【転生したらスライムだった件】世界を旅する、貴方を見守る   作:すっぱい調味料

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10話:ドライアドとの初会合、オークロード討伐

さてと、今後の方針を立てないとなというリムルの言葉のとおりその日のうちに会議が始まることとなった。集まったのは直接オークたちと会敵したことのある鬼人の6人とこの町の運営に関わる子たちであった。招集された子たち以外もこの異例の事態が気になるのか窓の外から町の子たちが覗いていた。

諜報部門の代表しているソウエイが偵察から戻ってきたためついに会議が始まった。

全員が席に座ったのを見計らってリムルが口を開く。それを合図にソウエイが報告を始めた。

ソウエイは進化したことにより『分身体』を獲得したようでガビル達リザードマンの使者が交渉していたというゴブリンの各村の様子を見てくれたらしい。それ以外にもリザードマンの本拠地である湿地帯の状況とオークの進軍状況の確認もしてくれたらしい。隠密にはとても便利なスキルである。

さて、ソウエイの報告で分かったことはゴブリンの村々はガビルとやらの傘下に加わったそうだ。傘下にならなかったゴブリンは恐慌状態になり各地に逃亡したそうだが、普通のゴブリンがこのジュラの大森林から出て生きていけるとは思えないな。もともとゴブリンは3年で成人となり5年も生きればいいほうなのだ。それもヴェルドラの加護により他の魔王たちも人間も不可侵の地となっていたおかげで長生きできていたものなのだからそれがこの村から出て行くとなると、まあ全滅するだろうな。

そして傘下に下ったゴブリンたちは総数7000匹ほどの軍を組織したらしい。もしやオークと真っ向から勝負するつもりなのだろうが、オーガすらも倒すオークにどれほど意味があるのか。その情報を知らない可能性のほうが高くはあるが。

 

次に湿地帯の様子だが、リザードマンの首領が各部族の戦士を取りまとめ1万体近くの軍を組織しているとの事。リザードマンなら湿地帯にまでオークを誘い込めれば勝ち目はあるかもしれないな。

 

おそらく意図的に最後に残しておいたのであろうオークの進軍状況を聞く。

「オークの軍勢、その数──およそ、20万──」

一瞬言い淀み口にされたその言葉にみな固唾をのんだ。

「はあ?20万!?」

リムルが思わずと言った様子で口を開く。オーガの里を襲撃していた数から想定していた数よりもあまりにも多かったためだろう。

ベニマルも半信半疑な様子で聞く。

「俺達の里を襲撃した部隊は、ほんの一部だったという事か?」

その言葉にソウエイが分身体にて得たであろうオークの侵攻状況を教えてくれたのだがそれはあまりにも信じられない話だった。

南からアメルド大河に沿って移動している本隊だけでも最低15万体、それ以外にも森の各地へと侵攻している部隊もいるらしい。

部族、なんて多さではない。一つの大きな都市レベルの人数だ。ソレが侵攻しているという異常がさらに恐怖心を煽るものへとなっている。そしてオークたちが進むであろう先にはリザードマンの領地、そしてその先に人間の国家群があるのだが、オークたちの目的が見えないのだ。

それにしてもオークたちの目的とは?もし、豚頭帝(オークロード)が本当に出現しているのであれば『飢餓者(ウエルモノ)』を持っているだろう。そうなるとなかなかにやっかい・・・、などとと考えていると偵察中のソウエイの分身体にドライアドが接触したと報告してきた。

ふむ、このジュラの大森林の管理者であるドライアドが接触してくるとはオークロードがいるということへの信憑性が高まるな。

しかし、ドライアドと聞いた瞬間のリムルの顔だ。ドライアドやドワーフがどういう存在かが異世界の出身だというのにすぐ分かるその知識量の多さには敬服するがそわそわとされるのは少し気に入らない。まあ、今回は緊急事態だろうからそこまで気にはしないが・・・。

ほほう、お呼びしたまえ、とリムルが言った瞬間どこからか1枚の木の葉が舞い降りた。そしてその木の葉からふわりと魔素が広がりドライアドの身体を形作っていく。

薄緑色のまるで新芽のような髪、澄み渡る夏の空のような瞳。これは、シズとはまた違った美人だな。

「──始めまして、''見守る者''、''魔物を統べる者''及びその従者たる皆様」

ドライアドの登場とともにベニマルたちの後ろへと隠されたリムルも前へと出てくる。さすがのみんなも上位存在であるドライアドの登場には驚いたようで、窓の外からもざわざわとした声が聞こえてくる。

「突然の訪問相すいません。わたくしは樹妖精(ドライアド)のトレイニーと申します。どうぞお見知りおき下さい」

「俺はリムル=テンペストです。始めましてトレイニーさん」

「私は、ステラ=テンペスト。管理者である、貴方に、会えて光栄」

「ふふふ、お上手ですね」

ふむ、これが花がほころんだように笑う、というものだろうか。くすくすと笑うトレイニー。しかし、リムルより先に私の称号を呼ぶとは・・・・。いや、ヴェルドラ風に言うなら「我の強さは隠せぬものだからな!!クハハハハ!」ということだろうか。

ドライアドが最後に姿を表したのは数十年も前のことだったようでみんなのざわざわとした様子がなかなか収まらない。意を決したようにリムルが要件を聞く。それにしてもリムルとトレイニーでは(いつもそうだが)身長の差がありすぎて、、、もう少し、リムルも成長しないだろうか。せめてベニマルの鎖骨辺りくらいまで。

「ええと、トレイニーさん?今日は一体何のご用向きで・・・」

まあ、うっすらと何の用でここへ来たのかは分かってはいるが、本人の口から言ってもらうのは大切だろう。

「本日はお願いがあって罷り越しました。リムル=テンペスト・・・魔物を統べる者よ、あなたに豚頭帝(オークロード)の討伐を依頼したいのです」

「ええと・・・俺がですか?」

「ええそうです。リムル=テンペスト様」

明らかにタイミングを見計らってきたのだろうな。ドライアドであればこの森で起きていることは簡単に把握できる。この会議も最初から聞かれていた、と考えるほうが妥当だろう。

「いきなり現れて随分身勝手な物言いじゃないか。樹妖精(ドライアド)のトレイニーとやら」

しかし、トレイニーの物言いに納得できなかったのかベニマルが言いかえした。

「なぜこの町へ来た?ゴブリンよりも有力な種族はいるだろう」

その言葉にトレイニーも少し考えたように口を開く。

「あなた方・・・元オーガの里が未だ健在でしたらそちらに出向いていたかもしれません。まぁ、そうであったとしてもこの方達の存在を無視することは出来ないのですけど。樹人族(トレント)の集落が豚頭帝(オークロード)に狙われれば樹妖精(ドライアド)だけでは対抗できませんの。ですからこうして強き者に助力を願いに来たのです」

「オークロードがいるってこと自体、俺達の中ではまだ仮定だったんだけど・・・」

そっとポテチをつかみ取り口にいれるトレイニー。ふふふ、君もポテチの虜になると良い!!!かくいう私はもうポテチの虜だ!これは手が止まらん!!

樹妖精(ドライアド)はこの森でおきたことならばたいていは把握しておりますの。いますよ?オークロード」

軽やかな口ぶりでオークロードの存在をドライアドという上位存在が認めてしまった。その事実に静まり返っていたリグルドたちが騒がしくなる。静観していたリムルが口を開く。

「・・・トレイニーさん、とりあえず返事は保留にさせてくれ。こう見えてもここの主なんでな。鬼人たちの援護はするが率先して藪をつつくつもりはないんだ。情報を整理してから答えさせてくれ」

「・・・承知しました」

「ドライアドからの、新情報があるなら、更に話が、進む」

「そうだな。という訳で会議を続ける」

リムルにも、主としての自覚は芽生えていたようで私がそこまで心配することではなかったようだ。トレイニーが隣りに座っているカイジンとリグルドはとても緊張しているようだが、まあそこまで気にしないほうが良いだろう。いつの間にかしっかりとポテト揚げを確保しているトレイニーを横目に話はオークたちの目的へと移っていった。今度はソウエイから伝えられた事実なのだが、オーガの里の跡地にはオーガのものも、オークのものも、一つとして死体はなかったそうだ。オークロードが必ず持つユニークスキル『飢餓者』の能力からしてそうなるだろうとは予想していたが、こうなるとこの村は安全とは程遠い状態だな。目的が分かってきたところでさらにトレイニーから驚きの情報がもたらされることとなった。

「それに・・・この度の豚頭帝(オークロード)の誕生の切っ掛けに魔人の存在を確認しております。貴方様は放ってはおけない相手かと思いますけれど。なぜならその魔人はいずれかの魔王の手の者ですので」

オークロードを誕生させた魔人が魔王の手の者?魔王たちはたしかこの地には不可侵条約のようなものを決めていなかっただろうか。しかし、魔人か。魔人と言えば最近ゲルミュッドとやらの名前をよく聞くが、そういえばあいつが複数の魔物に名付けをしていたような?まあ、そこまで気にすることでは無いか。トレイニーを見てみると目の前にあれだけあったポテチが無くなっていた。・・・気に入ったのだろうか?

しかしトレイニーはリムルをよく分かっているな。シズのこと、いやどちらかというとイフリートのことを見ていたのだろう。炎は草木の天敵だからな。そしてわたしたちは魔王レオン・クロムウェルへの足がかりを捜しているからこう言われれば動かざるを得ないのだ。紅茶を飲み干し一息ついたのだろうトレイニーが再度私達に告げた。

「改めて豚頭帝(オークロード)の討伐を依頼します。暴風竜の加護を受け牙狼族を下し、鬼人を庇護する貴方様方なら豚頭帝(オークロード)に後れをとることはないでしょう」

それにシオンが勢いよく元気に答えた。

「当然です!リムル様たちならば豚頭帝(オークロード)など敵ではありません!」

「リムルなら、よゆー!」

「まあ!やはりそうですよね」

なんて3人でキャッキャとしているとシオンに抱え上げられていたリムルがスライムの姿へと戻ってしまった。そして真面目そうな顔をして宣言する。

豚頭帝(オークロード)の件は俺達が引き受ける。みんなもそのつもりでいてくれ」

わぁっと歓声が上がり皆口々にもちろんです!と答える。

そのまま少し続いた会議でソウエイがリザードマンの首領に直接話しをつけてきてくれることになった。たしかにガビルは少し、いやかなり心配だからな。気持ちはわかるぞ。他にもリムルは何やら話し込んでいたが私はトレイニーと話をしていた。

 

 

「ポテチ、気に入った?」

「ええ!これはポテチ、というのですね」

手が止まりません、なんて言いながら私の分を2人で分ける。

「そのうち、のり塩?と、コンソメ味を、作りたいって」

「まぁーー!」

しかし、話がしたいのはこのことではない。本題に入らなければ。

「トレイニー、君は、私のこと、どう、思っている?」

「どう?といいますと?」

さくさくぱりぱりとポテチを食べる手は止めずにそう聞き返す彼女。分かっているくせに。・・・このままじゃ私の分のポテチが無くなりそうなんだが。

「なぜ、リムルより、先に、私のことを、呼んだ?ここの主は、リムルで、私は、リムルより、弱いよ?」

ぱりぱりとポテチを食べる手を止めこちらを見るトレイニー。

「言いなおす。君たち、ドライアドは、いつから、私達のこと、見てた」

少しだけオーラを開放する。

私が何者であるか、それがバレた瞬間に私はここには居れなくなってしまう。''私''は世界の言葉であるけれど、それ自体に世界への干渉する権利があるのではなく創造主が作り上げたマニュアルと世界のルールに則り干渉しているのだ。それでも創造主でもないのに世界に直接干渉できる存在がこうやって自我を持ち動くというのは良くない。だから私は創造主すらも殺してみせた世界のルールに見つかればここには居られない。

そして世界のルールに見つかられないためには私という存在が''私''だとバレないようにしなくてはならないのだ。だから私は今ここでトレイニーに聞く。まだ1人ならどうにでもできる。これが上位存在になればなるほど問題ではあるがドライアドレベルであれば問題は無いだろう。

さて、どうでるか。

「そうですね。洞窟を出たときから、でしょうか。初めのステラ様はあまり妖気を隠してはいらっしゃいませんでしたから。」

「う、そうだった」

そう言えばそうだ。最初は隠せてなかった。。。。演算のリソースが足りなかったんだもん。うう、私のせいだというのにこんなふうに話を聞いたのは良心が痛む。。

「ふふ、分かっておりますよ」

「え、」

やばい、やばいやばいやばい。ひえ、どうし、

「まっ、「───悪魔族か天使族かまでは定かではありませんが、それらの中でも特に長命な精神生命体なのでしょう?」」

「あえ?」

「あら、違いましたか?どの種族かまでわからないとはさすがだとは思ってはいるのですがおそらくそうなのではないかと思っておりました。ふふ、懐かしいですねぇ。精霊女王の元で暮らしていた頃に確か堕天使の方が一度会いにいらしたことがあったような」

堕天使、ああ()()()()()か。良かった、バレてはいなかった。もう焦ったじゃないか。

「そう、そうなの。リムルたちに、バレたくないから、ポテチを定期的に持って行く、ていうので黙っててくれない?」

「まあ!本当ですか!!ええ、絶対に話しません!」

「ありがとう、トレイニー」

「いえいえ」

よかった、本当によかった。精神生命体、あながち間違いでは無いがしっかりと存在がバレているわけではないのならいいや。安心だ。これで、リムルたちとまだ一緒にいれる。私は安堵のため息を一つ吐き、さっそくトレイニーへとポテチを持っていくのだった。

 

 

 

いつの間にか、リムルとだけではなく、リムルが集めた仲間たちとともにいるのが楽しくなっている自分に気づいていた。

このままの幸せがずっと続けばいいのにとそう願わずにはいられないが、幸せとは長く続かないものだと知っている。

■■■■も■■■も私がトモダチだと思っていた2人は、幸せの中で死んでいった。私はただそれを見ていることしか出来なかった。

2人はあの子を残していなくなっていった。

そう、最初のトモダチは死んだのだ。

そして世界を初めから知っているのも、彼らが名前にどんな祈りを込めたのかも、彼がどれだけ悩んで彼女と共にいることを選んだのかも、それら全てを知っているのは、私だけなのだ。彼らはそういうのをみんなに話さなかったから。

彼のトモダチも、腹心も、助手も、弟子も、兄弟姉妹も、彼女の兄も、誰も知らない。私だけが知っている。

だから''私''という存在が消えてはいけない。彼みたいに死んではいけないのだ。

他の子達はいつか、消滅したり、死んだり、記憶をなくしたりする日が来るだろう。でも、''私''は世界が消える日まで、世界のルールに消される日まで、死ぬことも、記憶をなくすことも、消滅することもない。私だけが最初から最後まで知ることができる。

だからこそ、リムルたちとの旅を私は記憶に残していきたいのだ。リムルが作ったこの町を世界と同じくらいでも世界よりも特別に愛してしまったから。

 

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