「?」
明日から上田で住むけど、明日花は平気?
「平気!
明日花、母さんと一緒にいられるなら、どこでもいい!」
明日花はいい子だね。それでこそ、母さんの子だ。
「ヒヒ!
?母さん、どこ?母さん」
明日花……
「母……さん?」
あなたは生きなさい……
「!!」
いつの間にか寝ていたのか、明日花は目を開け辺りを見回した。指で目を擦りながらふと、隣にいる伊佐那海を見た。伊佐那海は明日花の手を握りながら眠っていた。手を見ると、痣は少し薄くなっており、奇魂から出ていた黒いオーラが消えていた。
(……二人して寝てたのか)
『明日花』
夢に出てきた母の姿を、明日花はもう一度思い出した。思い出しながら、髪に着けていた簪を手に取り、それを眺めた。眺めていると、視界がブレいつの間にか涙が眼に溜まっていた。
「明日花ちゃん?」
起きた伊佐那海の声に驚いた明日花は、慌てて眼に溜まっていた涙を拭きとった。その様子を見かけた伊佐那海は、明日花の顔を覗き込むようにして話しかけた。
「明日花ちゃん、泣いてた?」
「違う。目にゴミが入っただけ」
「……」
「そろそろ行こう。
この道を歩いていけば出口だからさ」
「うん!」
伊佐那海は明日花の手を握り立ち上がった。明日花は岩と岩の間に差していた松明を手に取り、再び洞窟を歩きだした。
しばらく歩いていくと、向こうの方から日の光が差し込んできた。伊佐那海は明日花の手を引っ張り駆け出した。徐々に光は大きくなり、その穴を飛び出ると真ん前に水が流れ出ている場所に出てきた。
「わぁ……凄い」
「滝の洞窟だったのか……」
「もう、外なんだよね?」
「そうだ。あとはこの道を降りていけば……!
隠れて!」
伊佐那海の手を引っ張り、明日花はもう一度洞窟の中に入り身を隠した。伊佐那海は訳が分からなく、声を出そうとした途端明日花に手で口を塞がれてしまい明日花を見た。明日花は顔の前に指を持っていき、静かにしろと伊佐那海に指示した。
「ここなのか?兄貴」
「この辺りに出てくるはずだ。間違いない」
聞き覚えのある声に、伊佐那海は震えあがり明日花の手を握った。明日花は伊佐那海の耳に顔を近付けさせ砕牙達に聞こえないように囁いた。
「反対側に道がある。そこを駆け抜けて森に入ったら、真っ直ぐ走れ。後ろ振り向かずに。いいな?上手くすれば、才蔵達に出くわせる」
「バァハ!明日花ちゃんはどうするの?」
「あいつ等と戦う」
「そんなことしたら、明日花ちゃん」
「アンタは、才蔵の傍にいろ」
「けど……」
「早く行って。時間がない」
明日花は両手に巻いていた包帯を取り、伊佐那海に早く行けと指を反対側の道へ指した。伊佐那海は、目に涙をためて後ろを振り返り、反対の道へと駆けて行った。伊佐那海を見届けた明日花は、腰に着けていたケースから、鉄扇を取り出した。
「どっこにもいねぇじゃねぇか」
「いや……そうでもねぇみてぇだな?」
「え?」
砕牙が向いている方に鋼牙は体を向けた。そこには両手に鉄扇を持った明日花の姿があった。
「あの女はどうした」
「あんな役に立たない奴は、もう殺した」
「殺したか……
普通じゃねぇな?お前」
「普通じゃなくて結構。
それより、アンタ達はこの私が殺すからな」
「ハハハハハハ!!
何言ってんだ?お前。
武器も持ってねぇ奴に、俺等なんか倒せるかって」
「アンタの目は節穴?武器なら、持ってる」
そう言うと、明日花は手に持っていた鉄扇を広げ構えた。それを見た鋼牙は腹を抱え大笑いをしながら、明日花を切ろうと鞘から二本の刀を抜き出し振り落した。だが振り落された刀を、明日花は鉄扇で振り払い、それと同時に地面から木の根が生え鋼牙の体に巻き付き動きを封じた。
「何だ?!これ!」
「木の根。アンタはそこで大人しくしてろ。」
「このガキ」
「鋼牙!大人しくしてろ」
「何言ってんだ!兄貴!」
「あの技使うから、合図するまでその木の根でも燃やしてろ。
それにこいつには借りがあるからな?」
大剣を明日花に振り下ろし攻撃を始めた砕牙……
その大剣を明日花は、手に持っていた鉄扇で振り払いそして押さえた。
「槍だけでなく、鉄扇まで使えるとはな……」
「光坂一族を甘く見るな。」
「なるほどな……
土術岩石砲」
手から出てきた岩を明日花の頭に投げぶつけた。岩をぶつけられた明日花は、頭から血を流し後ろへ引いた。
「頭に岩を喰らっても、倒れないとは鍛え方が違うみてぇだな?」
「倒れると、立ち上がれなくなりそうなんでね…」
「じゃあ、俺等の取って置きの見せてやろうじゃねぇか?」
「俺ら?」
「よしっ!燃え尽きた!」
「鋼牙、やるぞ」
「了解!
火術線香針」
「土術砂吹雪」
砂が舞い上がり、明日花の目に入り視界を防ぐとそこへ火の点いた針が飛んできて、そして……
“ドーン”
「!?
何だ、今の音」
何かが爆発した音に驚いた才蔵は、足を止め空を見た。空には爆音に驚いてか無数の鳥が逃げてきた。すると前の茂みから物音がし、才蔵と十蔵はすぐに武器に手を添え構えた。
茂みから出てきたのは、目に涙を溜めた伊佐那海だった。
「才……蔵?」
「伊佐那海!」
「才蔵!!」
才蔵の姿を見るなり、伊佐那海は才蔵に飛びついた。伊佐那海の姿に驚いた十蔵は伊佐那海に駆け寄った。
「無事でよかった」
「おい、明日花は?明日花はどうした?!」
「た、滝壺で……あの山賊達と戦ってるの!」
「?!」
「筧さん、確かアイツ武器を」
「持ってはおらん」
十蔵は手に持っていた槍を才蔵に見せた。才蔵は十蔵に伊佐那海を渡し、前にいたコノハを横切り滝壺の方へ駆けて行った。その後はコノハ追いかけて行った。
「才蔵!!」
「伊佐那海、行くぞ。走れるか?」
「うん!」
十蔵に手を引かれた伊佐那海は、才蔵の後を追いかけて行った。
爆発した滝壺では、煙が充満しており鋼牙は煙で咽ながら、目に入った砂を出そうと目を擦った。
「おいおい、逝っちゃった?あのガキ?」
「さぁな……
見えてきたぜ?」
砕牙の言う通り煙が晴れてきた。爆発がした場所は地面が少し凹み、そこに気を失っているのか明日花の姿があった。
「あれれ?マジで、死んだか?」
「気絶してるだけだろ?」
そう言うと、砕牙は明日花に近づき明日花の頭を足で軽く蹴った。明日花はピクリとも動かず、蹴られた頭がただ揺れているだけだった。
「目ぇ覚めねぇぞ?」
「手の掛かるガキだ。こっちはまだ遊びたりねぇのによ」
服を握り、明日花の体を持ち上げようとした途端、地面から突如木の根が生え砕牙の腕を貫いた。突然の攻撃に驚いた砕牙は、明日花の服を離し貫かれた腕を抑えながら彼女から離れた。
「兄貴!」
「どうなってんだ。ガキは完全に気を失ってるはずなのに……」
「明日花!!」
向こう側にある森から、明日花の名を呼びながら才蔵がに抜け出てきた。その声に反応してか、明日花は目を覚まし頭を押さえながら起き上った。
「才…蔵?」
「明日花!!」
「明日花ちゃん!!」
「十蔵……伊佐那海」
「けっ!
援軍ってか?仲間の?」
「こりゃあ、面白い……
全員皆殺しだ」
「やれるもんならやってみな?」
「明日花!!受け取れ!!」
十蔵の声に気付いた明日花は、十蔵の方に目を向けると、十蔵は手に持っていた槍を明日花に投げた。明日花は十蔵が投げてきた槍を受け取り手に持っていた鉄扇を腰に着けていたケースにしまい、そして槍を構えた。それと同時に才蔵がこちらへ来て、明日花の隣に立った。
「強がってたわりには、ボロボロじゃねぇか?その上ピンチみてぇだし」
「何もできないアンタよりはマシでしょ?」
「口だけは達者だな?」
「達者で結構。
で?何で、こっちに来たの?あっちにいれば安全なのに……」
「決まってんだろ?さっきの仕返しだ」
「……
アンタは火術使いの方を。私は土術使いをやる。」
「何だ?頼ってくれるのか?」
「いいや。アンタがどれだけの実力者か、見たいんでね。」
そう言うと、明日花は腰に提げていた狐の面を手に取り顔に着けた。
「面着ける意味あんのか?」
「光坂流の戦い方だ」
「そうか」
「ごちゃごちゃ言ってねぇで、とっとと始めるぞ!」