BRAVE10   作:花札

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才蔵から逃れ、とある社へやってきたアナスタシア……


「揃ったか……」


階段に座っていた半蔵が、立ち上がり階段を下りた。


「皆、お久しぶりですね」

「我等が集まったということは……」

「時が来た。


世は大きく動こうとしています。

徳川と豊臣……

そう遠くはない未来、この二つはぶつかるでしょう」

「そして、どちらかが天下を取る」

「表向きはな……

誰が天下を手にしようが、裏から支配するのは我等……」

「無論だ」

「ですが、そのためにはどうしても、やっておかなければならないことがあるのです……

どうしても、殺っておかなければ……あの者達を」


異形五人衆

翌朝……

 

 

六郎の看病をする才蔵……

 

 

額に置いていた布を退かし、手を当てると昨夜より熱は引いており、六郎の状態も安定している様だった。

 

 

一息ついていると、そこへ茶を持ってきた幸村が部屋へ入ってきた。

 

 

「六郎はどうだ?」

 

「熱は下がったから、そのうち目ぇ覚ますだろ」

 

「うむ……ご苦労。

 

どうだ?一服せんか?」

 

「おう、悪ぃな」

 

「味は保証せんぞ」

 

「オッサンが淹れたのかよ!?」

 

「……茶入れ名人が、おらんのでな……」

 

 

煙管を銜えながら、背を向ける幸村……

 

才蔵は黙って、湯呑みを持ち茶を飲んだ。

 

 

才蔵の予想通り、茶は苦かった。

 

 

「(不味……)

 

 

オッサン……」

 

「ん?」

 

「昨日、海賊のオッサンから聞いた明日花の力……」

 

「……」

 

 

 

 

昨夜……

 

 

伊佐那海を連れて帰ってきた才蔵は、幸村の部屋へ行きまだ残っていた甚八を見た。

 

 

「お前が知りたがってたことは教えた。

 

オッサン、今度はアンタの番だ」

 

 

そう言われた甚八は、煙草を取り出し口に銜え一息吐き、口を開いた。

 

 

「二年前……

 

明日花が俺様の船に乗ってから間もない頃……

 

 

ある島で、船の修理をしてた時だった……

 

 

明日花は、材料集めに他の仲間と一緒に、森の中へ行った。

 

しばらくして、一人の仲間が血相を掻いて森から逃げてきた。

 

そいつに訊くと、山賊の集団が襲ってきたと。それも二つ。

 

他の仲間が、戦っていたが戦いに集中しすぎて、明日花を人質に取られたって……

 

 

その話を聞いた直後、突然森の中から白い爆発が起きた。一瞬何が起きたか分からなかったが、逃げてきた仲間が爆発した場所が、ちょうど明日花達がいる場所だって、叫んだ……

 

 

爆発が収まり、急いで駆け付けると……

 

そこに、傷を負った仲間と息を荒げてそこに座り込み体を震え上がらせていた明日花がいた……」

 

「その状態……

 

あの時と同じ」

 

「仲間の一人が、明日花のもとへ駆けつけようとした時だった。

 

突然、地面から木の根が生え仲間を攻撃し、近寄った仲間はそのまま吹っ飛ばされた。

 

 

明日花を見ると、首から下げていた勾玉が白く光っていた。

 

俺様は、傷を負った仲間を船に連れて行くよう他の仲間に指示して、明日花に近付いた。

 

さっきの仲間同様、木の根は容赦なく俺様に攻撃した。

 

 

攻撃が怯んだ隙を狙い、明日花に電撃を喰らわせた。

 

喰らったせいで、明日花は気を失いそれと同時に、木の根は地面の中へと消えた。

 

 

しばらくして、明日花は何とか意識を取り戻した。そして聞いた。

 

『何で、仲間に攻撃した』って……

 

そしたら、アイツなんて答えたと思う?」

 

「……

 

何を…言ったんだ?」

 

「……『自分に近付いてきた者全てが、紫苑を殺した敵に見えた』」

 

「……まさか、佐助を刺したのは」

 

「恐らくな。

 

正直、また見るとは思わなかったぜ」

 

 

そう言いながら、甚八は幸村の部屋を出て行った。

 

 

 

 

昨夜の話を思い出す、才蔵……

 

 

「……

 

 

そういや、伊佐那海と明日花は?」

 

「伊佐那海は町へ行っておる。

 

明日花は、甚八と一緒だ。

 

 

城の中に籠ってばかりでは、気も滅入ろう……

 

伊佐那海には筧と佐助が一緒におるから、大丈夫だ」

 

 

「幸村様、失礼いたします」

 

 

襖を開ける、一人の侍女が頭を下げて言った。

 

 

「お客様がお見えです」

 

「客ぅ?」

 

 

侍女に言われ、案内された部屋へ行き文句を言いながら、襖を開けた。

 

 

「騒がしいぞ!!幸村」

 

「お邪魔しております」

 

 

そこにいたのは、茶会で会った兼続と三成であった……

 

 

「三成!!兼続!!なんで、お前らがここにおるのだ!?」

 

 

大声を上げる幸村に、三成は口に指を当てて静かにするよう言った。

 

 

「騒ぐなと言っただろ!!

 

 

京では何も話せなかったし、いくら手紙を出しても返事はないしで……

 

ならいっそ、ここで話した方が、早いと思ってな」

 

「会津と佐和山の中間地点ですし、この上田は辺鄙で守りも堅い……

 

密会には好都合です」

 

「辺鄙だと!?どこがだ!!」

 

「誉め言葉ですよ?」

 

「まぁまぁ、事実だからいいだろう」

 

「何を!?

 

お前ら、馬鹿にしに来たんなら帰れ!!」

 

「何を怒っているのです?」

 

 

(騒がしい、密会だな)

 

 

そんな三人の会話を、才蔵は天井裏からこっそり聞いていた。

 

 

「(兼続に、口では敵わん……)

 

 

で?

 

儂に何の用だ?」

 

 

 

 

川で釣りをする甚八……

 

その近くの岩に腰掛け、ぼんやりとしている明日花……

 

そんな明日花を心配し鳴く、コノハ……

 

彼女の様子に、甚八のそばで寝ていたヴェロニカが、起き上がった。ゆっくりと明日花に近付き、獲物を捕らえたかのように飛び乗った。

 

飛び乗ったと同時に、明日花は岩の向こうへ倒れ込んでしまった。そんな明日花を、ヴェロニカは容赦なく顔を舐めた。

 

 

「や、止めろって!!止めろ!ヴェロニカ!!くすぐったい!!止めろって!!」

 

「その顔をして欲しいとさ」

 

「え?」

 

 

ヴェロニカの顔を退かしながら、体を起こす明日花に甚八はそう言った。その言葉に明日花は、ヴェロニカの方を見た。ヴェロニカは甚八の言葉に頷き、頬を一舐めた。明日花の頭に乗っていたコノハも肩へ降りてきて、頬を舐めた。

 

 

「あの話聞いてからのお前、ずっと落ち込んでただろ?その気持ちがヴェロニカとコノハには分かって、いつまでもそんな顔してねぇで、さっさと笑えとさ」

 

「……」

 

「いつまでも落ち込むな。

 

そんな顔、紫苑は求めちゃいないと思うぜ」

 

「……

 

だって」

 

「少しは、気を緩めてみろ。

 

その辺に横になって、何にも考えず空でも眺めてろ」

 

「……」

 

「気が楽になるぜ」

 

 

甚八の言う通りに、明日花は座ったまま空を見上げた。その行為に安心したのか、ヴェロニカは甚八の所へ戻り、横になった。

 

 

 

同じ頃……

 

 

見晴らしのいい丘の上で、休む伊佐那海……

 

そこへ、お菓子を詰めた籠を手に、十蔵がやってきた。

 

 

「伊佐那海!見ろ!

 

美味そうだろ?」

 

 

いつもなら、喜ぶ伊佐那海……

 

だが、伊佐那海は顔色一つ変えず、十蔵を見上げた。

 

 

「……今、ご飯食べた」

 

「あ……

 

では、茶でも飲むか?」

 

「ううん…」

 

「……」

 

 

『よいか。

 

伊佐那海を悲しませてはならん。

 

特別に扱わず、普通に接してやってくれ』

 

 

幸村から言われたことに、十蔵は戸惑っていた。

 

 

(普通って、どんなであったっけ!?)

 

 

戸惑いながら、目に入った佐助に助けを求めた。佐助は戸惑い、息を整え伊佐那海に話しかけた。

 

 

「伊佐那海、森行く?

 

鹿の子生まれた。可愛い」

 

「……

 

ううん、いい」

 

 

佐助に答えながら、伊佐那海は立ち上がり二人を見た。

 

 

「二人共、先帰ってていいよ?」

 

「え……でも」

 

「ちょっと、一人でフラフラしたいんだ……

 

その辺を、一周したら帰るから、心配しないで」

 

 

二人に言いながら、伊佐那海は二人から離れて行った。

 

 

(何か……皆と一緒に居辛い……)

 

 

歩いていると、二匹の蝶が目に入った。飛んでいく蝶の美しさに惹かれた伊佐那海はその蝶を追いかけて行った。

 

そんな伊佐那海を見る十蔵と佐助……

 

 

「ああしておると、普通の娘なのだが……

 

 

(明日花は、どうしておるのか……甚八はちゃんと普通に接しているのであろうか……)」

 

「……伊佐那海?」

 

 

蝶を追い駆ける伊佐那海……

 

二匹しかいなかったと思いきや、蝶はどんどん数を増やしていった。

 

その中へと入って行く伊佐那海……

 

 

その時、嫌な気配を感じたのか、佐助は蝶の大群の中へと行く伊佐那海を追い駆けた。

 

 

追い付こうとした時、伊佐那海を囲っていた蝶が一斉に上へ飛び立った。伊佐那海に近付こうとする十蔵と佐助だが、蝶がその動きを阻止するかのように、二人を囲った。

 

 

蝶に驚いていた伊佐那海の体に何かが絡まり、そのままどこかへと引き釣り込まれてしまった。

 

 

「伊佐那海!!」

 

 

「フフフフフ……

 

かかった虫が三匹……」

 

 

その声が聞こえると、群がっていた蝶が姿を消し、異様な気配を感じた佐助と十蔵は声がした方に顔を向けた。

 

 

そこには、人一人乗せられるほどの巨大蜘蛛を背に、不敵な笑みを溢す女が一人……

 

木と木の間に貼られている蜘蛛の巣に、まるで獲物を捕らえられたかのようにして、拘束されてしまった伊佐那海がいた。

 

 

「会いまみえるのを、楽しみにしておりましたわ。

 

もう濡れるくらい」

 

「何者!!」

 

「伊賀異形五人衆が一人、蟲使いの灰桜……

 

お初にお目にかかります」




上田城……

幸村に会いに来た、三成と兼続……


「家康の専横は、いよいよ目に余る!

そうは思わんか、幸村!


あの京での茶会も、まるで己が将軍であるかのような立ち振る舞い。

あの古狸……

何とか排除せねばなるまい……」

「我が上杉も何かと、因縁をつけられ煩わしいこと、この上もありません。

たかだか、領内に築城したくらいで、上杉に謀反の動き有などと騒ぎ立て……

己の野心を棚に上げた、破廉恥ぶりには呆れるばかり。


一度、奴の所業を書き連ねた手紙を突き付けてやろうと思うのですが、二・三丈では収まらぬ……長巻物になりそうで困っております」


そう言いながら、幸村に怪しげな笑みを溢す兼続……


(……儂なら、そんなもの絶対に貰いたくないのう……)

「私は佐和山で、密かに兵を募っておる。同志も多い。

上杉家も共に戦う所存です」

「血気盛んだな」

「私は……

豊臣家が、衰えるのだけはどうしても許せない。


太閤が残した者を……私は守らねばならない」

「しかし、あの狸は人をたらし込むことに達者だ。

勝算があるから、チョロチョロ出て行くのであろう……無暗に動けばそれこそ、奴の思うつぼだ」

「……


世を覆すような、大きな力があれば」


三成の口から出たその言葉に、反応する幸村……


「大きすぎる力は災いしか呼ばん……

そんなものを、望むものではない」

「しかし…」


「随分面白い話をされてますね?」


その声に、幸村達は驚き顔を向けた。


「どうも、こんにちは」


そこにいたのは、障子に手を掛けて立ち半蔵だった。


半蔵の声に、天井裏に隠れていた才蔵は飛び降り、幸村達の前に立ち武器を構えた。


「下がってろ!!オッサン達!!

(完全に、気配を断っていた)」

「クッ……ククククッ」


不気味な笑い声……

その声を聴いた才蔵は、驚きの顔を隠せないでいた。


(こいつは……)

「そちらのお歴々には、用は無いんですよ……」

(服部半蔵!!)

「俺の目的は、勇士を皆殺しにすること。

特に君は、惨殺決定ですか」
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