【転生したらスライムだった件】世界を旅する、貴方を見守る 作:すっぱい調味料
牙狼族との戦闘から一夜明け眠る必要のないリムルは牙狼族をどうするか一晩中考えていたらしい。ゴブリンたちと牙狼族を二人一組のペアにし面倒を見るようにと考えたようだ。そしてリムルはいきなり名前つけるだなんて世迷い言をいい出した。
「リムル、全員に名前を、付けるつもり?」
「え、そうだけど?」
本気なようだ。みんな喜んでいるし言ってしまったことをなかったことには出来ないだろう。顔が引き攣るのを感じる。それもそうだ。名付けという行為には魔素が必要で、下手をするとリムルが消滅する可能性すらある。竜種などならまた別だろうが、普通全員に付けるなど馬鹿とも言えるような行為ですらある。どう止めようかと悩んでいるとまた『見守人』が囁く。ヴェルドラとリムルとの魂の回廊についての解析なんかをさせていたのだけどなにか発見でもあったのかしら。いや、今はそれどころではないのに。
《スライム、個体名:リムルが魔素を大量消費した場合でも竜種、個体名:ヴェルドラより供給が可能。これは人魔族、個体名:ステラも同様。よって名付けをした際の魔素の消費による消滅の心配は不要》
え、、、?そんな事が可能なの?頭を抱えそうになる事実だが、そうなのであれば心配はいらないか、、、?魂の回廊、なんて面白いものだ。同格、というふうにする魔物はそうそういないし、トモダチとして同じ名前を共有する私達だからこそ出来ることだろう。まあ、消滅の心配がないなら問題はないかしら?
「私は、リムルの隣で、聞いてるからね」
え、手伝ってもいいじゃん!なんて言っている常識知らずなスライムは無視して私は隣で名付けを見ていることにする。それに魔素の消費によってリムルにどんな影響があるかはわからない。そこに関しては心配だから何かあったときにすぐ動けるようにしておいたほうがいいだろうし。名付けは手伝わないと念を押して隣りに座っていると、そのままリムルはどんどん名付けをしていった。途中村長、いやリグルドから心配されていたがこれが普通の反応だろう。下手するとリムルは自分達で名付けすればよかったのに、とか考えていそうだ。
やっぱり名付けされるというのは嬉しいのだろうな。切り株に座りリムルを膝に乗せたままみんなが名付けされる様子を眺めるがみんなそわそわととても嬉しそうにしているのだ。なんて可愛いのだろうと思いながら眺める。そして牙狼族の元ボスの息子であった狼にランガ、と名付けた瞬間、リムルは溶けてしまった。
「リムル!?」
みんな口々にリムル様、リムル様といい駆け寄ってくる。皆不安そうな顔をして溶けたリムルを覗き込んでいる。なぜ溶けたのか?それは簡単。リムルは名付けをしていたのだからそれが理由だとは明らかだ。確かに消滅の不安はないと予測は出したがそれが本当に正しいのかと不安な気持ちになる。''私''の予測が間違っていた事は無いのに今の私は本当に間違っていないのかと心配になる。
《スライム、個体名:リムルが
『大賢者』?リムルの持つユニークスキルだったと記憶しているが、『大賢者』の予測?つまりリムルはこうなることを予測していたということ?どういうことかしら?私が思っていたよりリムルは策士なのかもしれない。先に言っていてくれたら良かったのにと思わなくは無いが。
とりあえず今の私に出来ることはこの場を収めることだろう。主がいなくなるかもしれないという恐ろしさは''私''も知っているから。
みんな、と声を掛けると数多の目が私の方に向く。今のリムルは魔力感知も切れている。つまり私はその分まで警戒しなくてはならない。助力すると言ったのだから、私が守らなくてはならない。
そう思いつつ、一息ついて口を開く。
「リムルは、今、休憩している。3日ほどで目を覚ます、から安心して」
その一言でみな、詰まっていた息を安心したように吐き出した。それから、と私はさらに続ける。きっと言わなくてもこの子達はわかっているだろうけど。
「リムルが、起きるまでの間、私達でこの村を、守らなくてはならない。だから、先程の二人一組で、村の周りを警戒、するように」
警備班の編成はみんなですること、これはリムルを守る大事な仕事でもあるが喧嘩しないで元気な者から優先的に編成すること、他にも家を立て直せる分は立て直すことなどリムルのため、という言葉を随所に織り交ぜ話す。
魔力感知を最大にしているから本当にゆっくりとした話し方になってしまったがみんなはちゃんと最後まで話を聞いてくれた。そしてリムルのため、というのが効いたのか解散、というととても嬉しそうにみんなそれぞれ自分ができることを探しに行った。
さて、この溶けたようなリムルをどうしたものか。魔力感知を最大にした影響で私はほとんど動くことが出来ないので近くにいたハルナを呼び寄せる。
「ハルナ、私はここから動けない、からリムルを、任せる」
みんなでお世話してあげてとお願いすると元気な返事が返ってきた。これでいいだろう。それにリムルも男の子なのだから最初に起きたときにいるのは女の子のほうが喜ぶのではないだろうか。
「それと、リグルド。私は、ここで、リムルの代わりに、警戒をしている。何かあったら、言って」
「ありがとうございます!ステラ様!」
そんなに感激したような感じで要られても困るのだけど、なんて口には出さないが苦笑しながらこの3日間を過ごした。
特に話しかけられることはなかったがこの村の主でありみんなの主はリムルであるはずなのにまるで捧げ物かのように果物なんかを渡された。みんなの主はリムルだろう?と聞くと彼らにとっては私とリムルはどちらもこの村を救ってくれた主なのだと。そんなことを言われたって困るし、所詮私はリムルを見守るだけの存在だと言ってもゴブリンたちは聞いてはくれなかった。ランガたちにも聞いたが、私はリムルと同じ名前を共有するものであり同じように強大な力を持つものだからと。だれも否定してくれなかったのが寂しいがリムルと同じ位の力だと感じ取られているのであれば満足だ。
そんなやり取りをしていると世界の言葉が響き、この村のゴブリンたちがそれぞれ、ホブゴブリンとゴブリナにランガ率いる牙狼族は
リムルが驚く姿が目に浮かぶようでリムルが起きるのがとても楽しみだったのだがやはりとても驚いてた。
「おはよう、リムル。調子はどう?」
「あ、おはよう。じゃなくて!なんかみんな全然見た目ちがくない!?」
「進化したから」
「あ、そう」
て、進化した!?なんて騒ぐリムルを抱えあげる。
リグルドが宴の準備ができたと呼んでくれたので広場の方へ向かうことにしたのだが外に出て進化したみんなをリムルに見せ行った際にランガがあまりにも喜びすぎて千切れんばかりに振った尻尾の風圧で飛ばされそうになった。リムルが叱るとしょんぼりと体を小さくしていてとても可愛らしいのだが随分と大きくなったものだ。
ランガは進化してすぐに私のところに顔を見せに来てくれたときも、さあどうぞ触ってくださいと言わんばかりに私の足元にその大きくてもふもふとした体を寄せていたのでこう、狼というより犬の気質が強い気がする。おそらく私がリムルを撫でくりまわしていたのが理由なのだろうが野生とは、という気持ちになるな。みなリムルが起きたのが嬉しい様子で私も嬉しくなった。この楽しい感じに身を委ねるのは意外と楽しい。
宴が始まりリムルはみんなを観察していたのだがなにか思うところがあるようで悩みつつ夜通し続く宴を楽しんでいた。またリムルは私に考えていることを教えてはくれないようだが。
宴を楽しんだ翌日、リムルはみんなを広場に呼び出した。呼び出してみんなが静かになるまで5分立ちました、といきなり言い出してなんなのかと思ったがリムルの持ちネタ?らしい。
そのあとはちゃんと真面目に大所帯になったからルールを決めると言い出した。たしかに人が多くなった場合人間であればルールがないとまとまりがなくなるだろうが魔物にとっては主に仕える、というのが絶対的なルールなのでそれは決める必要があるのだろうかと疑問に思う。やはり、リムルには魔物の常識を教えてあげたほうがいいかもしれないな。というか、リムルは決め事をするときいつも私に相談をしてくれない。だから私もリムルに聞かれるまで魔物の常識なんて教えてあげないのだ。内心、怒りながらリムルの話に耳を傾ける。
リムルが決めたルールは3つ。
1つ、仲間内で争わないこと。
2つ、進化して強くなったからと言って他種族を見下さないこと。
3つ、人間を襲わないこと。
はっきり言って異質だった。なぜなら魔物にとって強さは絶対だからだ。争わない、見下さない、襲わない。魔物の本能というか、常識というかそれらに真っ向から反発するようなものなのに。それでも強者であり主であるリムルが言ったことは絶対なのでリムルが人間を襲わない理由を人間が好きだからといえば、理解したと答えるに決まっているけど。
なんて思っていたらリムルから更にまさかの発言をされた。
「というか、ステラも人間だろ?」
「え?」
「え?」
「リムル、私は、人魔族。もう人間ではないけど」
「そうなの!?」
ま、まあ、人間は集団で生活しているから襲われたら数で押されて危ないし!ともっともらしい理由をつけていたが本音は人間が好きだからだろう。だってリムルはもともと人間だし。
それ以外にもリムルはリグルドをゴブリン・ロードに任命したりして役割分担を考えていた。リムル的には君臨すれども統治せず、ということらしい。
リムルがリグルドたちに丸投げしたあと、村を見て回ったのだがリムルは全体的な村の文明力を上げることに決めたみたいだ。たしかに元人間であるリムル的に許せないものがあるんだろうな。洋服なんかの文句も言っていたがそうなると技術者とのつながりが必要だな、なんて話になる。ここらへんの地域ならドワーフだろうか?とリグルドに聞いてみるとやはりドワーフの王国があるらしい。ドワーフと聞いたリムルがとてもソワソワしていて何故かほんの少し気に入らない気がする。
「ドワーフっていうと・・・あれか?鍛冶の達人というイメージの・・・」
「おおっ、ご存知でしたか」
なんてリグルドとリムルは会話をしている。鍛冶の達人というのが何かリムルの琴線に触れるのだろうか。
最終的にリムルが直接交渉に行くことになったようだ。そしてまるで私が留守番するのを前提としたように話をする2人。それも気に入らない。村のことも大切ではあるが私はリムルを見守っているというのに。
「リムル」
「あ、ステラ。ステラはお留守番しt「私も、行くから」え?」
「私も!行くから!」
「いやでもほら、初めて行く場所だし・・・」
「この村も、そうだった。それに、洞窟よりも安全」
「そ、それは、そうだけどさ、、、、、」
「リグルド!私の分も、準備任せた!」
怒る私にあたふたとするリグルド。なかなか意見を変えない私についにリムルは折れてくれた。
「もー、わかったよ!リグルド、ステラの分もお願いな」
はい!お任せください!と返事をリグルドがしてくれたがリムルは頭を抱えていた。
「なんかあったらすぐ帰すからな!」
「なんか、はない!」
ふふんと胸を張り答える。最近の私は何かがおかしいとそう感じながら。