【転生したらスライムだった件】世界を旅する、貴方を見守る 作:すっぱい調味料
ドワーフの王国から帰還した私達。二週間程しか経っていないというのに他の部族がリムルの噂を聞きつけてきたようで4つの部族、だいたい500名が私達の村に合流することとなった。しかしもともとは100名足らずが住んでいた村なわけでスペースが足りない。よって引っ越しをすることになったのだった。
リムルとともに今まで歩いてきた道を確認する。リムルが望む立地は水源に近く農地に適した開けた場所がある所だそうなのだが、そうなると
「最初、の洞窟から出た、すぐ近くの、場所辺り、、、」
「だな」
リグルドを呼んで洞窟あたりの情勢を尋ねるとあの周りは不可侵領域となっていたらしい。確かに洞窟の内部はヴェルドラから漏れ出た魔素により強力な魔物が跋扈していたから弱いゴブリンたちは近寄らないほうがいいだろう。リムルは今回勧誘してきたドワーフ三兄弟の三男、ミルドを建設班の班長に任命しリムルが元いた世界の知識を伝えて文明的な村を作ろうとしていた。つまり、いつもの丸投げである。
まあリムルには500名の名付けという大仕事が待っているからな。私?いつも通り隣で聞いているだけだが?
ドワルゴンからの帰還から四日ほど経ちすべての準備が済んだ私達は慣れ親しんだ場所、ヴェルドラが封印されていた洞窟へと向かうことになった。
もともとゼネコン?勤務だったというリムルのしっかりとした計画のおかげで区画整理は順調だ。リムルの住居を上方に建設し私の住居、族長たちの住居、住民たちの家といった感じになるらしい。リムルを抱えて建設の様子を眺める。この区画整理の良い点や悪い点をリムルが丁寧に説明してくれるのだがそこまで興味はないのでとりあえず頷いておく。リムルは名付け以外にも
「おお、このような場所に居られましたか!捜しましたぞ」
何やら焦った様子だが、街で何かあったのだろうか。リムルとリグルドの話に耳を傾ける。
「ちょ、お前!それは俺が狙ってた!!」
「酷くないですか?それ、私が育てていたお肉なんですけどぉ!?」
「旦那方、こと、食事に関しては、譲れないんですよ!」
「もぐもぐ」
なんて賑やかな声が聞こえる。
捕らえられているというのに随分と、こう、愉快なものだ。警戒心というものが無いのだろうか。いや、警戒心があれば
入口を見張っていた子たちに挨拶しつつ簡易テントに入る。
中に入って目に入ったのは口いっぱいに、野菜や肉を頬張っている冒険者たち。リグルドとともに上座に向かいリムルを降ろし、私も横に腰掛ける。
「お客人達、大したもてなしは出来んが、寛いでくれておりますかな?こちらが、我等の主、リムル様とステラ様である!」
リグルドはそう私とリムルを紹介すると私と反対の方に腰掛けた。
「「「え?スライムが!?」」」
「もぐもぐ」
3人は驚いていたが仮面を付けている子だけは肉を頬張っていた。この子は精霊の気配がする。
「はじめまして。俺はスライムのリムル。悪いスライムじゃないよ!」
ぶっ!!リムルの挨拶に仮面の子は飲み物を噴き出す。どうしたのだろうか?
ちらっと横目でリムルを見ると少しこの冒険者を怪しんでいるようだ。いや、でも、この子達はおそらく大丈夫なんじゃないだろうか。少なくとも仮面の子以外は今のリムルよりも強いとは思えない。それにスライムが言葉を話すことに驚いている可愛い子たちだし、と思っていると気を取り直したのか口々に感謝の言葉を口に出してきた。仮面の子は咳き込んでしまっていたけど。聞いたところによると3日ぶりの食事だそうでゆっくりと彼らが食事を終わるのを待つことにした。
食事を終わった彼らの話を聞くと出てくる出てくる情報の嵐。やはり警戒心というものがないのだろうか。
それ以外は魔物が国を作るのに問題は無いのかなんてこれからを考えるリムルの質問なんかに答えてもらったりしていたのだが、いきなりシズが意識を失いその場に倒れ込んでしまった。
周囲に妖気が漂うのを感じる──
仮面にヒビが入った瞬間に漂い出す熱をもった妖気。おそらく仮面が妖気を抑える役目をしていたのだろう。おもむろにシズが立ち上がり詠唱をつぶやき出す。この詠唱に、この熱、まさか召喚されようとしているのは
「イフリート、、、、?」
私が思い当たるのはそれくらいしか無い。それにこんなにいきなり過ぎる展開、さすがの私で見逃してしまう。しかし、私の呟きにギドは思い当たる節が有ったようだ。
「え、、、まさか、、、、爆炎の支配者───?」
これはまずい。本当に召喚されようとしているのがイフリートなのであれば問題しか無い。リムルだけなら無傷で逃げ出すことなんて簡単だろうがこの3人の冒険者がいるなら話は別だ。どうしようか、そう考えていた時、シズの顔から、仮面が落ちた。
「リ、リムル、これ、、、」
「ああ、さすがにやばそうだ」
吹き上がる炎。
空中に出現した3体の
晒されたシズの仮面の下。
爆風に棚引く黒い髪。
儚げなその顔にある本来優しげな眼差しを向けてくれるであろう瞳は邪悪な光を放ち、口元は殺戮への期待だろうか、歪んだように吊り上がっていた。
違和感と不自然さを感じた私達に世界の言葉が響く。
《ユニークスキル『変質者』を発動します》
同時にシズの姿が、炎の巨人へと変質していく。
ああ、これはやはりイフリートだ。今度は私のユニークスキルが警告する。
《警告。上位精霊【イフリート】の敵対を確認。逃亡を提案》
逃亡を提案だなんて私の並列演算のくせに簡単に言ってくれる。簡単には逃がしてくれないだろうし、何よりもリムルが逃げようとしていないのだ。私が逃げるわけにはいかないだろう。まあ、私も普段なら逃亡を選ぶだろうけど。
イフリート──万物を焼き尽くす、炎の支配者にして炎系の精霊としては王級に次ぐ最上位存在。物理攻撃は無効だし、イフリートレベルの精霊であれば半端な魔法は効かない。そして、この感じはリムルも感じ取っているようだが、シズがイフリートを操っているのではなく、イフリートがシズの体を依り代に顕現しているような妙な感じだ。正式に精霊女王に授けられたものではなく誰が無理やり宿した、と考えるほうが妥当だろう。
しかし問題はこの赤い衝撃波だ。熱を伴い建物を焼き尽くしていく。熱さ自体は感じないが肌がチリチリとした焼ける感覚を覚える。対話を試みたのかリムルがイフリートに問う。
「おい。お前の目的は何だ?」
「・・・・・・・・」
なんとなく分かっていたが対話は出来ないようだ。リムルの後方で爆発が生じる。ああ、リグルド達ゴブリンが頑張って作ってくれた建物が。。。。。
流石にまずいと感じたのだろう、リムルがイフリートの腹部に『水刃』を放つ、がすぐに蒸発してしまう。それに魔法以外は効果が薄い。なんならほとんど無いと言ってもいいレベルなのだ。
エレンと私の魔法が同時に炸裂する。
「
「
分裂したイフリートにぶつけていく。するとリムルがエレンが放った
そして、リムルが魔法を習得したによりすぐに
「
リムルが魔法陣に取り込まれ炎の柱に飲み込まれる。ランガが「主よ!!」と言っているがリムルには「熱変動耐性」があるので問題はないはずだ。はずなのに、
「あ、れ?りむる?」
なかなか出てこない?
そう思った瞬間、ヒュンという音とともにイフリートが拘束される。そうよね、まさか耐性があるって忘れてたなんてこと、無いよね。え、ない、よね?いやリムルならあり得る。なんてことだ、この大馬鹿者め。
「悪いなイフリート、俺に炎は効かないんだ」
シズさんを返してもらうぜ、というリムルの言葉と共にイフリートが捕食され、年老いてしまったシズの姿が現れる。いつの間にかその場には私とシズとリムルの3人だけが残っていた。しかしあの台詞、耐性を本気で忘れていたわけではないのか?もう、本当にリムルがわからないぞ私は。
イフリートとの戦闘から一週間、シズは眠り続けていた。今までリムルたちに割いていたリソースをシズだけに回して解析してみたが分かったことは、イフリートとの同化がシズの命を繋いでいたということだった。おそらく幼い子どもの頃に召喚されたかなにかの影響で身体が魔素を持て余していたのだろう。それを宿された精霊が上手く制御していたようだ。
目を覚ましたシズは語ってくれた。なぜこの世界に来てしまったのか。シズがこの世界についてどう感じていたのか。やはりシズは幼い頃にこの世界に召喚され精霊を無理やり宿されたらしい。きっと、辛い数十年だったのだろうと思う。私がそうであったわけではないから気持ちを想像することしか出来ないが、それでも心細いものだったのだろうなというのは''私''も少しだけだが気持ちが分かることだった。
そして語り終えたシズはリムルの中で眠ることを選んだ。リムルに【魔王】の1人、レオン・クロムウェルへの思いを託して。
「シズ、、私も、貴方の思いを受け継ぐわ」
シズは何も答えなかった。ただ、シワの増えた顔に更にシワを深く刻んでこちらを見ていた。
''私''は、この世界をずっと見てきた。''私''はこの世界も、シズがいた世界も、それ以外の数多ある世界のその全てもずっと見守り続けてきた。''私''にとって世界とは愛することはあれど、嫌うものではなかった。だからシズの世界が嫌いなのだと、でも憎いとは思えないのだというあの言葉は''私''が知らなかった、知ろうともしなかった気持ちであり、考えだった。きっと、''私''はこれを理解しなくてはならない。何故かそう感じる。''私''にとっての世界とみんなにとっての世界のギャップをすり合わせなければならない、寄り添い共に歩まなければならないと、そう
これは私の物語。世界を誰よりも知っていて、誰よりも世界を
ここから見守るだけの存在だったステラは自らも世界の一員なのだと少しづつ理解していきます。ヴェルダナーヴァとルシアに恋に落ちたように、本来上位存在である彼女もまた、人間という存在を上辺だけではなく深くまで理解していくことになるでしょう。