戦国†恋姫~世界変革の弾丸~   作:しゅんとも

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chapter2-7

「すまない、久遠」

 

 

 

そこには評定の間で深々と頭を下げる遼太郎の姿があった。理由は勿論、先日の結菜が拐われた件である。

 

 

 

「おけぃ。今は結菜のことが先だ。だから顔を上げろ、遼太郎」

 

 

 

「で、でも…」

 

 

 

一切動揺した様子を見せない久遠に対して、遼太郎はそれでも自分の責任であるとして、食い下がろうとする。

 

 

 

「遼太郎、今はお前の責任云々を話している場合ではない。だから、話し合いを進めさせてくれ」

 

 

 

お前に構っている場合ではない、そんな久遠の言葉に遼太郎はしずしずと了承するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「それで今回の件、まとめてくれ」

 

 

 

久遠が、現場にも赴いていた家老の壬月に言う。

 

 

 

「はっ、それでは今回の結菜様の行方不明、及び斎藤家と鬼の関係についての報告を纏めます」

 

 

 

壬月が、久遠に説明を始める。

 

 

 

「今回、事の発端は及川隊による斎藤家からの竹中半兵衛重治の救出にあります。竹中半兵衛と斎藤家飛騨守が対立しているところに、及川隊隊長の及川遼太郎が介入。この時、同時に鬼を操るとされる正体不明の者も出現しました」

 

 

 

壬月が、遼太郎や詩乃、ひよ子、転子から聞いた話を纏めていく。

 

 

 

「そして、その者による指図で多数の鬼の出現、それにより遼太郎が逃走、途中織田久遠様が妻、結菜殿も加わりました。結果、遼太郎の判断で自身が囮になり結菜殿を逃がす運びに。しかし、これが仇となったか一人となった結菜殿が何者かに連れ去られました。ここまでが出来事の一連です」

 

 

 

「ふむ…早馬の情報と反故は無さそうだな」

 

 

 

壬月の説明に久遠が顎に手を置きながら考える。

 

 

 

「久遠、ちょっと補足いいか?」

 

 

 

「ああ、構わん」

 

 

 

そんな久遠に遼太郎は、自身の体験したことを説明する。

 

 

 

「その鬼を操る者、多分男だと思うんだけど、そいつが気になることを言っていたんだ」

 

 

 

「どういうことだ?」

 

 

 

「そいつ、最初は詩乃、竹中半兵衛重治を有効な駒とかって言ってたんだ。でも、俺がそこに現れれば手間が省けるとも言っていた。だから、逃走の時、俺が標的なら囮となった方がいいと思ったんだ。でも、そいつが消える直前に他にも標的がいるみたいなことを言ってきて……」

 

 

 

「結果として、結菜が連れ去られたと……」

 

 

 

遼太郎の説明に、久遠は再び考え始める。

 

 

 

「斎藤は鬼を操るなど得体の知れないものを招き入れている可能性もあるのか…。全く、龍興のうけつは一体何を考えているのか…。うつけとは思っていたがまさかこれ程とはな」

 

 

 

久遠が呆れたように言葉をこぼす。

 

 

 

 

 

「なぁ久遠、何でそんなに落ち着いているんだ?妻である結菜が拐われたんだぞ?」

 

 

 

久遠の様子に遼太郎は、不満に思っていたことを言い表す。

 

 

 

「落ち着け遼太郎。今取り乱した所で結菜は戻ってこないのだ。冷静に状況を分析し、一手を打つ方が先であろう」

 

 

 

「それは…そうだけど!」

 

 

 

久遠の発言に遼太郎が怒りを露にする。

 

 

 

「あのな、遼太郎。結菜はあれでも蝮の娘、帰蝶姫なのだ。今回の多数の人外の鬼に対して、下手に抵抗して体力を減らすより、素直に投降する方を選んだ。つまり、あやつが抵抗もなく捕らえられると言うことは、そちらの方が抵抗するよりも分があると踏んだんだ」

 

 

 

「え?」

 

 

 

久遠の言う内容に、遼太郎は頭を悩ます。

 

 

 

「つまりだ、遼太郎。結菜はその場で自分が抗うよりも、我やお前が助けに来てくれることの方が分があるとおもったのだろう。だから我らは予定通りしっかり準備を整え、美濃ヘ進行するのだ。お前も及川隊の隊長として準備しておけよ」

 

 

 

久遠の言葉に遼太郎は唖然としてしまう。普段は仲が良い程度にしか感じていなかったが、今ここで遼太郎は久遠と結菜の絆の固さを再確認したのである。

 

 

 

「…そうか、わかったよ。そう言うことなら長屋に戻って準備する。ありがとう久遠、何か目が覚めたよ」

 

 

 

「うむ、よろしく頼むぞ」

 

 

 

そう言って遼太郎は久遠と壬月に背を向けて、評定の間を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久遠様、本当によろしかったのですか?」

 

 

 

遼太郎が出ていった評定の間で、最後まで残った壬月が久遠に尋ねる。

 

 

 

「何がだ?………と言うのはお前には通じんか…」

 

 

 

久遠は苦笑いをしながら答える。

 

 

 

「…正直、半々と言った所だ。いくら結菜とは言え今回出張ってきたのは鬼だ。何が起こるかはわからん、最悪な場合も想定はしておくが、それで遼太郎を責めても仕方あるまい」

 

 

 

「やはり、そうでしたか…」  

 

 

 

遼太郎の前では強がって見せていた久遠。だが、やはり結菜のことが心配な気持ちであるのは遼太郎とそう変わりはないのだ。

 

 

 

「それにな、あやつを我がもとに留めたのは我の都合なのだ。だから、遼太郎には深く自分を責めるようなことはしてほしくない。その債はすべて我の責任であるからな。だから、遼太郎にはああして前を向いてくれるように取り計らったのだが…」

 

 

 

「ええ、久遠様がそう仰るのならそうなのでしょう。私もあやつのことはすでに認めております。それに、きっとあやつにしか出来ないことがあるのでしょう」

 

 

 

遼太郎の立場から鑑みれば、確かに自身を責めたくなるのもわかるような今回の一件。

 

とは言え、やはり久遠としては遼太郎を織田家に迎え入れ、今回の作戦でも遼太郎の背中を後押しした責任を感じずにはいられないようである。

 

 

 

 

 

「とにかくだ。今回の戦、鬼も出張って来るからして、かなり熾烈なものとなるだろう。壬月、しっかり準備の方任せたぞ」

 

 

 

「はっ」

 

 

 

久遠の指示に壬月が返事を返して、その場を立ち去っていく。

 

 

 

壬月もいなくなれば、そこには久遠一人のみが広い評定の間に残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結菜…どうか無事でいてくれ…」

 

 

 

 

 

悲痛な表情で何かにすがるように久遠が願いを口にする。その言葉は久遠だけの評定の間の静寂の中に溶けていった。

 

 

 

 

 

鬼も絡んでくる今回の美濃進行、そして稲葉山城の攻略。それにむけた準備が着々と進んでいく…

 

 

 

 

 

 

 

 




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戦国恋姫とバイオハザードのプレイ経験について

  • 戦国恋姫(X.EX)プレイ済み
  • バイオハザードシリーズプレイ済み
  • 両方プレイ済み
  • 両方未プレイ
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