話しが終わり、宴会をする光坂一族……
女が舞い、男がそれに合わせて手拍子し、宴会は賑わっていた。
皆が騒ぐ中、明日花は晃三と頭、銀之助と飲んでいた。
「相変わらず、酒が入ると騒がしくなるねぇ……」
「久しぶりだから……
嬉しいんだろう」
「そうかい」
「酒に強いって聞いてたけど、皆樽三本飲んで、酔うなんて……」
「紫苑は別だよ。
あの子は、平気で樽四本飲んじまう強靭だったからねぇ…」
「それ、母さんが聞いたらボコボコにされるよ?」
「良いよ良いよ。
どうせ、もうこの世にいないんだから」
「私が殴るよ?」
「すいません……」
「明日花」
「?」
ずっと黙って飲んでいた銀之助が、突然口を開いた。その声に明日花は、銀之助の方に顔を向けた。
「何?」
「……
俺と同い年だと聞きましたが、実力も同じなのですか?」
「さぁね。
けど、アンタよりは強いと思うよ?私」
「なぜ、そう言い切れるんです?」
「……
アンタ、家族はいる?」
「……
年の離れた兄と父の二人だけです」
「……
じゃあ弱いね?アンタ」
「!!」
決めつけるような言葉にキレたのか、銀之助は立ち上がり剣を持った。明日花はそんな銀之助に続く様に立ちあがり、槍を組み立てた。
「表へ出ろ。ここで力の差を見せる」
「望むところ。
頭、少しやり合ってもいい?」
「……
あまり気が進まぬが、お主らの気がそれで済むなら良かろう」
「どうも」
「おい!
銀之助と明日花の闘いが始まるぞ!!」
寄っていた男の一人が、飲み騒いでいた皆に呼び掛けた。男の声に皆表へ出て行く二人の背中を追い、出て行った。
表へ出た明日花と銀之助、その二人の間に立つ晃三……
「危なくなったら、止めるからそのつもりで」
「承知」
「了解」
晃三に答えながら、二人は面を着け攻撃態勢へ入った。晃三はニヤついた表情で二人を交互に見た。
「(良い目付きだ。特に明日花は……)
始め!」
その掛け声に先に前へ出たのは銀之助だった。銀之助は全く動かない明日花目掛けて刀を振り下ろした。明日花はその攻撃を難なく避け、銀之助の頭に蹴りを入れた。
頭に蹴りを喰らった銀之助は、頭を押さえ距離を置こうとその場から離れたが、明日花はそれをさせまいと銀之助の目の前へ行き腹に蹴りを入れた。
銀之助は腹を押さえ、地面へ転げ落ち咽た。
「おい!銀之助立て!!
男が女にやられてどうする?!」
その言葉に、銀之助は答えるかのように息を整えながら、立ち上がりかった。明日花は槍を構え、立ち上がった銀之助目掛けて振り下ろした。
銀之助はその攻撃を刀で防ぎ弾いた。二人は互いに弾かれた衝撃で、後ろへ下がった。
「光坂流水術水鉄砲」
剣で円を描きそこから、銃で撃たれたような水が数発発砲された。その攻撃を明日花は次々に避けて行った。
(よ、避けた?!)
「(こんな攻撃、お見通しだ)
光坂流木術枝手裏剣」
先の尖った枝を、明日花は銀之助目掛けて放った。銀之助は枝を剣で斬り防いだ。防いだかと思いきや、目の前に明日花が現れ、銀之助を地面へ倒し首に槍の先端を突き付けた。
「!!」
「これで戦いは終わり……
だから言ったでしょ?アンタは私より弱いって」
「くっ!!
ふざけるな!!」
銀之助の叫び声と共に、四方から水の柱が現れた。明日花はその柱を見回し、銀之助を見た。
「負けるわけねぇだろ!!
武田軍隊長と副隊長の子だからって、調子に乗るな!!」
「!!」
空いていた明日花の横腹に、銀之助は拳を入れた。明日花はその痛みに体勢を崩し膝を付いた。その隙に銀之助は明日花から離れ刀を構えた。
「副隊長の噂なら、俺も聞いたことがある。
「銀色の化け狐」、「白い殺人花」……
けど、そんなすごい人を母親に持ったからって、偉そうな口を叩くんじゃねぇ!!
親が強ければ、子も強い?そんなわけねぇだろ!」
「……」
「ハァ…ハァ…」
「凄い親ね……
確かに自慢だったよ、昔は。
母さんも父さんも強くて、いつか私も並んで共に戦いたいと思った。
けど……
そんなの、夢でしかなかった」
「?」
「信濃と甲斐が真田に受け継ぐ際、真田はある条件を言い渡してきた。
「武田軍隊長と副隊長を貰いたい」ってね……
言ってる意味わかる?」
「……まさか」
「父さんの方は、徳川についている真田の倅のもとに仕えることになった。
だから父さんは、もう自分を父と呼ぶなって言って私の前から立ち去った。
それ以来、父さんとは会っていない。
母さんは幸村に仕えることとなり、幸村に事情を話して私を母さんと共に、引き取ってくれた。
けど、母さんは二年前に私を庇い死んだ。」
「……
父親とは、もう会えないのか」
「会えないよ。
徳川についている以上、私との関係を知られちゃいけないし、知られれば私の身も危険になる。」
「……」
「親が強ければ子も強い……理屈じゃそうかもしれない。
けどね、私は自分の身を守るため、アイツと一緒に並んで歩きたい、それだけのために強くなっているだけだ。」
「……
なら、ここで勝ってみせる。この俺が」
「!」
「勝って、お前がこの俺に守られなきゃならない存在だって言うことを、教えてやる」
「そう思わせてもらいたいねぇ」
「思わせてやる!
光坂流水術水針」
「光坂流木術木龍砲弾」
二つの技がぶつかり合い、その衝撃からか突風が吹き二人の闘いは夜まで続いた。
雲に隠れていた月が現れた頃……
「ハァ……ハァ……」
「ハァ……ハァ……」
疲労からか、息を切らし立つ二人……
そこへ、二人の間へやってくる晃三……
「戦いはそこまで。
二人共、お疲れ様」
「おい、まだ戦える!!」
「ダメダメ。君はいいけど、明日花は明日真田の倅の所に戻って、倅の護衛をしなきゃいけないんだ。」
「……」
「さぁ、飲もう飲もう。
皆も飲み直そう。お頭も」
二人の肩に手を回した晃三は、二人を社の中へと連れて行き外の者たちにも声をかけた。二人の闘いを見ていた者は皆、社の中へ入り酒を飲み直した。
しばらくして、酔いが回ったせいか一族は、頭と晃三を覗いで皆眠りに入ってしまった。明日花は、晃三の膝に頭を乗せ寝ており、その近くで銀之助も寝言を言いながら眠っていた。
「しかし、先程の二人の闘いは見事であった」
そう言いながら、頭は晃三と飲んでいた。晃三は明日花の頭を撫でながらニヤついた顔で頭を見た。
「紫苑の子だからね。当然だよ」
「相変わらず、紫苑と紫苑の倅には頭が上がらないようだな?」
「そうりゃあね……
戦時中、紫苑に何度危機から助けてもらったことか……
その恩返しに、コイツの面倒を見てやってるようなものだ」
「見ているのは、真田の倅じゃないか?」
「そうかもしれねぇ。
けど、倅を見たけど、そんな悪い奴には見えなかった。
面白い団体だった。明日花も少しは気を緩めいているみたいだったし」
「そうか……
あ奴が、傍にいてくれれば、紫苑も死なずに済んだかもしれんなぁ…」
「仕方ないですよ。
訊いたでしょ?アイツは、徳川についている頭の所に仕えている」
「余計危険か……」
「そうですよ」
「またいつ、皆と会えるか……」
「これが最期じゃないんですか?」
「まさか……」
笑い合う二人……
空に浮かぶ月は、そんな二人がいる社を優しく照らしていた。