

そうだよ……

 

俺、昔病に掛かってねぇ……

 

それで、目がポックリ逝っちゃったんだ……」

 

「へー、じゃあ攻撃しても、構わねぇってことか!!」

 

 

男の話を聞いた鎌之介は、鎖鎌の鎌を振り上げ男目掛けて投げた。だが男は、目に見えぬスピードで攻撃を避け、鎌之介の足を払った。足を取られた鎌之介は倒れ起き上がろうとした途端、上に男が乗り動きを封じ、男はクナイを取り出し鎌之介の首に当てた。

 

 

「目が見えないからって、攻撃するのは良くないよ?山賊さん。

 

見えなくとも、俺は耳と鼻で相手がどこにいるか、相手が今何をしようとしているかが分かるんだよ」

 

「クッ!!」

 

「さぁて、次はだれが俺を攻撃するのかな?」

 

 

そう言いながら、男は才蔵達を見た。才蔵達は、只ならぬ男の殺気に怯え、一歩後ろへ引いた。

 

その中、後ろから明日花が出てきて男に近付き、男の頭を思いっきり殴った。

 

 

(な、殴った?!)

 

「何しに来たんだ!!この馬鹿!!」

 

「痛いなぁ……

 

ほら、召集掛かったでしょ?一族に。

 

それで来たんだ」

 

「アンタが来るのは反対方向でしょうが!!

 

何で、こっちから来んだよ!!」

 

「いやぁ、京都に着いたはいいんだけど、途中で杖なくしちゃって、こいつらの歩くままに歩いてたら京都を抜けて、君に会ったんだ」

 

「……何やってんだよ、お前」

 

「明日花……

 

お前、コイツと知り合いなのか?」

 

「……この馬鹿は、一族の仲間だ」

 

「?!」

 

 

明日花の言葉を聞いた才蔵達は、驚きの顔を隠せないでいた。男は立ち上がり才蔵達を見た。

 

 

「俺の名前は晃三(コウゾウ)。

 

 

昔、武田軍に入っていてねぇ……

 

敵陣の間では、別名『盲目の人斬』何て、呼ばれていたものさ」

 

「盲目の人斬?」

 

「聞いたことがある。

 

戦時中、目が見えねぇくせに敵百人を一人で相手して切り殺した忍がいると……それが、コイツだったのか」

 

「おぉ、なかなかの物知りだねぇ伊賀の忍さん」

 

 

そう言いながら、晃三は才蔵に近付き臭いを嗅いだ。才蔵は引き攣った顔を浮かべながら、晃三から距離を置いた。

 

 

「本当に面白い団体だなぁ、真田の倅御一行さんは。

 

 

伊賀の忍が一人、山賊が一人、神職についてるのは二人いるみたいだけど……

 

一人、何かムサイねぇ……」

 

(当たってやがる…)

 

「でも、あとの一人……巫女さんかな?

 

お前、面白い力を持ってるみたいだね?」

 

 

晃三は才蔵の隣にいた伊佐那海の髪に触れ、伊佐那海に顔を近付けさせ臭いを嗅いだ。

 

伊佐那海は、青ざめた顔で晃三を見て、今にも泣きそうな顔で才蔵に助けを求めた。その時、鎌之介の近くにいた明日花が晃三に近寄り、頭を殴った。

 

 

「変な行為すんのは辞めろ!!人里だぞ!!ここは」

 

「全く……キレやすいなぁ、紫苑の倅は」

 

「殺すぞ!」

 

「そう言うなって。

 

京都で君に会ったら、お頭さんの所に連れて行くのはこの俺なんだぜ?」

 

「じゃあ、さっさと先に京都に行け!!」

 

「酷いなぁ。さっきも言ったでしょ?杖失くして、こいつ等に釣られるがままに来たって」

 

「……」

 

「良いではないか、明日花。

 

 

晃三とやら、お主が良ければ共に京都まで参ろうではないか」

 

「オッサン!!」

「幸村様!!」

 

「おぉ!ありがたいですなぁ!

 

というわけだ、お前と共に行くぞ紫苑の倅」

 

「……ついて来るのは構わないけど……

 

頼むから、私以外の人にその変な行為するのは辞めろ」

 

「はーい」

 

 

明日花に言われた通り、伊佐那海の髪に触れていた手を離し、明日花の方に腕を回し、自分の顔を明日花の顔に近付けさせた。

 

 

「近い!!」

 

「良いじゃねぇか?倅」

 

「気色悪い!!」

 

 

騒ぐ明日花と晃三……

 

そんな二人を見ながら、才蔵はため息をついた。

 

 

「さ、行くぞ。京都へ」

 

 

幸村の掛け声と共に、才蔵達は歩き出し京都へ向かった。

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