もしもアニメや漫画、ラノベといった空想の世界に転生できる、そんな夢のようなチケットがあったとして、君たちはどの世界を選ぶのだろうか?
中世ヨーロッパを背景にしてモンスターが跋扈する世界? 科学技術がさらに進歩した未来の都市? 人によってはポストアポカリプスの世界なんかがいいと思うかもしれないし、絶望しか残っていないダークファンタジーがいい人もいるかもしれない。
俺の場合は、わかりやすくレベルやステータスなどがあって、可愛い女の子がいっぱいいて、それでもって自分が中心となって活躍できる、まあそんな世界が理想である。
なんの変哲もなくてつまらない? それが一番だ。
奇を衒わずに王道を進むことこそが一番いいのだ。
死ぬほど努力して強くなって、わざわざ命をかけて世界を救う、なんてのは少年マンガの主人公の仕事であり、たとえ努力せずとも、その場の機転や勇気によって世界が救えたとしても、それもハリウッド映画の主人公の仕事だ。俺のではない。
もしも自分で転生する世界が選べるとしたら、とりあえずはなんだかんだ命の危険はないけど楽しく冒険ができるような、魔王のいないドラクエの世界か、次点で日常系アニメのようなほのぼのとしながらも愉快な世界がいいと思っている。
残念ながら転生できる世界を選べない俺の場合は、そうはならなかったのだが。
トラックに跳ねられたとかいう劇的で王道的な死亡の仕方ではなく、ただただ気づいたら住んでいる世界が変わって、体が縮んでいたというだけのアポトキシン的転生を果たした俺は、煌々と燃え盛る炎のど真ん中にいた。
前世で見たことのある一番大きい炎といえば、フィクションで言うと90年台のオヤジアクション映画で装甲列車が敵の陣地に突っ込んだ時のもので、実際に体験したのは修学旅行の時の焚き火だ。その前者に比べても、熱量、規模、凄惨さが負けない真っ只中に放り捨てられるように残されたのだった。転生直前までは家で寝てたものだから、転生したということにすら気づかず、火事に巻き込まれたと焦ったくらいには周辺は火の海だった。
小さくなった体にほとんど気をかけることもできずに、がむしゃらに生き延びるための道を探しているうちに、自分のいる場所はすでに火に囲まれていて、逃げ場がないことを徐々にわかってしまい、バチバチと燃え上がる炎のせいで周辺の構造物が壊れたのか、ガラガラと崩壊するような轟音がして、もうこのままこんがりと焼き上がるしかないかと諦観していたところ、
「死にたくなければついて来い」
豪炎の中をオートバイで突っ切ってきた、グラサンをかけた大男がウィンチェスターを担ぎながらこちらに手を伸ばしてきた。
身長190センチ、髪は黒、筋肉もりもりのマッチョマンだった。
「オートバイは盗む! 大火事の中には突っ込む! 俺は攫う! 自分はT800だとメチャクチャを言い出す! かと思ったら襲ってきた神父を返り討ちにして電柱をへし折りまくる! 挙句はトドメを刺すのに銃を撃つ! お次はサーヴァントと来たわ! あんた一体なんなのよ!」
「その質問には答えられない」
「答えられない!? もうやだ! 今日は厄日だわ!!」
彼と出会った時のことを思い出す。
先のセリフの通り、俺は黒ジャケットの大木みたいな大男に2度救われた。
一度目は火災、二度目は自称神父の襲撃。……指の間に柄を入れて10本近く刀を持って振り回す神父にも驚いたものだが、同じくらいにそんな神父をそのご立派な肉体だけで沈めてみせた上に服までも剥ぎ取った目の前の男にも驚かざるを得なかった。
「君の着ている服と靴が欲しい」と言われて素直に応じていれば神父も裸にひん剥かれなかったものを……。
……ぶん殴りあってた時に金属同士がぶつかる音がしたのは気のせいではないのだろう……。
あの火災の後、俺はT800に連れられて、火災現場から少し離れた河川敷にまで来ていた。
冬の冷たい風が頬を刺しているのだが、あの灼熱地獄の後なので大して冷たさをまだ感じないでいた。
「……」
ゲルマン人の風格を色濃く残している目の前の男。実は出会った時には、ほぼほぼその正体については当てがついていたのだった。
「あんたターミネーターだろ」
「そうだ。T800、金属骨格を人工有機皮膚組織でカバーしている」
「だろうね」
ターミネーター。
そう。
あのターミネーターだ。
ジョン・コナーの相棒にして、最後には溶鉱炉で溶かされたあのターミネーターである。
本当ならばターミネーターは結局とある映画俳優が演じたフィクションの中のキャラクターなのであるが……
「皮膚温度及び血流、網膜、心拍数、呼吸量から軽度の熱中症の症状が確認できた。塩化ナトリウムが0.5%から1%含まれる飲料水を400mL以上摂取することを推奨する」
彼は間違いなく、“ターミネーター”だったのだ。
・・・・・・
「10年後に現れる新型ターミネーターからお前を守るのが私の任務だ」
というのがT800の言である。とは言っても、すでにあれから10年弱が経ち、もうそろそろ新型ターミネーターとやらが現れてもおかしくない時期だ。
ちんちんに毛が生えてなかったガキが、ふさふさになるくらいには時間が経ったのだ。……ふさふさだぞ? 疑うなよ?
……多分だけど、現れるのはT1000だろうな。そうであって欲しい。T-Xだったらほぼ勝ち目ないだろうし。
T800と出会ったのち俺は、T800の指南のもとで様々な知識の指導と訓練を受けることとなった。
知識といえば、基本的な数学や物理学、化学などの基礎的なものから、簡易的な火炎瓶の作り方、無煙火薬の合成方法に、いざとなった時に使うことができる水素核融合電池の製造法まで。そして、世界中の軍隊に採用されている近接格闘技術の良いところつまみながら、柔術を基本に組み上げたCQCなる技術や、有名な拳銃や自動小銃から、ほぼ見かけることのないジャイロピストルなどの各種火器の操作方法、オートバイに自動車、西側東側両方の戦車、ヘリ、そして戦闘機の操縦方法なども叩き込まれた。
おかげで当然だが学校など行けるはずもなく、小学校から中学校までずーっと不登校で居続けざるを得なかった。
前世ですでに学校などの課程は一通り終えているものだし、行かなかったことによって常識を知らない野蛮人になるといったことは起きなかったものの、せっかくやり直せるのであればもう一度あの青春時代を謳歌したかっただけあって、少し残念には思っていた。
「衛宮、士郎……?」
ある日T800はそんな姓はあり得ないくらい珍しい割には名の方は汎用型のような名前がプリントされた受験票を俺に渡してきた。
いつもならアフガニスタンやソマリア行きの飛行機券と偽装された軍隊手帳にドッグタグを渡してくるT800にしては、珍しく硝煙の匂いがしないその書類に少しばかり戸惑っていると、
「今日からのお前の名だ。今まで使用していた名前はこの時点で破棄することになる」
「破棄って……。まあ、思い入れもなかったし、1年以上使ってた名前もなかったけどな。で、受験票みたいだけど」
「肯定だ。穂群原学園高等部の編入受験票だ。お前は入学から最低1年以上所属することになる」
「編入、ってことは高校2年生スタートってことか」
続けて語るT800。
「編入試験後、穂群原学園の資料室に潜入し、受験生管理書類を確認する。不合格だった場合は改竄をすれば問題ない」
「いや、問題あるだろ……」
「これは決定事項だ」
「んな強引な……」
と言いつつ、俺ももう抵抗する気はあまりなかった。
抵抗しても意味がないことは、野戦地で戦車の砲手をやっていた時にはもう気づいていた。
たとえ俺が泣き喚こうが、T800は淡々と事務作業のように“決定事項”とやらを遂行するのだ。
「それで、一応聞いておきたいけど……」
「なんだ?」
「この衛宮って名字はどっから取ってきた?」
俺の質問に対してT800は来ていた黒のジャンパーの胸ポケットから古めかしいセピア色の写真を取り出して俺に見せた。
ツーブロックのツンツン頭に、瞳孔が開き切った不健康そうな表情の男の写真だが……。
「この男の名前だ」
「誰なんだよ、それ」
「ここに住んでた」
と、T800は言う。
……今まであまり疑問に思わずに住んできたのだが、敷地がだだっ広いこの和邸に住んでた人なのか……。
どういう経緯で俺たちの手に渡ったのだろうか……?
「その人は今どうしてるの?」
つい気になって聞いてみた。
そうするとT800は神妙な顔になって俺の目を見つめ、やがて口角をあらん限り吊り上げて、渾身でニカっとすると、
「抹殺した」
と言った。
とんでもねえユーモアセンスを身に付けかけてやがる……。
ブラックジョークにすらなってねえぞ。
「あのさ、約束したよな」
「現行法律で死刑に値する人間以外の抹殺は、可能な限り回避することか?」
「そうだよ……。この人はどうなの?」
「安心しろ。この男は大量虐殺を複数回行っている」
そう言うと、T800は胸から大きめの拳銃を取り出し、
「その上、私を抹殺しようとトムソン・コンテンダーを発砲してきたために正当防衛として殺害した」
「……まあ、それだったら仕方ないか」
T800には基本的に小型銃火器は効かない。
具体的にいえば20ミリ機関砲までだったらその装甲を貫通することは難しいだろう。
どうやら銃身などを魔改造して7.62mm弾を発射できるようにしてあるみたいだが、T800にとっては豆鉄砲みたいなものだ。足止めすらできなかっただろうことが容易に想像できる。
「それで」
と、俺は話題を元に戻して聞いた。
「なんでまたこの高校に?」
「お前は一般的には高等学校に所属する年齢だからだ」
「……今まで散々色々連れ回しておいて、今更常識かよ」
「そうだ。新型ターミネーターを抹殺したのちに、お前は一般的で幸福な人生を送らなければならない」
などと
「それも任務とやらか?」
「いや、それが人生というものだ」
意地悪な質問にこうもまっすぐ答えられると困るというものだ。
困ったように頭をかきながら、俺は、
「新型ターミネーターがそろそろ現れるんだろ? 作戦をもう一度確認しよう」
家の離れにある蔵に向かうことにした。
・・・・・・
「君、この子を知ってるかい?」
そう言って差し出された写真を見て、少女は答える。
「申し訳ありませんが、存じ上げませんわ」
「そうか」
そう言うと、警官の装いの男はバイクへと戻った。
――かなり精密に作られている人工生命体ね……。ホムンクルスとは違うみたいだけど。
――一応後を追ったほうがいいかしらね。
――
・・・・・・
まるで誘われたかのようにたどり着いたのは、閉店後の夜のショッピングモール。
だだっ広い敷地には緊急用の照明しか灯りはなく、気をつけていても足音一つ一つが響くような状況だった。幸い少女は幾ばくかの体術の経験があり、少なくとも人間相手の尾行であれば察知されることはそうそうない行動を取れていた。
――こんな時間に誰もいないショッピングモール……? ただのコソ泥なのかしら?
先行する警察風の男を遠目で確認しつつ、考える。
バイクに乗っていたとはいえ、あちらこちらで所持している写真の主を尋ねながら走る男を追うのはそれほど苦ではなかった。
それに、どうも写真に映った少年を知っている人がこの街にいないと言うことも知れた。
――だったら一体なんでこの街でその少年を探してるというの?
という少女の疑いは尤もであった。
脳裏に浮かぶ複数の疑問を一つ一つ整理しながら、少女は歩く。
人のいない服飾コーナーの奥へと奥へと。
目立つバーゲンセールの棚から、初秋のためのセクション、一足早い冬服の展示場に、やがては最奥のスキー用スーツの場へと。
……。
…………。
………………。
いや待て。
あの男は――?
――私が追っている
――ッ!
「この男を知っているのか?」
首を掴まれ、そのまま子供のように持ち上げられた。
ギリギリと内側から骨の軋む音がする。
一瞬にして少女は男に背後を取られ、そのまま掴み上げられたのだった。
「し、知らないわよ……!」
「……」
そう言う少女の表情をじっと見つめる男。
瞳孔、呼吸数、唇の色彩、心拍数、体温。
その全てを確認し、少女の発言の真贋を見定めようとする。
だが、少女も無力ではない。
苦しいながらも懸命にポケットをまさぐり、目当ての宝石を見つけると――
――ガンド!!
呪いを放つ。
北欧に伝わるルーン魔術。対象の身体活動を低下させ、さらに魔力の密度が高いものは弾丸並みの威力を持つ。
少なくとも男一人なら怯ませられるそれを躊躇いなく放つ。
だが。
――効いてない!?
男にはまるで効いていないようだった。
ならば相手はプロの可能性が高い。ゆえに出し惜しみはない。
一瞬で判断し、少女は現状持ち合わせている最高に魔力密度の高い宝石を消耗することを決定する。
――ガンド!!!
ガキンッという音と共に大きくのけぞった男は、そのまま掴み上げていた少女を落としてしまう。
同時に少女は在らん限りの力でもって男を殴り飛ばそうと、拳を振るう!
――ゴンッ!!
という音と共に、更にのけぞる男。
その隙を見逃さず、素早く距離をとる少女。
――痛ッいわね……! 大理石を殴った時もこんな感触じゃなかったわよ!?
殴った手を軽く振りながら男を睨みつける少女。
対して男は、ゆっくりと元の姿勢に戻り、少女を挑発するように指を振る。
そしてそのままホルスターから拳銃を取り出す。
――ピストル!?
あくまで男は警官のコスプレだと思っていただけあって、驚愕する少女。
そして容赦なく放たれた弾丸に――。
――舐めるんじゃないわよ!!
がむしゃらに回避に専念する。
これくらいの死期、乗り越えずしてどうして控える聖杯戦争にて勝利を掴めよう。
その精神一つで、どうしようもない数発の弾丸を避けてみせ、同時に所持していたなけなしの宝石を使ってガンドを男の握るリボルバー拳銃に向かって放つ。
それが功を奏したのか、男の拳銃は吹き飛ばされ、とりあえずのところ命拾いした少女。
だが、男は人とは思えない速さで少女に迫り――!
――月霊髄液!?
その腕を溶かし、まるで中世のランスのように伸ばしてきた男の一撃は、少女の喉元に一直線に向かい――
――ガッシャンッ!!!!!
という轟音と共に、ショッピングモールへと突進してきた装甲仕様のマイクロバスは、襲う警官を弾き飛ばし、少女の命を救った。
弾き飛ばされる警官は両腕を刃物へと変え、地面に突き立てることによって最小限の被害で再び立ちあがろうとしている。
「死にたくなければついて来い!」
マイクロバスの助手席のドアを開け、運転手の少年は片手にソードオフショットガンを握りながら少女に語りかける。
迷っている暇のない少女は少年の言うがままに助手席へと飛び乗る。
「耳を塞げ!」
「なっ!? っ!」
ダンッ――!
「わっ!」
一撃ぶっ放す。そのまま片手で運転しながらレシーバーを少女の体――胸に擦りつけながらポンプアクションで薬莢を排出させる。
「ちょっ……! 何やってんのよ!」
そして耳を塞いだまま騒ぐ少女を無視して、再び――
ダンッ――!
「っ〜!」
一発ぶっ放す。
流石に大口径のスラッグ弾を受けてひとたまりもなく体を歪んだ液体金属状にし、まだ回復しない新型ターミネーターを見て、少年はマイクロバスを急発進させた。
・・・・・・
筋肉隆々の男は、満面の笑みで言った。
「やあ遠坂凛。よろしくな」
――聖杯戦争はまだ、始まらない。
ターミネーターってアサシンのサーヴァントじゃねと思って、一発ネタのつもりで書き始めたら、難産すぎてそのうえ長編になりそうだったので野に放出
反響があれば続くかも
切嗣(起源弾効かなかったんだけど!?)
続きは欲しければ感想を書け。OK?
ヒロイン誰にしよう?
-
王道を往く遠坂凛
-
HFよりハードかもしれないイリヤ
-
鬼道を逝く桜ルート
-
幻のハーレムルート