先行する二人を追って遼太郎も評定の間に足を踏み入れる。朝と同じようにすでに三十人程がすでに着席していた。遼太郎はとりあえず、そのままの流れで端の方へ腰を下ろそうとすると、上段の久遠から声がかかる。
「我の夫がそんな所に座るな。上段へ上がってこい」
「いや、俺は別にこっちでも構わないんだけど……」
今回は自分が主役という訳でもないので断ろうとする遼太郎だが、
「今治問答の時間が惜しい。早くしろ」
そんな久遠からは、少しイラついているかの印象を遼太郎は受ける。
「はいよ」
そう言われは仕方なく遼太郎は上段の久遠の横へと今度は下ろした。
「これより評定をはじめる」
遼太郎が腰を下ろすと同時に久遠が口を開く。
「まずは状況を整理する。麦穂、言え」
「はっ」
久遠からの指名に麦穂が立ち上がって前へと出る。
「先程、墨俣の地に出城を築くべく、現地へ赴いた佐久間殿の部隊が壊滅。敗走してくるという早馬が到着しました」
「な、なんだってーーーー!!!」
麦穂の報告に驚きを隠せず下段にすわっていた和奏が声をあげる。
「いや、そこは驚くところじゃないよー」
「試合の時に知らせが来てたじゃん」
そんな和奏に対して、おなじ三若の雛と犬子が突っ込む。
「わ、わかってるよ!」
和奏が恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「墨俣は二つの川の間の中洲に位置する…。手前の川の向こうからは斎藤家の勢力圏なため、築城には困難が予想されてはいたが………」
三若のやり取りを気にせずに壬月が困ったように口にする。
「はい、まさかこれほどまでに早く、佐久間様の部隊が撤退するとは………」
壬月の言葉を聞いて麦穂も同じように言う。
「困難はわかる。だが、美濃攻略には是が非でもやらねばならん」
家老二人の言葉を聞くも久遠のは決意を曲げない。
「ですが、殿………」
「言うな。結菜の父、蝮から託された美濃を、いつまでもあの、うつけの龍興に任せておくなど、許せんことなのだ」
久遠はそう言いながら台座の上に置いた自身の手をグッと握り締める。
「…………」
遼太郎は何も口にしない。だが、隣に座る遼太郎には久遠の思いが痛いほど伝わってくる。
「けど、佐久間のおばあちゃんが失敗したってことは、次は誰がやるのかな?」
「雛は築城とかあんまり得意じゃないから無理ー」
「築城となれば麦穂様の出番かな?」
三若が犬子、雛、和奏の順で各々が口にする。
「いや麦穂は出せん。未だ膠着状態の今川や、小うるさい長島にも備えなくてはならんからな」
和奏の提案に久遠は首を横に振る。
「じゃあ他に誰がやるんだろ?」
再度和奏が疑問を口にする。
「じゃあ、和奏がやれば?」
そんな和奏に犬子が冗談混じりで言う。
「ボクに出来るわけないだろ!」
「いやいや、そこは威張られても困るんだけどなー」
自信たっぷりに堂々と言うと和奏を見て、雛が苦笑しながら言う。
そんなやり取りが行われている中であった。
「あの……さ、ちょっといいかな…?」
ここで無言を貫いていた遼太郎が初めて発言する。その声が聞こえたのか評定の間は静まる。
「ん?どうした遼太郎?何か意見があるのか?」
久遠がそんな遼太郎に尋ねる。
「意見っていうかさ、その…墨俣の築城を俺がやってみようか?」
「…………………何だと?」
唐突な遼太郎の言葉に久遠の表情がピクリと動く。
「阿呆ぅ!素人が何を抜かす。貴様が考えている以上に困難な任務なんだぞ」
当然家老の壬月からも厳しい言葉を言われる遼太郎。
「そーだそーだ!ちょっと強い……じゃなかった、ちょっとだけ腕が立つ……でもない、ちょっと調子に乗れるからって調子に乗るなよ!」
「和奏、そのツッコミ意味がわからないよー」
「まぁ、言いたいことはわかるけどね。和奏らしいツッコミじゃない?」
うまく言おうとしたが言えなかった和奏に対して、雛と犬子が続ける。
「うるせぇー!ちょっとお前ら黙ってろってば!」
「はーい。それで遼太郎君?どうしてそんなことをー?」
雛が遼太郎に訳を聞こうとする。
(墨俣の築城は、織田信長と豊臣秀吉関連では結構メジャーな話なんだけどどうしようか)
心の中で考える遼太郎。本音をいうと、先程から眺める久遠の悔しさを滲ます横顔に我慢できず、勢いで言ってしまった所なのである。
「話を聞いていて、とある策を思い付いたんだ。最悪、仮の候補としてでも構わないからとりあえず俺に任せてみてくれないか?それなりに自信はあるんだ」
詳しいことは言えない遼太郎だが、その言葉の節々からは何か思いと言うものが伝わってくる。
「……遼太郎」
耳を傾けながら目を閉じていた久遠が遼太郎の名前を口にする。
「なんだい?」
「やって…くれるか?」
苦しそうに、しかし遼太郎の言葉に望みを賭けるかのように覚悟の眼差しを浮かべて、久遠が遼太郎に言葉を返す。
「久遠は俺に出来るとはおもわない?」
「わからん。しかし、我らとは違った見方の出来るお前ならばあるいは、とは考えてしまうのだ。だから我はお前に賭けて見ようと思う。頼まれてくれるか?」
「任せてくれ」
久遠の思いに、遼太郎も覚悟を決める。
(一宿一飯の恩義もあるし、ここは気合い入れてやりますか!)
遼太郎はこれまで少しの間だがお世話になった人たちに、特に久遠には何かお返しが出来ればと考える。
「小僧、本当にやれるのか?」
壬月が遼太郎に声をかける。
「いくつか思い付いたこともあるし、問題が生じなければなんとかなると思ってるよ」
史実通りに事が進むならば、次に築城に取りかかるのは壬月とその柴田衆である。しかも、結果は失敗となり、少なくない兵の命を失うこととなる。すでに織田家の仲間となった者にわざわざ負けに行くようなことはしてほしくないのだ。
「おいおい、そんな簡単には言うけど大丈夫なのか?」
和奏も遼太郎に声をかける。
「でも、失敗したら先輩である和奏さんが助けてくれますからね」
「なっ!ま、まぁー、そこまで言われたらー?やってやらないこともないけどなー?」
和奏と話す機会が増えてきたことで遼太郎は徐々に和奏の扱いになれてきたのだ。
「うーん、このチョロさ。さすが和奏だねー」
そんなやり取りを見ていた雛が半笑いしながら突っ込む。
「じゃあ久遠、必要な物資とか資金は計算が出来次第連絡するから準備してくれるか?」
「当然だ、よろしく頼むぞ」
久遠とのやりとりを最後に遼太郎は評定の間から退出するのであった。
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戦国恋姫とバイオハザードのプレイ経験について
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戦国恋姫(X.EX)プレイ済み
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