結菜の箪笥の引き出しから、二種類の手榴弾を手に入れた遼太郎。今回はすでに戦うべき相手が明確な為、武器が出現したことに驚きは遼太郎にはない。むしろ、戦う力を手にできたことの嬉しさや安堵が生まれていた。
挨拶を済ませ、二種類の手榴弾を手に入れた遼太郎が屋敷を後にする頃には、太陽はすでに山際に沈み辺りが薄暗く暮れていく程になっていた。
「さて、及川隊の長屋に戻ってもう一回出陣の確認をしておこうかな」
遼太郎がそんなことを言いながら、城下町を歩き出した時だった。
"ブォーブォーブォーブォー"
突如、街中に何かを吹くような大きな低音が響き渡った。
(ん?なんだろうこの音……)
遼太郎は聞きなれない音に戸惑い辺りを見回す。元々出回る人が少なくなっていた夕暮れだったが、そこにいる人たちもどうやらこの音に反応して、慌てているようである。
「ま、まさか!?」
遼太郎は気が付いたかのように走り出す。
(夜って言ってたじゃないか!久遠!)
向かった先は勿論及川隊の長屋である。
「みんな、今戻った!それでこの音って!?」
「はい、遼太郎様。どうやら出陣の陣貝の音のようです」
長屋に戻った遼太郎が自身の部屋に飛び込むと、そこには詩乃が待っていたかのように準備をしていた。
「今ひよが馬の準備を、ころが状況の確認に出ています。二人が戻り次第になりますが、遼太郎も出陣の準備をお願いいたします」
「そうか、何から何まで任せきりにしちゃって悪いね」
「いえ、この程度造作もありませんよ」
初めてのことで慌てる遼太郎に対して、テキパキと事を進めていく詩乃は美濃から拐ってきてまだ数日であるがすでに遼太郎の右腕、及川隊の頭脳として十分な働きを見せているた。
「詩乃ちゃーん!とりあえず言われた馬の数は用意できたよー!」
詩乃の指示で馬の準備をしていたひよ子が戻ってきた。さらにその後ろから足音がつづく。
「詩乃ちゃん、遼太郎様!どうやら久遠様はすでにお城を出て、最低限の馬廻り衆と美濃へ向かって出陣なさったようです」
「やはりそうでしたか…」
転子の言葉に詩乃は予期していたかのような素振りを見せる。
「え?詩乃は久遠が今日出陣するって言うのを知っていたの?」
久遠からは秘密裏に今日の夜出陣予定と聞かされていた遼太郎は、多少ずれてしまっているとは言え、今日出陣の事実を知っていたが、詩乃はそれをわかっていたかのようである。
「ええ、城下町や城への物資の搬入や人の出入りから予測するにそろそろであるとは思っておりました……が、さすがにこの夕暮れ、すでに夜になりつつあるこの時間にと言うのは少し驚きですね」
確かに、定石としては早朝からであろうか攻め込み、辺りが明るいうちに決着をつけるか、夜がふけてから闇を利用して奇襲をかけるのが一般的である。
「とにかく、遼太郎様はまだ馬の扱いが慣れていらっしゃらないようですので、ひよに先導してもらいながら久遠様を追って下さい。残りの私ところは、及川隊をまとめてから後ろを追いますので」
「わかった!それじゃあ、ひよ悪いけどよろしく頼むよ」
「はい、お頭!任せて下さい!」
そうして、遼太郎は装備を整え久遠の元へと急ぎ向かっていく。
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「久遠ー!」
遼太郎は四苦八苦しながら、何とか久遠に道中で追い付くことができていた。
「おお、お前も中々に早い到着であったな」
「おお、じゃないよ。どうしてあんな中途半端な時に出陣したの?」
「すまない、どうやら稲葉山城付近の人入りがどうやら少なく、守りが手薄くなっているようでな。この好機は逃すわけにはいかなかったのだ」
一応予定としては夜にと、腹の中で決めていたであろう久遠だが、逐一状況を見て図っていてたようである。
「それで久遠…、結菜の件なんだけど何か策はあるのか?」
遼太郎がここで話の核心に触れる。
「正直、それがわからんのだ。もし、それに龍興が絡んでいるのであれば恐らく結菜に手出しは出来んだろうから無事ではあると思うのだ。しかし、結菜の誘拐が鬼側の独断であったとしたら……」
「目的もわからずってところか…」
確かに、すぐ殺される心配はないと分かる状況で下手に力を行使して自身の体力を削ったり、相手を逆上させるのは得策ではないだろう。
しかし、この目的ばかりは遼太郎とて判断がつかない。一瞬遼太郎の頭によぎったのは、鬼を操る者の"遼太郎が標的の一人"であることだ。つまり、結菜を人質にして遼太郎を誘いだそうと言うことだが、わざわざ稲葉山城攻めの織田家と遼太郎を纏めるメリットがないのだ。それこそ遼太郎本人に結菜を餌として果たし状でも渡し、一人で出てこさせる方が効率的である。
「まぁ、わからん物に頭を悩ませても仕方がない。とにかく、今回出陣したからには失敗はできん。これ以上の失敗は織田の領地拡大に大きく影響してしまうからな。稲葉山城攻めの方をしっかりと考えなくてはな」
悩み込む遼太郎を見かねた久遠が、遼太郎を戦に集中させる。それと同時に後ろから馬の駆ける音が近づいてくる。
「久遠様ー!」
後ろから肥を張り上げ、馬を飛ばしてくるのは壬月であり、その後ろに麦穂もついてきていた。
「壬月か、苦労」
「苦労、ではありません!いつもいつも突然のご出陣、それだけは勘弁してくださいと言っているでしょう!」
「うだうだしていれば好機を逃す。それに、さっさと貴様らが準備して付いてくれば良いだけであろう」
頭を抱えて本当に困った様子の壬、に対して、久遠は全く反省していないどころか相手のせいにする始末であった。
「相変わらずの仰りようですね。少しは後を追いかける者の気持ちを考えてください」
「うむ、気が向いたらな」
二人のやり取りを聞いていた麦穂も久遠を諫めるがこちらも全く気にしていないようである。
「それで、兵の方はどうだ?」
久遠が追い付いてきた家老二人に尋ねる。
「私と麦穂の先行組として千、その後ろに及川隊が少々、遅れて三千、さらにその後ろに二千、最後に三バカどもの三千と小荷駄となってます」
「ふむ、九千前後か。思ったより付いてきているではないか」
壬月の説明に久遠が感心するようにして頷く。
「だが、待っているのは時間が惜しい。壬月は共に来た千を連れ我についてこい。麦穂は後ろの兵をまとめておけ」
「「はっ!」」
「者ども、聞け!勝負は二度あらじ!」
壬月たちが連れてきた兵に久遠が大きく叫ぶ。それに呼応するように兵の者たちは天に向かって声をあげていく。
「それでは、私は後ろの兵を纏めてきますので失礼します。遼太郎様もどうか久遠の方をお願いいたしますよ?」
「いやー、それを俺に言うのはいかがなものかなって思うんですけどね」
去り際の麦穂が久遠の隣にいた遼太郎にも進言していくが、こればかりは遼太郎も苦笑いである。隣の張本人である女の子は、これまた全く気にしていないようであった。
頼もしい味方に多くの兵、これには遼太郎も心の何処かでなんとかなると思い始めるのであった。
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その後、一行は道を進み稲葉山手前の平地にて、陣を張り戦前の最終確認をするところまで来ていた。
途中、内応を取り付けた美濃衆のものから稲葉山城の斎藤龍興は、籠城を選択し、門を閉めて引きこもったと言う知らせを受けた。
「籠城ですか……。時間が惜しい我らからすれば少し厄介な対応ですな」
白い陣幕で仕切られた本陣の中で、稲葉山の地図を囲みながら、壬月がポツリとこぼす。
「ええ、あまり時間を掛けますと調略の中立組が裏切りに出る可能性が高くなりますから」
壬月の言葉を拾うように麦穂が補足していく。
そんな家老二人を中心に織田家の武将格数人が軍議を進める中、遅れて及川隊数十人を引き連れてきた詩乃に遼太郎は近寄って声を掛ける。
「なぁ、詩乃。今回の攻防で何か考えあるかな?」
「そうですね…。やはり、時間をかけられないと言うことならば、正攻法で正面から崩していくと言うのは少し厳しいかと。少しでも、もたついてしまえば城を攻める我らの後ろを敵の援軍に取られ挟み撃ちとなりますからね」
「だよなぁ」
奇襲をかけた為に敵方は手薄な状態で稲葉山城に籠っている。しかし、それを差し引いてもやはり堅城呼ばれる稲葉山城を多くはない時間制限を込みで打ち崩すのは容易では無さそうである。
「しかし、このまま何も起きなければ織田家側が有利であるのは変わりありません。何でも、今回は城攻めと言うことで織田信長殿御抱えの衆も参加しているとか」
「へぇ、けど今まで織田家全体の戦はなくとも、評定とかで顔を合わせてるけどそんな人いたかなぁ?」
詩乃がそこまで言うならば、それ相応に力のある武将と衆であろうと遼太郎は考えるも、今までにそれっぽい人や衆の人を見かけたことがないのである。
「ただ、何も起きなければっていう条件がどうも不安なんだよね」
「ええ、確かにそうです。帰蝶様を連れ去ったとされる鬼の動向もわかりませんし…」
結菜を連れ去った鬼が何もアクションを起こしてこない、この事がどうしても遼太郎と詩乃に引っ掛かりを覚えさせる。
そんな頭を悩ます二人を含めた、織田本陣に知らせが響く。
「申し上げます!」
織田家の使番の一人が慌てた様子で報告をしてくる。そんな様子から、本陣内に緊張が走る。
「どうした、申してみろ」
壬月がその使番に報告を許可する。
「稲葉山城側の斎藤家の手の者と見られる者が、一通の書状を携え織田側に話があると申しております」
「デアルカ。その者は一人か?」
使番の言葉に久遠が確認をする。
「はっ、特に変わった武装もしていない足軽装備の者一人のみです」
「それならば、その者をここに通せ」
「はっ!」
久遠の言葉に返事を返した使番が本陣を出ていく。
それを本陣の端で見ていた遼太郎は隣の詩乃に話しかける。
「何か来る感じだな」
「ええ、それも嫌な雰囲気が凄くしますね…」
なぜこのタイミングなのか、どんな内容を持ってくるのか、遼太郎、詩乃に関わらず本陣内すべての者の頭にそんな考えが浮かぶも、とにかくその者の到着を待つ運びとなったのであった。
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戦国恋姫とバイオハザードのプレイ経験について
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