京を離れ、山の中にある社へと着いていた。
「ここなの?」
狐の面を上げて、社を見る明日花……
その隣にいる晃三は、明日花の面を顔に着け直し頭に手を乗せた。
「面を取るな。」
「頭が、取れって言うまでか?」
「そうだ。」
「……」
「ほら、行くぞ」
そう言いながら、晃三は社の中へと入った。明日花も続いて社の中へ入った。社の中には既に人が集まっており、皆色々な面を着けており、空いた扉に目線が一斉に明日花と晃三に向けられた。明日花は殺気立たぬ目線に怯え、晃三の後ろへ隠れた。
「遅いではないか!晃三」
集まる皆の前に、立っていた男が立ち上がり晃三を呼んだ。晃三はニヤけながら、明日花を自分に寄せ男の傍へと近づいた。
「お久ぶりだなぁ。お頭さん」
「お主もあまり変わっておらぬようだな?
紫苑の倅も、見ないうちに随分と逞しくなったな」
「紫苑の倅?
頭、そのガキ紫苑のガキなのか?」
「そうか、お主らは初めて出会ったな。
皆、面を取れ」
頭の男の言う通り、集まっていた者たちは全員面を外した。
その者たちに続き、明日花と晃三も面を外した。
「明日花、皆に挨拶するのだ」
「ハイ。
名は光坂明日花。武田軍隊長と副隊長の子であり、副隊長である光坂紫苑の技、木術を得意とする」
「紫苑の子か……」
「しかし、あの隊長さんの血も継いでいるのか……」
「ますます、光坂の血が薄れていくな」
「技を受け継げば、良いんじゃないんですか?」
「しかし…」
「皆、騒ぐでない。
明日花、お主を今日の集会に呼んだのは、お主の存在を一族全員に教えることと、お主のパートナーを紹介することだ。」
「パートナー?」
「銀之助、こっちへ来い」
「はい」
一人立つ少年……
少年は、青い髪を耳下で一つに結った容姿に、手には鳥の面を持っていた。
「誰、コイツ」
「光坂銀之助。年はお主と同い年だ。水の技を得意とする。
仲良くしてやれ」
「ハァア!?」
「銀之助です、始めまして」
「知るか!!」
「そいつらの見合い話はいいから、とっとと本題に入ってくれませんか?頭」
「そうだな……
二年前から、あの狸の動きが派手になってることは、お主らは知っておるな?」
「……」
「確か、二年前だったよね?紫苑が死んだのは」
「おい、娘の前だぞ」
「あぁ、悪い」
「……」
「狸の動きが派手になればなるほど、明日花の身が危険になっていく」
頭の言葉に、一同は驚いていた。騒ぐ一同を頭は鎮めながら、明日花の方に目を向けた。
「明日花、話せるか?」
「……」
明日花は首に巻いていた襟巻を外し、首から下げていた勾玉を皆に見せた。
「これは……」
「確か、紫苑が身に着けていた物」
「私がまだ幼少期の頃、母さんがこれを身に着けていろと言って貰った物だ。
けど、二年前これを狙って狸の忍集が私と母さんを襲った。
そして、母さんは私を庇って死んだ」
「……」
「晃三、その勾玉にいったい何の意味があるんだ?」
「さぁな……
けど、その魂には不思議な力があるのは確かだ。」
「不思議な力って……」
「さぁねぇ……」
「答えろよ……」
「お前たちに、教える義理はねぇよ」
「何を?!」
「人の事、いつも変人呼ばわりして、避けてたのはどこの誰だっけ?」
「うっ……」
(私と母さんだけだったのか……
コイツと関わっていたのは)
「何れにせよ、いつかは戦争が始まる。
その時、俺達は信濃を守り抜くことだ。未だに、真田の倅幸村は徳川についてはいない。」
「私たちの故郷、信濃は今は真田家の手の中……」
「甲斐の国もだけどな」
「守り抜くって言うけど、お前たち大丈夫なのか?腕の方は」
「どういう意味だ?!晃三!」
「いやぁ……
ここに集まっている者大半数は、旅芸人として生きているって言うじゃないか?
忍として生きているのは、銀之助と明日花と、その他十人だけ……
他はどうなのかなぁ?ちゃんと戦えるのかなぁ?」
「んだと!!もういっぺん、言ってみろ!!」
「それなら、戦ってみるか?明日花とどれくらいの力の差があるか」
「晃三!!」
「望むところだ!!倅、表出ろ!!」
「止さぬか!!」
武器を取り表へ出ようとした時、頭は怒鳴りつけた。武器を持った男は、その迫力に怯え手に掛けていた引き戸から手を引いた。
「一族の中で、争うをするとは何事か!!頭を冷やせ!!」
「す、すいません」
「晃三!!お主もだ!!
争いを誘うような口の効き方をしおって!!」
「ヘイヘイ」
軽く返事をする晃三に、明日花は頭を殴った。
「ちゃんと反省しろ!!」
「はーい……」
「全く。
まぁ、晃三の話には一理ある。」
「お頭……」
「無理には言わん。この世代だ。
いつ争いが起きても不思議ではない。自分の身が守られる程度の力はつけとくように。分かったな?」
「諾」
「御意」