白皇に入学してから、約一年。高校生になってから、初めての冬休みが明日に控えたと時の事。
私、桂ヒナギクは喜んだらいいのか、怒ったらいいのか、頭を悩ませていた。
『来年から、姉妹校である文月学園が三年間休校する事になった為、文月学園の生徒を三年間、白皇学院の生徒として迎える事とする。尚、その期間中は文月学園にある、試験召喚戦争制度を白皇で行う事とし、白皇の生徒も試召戦争に参加するものとする』
こんな報告が、何故か白皇に入学して直ぐに愛歌さんに推薦された事により、一年生の段階で生徒会長をやっている私の元に届いたのだ。
明久と一緒に学校に通えるというのは、率直に言うと嬉しい。だって、彼は
けど、明久の友人である雄二君曰く、明久は”観察処分者”という、文月学園で問題児に与えられる”バカの代名詞”の称号を与えられたらしい。
そんな明久の通ってる学校が教育委員会によって三年間も休校を命じられたのだから、その原因となったのは明久ではないか? と思ってしまうのも仕方ないと思う。
と、私が不安になっていると
「ん? 電話?」
バイブにしていた私の携帯が震えているのに気がつく。
一応、まだ学校だから、使用は控えるべきなんだけど、偶に理事長達や先生方からの電話の時もあるから、私が誰からの電話か確認すると
「明久?」
電話をかけてきたのは明久だった。
「‥‥‥‥もしもし? 今度は何をやらかしたの?」
私はさっきの報告書の事で不安に思っていた所に、タイミングよく明久から電話が掛かってきたものだから、思わずそんな事を言ってしまった。
「何もしてないよ!? どうして僕が電話をする=何かやらかした事になるの!?」
「あ、ごめんなさい。タイミングの問題でちょっと‥‥‥‥」
どうやら、何もしていなかったみたいなので、私は直ぐに明久に謝る。
すると明久は直ぐに
「まぁ、別にいいけどね? 慣れてるしね」
なんて言ってくる。
このやり取りに慣れてるって会話はおかしいんじゃないかしら?
普通の人は、一言目に『何をしたの?』なんて言われたら、失礼だと怒るものじゃないかしら?
「そんな事よりさ? えっと、ヒナは白皇の生徒会長‥‥‥なんだよね?」
そんな事よりで、あっさり流せるなんて、本当にこの扱いに慣れているみたいね。
‥‥‥‥いったい明久は友達にどんな扱いをされてるのかしら?
「そんな事って‥‥‥‥まぁいいわ。―――私が生徒会長かって話だったわよね? それなら、私は生徒会長で間違いないけど、それがどうかしたのかしら?」
「ええっと。じゃあ文月学園の生徒が白皇に通う事になったって言うのも‥‥‥‥‥」
「もちろん知ってるわよ?」
「アウト―――――!!」
明久はそう叫ぶと直ぐに、電話を切ってしまった。
いったいなんだったのかしら? ‥‥‥‥まぁ、私としては明久が何もやってなくて、明久と一緒に学校に通えるなら、嬉しいからいいんだけど、あの態度はなんだったのか、少し気になる。
「アウトって事は、明久にとっては、想定外の事が起こったと言う事よね? ‥‥‥‥明久が嫌がるものか、何かかしら?」
私は今持っている情報だけで、何とか明久が何を確認したかったのか推測し始める。
もちろん電話して聞くって手段もあるのだけど、明久はおそらく私の追及を逃れようと、今頃は携帯の電源を切ってしまっているだろうから、電話しても意味がない。
帰ってから問いただすという手もあるけど、私は今気になって仕方がないので、その案も却下する。
「明久が普段から嫌がるものは勉強だけど、それは今は関係なさそ‥‥‥‥確か、試召戦争ってクラスに別れて行うのよね? それで一番賢い人達がAクラスで、一番悪いクラスがFクラスになるようにクラス分けをする‥‥‥‥当然、私達白皇の生徒も試召戦争を行う以上はそう言うクラス分けを行う事になるのよね?」
なら私が勉強するのは前提として、明久にも勉強させれば、二人ともAクラスに入れるって事なんじゃ?
「いえ、それよりも心配なのは補習常習犯の現生徒会役員の三人だわ。明久は日頃から勉強させてるおかげか、雄二君の話ではDクラス並みの点、調子が良い時はCクラス並みの点数が取れてるらしいけど、美希達はこのままだと間違いなくFクラスになるわね‥‥‥‥」
生徒会の役員がFクラスというのは問題がある。
正直、明久を勉強させて一緒にAクラスに入るというのもいいけれど、四人を一斉に勉強させるのは無理があるわね‥‥‥‥‥
☆
ヒナとの電話をブチり、急いで電源を切った後、僕は焦りに焦りまくっていた。
「どうしよう雄二!? ヒナは三学期から僕達が白皇に通うって知ってるみたいだ! 僕達ですらまだ話されてないのに!」
僕は目の前にいる、赤い髪の野生味たっぷりの顔をしている僕の悪友、坂本雄二に向かってそう叫ぶ。
「まぁ、向こうは天下の白皇の生徒会長だからな。俺達より先に話しを聞いてたしても、不思議はない」
「なんで白皇の生徒会長は、そんなに偉いんだよ! 僕等は偶々ムッツリーニの仕掛けた盗聴器から音声を聞き取って知っただけで、事情説明もなにもされてないのに!」
因みにムッツリーニとは、本名土屋康太の事だ。
小柄だけど引き締まった身体で運動神経もいいけど、普段から口数が少なく、エロには尋常ではない程の関心を持っているけど、本人はそれを頑なに否定し続ける姿から
「どうせ俺達には三学期になってから話す気なんだろう? 俺達が白皇に行く事になるのは、来年の四月からなんだからな」
雄二の言う通り、僕達が白皇に通うのは四月からだ。だから、教師としては別に今すぐ話す必要はないと思ってるんだろう。
これは別に僕としても構わない。
去年なんか実の母親の手により、当日に引っ越しを知らされ、引っ越しの事を知ってから一時間も経たない内に引っ越しをした事がある僕には、新学期が始まる一週間前にこの話をされても、対応できるだろう。
けど問題はそこじゃない。
そんな事は問題ではなく、本当に問題なのは
「まだ生徒に言わないなら、ヒナにも言わないでよ!! これ絶対ヒナの事だから冬休み勉強して一緒にAクラス入ろうとかいう奴だよ!」
ヒナが冬休み前に知って、目の前には長期休暇があると言う事だ。
これでは僕の冬休みの遊ぶ為の計画が全てつぶれる事になってしまう。
「というわけだ。秀吉、ムッツリーニ、冬休みは明久抜きの俺達四人で遊ぶ事にしよう」
「なんでさ!? 助けてよ!? 若しくは僕と一緒に勉強しようよ!? 僕を一人にしないでよ!」
「なんで俺達がお前に付き合わなきゃならんのだ。大体一人じゃなくてヒナギクと二人でだろうが」
「‥‥‥‥殺したいほど妬ましい」
「なら、ムッツリーニも一緒に勉強しようよ!?」
「‥‥‥‥俺に勉強する暇はない」
なんて薄情な奴らなんだろう。普通ここは「しょうがねぇな。付き合ってやるよ」か「しょうがねぇからヒナギクを説得してやっか」って言う所じゃない?
と僕が文句を言ってやろうとしたら
「じゃが雄二にムッツリーニよ。わしらが勉強せずに明久だけ勉強すると、最悪明久だけAクラスでわしらはFクラスになりかねんぞ?」
そう言って僕の味方をしてくれたのは、独特な言葉遣いと小柄な体。肩にかかる程度の長さの髪をゆったりと縛ったいでだち。今年一年ずっと見ていた僕でも、パッと見ると―――いや、じっくり見ても女子と間違えそうな可愛らしさの木下秀吉だ。性別は男ではなく、秀吉だ。(←ここ重要)誰が何と言おうと、秀吉だ。
ああ、秀吉。君だけが僕の味方だよ。
やっぱり持つべきものは、ブサイクな悪友より、美少女だ――
「だが、秀吉。勉強の監督をするのはヒナギクだぞ? それも赤点回避のためじゃなく本気でAクラスに入るための勉強だぞ?」
「明久よ。来年はクラスが違うようじゃが、来年も友達として宜しく頼むぞ」
清々しい程の手のひら返し。
「秀吉、君まで僕を裏切るなんて酷いよ! 信じてたのに!」
「そりゃそうだろう。俺達はお前がスパルタで勉強させらてるのを見てるし、ヒナギク自身が一日に五時間~六時間、毎日勉強してるのを知ってるんだぞ? そのヒナギクがAクラス目指して勉強するとか、俺達が耐えられるわけねぇだろうが」
ヒナは僕を除いて、基本的には勉強を教える時は相手の求めているレベルでの教え方をしてくれる。
例をだすと、赤点を回避したいならそれ用の勉強を教えてくれるし、80点くらい欲しいならそれ用の教え方をする。
つまり、ヒナが本気で僕等をAクラスに入れる気になったら、Aクラスに入るため用の勉強をさせられると言う事だ。
そんなのどう考えたって、参加なんてしたくないだろう。僕だって参加なんてしたくないし‥‥‥‥‥と言うわけで
「昔”神童”とか言われてた雄二なら問題ないでしょ!? というか、付き合わなくていいから僕を助けてよ!」
僕の本音は勉強に付き合えではなく助けて欲しい! なので、この辺りで本音を言って助けを求める事にする。
けど雄二は
「諦めろ。ヒナギクが相手じゃ分が悪すぎる。お前の勉強の邪魔したら、ヒナギクに何を言われるか分かったもんじゃない。‥‥‥‥‥‥それに何より――」
そう言って雄二は一度ためを作る。
なんだろ? 雄二は何を言うつもりなんだろう?
「俺はお前が不幸になるのが心底楽しくて仕方がない!!」
「最低だよ!! 雄二! お前は最低すぎる!」
なんて奴なんだコイツは! 人の不幸を嬉しそうにするなんて信じられない奴だ!
「明久、すまぬ‥‥‥‥‥」
「ん? どうしたの秀吉? ”すまぬ”って何か謝らなきゃいけないような事でも――」
僕が雄二を睨んで、今にも飛びかかろうとした時、秀吉が僕に携帯を渡してくる。
「ヒナギクから電話が掛かってきて思わず出てしまい、明久の声を聞きとられて明久に変われと‥‥‥‥ヒナギクが」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「いや、ホントにすまぬ。わしが悪かった、謝るからそんな無感情な顔をしてないで、早く電話に出てくれんかの‥‥‥? わしが怒られる‥‥‥‥」
‥‥‥‥ああ。僕には最初から逃げるなんて選択肢はなかったのか‥‥‥‥‥
この世には神も仏もいないんだね‥‥‥‥
僕は全てを諦めて、感情を殺して、秀吉から携帯を受け取りヒナからの電話に出る。
「もしもし?」
「あ、明久? アナタ携帯の電源切ってるだろうから、秀吉君の携帯にかけさせてもらったんだけど、やっぱり秀吉君達と一緒にいたのね」
はい。いましたとも。そして協力を仰いだけど、拒否されましたとも。
「さっき明久から電話された時に話したと思うんだけど、文月学園の生徒は来年から白皇にくるみたいなの」
知ってますとも。まず初めに確認の電話を入れたのは僕なんだから、そんな事は知ってますとも。
「それで、私は白皇の生徒会長として、しばらく生徒会役員の勉強を見ないといけないから、冬休みは泊まり込みになりそうなの。だから」
はいはい。僕もそこに一緒について行って、勉強させられるって事ね。
「明久はこの冬休みは自力で勉強してね? 多分いつもやってる勉強量にプラス一時間か二時間増やして毎日勉強すれば、なんとかAクラスにギリギリだけど入れると思うわ」
‥‥‥‥‥あれ? 僕も一緒に付いて行かないといけなかったりは‥‥‥‥
「もちろん、大晦日とかお正月には家に帰るから」
つまり、それ以外はヒナは家にはおらず、僕はヒナと一緒にいないと
「そういうわけだから、明久は自分でAクラスに入れるように勉強頑張ってね?」
「え、あ、うん。了解」
そう言って、僕とヒナの通話は終わり、僕は秀吉に携帯を返す。
さて、ここでさっきの電話のおさらいをしよう。なに、簡単な事だ直ぐに終わる。
まず、ヒナは大晦日と正月以外は家に帰ってこない。
そして僕は、冬休みの間はヒナに勉強を見られる事はない。
なら
「さて皆。大晦日と正月以外の日は遊びつくそうね?」
僕はしばらくの間、勉強から解放されたと言う事だ。
ああ。最初は地獄の冬休みだと思ったけど、最終的には天国な冬休みになりそうだ。
僕は、ヒナに勉強させられたせいで、赤点は一つもないから補習なんてものはない。
冬休みは本当に自由だ! 遊びまくってやる!
「なにやら良く分からぬが、明久も冬休みは遊べるようになったみたいじゃな」
「‥‥‥‥ヒナギクがそれを許すなんて不可解」
「明久の野郎、どんな手段を使ったんだ?」
皆が何やら言っているが、今の僕には別に気にならない。なぜなら
「明日から楽しい冬休み♪」
なんだから。
「さっそくだけど明日はどこで遊ぼうか?」
こうして、大晦日と正月以外は毎日遊んだ結果、冬休みの最終日に冬休みの宿題を大急ぎでやる羽目になり、最終的にヒナに勉強してない事がバレて凄い怒られる事となり、三学期は本当の地獄を見る事になった。
ヒナは三学期の間、学校では生徒会の人達を、朝学校に行く前の時間と、帰宅してからは僕の勉強を見ると言う「いつ寝てるの?」という驚異のスケジュールを見事にこなしてみせ、僕達は振り分け試験の当日を迎える事となった。
いかがでしたか?
今回も前回に引き続きプロローグでしたが、次話からは本編に入ろうと思います。
まぁ、要するにクラス発表ですね。
因みに、本作の明久達は、ヒナギクさんと言う才色兼備のスーパー美少女の存在により、行動や思考回路は原作のままですが、学力だけはかなり上がっている設定です。(特に明久はずば抜けて)
それでは今回はこの辺りで
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