【転生したらスライムだった件】世界を旅する、貴方を見守る   作:すっぱい調味料

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8話:オーガの名付け、鬼人への進化

町に戻ると宴会への準備が進んでいた。今日はリムルが人化を得てから初めての食事なので食事にも気合が入っているようだ。しかし、オーガと町の子たちの仲を心配していたのだがそんな必要はなかったようで、巫女姫とゴブリナたちは香草なんかの話で盛り上がっていた。

 

日が暮れ、宴会がついに始まった。リムルの後ろに控え、ゴブイチから牛鹿の肉を受け取る。みな今まで味覚がなかったリムルが肉を食べる様子を凝視する。リムルの喉が肉を飲み込むように動き、彼の鮮やかな赤い舌が口元についたソースを舐め取る。

じっっ、とみなリムルのことを観察する。ぷるぷると震えるリムル。次の瞬間、

「うんっっっまぁぁい」

リムルは今までに見たことがない笑顔を浮かべた。それと同時にみんなのボルテージも上がり、声を張り上げる。皆踊り出しそうな様子で、ラッパを吹き鳴らす子なんかもいる。

さて、私も戴くとするか。はぐっ、と一口肉を噛みしめる。瞬間、口に広がる肉汁とタレの味。先ほど巫女姫がゴブリナたちと話していた薬草や香草が肉の臭み消しの役に立ったらしく、臭みも消え果汁の爽やかさで一気に味が引き締まっている。美味しい、美味しいなんていいながらみんなでどんどん肉を食べていく。町の小さい子たちとも肉を分け合いながらさまざまな果物のタレを楽しんでいく。個人的にはこのオレンジの爽やかな甘さが一番お気に入りである。しかし、食事を楽しんでいるとカイジンの驚愕の声が聞こえた。内容はオーガの里がオークによって蹂躙された件についてだった。私達も詳しい話を知っているわけでは無いので食休みも兼ねて話しかけに行く。リムルと相談はしていたのだが、オーガの若に私達と部下にならないかと提案を持ちかける。本来力の差が大きいはずのオーガとの戦闘でオークが勝つとは信じられず、異常事態としか言いようがない。そして、オーガの里がやられたのであればこの町だって決して安全とは言えないわけだ。

「そんなわけで、戦力は多いほうがこちらとしても都合がいい」

「・・・・なるほど」

オーガの若も流石に部族の長として悩んでいるようだ。それもそうだろう。生き残った5人の命を預かっているのだから。悩んで悩んで悩み尽くすくらいがちょうどいいだろう。しかし、私としては何があっても仲間にしたいので一言口を出す。

「衣食住の保証、だけではあるけど、オークが、君たちを、追いかけてこないとも、わからない。私達と、共にいれば、なにかあった時、共に戦えるし、守れる。ゆっくり考えて、君は、長なのだろう?」

きっとこれだけ言えばいいだろとその場を少し離れる。きっと、彼は力を求める。彼以外の子たちもそうだろう。彼らはこの提案を断ることはないとそう確信していたのだ。それは別としてだが話すのに飽きたし私も肉を食べたい。それに、巫女姫とも話をしたいのだ。ゴブリナ達に囲まれている巫女姫の元へと駆けより会話の輪に入る。その後は巫女姫やゴブリナ、紫髪のオーガの娘と会話や食事を楽しみ一夜を明かしたのだった。

 

宴会から一夜明けオーガの若は腹を括ったようだ。リムルに言われ若以外のオーガの子たちを呼びに行く。どうせリムルのことだ。また名付けをするつもりなのだろう。彼は配下になった証と言っていたが私の知る中で証となるようなものは名ぐらいしか思いつかない。文句を言うつもりは無いが心配なものは心配なので名付けのときは必ず私もそばにいることにしている。少しして、オーガたちを全員リムルの住居に集合させることが出来た。そしてやはりリムルは名付けを行うつもりのようで皆の表情が変わった。巫女姫が驚嘆したような声でリムルに進言する。最近、私もリムルに毒されているようだ。そういう反応が当たり前だったなと少し目を逸らしてしまう。

「お、お待ち下さい。名付けとは本来大変な危険を伴うもの。それこそ高位の・・・」

「いいからいいから。大丈夫だって」

ですが・・・と姫巫女は続けるがリムルにとっては手慣れたもので、そろそろ名付けに使う魔素の量を操れるようになっただろう。なったよな。。。?まさか、人数が少ないから大丈夫だとでも思っていないだろうな。オーガは上位種族なのだ。ゴブリンたちに名付けをするのとは全く訳が違う。

いや、でも、さすがのリムルでも分かっているだろう。なんて言ったって彼には頼れる『大賢者』がいるのだから。頬を伝った冷や汗を拭う。

リムルは巫女姫に俺に名付けられるのは嫌か?なんて聞いていたがそんな訳はないだろう。名付けとは魔物にとっては名誉的なことであり、手っ取り早く強くなるための行為の一つなのだ。彼らは強さを欲している。一昨日の戦いでリムルの強さはよく分かったはずだ。ならば強くなるためにここで名付けを拒む理由は無いだろう。

それに、''私''は魔物の名付け、という行為を世界に存在を残す行為だと認識している。名を持つことによって世界に種族として、集団として、ではなく個として認識されるのだ。だからこそ、名付けというものには魔素が必要なのでは無いかと考えていた。

人間だって似たようなものだろう。名に祈りを込め、希望を込め、願いを込める。つまり、名を持つのは愛されている、記憶に残っている証なのだ。

そんなことを考えていると少し、別の考えが浮かんだ。

もしも、もしもだが、魔物に付ける名前に意味を込めたらどうなるのだろう。

例えば私達テンペストの嵐。

例えば最古の魔王にして原初の赤(ルージュ)のもつクリムゾンの深紅。

そして''私''■■■■■■の天■。

そういった意味を込められた名を持つ者は特別に力を持つものが多いように感じる。そしてテンペストとクリムゾンはどちらも人間が付けた名だ。リムルは未だに人間としての考えで生きている。この仮説も、彼と共に歩めば分かる日が来るのだろうか。そんなことを考えているとリムルは6人に名付けが終わったようで、『見守人』が私に囁いた。

 

《スライム、個体名:リムルが低位活動状態(スリープモード)に移行。ユニークスキル『大賢者』より完全回復には1日が必要との予測》

 

終わった瞬間また低位活動状態(スリープモード)になっていたようだ。人化が解け、スライムの姿でまた溶けているリムルに驚嘆の声を上げる6人。なんだろう、もういつもの光景というイメージが強すぎる。さすがに3回目ともなれば慣れたもんだ。

「大丈夫、いつものこと」

「い、いつものこと、なのですか?」

流石に巫女姫、いやシュナの瞳が不安に揺れ動く。

「心配なら、町民に、聞いてみて。1日、くらいで、戻るでしょう。リムルのこと、任せました」

いつも通り町の警戒にあたろうと外に出ようとすると、ベニマルに焦ったように呼び止められた。

「え、いや、本当に大丈夫なのですか?」

「?ええ、私は、代わりに町の、警戒を、してくる。君たちは町を、回るといい」

「町の警戒を貴方が変わりにしないといけないのだろう!?」

「魔力感知が、切れている、だけ。もともと、リムルより、周囲の警戒は、している。問題はない。それに、私も、君たちより、強い」

「いえ、それは疑っていませんが、、、、」

なにか言いたげだがはっきり言えぬのなら気にしなくてもいいだろう。これで話は終わりだとテントから出ていく。あ、

「リムルのこと、1人にしないなら、問題はないから」

好きにしてねとてをふり、町の中心部へと向かう。町の中心に椅子をおき、魔力感知を全開にする。この状態だと相変わらず動くことすらままならなくなる。リムルはおそらく『大賢者』と同期させているのだろう。私も『見守人』と本来なら同期させるのだがリムルの異空間の解析に領域を取りたいので出来ないのがきつい。目を閉じ、警戒にあたっていると私に話しかけてきた子がいた。

「あれステラ様、どうしたんスカ?ここで寝たら流石に風邪引くっすよ!」

分かってはいたがゴブタだ。最近はドワルゴンに行ったときに使えるようになった影移動なんかもあり、警備隊の副隊長として頑張っていたと記憶している。少しお調子者の気があるが彼も彼なりに頑張っているのだ。

「リムルが、また名付けをして、寝てる。私は、警戒中」

だから問題があったときだけ話しかけてね、という意味だったのだが何を思ったのかゴブタは手に持っていた串焼きを差し出してきた。

「ゴブタ?」

「腹が減っちゃ戦は出来ぬっス!オレもお腹減ると仕事きつくなるんでステラ様もどうぞ!」

「そう、、、ありがとう」

ほら、こうやってゴブタは気遣いもできるいい子なのだ。そう、でも、クスクスと笑いながら一緒に腹を満たし、リムルが目覚めるまでの長いような短いような1日を過ごした。あ、彼は夜になる前にひざ掛けも持っててくれた。気遣いのできるいい男だ。まあ、リグルドが先に持ってきてくれていたのだが。

 

翌日、オーガだった子たちは皆、一様に鬼人へと進化していた。全体的に体躯が小さくなり、オーガのときより少しばかり若い印象を受ける。魔素量も増えているようで私は大満足だ。なぜなら鬼人とは本来オーガの中から稀に生まれる上位種族なのだ。これに満足しないでいつ満足するというのだろう。リムルのために少しづつ戦力が集まってきているのはいいことなのだ。一晩中というか1日中座っていた椅子から立ち上がり少し背筋を伸ばす。このポキパキ、といったのが疲れが落ちる感触で楽しい。

そして魔力感知で事前に知っている鬼人へと進化したみんなにそれぞれリムルの住居へと行くように伝える。『大賢者』の予測ではそろそろだろうから。きっとリムルは驚くだろう。そして最後に伝えに行ったクロベエとともにリムルのところへ向かうとタイミングはバッチリだったようだ。

ふふふと笑みがもれる。きっとこれならヴェルドラも喜ぶだろうし、リムルの中で眠っているシズも、少しはこの世界に興味を持ってくれるだろう。私にとって、大切なものが嬉しそうなのを見るのは、とても嬉しいことなのだ。

 

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