BRAVE10   作:花札

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―――――才蔵…俺、生涯仕えられる主に出会ったんだ。

アイツは、喜んでそう言った。俺は素直に喜んだ。

アイツは伊賀の誇りであり、俺のたった一人の親友だった。


だが、アイツは主を守ったために、死んだ……


その主は、アイツをごみのように扱い、そしてアイツを川へ捨てた。


結局、忍は道具として扱われ、使えなくなったら捨てられるのか……


だったら、俺は生きるために殺す。誰にも期待せず……


―――――任せたぞ、才蔵

―――――才蔵!

―――――才蔵、お前必要


うるせぇ……人の名前、気安く呼びやがって……


死闘

「無事か?!才蔵!!」

 

 

その声で意識が戻った才蔵は、目を覚まし声のする方に顔を向けた。才蔵の名を呼んでいたのは、橋から駆け下りてきた十蔵だった。

 

 

「うるせぇな……

 

人の名前、何度も連呼しやがって」

 

「?某はまだ、一回だけしか呼んどらんぞ?」

 

「夢でも見てたんじゃないの?」

 

 

十蔵の後を追ってきた明日花は、そう言いながら才蔵の手を取り川から引き揚げた。才蔵は体をあちこち押さえながら立ち上がった。

 

 

「クソ。体中あちこち痛ぇ……」

 

「あの高さから落ちて、その程度の傷で済んだとは……」

 

「某は、てっきり死んだかと……」

 

「……伊佐那海は?」

 

 

周りを見ながら、才蔵は十蔵と明日花に質問した。十蔵は申し訳なさそうな顔を浮かべて、才蔵に頭を下げた。

 

 

「連れ去られてしまった。すまん!」

 

「アイツが、橋を壊したせいで追いかけることができなかったんだ……」

 

「筧さんと明日花のせいじゃねぇ。

 

技を見抜けなかった俺にも責任がある。」

 

「だったら、アイツの技を忘れてた私にも責任がある。」

 

「そういや……

 

お前、以前にアイツに会ったことがあるみてぇだが?」

 

「上田に来る途中で、この山道を通った時に。

 

そん時は母さんが勝ったけど……」

 

「そうだったのか…」

 

「風の技に関しては、母さん凄い苦戦してたのは覚えてる……」

 

「確かに……

 

当たった箇所が未だに痛む。おそらく肋が二、三本はやられた。」

 

「とんだ山賊だな……」

 

「ほざいてる暇があるなら、早く伊佐那海を助けに行くよ。」

 

「そうだな。」

 

 

明日花の言葉に答えながら、才蔵達は鎌之介を探しに行った。

 

 

 

 

その頃、伊佐那海は鎌之介に連れて来られた崖の上にいた。

 

 

「痛い!痛い!

 

解きなさいよ!このバカ!」

 

 

逃げられぬ様に、鎌之介は伊佐那海をロープで強く締められていた。

 

 

「黙れ!くそ女!

 

その足切り落とすぞ!」

 

「どうしてこんなことするの?!

 

アタシの簪目当てなんでしょ?だったら」

「簪は、もういらねぇ……」

 

「え…

 

じゃあ、何で?」

 

「面白い玩具があるからだ。」

 

「お、玩具?」

 

「あの忍、妙にお前をかばうじゃねぇか?

 

おそらく、アイツはお前を奪い返しに来る。

 

 

アイツの前で、お前を殺せば……

 

 

どんな顔をするか……

 

 

今まで、殺してきた中で、一番面白れぇぜ。

 

 

ククク…ハハハハハ!!」

 

 

腹を抱え鎌之介は、高笑いをした。その様子に恐ろしさを感じた伊佐那海は、怯えた様な声を出した。

 

 

「な、何の……

 

アンタ…変よ。普通じゃない!!」

 

「ああ、よく言われる。

 

けどな、人の趣味に口出しすんな。

 

 

人の物奪うのが俺の唯一の楽しみなんだからな」

 

「趣味って……

 

人を何だと思ってるの?!アンタ!!」

 

「お前、ウザい」

 

 

鎌之介は、鎖の先端の錘を伊佐那海の顔面に投げつけた。錘を顔面に喰らった伊佐那海は、鼻から鼻血を垂れ流した。

 

 

「言っただろ?人の趣味に口出しすんなって」

 

「アンタなんか、才蔵が倒してくれるんだから!!」

 

 

その言葉にムカついた鎌之介は、錘を伊佐那海の腹に投げつけた。伊佐那海は当たった拍子に、蹲り咽た。鎌之介は伊佐那海の体を足で踏みつけた。

 

 

「テメェみてぇなカス女……俺嫌いだ。

 

自分じゃあ何もできねぇのに大口叩いて、そんで男に頼るってか?

 

 

一番生きる価値ねぇよ」

 

 

その言葉に、伊佐那海は以前明日花から聞いた言葉を思い出した。

 

 

『アンタが、何もできない巫女だから、出雲大社にいた神主や姐さん達が死んだんじゃないの?』

 

『それで、何もできないから、今度は男に頼りっきりてか?』

 

 

「……」

 

「その顔からすると、前にも俺と同じような言葉を聞かされたな?」

 

「そ、それは……」

 

「あぁ~あ。これだったら、あの白ガキも連れて来れば良かったぜ」

 

「白ガキ?……

 

それって、明日花ちゃんのこと?」

 

「あぁ、そうだぜ。

 

以前、アイツの母親と戦ったが、面白かったぜ。

 

 

何せ、母親だけでなく白ガキも参戦してたから、楽しさが二倍だった」

 

「二倍って……」

 

「さぁて、あの忍はいったいどれだけ、俺を楽しませてくれるか……

 

早くきやがれ」

 

 

 

 

その頃、才蔵達は鎌之介が向かったと思われる崖付近に来ていた。そこで十蔵は持っていた双眼鏡を覗きながら、伊佐那海と鎌之介の姿を探していた。

 

 

「この辺りのはずなのだが……」

 

「……!

 

十蔵、あそこ!」

 

 

明日花が指さす方へ、十蔵は双眼鏡で見た。そこには宙吊りになった傷だらけの伊佐那海の姿があった。

 

 

「伊佐那海!!」

 

「何という……

 

あれではまるで……」

 

「見せしめだろ?チッ!」

 

「ここに来いって、誘ってんでしょ?」

 

「だったら、登る道を探さねば……」

 

「道ならある。」

 

 

そう言いながら、才蔵は目の前に聳え立つ断崖絶壁を見上げた。

 

 

「ここを登れば、最短ルートなわけか……」

 

「筧さんと明日花には、援護を頼む」

 

「承知した!」

「了解」

 

「任せたぞ、才蔵」

 

 

崖のを登っていく才蔵に、十蔵はそう言った。才蔵はその言葉を気にかけながら、崖を登って行った。

 

 

(ったく……

 

どいつもこいつも同じ事を言いやがって……

 

 

女さらわれて崖登って、何やってだ俺……

 

バカみてぇ……

 

カッコ悪い…

 

 

一度、心を閉ざした俺を、奴らは見捨てなかった……

 

そんな奴らに、応えなきゃカッコ悪い…収拾がつかねぇんだよ)

 

 

 

 

「?……来たか」

 

 

石が崩れる音が聞こえ、崖下を覗きこんだ。そこには崖に手を掛けて登る才蔵の姿があった。

 

 

「遅かったじゃねぇか?」

 

「ずいぶんの所に城、持ってんじゃねぇか?

 

お山の大将かオメェは?」

 

「その姿、カッコ悪いなぁ?

 

さあ、早く登ってこいよ。さもねぇと」

 

 

そう言うと、鎌之介は伊佐那海に向かって風を起こした。風は伊佐那海の体を傷つけ伊佐那海はロープで吊るされ、風の反動で揺れていた。

 

「ほらな?」

 

「!この…野郎!」

 

 

手に掛けていた崖を踏み台にし、才蔵は一気に登り鎌之介に向かって、クナイを投げ飛ばした。だが鎌之介は、飛んできたクナイを鎖鎌を振り回し風で防ぎ同時に、才蔵を崖から突き落した。

 

 

「才蔵!!」

 

「正面から突っ込んでくるなんて、どうかしてるぜ。

 

もう死んだか?」

 

 

鎌之介は落ちていった才蔵に話しているかのように一人で言いながら、崖の下を覗いた。才蔵は崖に生えていた木の枝を掴み何とか、耐えていた。

 

 

「?あんな所に木なんか生えてなかったはず……」

 

「私が生やしたからだ」

 

 

その声に気づいた鎌之介は、後ろを振り返るとそこに紐を切り伊佐那海を助ける明日花の姿があった。

 

 

「白ガキ!いつの間に?!」

 

「アンタが才蔵を、得意の風で落とした時にだ。

 

懲りないねぇ……

 

せっかく母さんが、アンタの事見逃して生かしてやったのに」

 

「黙れ!!」

 

 

明日花の言葉が癇に障り、鎌の介は鎖鎌の鎌を明日花目掛けて投げつけた。明日花は伊佐那海を後ろへ回し腰から槍を取り出し鎌を弾き返した。

 

 

「今の相手は、私じゃなくて、アンタの後ろにいる才蔵じゃないの?」

 

「?!」

 

 

ハッと思い出した鎌の介は、すぐに後ろを振り返った。だがそこに才蔵の姿が無く周りを見たが姿が無く、まさかと思い上を見るとそこにクナイを構えた才蔵の姿があった。

 

 

「伊賀流投術光陰」

 

「バーカ!!俺にそんな技は通用しねぇ!!

 

由利鎖鎌奥義風神掌」

 

 

鎌之介が放った風の技を才蔵は避けたが、それを狙ってか錘の着いた鎖を才蔵の腹目掛けて鎌之介は錘を投げつけた。錘は才蔵の腹に見事命中し腹を抱え地面へ倒れ込んでしまった。

 

 

「それで終わりか?違ぇだろ?」

 

「だな」

 

 

その声にハッとした鎌之介後ろを振り返るとそこには、鞘から剣を抜き振り下ろしてきた才蔵の姿があった。才蔵の倒れていた近くには、折れた幹が転がっていた。振り下ろしてきた剣を鎌之介は、鎖を振り剣の攻撃を防いだ。

 

 

「ひゃっほー!そうでねぇと!」

 

「うるせぇよ」

 

 

その言葉を放ちながら才蔵は、一瞬で鎌之介の後ろへ回り足を払った。鎌之介はまんまと足を取られ、その場に倒れた。倒れた拍子に鼻を打ち鼻血を出しながら、鎌之介は顔を上げて、才蔵を見た。

 

 

「そう、それだよ!

 

テメェは、そういう男なんだろ?

 

 

染みついた血の臭い、そしてその深い闇を見た眼!

 

 

俺と同じぐらい……いや、もっと俺以上の人を殺してきた眼だ!そうだろ?!」

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