『工藤信也、戦死!』
『西村雄一郎、総合残り40点です!』
『森川が戻ってこない! やられたか!?』
僕等が清水さんを補習室送りにした後、僕等は他のメンバーの救援に向かって、互いに戦力を削りあいながら、僕等は時間稼ぎに徹していた。
「工藤君は可哀想だけど諦めて、工藤君には誰か援軍を! 森川君の生死の確認も急いで!」
『『『了解!』』』
科目変更を複数回行い、僕も何とか時間を稼ごうとこの戦場で耐え忍んでいたが、次々と仲間の戦力が消えていく報告があがり、正直そろそろ限界だった。
このまま作戦開始時間まで、この戦場を保つ事ができないなら、撤退を始めてギリギリの防衛ラインまで下がって、クラス代表である雄二を護衛している皆とも合流して、戦力を増やすしかないか‥‥‥‥‥‥‥
と、僕が撤退する事も考慮し始めると
「明久! もう少し堪えろ!」
「待たせたわね、明久! もう時間よ!」
「雄二! ヒナ! 援軍に来てくれたんだね!」
ようやく作戦開始の時刻になり、雄二とヒナが生き残っているFクラス全員を引きつれて、僕等の援軍に来てくれた。
これで撤退をしなくて済む!
『っ! 坂本だ! 坂本が出て来たぞ!』
『皆、気をつけろ! 坂本だけじゃなくて、桂さんもいるぞっ!』
どうやらDクラスはヒナがFクラスにいる事を知っていたようだ。
まぁ、直前に瀬川さん達がDクラスにいる事が分かってたから、こっちとしても想定内なんだけどね。
けど、僕は今さらながらに不安になっていた。
雄二の作戦は、僕等はヒナが点数を完全に回復し終わるまでの時間を稼ぎをして、ここにいる敵を回復を終わらせたヒナが纏めて葬りさり、その後全員でDクラス代表の首を落とすと言う作戦だ。
けどDクラスは、僕等が予想以上に粘りを見せたせいで苛立ち、最低限の守りだけ残して、他の戦力は全員ここに集めている。
結果、ここにはDクラスのほぼ全員が集まっている事になるのだ。
こんな大勢の敵をヒナ一人で倒せるのか、僕は不安になったのだ。
「ヒナギク! さっき言ったように手加減なんかするな! 遠慮なんかいらん! 仮に失敗しても、コイツ等ならむしろご褒美だと泣いて喜ぶ! だから全力でやれ! それが勝利の道へと繋がるんだ!」
僕が不安を抱いている中、走りながら雄二はヒナを鼓舞していた。
僕は雄二に取っても、これだけDクラスの主力がここに集まっているのは予想外で、この状況を打破するためにヒナを鼓舞しているんだと、この時は思った。
だが
「わ、分かったわ。雄二君がそう言うなら、全力でやるわ」
「ああ。宜しく頼む。例え、目の前に明久がいても構わず本気でやってくれ!」
雄二とヒナの会話から、不吉な事が聞こえてきた。
ちょっと待て。バカ雄二。
『僕が目の前にいても本気でやれ』って、お前ヒナに何を言ったんだ?
と、僕がさっきとは違う不安を募らせていると
「
ヒナは走りながら召喚獣を召喚した。
ヒナの呼び出しに応じて、召喚獣が幾何学的な魔方陣からヒナにそっくりの召喚獣が現れる。
一振りの日本刀を携え、上武者鎧を着こみ下はスカート。
さらに、ヒナの召喚獣は左手首には綺麗な腕輪をしていた。
「腕輪?」
この腕輪は400点以上の点数を取った人にだけ装備され、その腕輪をしている人は特殊能力が使えると言う物だ。
つまり、ヒナの召喚獣が腕輪をしていると言う事は点数が400点を超えていて、特殊能力が使えると言う事になる。
そして、さっきの雄二の不吉な発言だ。
もう僕には嫌な予感しかしない。
「い、行くわよ! 皆、ちゃんと避けてね!!」
そう言った瞬間、ヒナは刀を振るい、ヒナの召喚獣の腕輪が光を発した。
ズバッ! ズバッ! ズバッ!
『『『え?』』』
ヒナが剣を振るった瞬間、剣から複数の斬撃が飛び出し、その斬撃が他の召喚獣に当たると、ヒナの攻撃が当たった召喚獣は、斬撃に触れた部分を切り落とされていた。
そして、その斬撃を当てられた生徒は
『うおっ!? なんだ今の!?』
『嘘だろ!? 俺、この科目になってから一度もダメージ受けてないのに即死とか!』
『私も戦死してる! 嘘でしょ!?』
もれなく全員戦死していた。
『なぁ――――――!?』
『なんでだ、桂さん!?』
『なんで俺達見方まで巻き込むんだ!?』
味方であるFクラスも纏めて‥‥‥‥‥‥‥‥
「ええっ!? だ、ダメだったの? 雄二君にFクラスの皆なら避けれるから、本気で腕輪の能力を使えって言われたんだけど‥‥‥‥‥‥‥‥」
『坂本―――――――!!』
『お前の仕業か―――――――!!』
『俺達に何の恨みがあるんだ!?』
戦死したクラスメイトから雄二への怒りの糾弾。
当然だろう。
何せ、雄二から何も聞かされておらず、味方であるヒナの攻撃で戦死したんだから。
だが、雄二はそんな彼らに悪びれた様子を見せる事はなく
「ん? 言ってなかったか? すまんな。言い忘れてた」
しれっとこんな事を言ってのけた。
「だが、それはそれでお前等にはご褒美だろう? 容姿端麗、成績優秀、おまけに白皇の生徒会長であるヒナギクの攻撃を受けられたんだからな」
それで喜ぶのは変態だけだ。
『確かに桂さんから、お仕置きを受けたみたいで興奮はしたな‥‥‥‥‥‥‥』
『これはこれで満更でもないな‥‥‥‥‥‥』
『確かにこれはご褒美だな‥‥‥‥‥‥』
このクラスは変態ばっかりだったようだ。
これからは変態どもがヒナに近づけないようにしよう‥‥‥‥‥‥。
僕は幸せそうな顔をして、鉄人に連行されていった変態を見ながら、そう決めたのだった。
『チャンスだ! 今のでDクラスの大半が消えたから、今なら桂さんの腕輪を使わず、普通に援護してくれるだけでDクラスを倒せるぞ!』
『よっしゃ―――! さっきまでの借りをまとめて返してやるぜ!』
『くっ! 怯むな、Dクラス! 数では負けてるが、桂さん以外の戦力は大した事ない!』
『Dクラス! 力ずくで押し返せ―――――!!』
今の攻撃で生き残った両クラスのメンバーが、お互いに気合いの入った声を出しながら、再び戦闘を始めだす。
きっと、今の一撃でFクラスがDクラスよりも人数の上で勝るようになったから、皆二撃目はないと判断したんだろう。
僕だって、一瞬そう思った。
だけど、僕は間一髪思い出す事が出来たんだ。
「ヒナギク! 得物がわらわらと再び集まりだしたぞ! チャンスだ!」
「ええっ!? もう一発!?」
「大丈夫だ! この場ではクラス代表である俺が大将だ。責任は全て、大将である俺が取る! 俺を、そして必ず避けられるとアイツ等を信じてくれ!」
「わ、分かった‥‥‥‥‥。二発目、いっきまーす!!」
この場には、勝利のためなら味方だって平然と見捨てる所か、率先として生贄にする野郎がいると言う事に‥‥‥‥‥‥‥‥
ズバッ! ズバッ! ズバッ!
そして、再び召喚獣が切り裂かれる音共に、雄二の存在を忘れていたFクラスの同士達と、この場にいる悪魔の指揮官の性格を知らなかったDクラスの生徒達は再びヒナの斬撃の餌食となり、一人残らず息絶えていた。
『坂本――――――!!』
『テメェいい加減にしやがれ――――――――!!』
またもや、被害を受けたFクラス同士達が絶叫をあげた。
「なんだ? お前等、避けれなかったのか? 今度は事前にこの攻撃がある事を知ってただろう?」
『ふざけんな――――!!』
『さっきのは数を減らすためだとしても、今度のは理由がないだろう――――!!』
『今はこっちの方が数が多いだろうが!』
「何を言うか。周りを良く見ろ」
クラスメイトの絶叫を意にも返さず、そう発言した雄二に従い、僕等は今の二撃目で殺られた人達を観察するように一眺めした。
「これだけ大量の獲物がいるんだ。この方が楽に方がつくだろ?」
その獲物の三分の一が自クラスだと言う事を雄二には理解してもらいたい。
『坂本! お前は悪魔か!』
『確かに一瞬で終わる方が楽かも知れないが、少しくらい時間を掛けて戦ってもいいだろうが!』
「時間を掛けてたら、Dクラス代表を討ち損ねる可能性があったから仕方がなかったんだ」
『『『嘘つけ――――!!』』』
「嘘じゃないさ。まぁ、少し補習室で待ってろ。もうじき俺達の勝利で決着がつく」
雄二は鉄人に連れて行かれたクラスメイト達にそう言うと、不敵な笑みを浮かべた。
その表情は本当にもう勝ちが確定していると、確信しているようだ。
「ヒナギク、残りの持ち点どれくらいだ?」
「二発も撃ったから、300前半くらいね」
腕輪は強力な分、使用すると持ち点まで減ってしまうと言うデメリットも存在する。
一度も相手の攻撃を受けていないヒナの点が減っているのはそのせいだ。
「まだ、そんなに残ってるのか‥‥‥‥‥‥‥。もう一発位は大丈夫そうだな。Dクラス代表を討ち取るには数人の壁だけで充分だし、敵の数が少ない方がより有利になるしな(ブツブツ)」
なにやらブツブツと、またも非人道的な事を考えだした雄二。
野郎っ! また僕等を生贄にする気だな!?
『お、おい、お前んとこの代表、とんでもない事言ってるぞ!? いいのか、ほっといて!?』
『そ、そうだ! 自分達の代表だろ? なんとか止めろよ!』
『このままじゃ、敵味方問わずに全滅だぞ!?』
生き残っているDクラスの生徒達は、次々と僕等に向かって雄二を止めるように叫んでくる。
どうやら、相当ヒナの腕輪が怖いらしい。
まぁ、今の所致死率100%なんだ。怖くて当たり前だろう。僕も怖い。
けど、言わせてもらうと
「あのね‥‥‥‥‥‥雄二がこんな戦場で僕等の願いを聞くわけないじゃない」
『と言う事は?』
と言う事は? そんな答え、わざわざ言わなくても分かるでしょ?
それだけ情報があれば、誰にだってこの後の光景は予想できるでしょ?
「よし、ヒナギク。あと、一発だけ頼む」
「わ、分かったわ」
僕等兵隊には、どこが狙われようと全力で逃げるしか手段なんて存在しないっ!
「よし、明久の周りにDクラスの連中が全員集まってる。あそこに最後の一発頼んだ!」
どうやら、狙いは僕の周りのようだ。
雄二の野郎、いつか殺す!
「わ、分かったわ。明久、上手く避けてね? ‥‥‥‥‥‥えいっ!」
僕が雄二に恨みを込めた視線を送っていると、ヒナは可愛い掛け声を上げながら、腕輪の能力を使って、複数の斬撃を飛ばしてきた。
それを見た、僕に雄二の説得をさせようと、僕の周りに集まってきていたDクラスの生き残りは
『き、きたっ‥‥‥うわあああああ!!』
『や、やめっあああああああああ!!』
『うわあああああ! 補習は嫌だああああああ!!』
必死で逃げ回るも、次と次とヒナの斬撃の被害にあい、即死して行き、遂には誰も避けきれずDクラスは全滅していた。
そして、そのDクラス全滅のために生贄にされた僕は
「ほっ! はっ! とうっ! っく! なんの! てりゃ―――――!」
ヒナの斬撃を全弾回避していた。
「ふぅー。助かった‥‥‥‥‥。危うく死ぬ所だった‥‥‥‥‥‥‥」
フィードバックのせいで、身体的にも死にかけた。
二重の意味で助かった。
『『『なんで、お前だけ死んでないんだよ!』』』
「ちっ! しぶとく生き残りやがったか‥‥‥‥‥‥‥」
「明久‥‥‥‥‥良かったぁ。上手く避けれたのね」
Dクラスの生徒からは恨みがましく文句を言われ、雄二には残念がられた。
その中でただ一人、僕を心配してくれたヒナ。
こんな扱いを受けている僕だから、純粋に心配してくれるヒナの気持ちは嬉しい。嬉しいんだけど、心配してくれたヒナのせいで、僕は死に掛けたわけだから複雑な心境だ‥‥‥‥‥‥‥
『おい、吉井! なんでお前は死んでないんだ!?』
『俺達を全滅させといて、なんで一人生き残ってるんだよ!?』
『俺達は、お前の近くにいたから殺されたんだぞ!?』
Fクラスの被害者からも、不満の声があがった。
雄二の命令で、死んだのに僕だけが生き残ったからと言って、僕に文句を言うのは酷くないだろうか?
文句を言うなら、雄二に言って欲しい。
それに僕が全弾回避できたのだって、僕が何かしたわけじゃないし‥‥‥‥‥‥
「なんでって言われても‥‥‥‥‥”観察処分者”だから?」
『『『は? どういう事だ?』』』
F、D問わず、皆から聞かれた。
なぜだ!? 僕は間違った事は一切言ってないのに、『コイツ、バカなのか?』って目で見られるのはなぜなんだ!?
「それは俺から説明してやろう。皆も知っての通り”観察処分者”は教師の雑用をさせられる。そのため、召喚獣を頻繁に扱う事により、俺達よりも格段に召喚獣を操るのが上手いと言うわけだ」
と、雄二が皆に説明し終わると
「な、なんだこれは!? Dクラスが全滅っ‥‥‥‥‥‥!? いったい何が?」
「あちゃ~。凄いやられっぷりだね~」
「これ、全部ヒナがやったのか?」
「さすがだな‥‥‥‥‥だが、同時に恐ろしい奴だ」
平賀君が自分の護衛の瀬川さん、花菱さん、朝風さんの三人を引き連れて、この場に来ていた。
護衛がこの三人って事は、本当に最低限の守りしか残していなかったんだ‥‥‥‥‥‥
「よう。Dクラス代表、平賀。待ってたぜ? 俺が予想してたよりも随分早かったがな」
「‥‥‥‥‥‥俺がここに来るのを分かっていたのか?」
「ああ。代表は試召戦争中は居所を公表し続けないとならないルールがあるからな。俺がここに動き出したら、お前は全戦力を投入すると踏んでた。それに、こっちにはヒナギクがいるからな。そっちとしてヒナギクが本格的に参戦する前に、俺を倒したかっただろうしな」
どうやら、雄二は最初から平賀君がここに来ると読んでいたようだ。
だから、見方を犠牲にしてでもDクラスの戦力を削る必要があったわけだ。
そこまで、考えての行動は流石は元神童と言うだけある。
「‥‥‥‥‥‥‥見事だよ。完全にこっちの考えを読まれてた」
「まぁ、今回は急な戦争だったからな。その分、そっちに選択肢はほとんどなかっただろうしな。‥‥‥‥‥‥で? どうする? 最後までやるか? こっちとしては、お前等が細やかなお願いを聞いてくれるなら、今回の決着は和平交渉で終わらせてやらん事もないぞ?」
「細やかなお願い? ‥‥‥‥‥‥‥‥‥なんだ?」
「なに。簡単な事だ。お前等は時が来たら、Dクラスの外に取り付けてあるBクラスの室外機を壊してくれればいい」
「‥‥‥‥‥‥‥‥次はBクラスを狙うのか?」
「ああ。目標はAクラスだが、そのための準備だ。もちろん、室外機を壊したりすれば教師には睨まれるだろうが、三か月もFクラスの教室を使うよりはマシだろう?」
「‥‥‥‥‥‥分かった。その条件を飲もう」
雄二の交渉により、平賀君はBクラスの室外機を壊す事を了承した。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥因みに、この交渉中は秀吉の誘導により、ヒナには瀬川さん達と話をしてもらって、雄二と平賀君の話は聞こえないようにさせてもらった。
きっと、聞いてたらこの条件をヒナが却下していただろうからね‥‥‥‥‥‥‥
かくして、僕等の初めての試召戦争は、和平交渉と言う形で決着を迎えたのだった。