【転生したらスライムだった件】世界を旅する、貴方を見守る 作:すっぱい調味料
という訳で、ドワーフの王国【武装国家ドワルゴン】に私達は向かうことになった。
リグルドは宣言通り、昼までに準備を整えてくれた。
ドワルゴンに向かうのは私とリムルを含めて七組。ドワルゴンまではゴブリンの足で3日はかかるがテンペストウルフの足ならもっと早く着くだろうとは思っていたのだが、疲れは感じないが勢いがなかなかに激しい。それにテンペストウルフは崖なんかも駆け上っていくのだが会話が全くできないしリムルを見守るのもなかなか難しい。下手すると落ちそうになるのだ。まあ私の事はリムルが粘糸で体を固定してくれているのでそこまで心配はしていない。しかしこの流れ行く景色とスピード感、これが風になる、というものなのだろうか。そんなことを考えていると暇になったのだろうリムルが『思念伝達』でみんなにいろいろ聞いてきた。話を聞いていると、リグルの兄が魔族ゲルミュッドに名付けされたという話だった。兄とは進化の格が違うと言っていたがおそらくゲルミュッドは名付けに消費する魔素をしっかり制御していたのだろう。しかし、普通に考えて魔族がゴブリンに名付けをするだろうか。ゴブリンを下に見ているわけでは無いが部下にするのであればゴブリンよりも牙狼族とかオーガとかのほうが妥当だと思うのだが。リムルの興味はランガたちに移りリムルはやっと魔物にとっては勝てば正義なのだということを知ったようだ。その後も他愛もない話をしつつドワルゴンへ進むことになった。しかしこの風になる、というのは癖になりそうだ。
ゴブリン村から出発してから丸3日。
カナート大山脈の麓に広がる牧草地。
山脈の大洞窟を改造した美しい都。
大自然が創造した天然の要塞。
武装国家ドワルゴンについに私達は到着したのだ。
ドワルゴンに入るのは私とリムルとゴブタの3人で残りは留守番となった。確かに腰布と大きい狼の集団じゃ悪目立ちするとは思うが私もドーリス式ペプロスと呼ばれる1枚布を紐なんかで止めているだけなので私もあまり変わらないのでは、とリムルに聞いたが私はまだまし、とのこと。いや、ふとももがとかブツブツ言っているがなんだか不埒な視線を感じたのでとりあず痛くはないだろうがぼてっと地面に落としておいた。みんなが気の毒だがチェックの列に並ぶことにした。2人とこれまた他愛のない話をしていたのだがこちらを見てニヤニヤと笑っている二人組がいる。絡まれなければいいのだが、なんて考えていたのだがぱっと見、ゴブリンとスライムと普通の人間が三人組で並んでいるのだ。いいカモに見えるのだろう。できれば上手く躱したいものだが、まあ常識知らずのリムルがいるのだ。無理だろうな、と遠い目になってしまう。
「お前だって魔物がいるのは嫌だろ?」
リムルは意外と感情で動くことが多いと私は最近知ったのだ。
「おい!話聞いてんのか!」
「私は、この2人と、並んでいる。うるさいから、黙って並んで」
わざと無視していたというのに。私が1人でここに来ていると思ったのだろう冒険者たち。ここが誰のお膝元かわかっていないのだろうか。
周りの並んでいる人たちもそれが分かっているからどよどよといった雰囲気が周りを包んでいる。どうしたものかと悩んでいるとリムルがゴブタに話しかける。これは、嫌な予感がする。
「ゴブタ君・・・前に俺が言ったルールの3つ目、覚えているかね?」
「リムル?」
「はいっす!「人間を襲わない」!」
「うむ。ではステラと一緒に少し離れて少しの間、目を瞑り耳を塞いでおくんだ」
「リムル!?」
「?よく分かんないっすが了解っす!」
「リムル、何するつもり?」
はい、ステラ様こっちっすよ!なんて言われ少し離れる。ゴブタはしっかり目と耳を塞いでうずくまっているが最初の嫌な予感があたったようだ。ああ、リムルが冒険者を煽っている。いつから俺がスライムだと勘違いしていた?なんて言っているがスライムになって120日と少しの正真正銘のスライムじゃないか。リムルがこの間の牙狼族のボスに擬態する。擬態したボスの姿も進化しているようだ。
『魔力感知』にドワーフ警備隊の姿が感知できる。
「リムルの、おばか」
「ご、ごめん」
その後、私達は警備隊の詰め所に連行されていた。しっかりとことのあらましを説明したがさすがにこれを無罪放免とはいかないだろう。
そしてなぜ狼に擬態できるのかと聞かれたリムルは二時間にもかかる攻防を兵隊と繰り広げていた。2人の熱い議論(私も少し口を挟みつつ)により、1人の美少女が、悪い魔法使いにスライムになる呪いをかけられる物語が出来上がった。
僕っ娘の、変身系幻覚魔法の天才少女とまるで姉妹のように育った幼馴染。僕っ娘の天才少女が魔女に呪いを受けて、それを解くために幼馴染と共に旅に出る話。
「よし!調書が完成した。協力感謝する!」
「それで、いいの?」
「ああ、問題はない!しかし、君たちの身柄は──」
バターーーン!
兵隊の言葉を遮るように、大きく扉が開かれる。そして、勢い込んで兵士が入ってきた。話を聞いている限り鉱山にアーマーサウルスが出たことによって鉱山夫が何名か怪我をしたらしい。それも怪我の具合は酷いのだとか。
(リムル、回復薬は、まだある?)
(俺もおんなじこと考えてたよ。人命救助は当然だしな)
そういうことではあるが、やはり人間としての意識がまだ強いようだ。別にいけど。
リムルが懐から出した回復薬を掴んで駆け出していった。ここから出るなよなんていうがリムル以外はここから出れないのでは無いだろうか。まあ、擬態できるスライムがいるのだ。何があるか分かったものではないし、大事な声掛けだろう。
そして糸を操る練習をしているリムルを眺めて1時間。先程の兵隊と共に3人のドワーフがリムルに頭を下げていた。薬がなければ死んでしまうところだったや、千切れかけた腕が治ったと言っていたが完全回復薬なのだ。当たり前だろう。そうだ、そうだもっとリムルに感謝するといい、なんて口には出さないが。
まあ、この一件で兵隊、もといカイドウには信用してもらえたようだ。翌日、私達はカイドウの紹介で鍛冶屋に行くことになった。カイドウが紹介してくるという鍛冶屋はなかなかにいい腕のようで、剣にうっすらとオーラが纏っている。
しかし、リムルはどこに行っても問題に巻き込まれるようで、カイドウから紹介された武具制作職人カイジンにも頼まれ事をされた。カイジンが言うには「魔鋼」を使った
「打ち上げぇ?」
リムルのお陰で納品ができたからと、打ち上げをすることになったらしい。綺麗なお姉ちゃんもいっぱいいるから!とかなんとかと話をしているのが聞こえる。私はリムルが道中買ってくれた靴を眺めていた。ある意味初めての贈り物だ。なんと嬉しいことかと、くるくると靴を履いて見て回る。
「いや、ほら、ステラもいるしさ」
ああ~、なんて三兄弟の声が揃う。
「リムル、私も行く」
「いや、ステラ、ほら、それは、ね?」
「私も、綺麗なお姉ちゃん、気になる!」
いや、でも、なんて言うリムルをどうにか説得する。
「ステラは女の子だろ!?」
「女の子と、いけないところに、いくの?」
「いや、それは、そうなんだけど、、、」
「ご飯、食べるんでしょ?」
「う、」
「1人は、いや」
「ゴブタも留守番だから!!」
え!なんてゴブタの声がする。仕方ない。今回は折れてあげようじゃないか。
むすーと頬を膨らませそっぽを向いて忠告しておく。
「リムル、また何か、問題起こさないように、気をつけること」
いい?と念を押す。
そして私とゴブタは2人で一晩明かすこととなった。
そしてやはりリムルは問題を起こしたらしい。忠告、したのにな。まあそんなこんなで凄腕の技術者を確保して私達はゴブリン村に帰ることとなった。ゴブタが召喚したテンペストウルフに乗ってリムルたちと合流したが風を感じるのはいいものだ。これは癖になってしまうな、なんて考えながら村に帰ることとなった。