BRAVE10   作:花札

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太陽が完全に欠け、辺り一面夜の様な暗さになった。


「よ、夜?」


異常な暗さに怯える灰桜……


佐助が上を見上げると、そこに簪を取り、宙を浮く伊佐那海の姿……


「い、伊佐那海?」

『……

私は……全てを覆す者』


闇の慟哭

闇に包まれ、地へ降り立つ伊佐那海……

 

 

「な、何ですの?」

 

 

異様な気配を放つ伊佐那海の姿に、恐怖を感じる灰桜……

 

 

「伊佐那海?」

 

『フ……

 

 

フフフフフ……』

 

 

不敵な笑みを溢す伊佐那海……

 

その恐怖に耐えきれなくなった灰桜は、クナイを取り出し伊佐那海に投げつけた。

 

 

すると、伊佐那海を包む闇がクナイを闇の中へと入れ、塵の様に消し去った。

 

 

「こ、これは……」

 

『闇の深淵へ、還れ』

 

 

攻撃してきた灰桜に向かって、闇を放つ伊佐那海……

 

闇は灰桜どころか、その場にいた佐助や十蔵、灰桜が出した蟲達までも、闇の中へと入れ込んだ。

 

 

 

 

辺りが暗くなったのを機に、戦いの手を止める才蔵と半蔵……

 

 

半蔵は、上を見上げ欠けた太陽を見た。

 

 

「これは、予想外」

 

「この感じ……まさか」

 

「早くも、この目であれを見る時がこようとは……

 

ならば、もう一つも復活させましょう」

 

 

不敵に笑みを溢す半蔵に、才蔵はクナイを投げつけた。

 

半蔵はそのクナイを避け、鳥居から飛び降り森の方へ入って行った。

 

 

その後を追う才蔵だが、半蔵との差は見る見る内に開いて行った。

 

 

(この暗闇の中で、何て速さだ!!)

 

『もう……嫌なの……』

 

 

思い出す昨晩の泣きながら、必死に訴える伊佐那海の顔……

 

 

『皆に、迷惑かける』

 

「上っっ等だ!!(今から行くから、泣くなよ伊佐那海!!)

 

 

 

 

丁度その頃、幸村の城で眠っていた六郎が、異様な気配で目を覚まし、まだ動かない体を無理矢理起こし外を見た。

 

外を見ると、障子に寄りかかり外を見る幸村の姿が目に入った。

 

 

「……若」

 

「六郎!

 

まだ、起きてはならん!」

 

「このままでは……

 

 

上田が……危険……です…

 

 

禍々しい気に……満ち溢れている……

 

飲み込まれる前に、手を打たねば……」

 

 

立ち上がろうとしたが、足に力が入らず倒れ込む六郎を、六郎の傍へ駆け寄った幸村は慌てて支えた。

 

 

「無理をするな!まだ体が動かぬだろう」

 

「……

 

 

主の手を、煩わせるなど……小姓の名折れ……

 

 

しかし行かなければ……」

 

 

幸村の体を手に掛けながら、立ち上がろうとする六郎……

 

 

すると幸村は、そんな六郎を支え立ち、部屋を出た。

 

 

「急ごう」

 

「……有り難く存じます」

 

 

 

 

闇に包まれた森で、いつの間にか気を失っていた佐助が目を覚まし、辺りを見回した。

 

それと共に、十蔵も目を覚まし辺りを見回した。

 

 

見回すと、そこにいるはずの灰桜の姿はどこにもなかった。

 

 

「蟲……

 

女忍、消失……」

 

「某等はなぜ、無事なのだ?」

 

 

その言葉に反応したのか、佐助の手に持っていた者が突然温かくなり、彼はそれに目を向けた。

 

 

「奇魂?(まさか……)」

 

(これに守られた!?)

(これに守られた!?)

 

「しかし、奇魂を手放してしまった伊佐那海は!?」

 

 

目の前にある黒い繭の様な球を見る十蔵……

 

魂の中からは、獣のような唸り声が響き渡っていた。

 

 

「まるで……地の底で獣が、呻く様な……

 

肌が、粟立つ……」

 

 

黒い繭を見つめる佐助……

 

 

その中では、伊佐那海がまるで一人泣いているように見えた。

 

 

(伊佐那海……泣いている……)

 

『佐助……筧さん……』

 

(我の力、足りぬ所為で……)

「伊ぃ佐ぁ那ぁ海ぃ!!」

 

 

その叫び声と共に、地を揺らすよう駆けてくる清海と弁丸がやってきた。

 

 

「伊佐那海は!?」

「お姉ちゃんは!?」

 

 

その質問に、佐助は黒い繭を指差した。

 

 

「あ、あの中に…」

 

「何ぃ!?

 

 

拙僧が助け出してやる!!」

 

「あっ、オッチャン!!」

 

「待っておれよ!!伊佐那海!!」

 

「よせ!!迂闊に近付いては……」

「拙僧に、壊せぬものはない!!」

 

 

十蔵の忠告も聞かず、清海は黒い繭へ近付きそれに力強く殴った。その瞬間、力がまるで闇に吸収されたかのように、拳の力が抜け清海は佐助達の所まで吹っ飛ばされてしまった。

 

 

「清海のオッチャン!!」

 

「何と頑丈な!!」

 

「あれを刺激してはならん!!

 

何が起きるのか、分からんのだぞ!!」

 

「しかし、伊佐那海が!」

 

「筧の言う通りだ……

 

落ち着け、清海」

 

 

そこへ、六郎と共に駆けつけた幸村が現れた。同時に森から駆け抜けてきた明日花が到着し、息を切らしながら黒い繭を見た。

 

 

「幸村様!!」

 

「六郎も!!」

 

「明日花!!」

 

「……

 

 

これだ」

 

「え?」

 

「出雲の地下で見たの、これだ……この状況だ」

 

「!?」

 

「まさかお主、予言を!?」

 

「分からない……

 

ただ一緒なんだ……

 

 

太陽が欠け、辺りが一面闇に包まれた時、その中心部に黒い繭が現れ、その中に伊邪那美命が……」

 

「何だぁ!?

 

何でテメェら、集まってやがる!?」

 

「おーい、何で急に夜になっちまったのか、誰か説明してくれよ」

 

 

続々と集まる仲間……

 

幸村は、それに安堵の顔を浮かべた。

 

 

「皆、健在であったか!」

 

「全っ然、健やかじゃねぇんだよ!!

 

あんの野郎、半端なまんま逃げ腐りやがって!!」

 

「甚八がアナを?」

 

「ああ、御覧の通りだ。

 

とんだ、初顔合わせだったぜ。

 

しばらくは、起き上がれねぇだろ」

 

 

甚八に抱かれるアナスタシアを見る幸村……

 

 

その中、明日花はずっと黒い繭を眺め、その距離を少しずつ縮めて行った。

 

近付いた繭へ、明日花はそっと手を触れさせた。すると繭は、まるで明日花を受け入れるかの様に、すんなりとその中へ手を入れさせた。

 

 

(……何で)

 

 

その時、服の中にしまっていた幸魂から、温かさを感じた明日花は取り出し幸魂を見た。

 

 

幸魂は、出雲へ行く途中で伊佐那海のあの力を見た時と同様に、白く光っていた。

 

 

 

 

「申し訳なし!!」

 

 

幸村に土下座する佐助……

 

 

「伊佐那海、守れず!!悲しませ……」

 

「伊賀異形衆、灰桜となる者に襲われ……

 

捕らえられた伊佐那海が、簪を打ち捨ててしまい……

 

 

全ては、注意を怠った某の責任!!

 

面目次第もありませぬ!!」

 

 

頭を下げる十蔵……

 

 

「いや……お主等が無事で何より……

 

奇魂と幸魂、我等が守」

「奇魂はいただきましょうか?それと幸魂も」

 

 

その声と共に、十蔵の頭上に着地し、十蔵を倒す半蔵……

 

十蔵は足を踏み台にされそのまま、倒れてしまいその十蔵を軸に、半蔵は佐助に蹴りを入れ奇魂を奪い取った。

 

そんな半蔵目掛けて、数本のクナイが飛んできたが、半蔵は難なくその攻撃を避けた。そして黒い繭の傍にいた明日花を薙ぎ倒し。倒れた彼女が起き上がろうとした時、刀を取り出し明日花の腹を貫き刺し、地面へ刺し動けなくした。

 

 

「がはっ!!」

 

「明日花!!」

 

 

そこへ、半蔵にクナイを投げた才蔵が到着し、皆の前に着地した。

 

 

「おやおや……

 

侮っていました、あなた達(勇士)の力を」

 

「儂も、まさかこんな状況で、勇士が揃うとは思っておらなんだわ」

 

「十人揃っているとはね……しかも、その十人を支える勇士もいるなんて……

 

俺以外の異形衆が、全てやられたようですね?」

 

「今、この場の十人……

 

そして、お主の足元にいる一人……

 

幸か不幸か……」

 

「『幸』ですよ!喜んでおきなさい!

 

もう二度と、十人揃うことはありませんから……

 

 

あなたが持っているその幸魂が、皆を引き付けたのでしょうか?この『闇』を消し去るために」

 

 

刺した刀の束を足で踏みながら、そこに倒れる明日花に言う半蔵……

 

そんな半蔵を睨む明日花だったが、刺された箇所から走る激痛に苦しみ、息を切らしていた。

 

 

「服部半蔵!!

 

幸魂と簪を……奇魂を返しやがれ!!」

 

 

半蔵に剣を振り下ろす才蔵……

 

半蔵は、もう一本持っていた刀を抜き、その剣の攻撃を防いだ。

 

 

「君は何を聞いていたんですか?

 

どうしてもあれ(闇)が欲しいんですよ!

 

それを制御する奇魂と幸魂も必要でしょ!

 

 

それに、これ以上攻撃するというなら、この子(明日花)の命ありませんよ?」

 

 

そう言いながら、刀の束を踏みつけ、さらに明日花の腹を深く刺す半蔵……

 

 

「あぁぁあああ!!」

 

「明日花!!」

 

「あの野郎!!よくも俺様の、仲間(右腕)を!!」

 

 

苦しむ明日花に、攻撃の手を止める才蔵……

 

 

「ハァ……ハァ……

 

 

攻撃の手……止めるな……才蔵」

 

「!?」

 

 

弱り切った声で、才蔵に訴える明日花……

 

明日花は、弱り切っているが強い眼差しで才蔵を見た。

 

 

「アンタは……『光』の……勇士……なんだろ?

 

だったら……速く……このくそ野郎を……!!」

 

 

喋っている最中に、明日花の腹に刺さった刀の束を強く踏む半蔵……

 

 

「さっきからお喋りが過ぎますよ?」

 

「アンタに……その『闇』は……使え熟せない」

 

「!!」

 

 

その言葉が癇に障ったのか、半蔵は明日花の腕にクナイを投げ刺した。

 

 

「お喋りが、過ぎると言っているでしょう?」

 

「ハァ…ハァ…ハァ…」

 

「大人を、余りからかわない様に、しましょうね?」

 

「……

 

(これじゃあ、あの時と変わらない!!

 

 

何も変わってないって言うの!?

 

自分の身を守るために、強くなってきた……

 

強くなって、いつかアイツの隣を歩きたかった……

 

 

今まで、そう思って生きてきた……

 

 

けど、今は……

 

今は)」

 

 

次第に、力が無くなり目が虚ろになっていく明日花……

 

目に映るのは、幸村に才蔵や佐助、六郎、鎌之介、清海、弁丸、アナスタシア、甚八、そして伊佐那海……

 

 

(皆を……皆を守りたい!!

 

 

こんな所で、死にたくない……死んでたまるか!!)

 

『簪を取りなさい』

 

 

どこからか聞こえる、懐かしき母の声……

 

明日花は、その声に耳を傾けた。

 

 

(母さん?)

 

『その簪には、伊賀でも甲賀でも効く毒が仕込まれています。』

 

(毒……)

 

『それを手に取り、刺しなさい。明日花』

 

 

その声と共に、明日花はまだ動く右手で、髪に着けていた簪を取り、半蔵の足を刺した。刺された途端、半蔵は目の前がぐら付き明日花の腹に差していた刀の束から、足を離した。

 

その隙に、明日花は腹と左腕に刺さっていたクナイと刀を抜き取り、半蔵から離れた。

 

 

(な、何だ?!

 

まさか、あのガキ!!)

 

「ハァ…ハァ…」

 

「佐助!!明日花を!!」

 

 

幸村の指示に、佐助はすぐに明日花の元へ駆けつけ、動けなくなった明日花を抱き上げ、皆がいる場所へ連れて行った。

 

 

「明日花、大丈夫!?」

 

「ハァ……ハァ……

 

何とか……」

 

「アイツ、何でいきなり苦しみだしたんだ?」

 

「毒だよ……」

 

「毒?」

 

「伊賀にも甲賀にも効く、特殊な毒。

 

その毒の態勢を持っているのは、光坂一族者だけだ」

 

 

息を切らし、腹に出来た刺し傷を押さえながら説明する明日花は、痛みと多くの血を流した後遺でその場に蹲り激しく咳き込んだ。




明日花が居なくなったのを隙に、才蔵は半蔵に攻撃をした。

その攻撃を刀で防ぐ半蔵の後ろから、鉄棍棒を振り上げてきた清海が攻撃した。


振り下ろしたが、そこに半蔵の姿は無いと思いきや、清海の首に半蔵の手が回り、半蔵は膝蹴りを清海の頭へ喰らわせた。


「清海のオッチャン!!」


意識が吹っ飛び、倒れる清海に近付こうとした弁丸に、才蔵は剣を向けその行為を止めた。


「下がってろ、ガキ(弁丸)!!」

「ここは、俺だろ!!」


弁丸の後ろから出てきて、才蔵の隣へ立つ鎌之介……


「鎌之介!」

「任せとけ!」

「俺が……この世を変える……


腰抜け勇士が、束んなったって負けねぇんですよ」
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