そこへ、遅れてきた明日花。
明日花の命で銀之助はその場から立ち去った。
「何なんだ?アイツは」
「さぁね」
「それにしても明日花、お主何故そのような格好を?」
「一族の頭が正装で来いって書いてたから、この格好なんだ。
誰かさんが、京都から逃げて来なければ着替えてから、アンタ達の所に戻ろうと思ったのに」
「さて、出発するか。
明日花、儂の馬に乗れ」
「(話を逸らしやがって)
!?」
何かに気付いたのか、明日花は後ろを振り返った。
「どうした?」
「さっきの騒ぎ聞いて、こっちに向かってくる馬が四頭いる」
「?!」
「どうする?幸村」
「才蔵、明日花」
「ったく」
「あぁそうだ明日花、お主木の技を使うでないぞ」
「は?!何で?!」
「何でもだ。とにかく使うな」
「……」
「おい来るぞ」
剣の束を握り攻撃態勢に入る才蔵……
明日花は才蔵の後ろから槍を構え、敵が来るのを待った。少しして馬に乗った使いの者が四人姿を現した。それを見た幸村は伊佐那海を六郎の馬へと移らせようとした時だった。
“バーン”
「うわっ!!」
銃声の音が鳴ったかと思いきや、才蔵の後ろにいた明日花が何かに突き飛ばされたかのように飛ばされ、幸村に受け止められた。才蔵はすぐに攻撃してきた方に目を向けると、馬に乗った使いが火縄銃を構えていた。
「火縄銃だと?!」
「明日花大丈夫か!」
「痛っ……
肩掠ったみたいだけど、何とか大……!!」
撃たれた箇所を押さえながら、幸村から離れ槍を構えようと持ち上げると、槍の持ち手が真っ二つに折れていた。
「折れた?!」
「さっきの弾でか?!」
「多分……(やっぱり、昨日の夜戦わなきゃよかった)」
「明日花は下がれ。鎌之介」
「へっ!」
「……!!
多数の馬が、さっきの銃声でこっちに向かってる。前からも来るぞ!!」
明日花の言葉通り、四頭の馬の他多数の馬がやってきた。前からも多数の馬に乗った使いの者がやってきた。
「挟み撃ちってか。
お先にどうぞ」
「言われなくても、暴れてやる!!」
そう言い叫びながら、鎌之介後ろの方の隊群を風で吹き飛ばした。前から来る大群に、六郎は武器を構え技をだそうとした。
だが、先頭を走っていた馬が地面に仕掛けられていた落とし穴にはまり、そのまま滝の様に次々と落下していった。その落ちた穴に、どこからか降ってきた爆弾が中に落ち爆発した。
「これは?!」
「へっへー!」
その笑い声がした方に目を向けると、樹の枝に立つ弁丸の姿があった。弁丸は枝から飛び降り、幸村達の方へ駆け寄った。
「帰り道はこっちだろうと思って待ってたんだ!ビンゴだったね!」
「ようやったのう弁丸!」
「罠仕掛けといて良かったよ!備えあれば憂いなしってね!」
(何をしらじらしく……
俺らをはめて笑うつもりだったんだろうが……)
才蔵の馬に乗っていた伊佐那海は、馬から降り弁丸に抱き着いた。
「弁ちゃん!」
「お姉ちゃん!」
「また会えて嬉しいよ!」
燥ぐ伊佐那海と弁丸……
その様子を見ながら、六郎は幸村の方を見た。
「今の爆発を他の追っても聞いてたはずです。とにかく急ぎましょう」
「いや、少し待て六郎」
「?」
「どうにも素直に行けん気がするのう……
追っ手の足も早い。(狸もよほど、頭に血が昇っておるようっだな……)
才蔵、鎌之介」
幸村は何か察したのか、才蔵と鎌之介を呼んだ。
「佐和山までの索敵を命じる」
「おう」
「夕刻に落ち合おう」
「了解」
「儂らは、この先の森に潜んでおる」
「よーし!!殺りまくるぜ!!」
「お前、索敵の意味分かってねぇだろ」
「サクッと敵を殺れ!だろ?」
「アホ!!」
(あの二人、息が合ってんだが合ってないんだが……)
遠退いて行く才蔵……
そんな後姿を見た伊佐那海は、不安そうな表情を浮かべた。そんな伊佐那海に幸村は頭に手を乗せた。
「あ奴らが帰って来るまで一休みしよう。
京から走り通しで疲れたしな……
それに、明日花の怪我の治療もせんと」
森の中へ入り、川辺の岩の上に腰を下ろし休む幸村達……
「大丈夫か?伊佐那海。辛くはないか?」
「うん!平気」
清海の言葉に伊佐那海は笑顔で答えた。だがすぐに、伊佐那海は不安そうな表情を浮かべた。
(才蔵がいないと、やっぱり不安……
追われている森の中を逃げてると、あの時みたいで……怖い)
「伊佐那海!?」
「!?な、何?」
「本当に大丈夫か?顔色が悪いぞ!」
「そ、そんなことないよ!」
「体が冷えておるのだろう」
そう言いながら、幸村は自分が来ていた羽織を伊佐那海に掛けた。
「儂の目には良いが、薄着すぎる」
「ゆ、幸村様」
「案ずるな。すぐに上田に帰れるぞ」
「(不思議……
何だか、安心する)
暖かいね!幸村様!」
「幸村」
怪我の治療が終わった明日花が、幸村に近付き呼んだ。幸村は立ち上がり明日花の方に顔を向けた
「さっきの言葉、どういう意味だ?」
「さっきの言葉?」
「技を使うなって……
あれ、どういう意味?」
「そのままの意味だ。」
「だから、何で技を使っちゃいけないんだ!」
「狸の部下にで見られてみろ。また面倒なことになる」
「それはアンタの問題でしょうが!!
訳を話し……!!」
「?どうした明日花」
「静かに!」
幸村の発した声に、周りを警戒していた六郎は口に指を当てて静かにするよう命じた。
すると、森の中から無数のクナイが飛んできた。明日花は六郎の横に立ち、足に着けていたケースから鉄扇を取り出しクナイを振り払った。同時に六郎も二本の小太刀を取りだ、波動を放ちクナイを吹き飛ばした。
クナイが終わったかと思うと、森の中から口に面を着けた男と口や体に包帯を巻いた男が姿を現した。
二人は六郎と明日花を囲う様にして降り立った。
「六郎!明日」
「ぬぅおおお!!」
鉄棍棒を振り上げ、清海は地面を叩き割った。吹き上がった土と岩の中から、男が二人出てきて、逃げようとした幸村達の前へ立った。
「動くな。
体中、風通し良くなっちまうぜ!」
「くっ」
そんな時、索敵に行っていた才蔵が駆けつけ、包帯男の頭に蹴りを入れた。
「才蔵!」
「逃げるぞ!!」
手に持っていた煙玉を投げた。それを真似して明日花も腰に着けていたポーチから煙玉を数個取り出し投げた。
煙玉は煙を放ち、幸村達の姿を消した。
しばらくして、煙は晴れたもののそこに残っていたのは、男二人だけであった。
「行ったな」
森から抜け、見晴らしのいい道を歩く才蔵達……
「どの道も、完全に塞がれている」
「このまま進んでも、琵琶湖があるだけだぜ」
「泳ぐのは無理よのう……寒いし」
「オッサーン」
「ん?
お前達がおれば、何とかなろう」
(ん!頑張る)
「殺れっつうなら、いくらでも!!」
(信ずれば叶う)
(何とかなるか……)
「(本当にこのオッサン……
何の臆面もなく……簡単に言いやがる)
相変わらず、人使い荒ぇ」
「いーや……何とも何ねぇよ」
「!!」
前を見ると、そこには剣を肩に乗せニヤつく政宗の姿があった。政宗の姿を見た明日花は、出雲で出会った時と同様に怯えた表情を浮かべた。
それに気づいたのか、六郎は明日花の手を握り自分の後ろへ隠した。
「六」
「良いから、黙っていなさい」
「……」
「先日はどうも」
「わざわざ、礼を言いに参ったのか?」
「とぼけた野郎だな。
追っ手だよ!!テメェらの……
つうのは建前で、恥かかされたまま黙ってたんじゃ男がすたる!!
持ってかれたもの(奇魂)は取り返す」
「何も知らずに手を出しおって……愚かな男よ」
そう言いながら、幸村は才蔵に付いていた伊佐那海を、自分に引き付けた。
「この宝、お前ごときの手には余る。
しかも、もともとウチのモンだ。盗人猛々しいな、政宗」
「……の野郎!!」
キレた政宗の声と共に、後ろで控えていた綱元と小十郎が武器に手をかざした。
その二人に武器を握らせまいと、才蔵はクナイを投げつけた。
「オッサンと伊佐那海にゃ、触れさせねぇよ」
「……
デケェ口叩きやがって……
捻り潰すまで!!」
掛け声と共に、小十郎と綱元の後ろから多数の兵団が現れた。それに驚いた才蔵達は後ろへ引き、武器に手をかざし構えた。
「多勢に無勢だのう」
「言ったろ?どうにも何ねぇって」
迫りくる兵団……
「退がれ!!来るぞ!!」
「これ以上退がれない!!」
(どうする?!もう後はねぇ!!)
(琵琶湖なら、アイツがいるはず……
アイツが!)
「これほどの頭数で来るとはのう……
兼続が泥鰌と揶揄しておったが、あながち外れてはおらんな。
肝が小さい」
ニヤつく幸村……
その表情にキレた政宗……
「真田、幸村!!」
“ドーン”
突然空から降ってきた砲弾……
弾は兵団の中心部に落ち、爆発した。
「ギャア!!」
(砲弾!!まさか)
何かに気付いたのか、明日花は六郎から離れ琵琶湖の浅瀬へ入り、何かを探した。するとそこへ一隻の船が上陸した。
「俺様の縄張りで、何してんだオメーら」