僕等が昼食を取りあっている間に、昼休みもあと少しで終わりそうな時間なってしまったため、僕等は急いで教室に戻る羽目になり、作戦会議なんて全くできずにいた。
僕はいくら何でも、作戦もなしにDクラスと戦うなんて無謀だと思い、少しでも作戦の概要を聞こうと思い、雄二に声を掛ける。
「ねぇ雄二? 結局、僕等は作戦を聞いてないんだけど、Dクラス戦どうやって戦うの?」
「ん? いや、とくにどうって作戦があるわけじゃない。Dクラスごとき、今回のFクラスのメンツなら普通に戦っても勝てるだろうからな」
どうやら雄二の中では学校の最低成績者が集まるFクラスよりもDクラスは格下扱いのようだ。
「ならなんでDクラスと勝負したりするの? Dクラスに普通に勝てるならDクラスと戦う必要はないんじゃないの? 順番に攻めていくなら、まずはEクラスが先でしょ?」
「ああ。普通に勝てるって言うのはヒナギクがいたらの話だ。ヒナギクがいない場合は五分五分、奇策を用いないと確実に勝てる相手じゃないって事だからな。ヒナギクは今持ち点がゼロだろ? だからDクラスなんだよ」
召喚獣の点数は各教科、最後にうけたテストの点数がそのまま力になる仕組みになっている。
つまり、雄二が言っているのは最後に僕等が受けたテストである、振り分け試験を途中退席したヒナの召喚獣は今は零点だと言う事だろう。
因みに僕も途中退席だから、零点なんだけど雄二にとっては僕の点数は初めから戦力としてカウントされていないようだ。
まぁ、確かにヒナと比べられたら大した戦力にならないのは否定しないけど‥‥‥‥‥
「つまり、Eクラスは戦うまでもない相手で、最初の段階でヒナギクがいない場合、ほぼ互角であるDクラスが相手と言うわけじゃな?」
「そう言う事だ。ハッキリ言って、今のウチの戦力じゃイキナリAクラスには勝てないからな。戦うのは準備ができてからってわけだ」
秀吉の質問に答える雄二。
今までの会話を簡単に纏めると、このDクラス戦はAクラスに勝つための準備段階のようだ。
「とは言え、お前等の力を借りないとDクラスが相手でも勝ち目はない。お前等にはしっかり働いてもらぞ?」
「それは構わんが‥‥‥‥‥具体的にわし等は何をすればよいのじゃ?」
「ああ。それはだな‥‥‥‥‥‥‥」
☆
雄二の作戦を聞き終えた後、午後の授業が始まる合図であるチャイムが鳴り響き、僕達FクラスvsDクラスの試召戦争が始まった。
チャイムが鳴るとすぐに雄二は皆に向かって声を張り上げる。
「野郎ども――! 準備はいいか!?」
『『『おおぉ!!』』』
「よし! ならば女子と仲良くなるためにも逝ってこい!!」
『『『おおぉ!!』』』
雄二の号令の後、クラスの大半のメンバーが戦場へと向かって教室から出て行く。
「ではわし等も行くとするかの」
「そうね。アイツ等だけじゃ直ぐに全滅しそうだしね」
「‥‥‥‥‥‥行ってくる」
Fクラスの大半が出動してから、少し遅れる形で秀吉、島田さん、ムッツリーニも戦場へと向かって教室から出て行き、現在Fクラスに残っているのは僕と雄二とヒナを含めて10人程しかいなかった。
「なんか一気に教室が殺風景になったね‥‥‥‥‥」
「まぁ、ほぼ全員を出動させたわけだからな。お前とヒナギクも早く補充試験受けてこい」
補充試験とは、文字通りテストの点を補充できる試験の事だ。
これは誰でも受けられるテストなんだけど、一つ注意するべき事がある。
それは一度テストを受けてしまうと、そのテストの点がどんなに悪くてもそのテストの結果の点数が召喚獣の力になってしまうと言う事だ。
つまり、点数を回復しようとしてテストを受けても、そのテストの結果次第では点数が減る事もあると言う事だ。
まぁ、今回は僕もヒナも点数は零点だから、テストを受けて点が下がるなんて事はないんだけどね。
「ええ。じゃあ私達は試験を受けてくるから、その間しっかり頑張ってね?」
「こっちは大丈夫だから早く行け」
こうして僕とヒナは試験受けに教室を後にして、補充試験を受けに行った。
それにより代表である雄二の護衛の人数は更に減る事になるので、正直不安な気持ちもあるけど、雄二が大丈夫だと言うんだから、きっと大丈夫なんだろう。
それに持ち点のない僕が残ってもできる事はなにもない。
と言うわけで、僕等は急いで試験を受けに行ったのだった。
☆
場所は変わってFクラスvsDクラスの最前線。
Dクラスは下位のクラスであるFクラスを舐めているのか、それともFクラスの人数が極端に多いのか、若しくはその両方が原因なのか、人数の上では圧倒的にFクラスの方が多かった。
そのため、最前線でのファーストバトルはFクラスが優勢に進めていて、士気もFクラスの方が高い状況だった。
「この調子なら、何とかDクラスを倒せそうね」
「じゃがDクラスもバカであるまい。こちらが数で押してくると分かったら、向こうも人数を投入してくるじゃろうって」
最前線に配置された島田、秀吉は状況を正確に把握して、しっかりとDクラスの事を分析をしていた。
もちろん相手の動きに注意しているのは、彼女達が作戦を考えて行動するためではない。
彼女達が敵の動きに注意して分析しているのは自分達が作戦を考えるためではなく、雄二の作戦を実際に行動に移すタイミングを計るためだ。
「その時は作戦を開始すればいいんでしょ? 土屋、準備はできてるの?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥問題ない。すでに配置済み」
「さすが仕事が早いの」
「‥‥‥‥‥‥‥これくらい当然」
ムッツリーニが仕事を終えている事に驚きを見せる島田と、さすがだという反応を見せる秀吉。
この二人の違いは、ムッツリーニが裏方の仕事をするのが以上に早い事を知っていたか、知らなかったかの差だけだろう。
試召戦争が始まって、たかだか10分やそこらで全ての準備を終えてしまうムッツリーニが特殊なだけなのだから‥‥‥‥‥‥
3人が暢気にしていると
『ほ、報告! 敵が人数を大量に投入してきました!』
伝令役の一人が三人に報告を上げる。
どうやら秀吉の予想通り敵は数には数で勝負をするつもりのようだ。
「行くわよ木下、土屋!」
「承知じゃ!」
「‥‥‥‥‥‥分かっている」
報告を聞いて表情を変える三人。
これからセカンドバトルが始まるのに気を引き締めたような表情だ。
『いたぞ!! Fクラスの奴らだ! 一気に攻め込め!!』
『『『おおう!!』』』
『坂本の首を取って、さっさとこんな勝負終わらせるぞ!!』
その三人の前から攻めてくるDクラスのメンバーも本気で、一気にFクラス代表である雄二を倒すつもりのようで、しっかりと気合が入っていた。
「島田、作戦開始じゃ!」
「‥‥‥‥‥‥‥数学の長谷川先生を用意した」
「了解!
島田の声を合図に応えて島田の足元に幾何学的な魔方陣が現れる。これは教師の立会いの下にシステムが起動した証だ。
肝心の島田の召喚獣の姿はと言うと、軍服姿で手にサーベルを持っている以外は島田にそっくりの姿だ。ただし、身長は約80センチ程度だが‥‥‥‥‥
「わし等も続くぞ、ムッツリーニ!
「‥‥‥‥‥‥‥‥
秀吉とムッツリーニも島田に続いて召喚獣を召喚する。
秀吉の召喚獣は袴姿に薙刀を持った姿で、ムッツリーニの召喚獣は忍者装束を着て、武器は小太刀を二本持った姿だ。
「「「
三人に続いてDクラスの生徒も召喚獣を召喚するためのキーワードを発する。
それによりDクラスの生徒も召喚獣を出してくる。
数学
Fクラス 島田 美波 184点
木下 秀吉 103点
土屋 康太 79点
VS
Dクラス 鈴木 一郎 80点
笹島 圭吾 76点
中野 健太 64点
「なっ!? 184点!?」
「なんだよその点数! そんなのBクラス並みじゃねえか!」
「他の二人も本当にFクラスか!? 何でこんな奴等がFクラスなんかにいるんだよ!?」
Dクラスの生徒達は島田の点数に驚きを隠せないで、完全に動きを止めていた。
まぁ、Fクラスと戦っているのにBクラス並みの点数を持っている生徒が自分達の前に現れたら、当然の反応だろう。
「今よ! 作戦通り、敵が固まってる間に、一気に倒すのよ!」
「任せるのじゃ!」
「‥‥‥‥‥‥了解」
島田の声を合図に一気に攻めかかる秀吉とムッツリーニ。
Dクラスの生徒はほとんど何もできずに一瞬で点数を失う事となった。
Dクラス 鈴木 一郎 DEAD
笹島 圭吾 DEAD
中野 健太 DEAD
「そ、そんなバカな‥‥‥‥‥‥」
「なんでこんな奴らがFクラスなんかに‥‥‥‥」
Dクラスの生徒三人は信じられないといったような表情だ。
当然である。
成績最低の生徒が集まるFクラスに自分達と同じくらいの成績の生徒と、自分達より点数の高い生徒がいるだなんて普通は考えもしないだろう。
ましてや振り分け試験が元になっている勝負で、Dクラスよりも点が高い生徒がFクラスにいるなんて誰が予想できようか。
「ウチは帰国子女だから漢字が読めず、問題文が分からないから他のテストの点が悪いだけで、数学だけならBクラス並みの点数はあるのよ!」
「まぁ、わし等は偶々ヒナギクに教えられた問題が数学で大量に出たから、今回は数学だけ極端にできただけじゃがな」
「‥‥‥‥‥‥‥運も実力の内」
つまりFクラスの作戦とは、元々数学が得意な島田と、今回たまたま数学の点数が高かった秀吉とムッツリーニを主戦力に数学を使ってできるだけ敵を減らしてつつ時間も稼ぐと言う物だったのだ。
Fクラスの作戦通りに事が運んだことで持ち点がゼロになったDクラスの生徒達が悔しがっていると
「戦死者は補習!!」
『なっ!? て、鉄人!?』
さっきまでは姿どころか影すらなかったのに、突如鉄人こと西村宗一郎が現れる。
試召戦争のルールとして持ち点がゼロ、つまり戦死したものは試召戦争が終了するまで鬼の補習を受けなければならないのだ。
そして、その監督が鉄人なのだ。
「戦死者は試召戦争が決着するまで補習室で、補習を受けてもらう!」
『い、いやだぁぁぁ!! 誰か、誰か助けて‥‥‥‥っ』
『た、頼む! 見逃してくれ! あんな拷問堪え切れる気がしないんだっ!』
「拷問? そんな事はしない。これは立派な教育だ。補習が終わる頃には趣味は勉強、尊敬するのは二宮金次郎、といった理想的な生徒に仕上げてやろう」
『それはもはや洗脳――あ、ああぁぁぁ!! 誰か! 誰か助けっ――嫌だぁぁぁ――(バタン、ガチャン)』
‥‥‥‥‥‥Dクラスの生徒は鉄人の手によって鉄人の根城である補習室へと連れて行かれてしまった。
この光景を見た三人は恐怖で言葉を失っていた。
三人は今の光景を見て、思わず想像してしまったのだ。自分がもし戦死した時どうなるのかを‥‥‥‥‥‥
「‥‥‥‥‥戦死しないように気を付けながら戦いましょう」
「‥‥‥‥‥どうかんじゃ。時間稼ぎのために鬼の補習を受けるのは割に合わん」
「‥‥‥‥‥割に合ってても補習はごめん」
このような出来事が三人が戦闘を始めてから一発目で起こったりしたのが、それでも三人は若干慎重になりつつも、数学という自分達の優位なフィールドで見事に時間稼ぎをして、自分達の仕事をこなしていると、そこでFクラスにとっては予想外の出来事が起こる。
『長谷川先生、長谷川先生。至急職員室までお戻りください。お電話ですので至急職員室にお戻りください』
イキナリ長谷川先生を呼ぶ放送が鳴り響く。
その瞬間、待ち構えていたかのようなタイミングで直ぐに長谷川先生に声を掛けるDクラスの生徒。
「長谷川先生、電話なら相手の人をあまり待たせない方がいいですよ。ここは化学の布施先生を連れてきてるので、布施先生と変わってください」
「そうですね。電話が掛かって来たなら仕方がないですね。布施先生、後はお願いします」
「分かりました」
放送で呼ばれた長谷川先生の代わりDクラスが用意したと言う布施先生が立ち会い人になったため、フィールドが数学から化学へと変更される。
「‥‥‥‥‥‥っ! やられたっ!」
「ええ!? これじゃウチの得意な数学で勝負できなくなっちゃうじゃない!」
「このタイミングで長谷川教諭に呼び出しとは、偶然にしては向こうにとって都合がよすぎる。これはおそらくDクラスが仕掛けた罠じゃろうっ! 正直、このままではマズイぞ!」
化学
Fクラス 島田 美波 53点
木下 秀吉 62点
土屋 康太 47点
VS
Dクラス モブ1 89点
モブ2 97点
モブ3 81点
秀吉の言う通り、Fクラスは一気に不利な状況に陥っていた。
点数が下回ったことにより、相手よりも召喚獣のスピードも落ちて、被弾も多くなりじわじわと点数も削られていくようになってしまい、さらに戦力差は開く一方で、Fクラスの最前線メンバーが壊滅するのも、もはや時間の問題と思われた時の事だった。
「
突如、一人の援軍が現れた。
化学
Fクラス 吉井 明久 120点
島田 美波 31点
木下 秀吉 21点
土屋 康太 12点
VS
Dクラス モブ1 DEAD
モブ2 DEAD
モブ3 DEAD
『『『な、なに!?』』』
そこに現れたのは、まだテストを受けているはずの吉井明久だった。