遼太郎たちは潜入の準備をする。そして、久遠から依頼を受けたその日のお昼頃に清洲を出発し、日没後にようやく稲葉山の麓の町、井ノ口に到着することができた。
「それじゃ明日からの予定なんだけど……」
町の宿の一室に遼太郎たちは予定を確認するが…
「はーい!犬子が槍の大立ち回りでしっかり護衛するよー!」
三若の一人の犬子がなぜか、遼太郎たちと共に行動しているのである。
「わーん!犬子ちゃん、ありがとー!」
ひよ子は、そんな犬子の言葉に感動し抱きついてしまう。
立場としては武将である犬子の方が上なのであるが、それを知らずに端から見れば頭一つ小さい犬子をひよ子があやしているようである。
「あのな、犬子。護衛は嬉しいんだけど、今回は潜入任務だから大立ち回りはダメだぞ?」
「わん?」
遼太郎の言葉に犬子はいまいち分かっていないようである。
「あれー?お城で雛ちゃんから遼太郎様に付いていけばじゃんじゃん武功が立てられるって聞いたのにー」
犬子はどうやら雛にそそのかされてしまって付いてきてようだ。
「こればっかりは言い方の問題だなぁ」
遼太郎が腕を組みながら答える。確かに遼太郎たちは裏方としての武功を立てるつもりだが、犬子的には戦闘での武功ととったのだろう。
効率化を図るため、二手に別れて遼太郎転子が稲葉山城近辺を、ひよ子と犬子がこの井ノ口の町近辺を調査することに決めた。怪しまれないように、武装も解除してこの宿に置いていく。
翌日、ひよ子と犬子と別れて遼太郎と転子は稲葉山城の入り口近くまで訪れる。
「んー、警備の兵も少ないですし何かあったのは間違いないですね」
正門の警備兵が一人であることを見ながら転子が遼太郎に話しかける。
「確かになぁ、ここ以外の裏門二つも似たような感じだったしな」
清洲の城ならばもっと人の出入りが多く活気に満ち様子なのだが、こちらの城は裏門二つは固く閉ざされ、正門に至っても出入りが少ないためほとんど閉まったままなのである。
(ジロッ)
少し長居しすぎたのか、正門の門番が遼太郎たちを睨み始める。一応階段の植えにある門を見上げているだけにも見えるのですぐにどうこうと言うことはなさそうだが。
「一応移動しよう。けど、どうにか中の様子まで知りたいんだよな。門以外に中に入れそうな所がないかな。最悪城の様子だけども確認したいけど」
「裏の山を散策するなら宿に戻って装備を整えましょう」
転子の言葉に頷き、一旦装備をとってから改めて人気のない裏山を散策しに行くのであった。
稲葉山の裏山散策途中、奇妙な獣道を見つけた遼太郎は、生い茂る草木を掻き分けながら進んでいる最中であった。
「それにしてもお頭は不思議な人ですよね」
サバイバルナイフで邪魔になる草木を刈っている遼太郎の後ろから転子がポツリとこぼす。
「まぁこんな外見だしなぁ。目立って、変なのはもう仕方ないって諦めたよ…」
私服にホルスター付きのベルトを装備した遼太郎が嘆息をこぼす。
「いえ、まぁそれも込みではあるのですが。ただ、前回の墨俣の作戦で……」
そう言う転子の言葉により遼太郎は前回の作戦を思い出す。
「お頭、誰も思い付かないような作戦とそれを可能にする道具を作って、初めは頭がキレる人なのかなってやつかな思ったら、あの化け物、鬼が出てきた時は率先して鬼の注意を引いてくれて。なんだが本当にすごいなって……」
転子が笑顔で遼太郎を褒める。が、その表情に少し寂しさが混じるのを遼太郎は見逃さなかった。
「えっと、そのさ。詳しくは言えないけど、その作戦も鬼と戦えたのもぶっちゃけ全然俺の力強いって訳じゃないんだよ。特に見たでしょ?鬼の残骸から俺の使う鉄砲の弾が生まれるのを。実は不思議な力に頼ってるのは俺自身なんだ」
遼太郎が立ち止まって、転子の目を見つめる。
「しかもその力込みでも、一人じゃ鬼を倒しきれなかった。だからさ、ひよやころが誰かを頼るように、結局俺もみんなのことを当てにしてるんだ。つまり、これから先、俺はころのことをずっと頼りにするからさ。もっと自分に自信持ってくれよな」
今できる最大限のフォローをしたつもりの遼太郎。そんな遼太郎の思いが届いたのか
「ふふ、やっぱりお頭は不思議な人ですよ」
今度は混じり気のない笑顔で笑う転子。
「私、野武士の棟梁として長いことやって来たんですけど、前回あの鬼が出てきたときに、何にも指示が出来なかったことを後悔していたんですけど……」
(そうか、ころはそんなことを思っていたのか……)
火器を持っていた遼太郎に対し、槍や小太刀など接近する必要のある武器しか持たない転子には厳しかっただろうと遼太郎は思う。
しかも恐らく鬼とのファーストコンタクトがあの巨大な奴であったのだだから、尚更パニックにはなるだろう。
「けどお頭の言葉を聞いて私思いました!この失敗を必ず次に生かそうって、自分に出来ることを考えて実行に移そうって!」
転子が両手をぎゅっと強く握って宣言する。
そしてその決意は遼太郎にも届く。
「大丈夫、鬼が迫ってくるあの状況で俺を助けてくれたんだから。きっと出来るさ」
優しい笑みで遼太郎は転子に返した。
二人の頭上にある太陽が傾き始める。下山のことも考えると、そろそろ作業を再開する必要がある。遼太郎は再びナイフを構え獣道を広げて、転子がその後ろを追う。
一時間ほど獣道を進んでいくと、ようやく城の砦が見えてくる。
「かなり細くて急斜面だったけど、これは絶好の位置に出たな」
遼太郎が辺りを周囲を見渡しながらに言う。目前数十メールには、すでに三の丸(城の三段作りの一番外側)が迫っているのだ。
「ん?あれ?久遠から聞いていた家紋と、城に揚がっている旗が違うし何か種類も多いぞ?」
城に接近できたことで、掲げられた旗印を確認出来るようになった遼太郎がその色合いは模様の違いに気がつく。
「確かに違いますね。あれは斎藤家の旗ではありませんね」
「てことは、斎藤家の城に斎藤家の旗が揚がってないってことは、あれが乗っ取った人の旗印になりそうだな。ころ、あれどこの旗印かわかる?」
遼太郎の問いに転子が、手でひさしを作りながら確かめる。
「えっとー、三の丸と二ノ丸には西美濃三人衆の方々の旗がそれぞれ見えますね…」
「え?美濃ってことは城を占拠したのはお仲間なのか?」
乗っ取りをした勢力が判明したが、まさかの内容であることに驚き、遼太郎が聞き返す。
「そうですね。あ、けどそれを計画した人はどうやら違うようですね。本丸近くに翻る旗、あの九枚笹の紋は美濃の出来人、竹中半兵衛重治殿の家紋ですね」
転子の説明に遼太郎はふむふむ頷く。
「その、出来人って言うのは何?」
聞き慣れない単語に遼太郎が疑問を浮かべる。
「出来人と言うのは、主に天才、麒麟児と言った意味ですね。終わりではそう評価されていますが、美濃では変人扱いされているようです」
「へぇー、でも何で尾張と美濃でそんな差が?」
「何でも、織田の美濃討ち入りはその九割近くをあの竹中半兵衛殿の策で撃退されているようでして。なので尾張側からは高い評価がされているんです」
遼太郎の連続する質問にも、転子は丁寧に答えていく。
「それって凄いな、けどどうして美濃じゃ変人扱いなんてされてるんだ?」
「それが美濃側からしてみれば、織田を打ち負かしているのは策ではなく自身の実力であると主張しているようでして……」
(これまた程度の低い意地の争いと言うか、大人気ないと言うか……)
転子の説明に遼太郎は思わず呆れてしまう。
「なるほどね、それで遂に堪忍袋の緒が切れた竹中さんが実力行使に出たって所なのかね」
「うーん、普通に考えればそうなんですけど……。その天才と謳われる方がそんな感情だけで動くのでしょうか……」
いくら考えてもわからない二人は、とりあえず今回の目的である首謀者が判明したことで下山を始めるのであった。
感想評価いただけると助かります。よろしくお願いいたします。
戦国恋姫とバイオハザードのプレイ経験について
-
戦国恋姫(X.EX)プレイ済み
-
バイオハザードシリーズプレイ済み
-
両方プレイ済み
-
両方未プレイ