BRAVE10   作:花札

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茶会へやってきて、座席に座る幸村……

そこへ遅れてきた伊達政宗……

政宗は、幸村の姿を見つけるなり、幸村を睨み付けた。


剣と扇

自分を睨む政宗に、幸村は不敵な笑みを溢した。

 

 

「この節は、どうも」

 

(この野郎!!)

 

「何をしておる!!座らんか!!

 

そもそも、遅れてきて何だ、その態度は!!」

 

「申し訳ありません!!」

 

「片倉!!お主に申しておるのではない!!

 

茶会の席でなければ、正式に詫びを入れてもらうところだぞ、伊達殿!!」

 

「……そうか」

 

 

返事をしつつ、政宗は手に持っていた鞘から刀を抜き出した。刃を抜いた政宗に、一同は皆驚いていた。

 

 

「バカが!!抜きおった!!」

 

「何、剣舞を披露いたそうと思いましてなぁ……

 

これは剣を交えてこそ、美しさが際立つゆえ、どなたかお手合わせを願いたい……

 

 

よいか?」

 

 

政宗の言葉に、家康はご機嫌なのか嬉しそうな表情を浮かべて、手を叩いた。

 

 

「余興じゃ!許そう!」

 

「ではアンタに、お相手願おう……真田幸村」

 

 

剣の向けながら、政宗は幸村を指名した。

 

 

「参ったのう……(涼しい顔をして、何とも言えぬ覇気を放つな)」

 

「お待ちください!」

 

 

目を合わせる幸村と政宗の間を割って入り、六郎は政宗の方に体を向けた。

 

 

「ご指名、恐悦至極に存じますが、若は帯刀しておりません!

 

これほどのお歴々が、お揃いになっているのです。他のどなたかに、お願いできませぬか?」

 

「何をおっしゃる。」

 

 

六郎の提案に口出しするかのように、政宗の付き添う小十郎が前へ出てきて、自分の刀を差し出した。

 

 

「刀なら私のを、お貸しいたします。

 

どうか、我が殿の誘いをお受けしていただきたい。このような事、二度とはない貴重な刻になりましょう。(政宗様の申し出を断るなど、百年早い……)」

 

(二度とないほど、叩き潰すと……)

 

「何、余興だ」

 

「そう……余興よな」

 

 

今まで黙っていた幸村は立ち上がり、政宗の前に持っていた扇を広げ見せつけた。

 

 

「儂はこれで舞うとしよう」

 

「これは面白そうだ!

 

まさか茶会で、剣舞が拝めるとは思いませんぞ!」

 

 

燥ぐ三成……

 

その三成に参戦するかのように、兼続も口を出してきた。

 

 

「確かに、奥州の龍と名高い政宗の舞ならば、さぞかし……

 

 

わざわざ長旅してきたかいがあったというもの」

 

「うむうむ、そうであろうとも!

 

では、皆の者ちと下がってくれい。

 

 

合図は儂が痛そう!お二方よろしいか?(せいぜい、恥をかくがよい……真田の子倅め!)始め!」

 

 

家康の合図と共に、政宗は一歩前へ出て剣を突き付けた。その剣を幸村は扇で払い避けた。

 

政宗の華麗な剣舞を見ていた者たちは、皆目を離せないでいた。

 

 

「あの伊達殿の、見事な長剣よの」

 

「何尺、何貫あるものか」

 

「緩やかな動きなれど、間合いを違えば切った先に捕まるぞ」

 

「それをふまえてのあの動きか、真田殿……

 

見事!」

 

 

政宗が剣を振り上げ、その攻撃を幸村は扇で防いだ。防いだせいか、扇面が切れバランスを崩しその隙を狙い、政宗は剣を振り下ろした。

 

幸村は間一髪、その攻撃を避け耐えた。

 

 

「足がついてこんわ。

 

いやはや、情けない」

 

「どうした幸村!不格好だぞ!」

 

「分かっておるわ」

 

 

政宗の次なる攻撃に、幸村は扇で防ぎ距離を置いた。

 

 

「もう少し、ゆるりといかぬかのう」

 

「(何をぬけぬけと!)

 

十分、ついてこれてるじゃねぇか?」

 

「いや何、上田は何かと物騒でな。少し身を守る術に長けておるだけだ。」

 

「ほう……」

 

 

ニヤついた表情で、政宗は距離を置いていた幸村の目の前へ行き剣を構えた。

 

 

「逃げてるばっかりじゃ、喰らうぞ!?」

 

「は、速い!」

 

「ほ!さすが、政宗よの!」

 

 

幸村の目の前で剣を振り、その攻撃を避けた幸村だが、足がふら付き尻餅をついてしまった。その隙に、政宗は剣を持ち替え幸村目掛けて振り下ろした。

幸村は足で地面に敷かれていた敷物を引っ張り、政宗の態勢を崩し、振り下りてきた剣の束を足の指で掴み投げた。

 

剣は宙を舞い、家康の足元へと突き刺さった。

 

その様子を見ていた者たちは皆、吹き出しそうに体を震えさせ笑いを堪えていた。

 

 

「何と、無様な!」

 

「本当に……」

 

「な、な、何を!」

 

「幸村!

 

何だその態は!」

 

「いやぁあ……参った参った」

 

「尻餅など、子供でもあるまいし」

 

「伊達殿の剣気が凄まじくてのう。思わず、腰が引いてしまったわい!」

 

 

そう言いながら、幸村は立ち上がり、政宗に一礼した。

 

 

「儂の様なものが、お相手で申し訳なかったな。

 

さぞ、手ごたえが無かったろう」

 

「……」

 

「さてと、動いたら喉が渇きましたな!

 

茶などいただけないでしょうか?」




夕方……


茶会が終わり帰り道を歩く幸村と六郎……

そんな二人の前を歩く兼続と燥ぐ三成……


「いやいや、いい見世物だったな!

あの狸(家康)の顔!しばらく話のタネになるぞ!」

「政宗もあああしらわれては、さぞ腹立だしかったでしょうね……

のらりくらりとよくも逃れたものだ」

「何を言う!かなり必死だったぞ!

打ったケツは痛いし、久しぶりに動いて体はきしむし……大変な茶会だった。」

「そりゃ大変だっただろう!奥州の龍を相手に舞ったのだから」

「あの様で龍ですか?


よくよく考えてみれば、狸が龍を買えるはずもございません。龍の皮を被った泥鰌だったのでございましょう」

「せめて蛇くらいにしておかぬか、兼続」

「おや、三成殿。お優しいことで」

(こいつら、いつ会っても口が悪いのう)

「真田殿」


話しをしていると、後ろから家康の使いの者が幸村の名を呼んだ。幸村は後ろを振り返った。


「先程の茶会での一件、真田殿に咎あり、即刻伏見城へ参上申し聞きせよとの由」

「ありゃ」

「何を!!

言い掛かりも甚だしい!!」

「厚顔無恥にもほどがありますね」

「出頭せぬ場合、相応の仕置きがありましょう。それでは失礼します。」


使いの者は不敵な笑みを溢し一礼をし戻って行った。


「何と一方的な!!

あの場にいた徳川が口裏を合わせれば、言い逃れ無くなるぞ!」

「そもそも、それが目的でしょう。

目障りなものに難癖をつけ、所領を差し上げるか……腹を斬らせるか」

「幸村!!私も共に参ろう!!この所業許せんわ!!」

「どこに参るのだ?」

「こんな時にふざけるな!!家康の所だ!!」

「んなもん、シカトするに決まってるだろう」
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