Fate/Genisys 新起動   作:全自動髭剃り

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ここの士郎くんは原作とは違いますが、なかなかに面倒なこじれ方をする予定です


はじまりの夜

 

「なんですって!?」

 

 という叫び声と共に、少女――遠坂凛は怒鳴るように続けた。

 

「こっちの筋肉ダルマは未来の世界からやってきた殺人用マシーンで、同じく未来からやってきた殺人用マシーンからあんたを守るために行動しているって!? そんな荒唐無稽な話信じられるわけないでしょ!?」

 

 結んでいるツインテールを粗く振り回しながら、凛はなお続けた。

 

「例え魔法を使ったって、そんなこと! ……いや、無理じゃないかもしれないけど、そんな無意味なことをするわけないでしょ!」

 

 自身の持つ魔法についての知識と照らし合わせる限り、確かに時間旅行を可能とする魔法の存在は否定できない。だが、それは魔法使いその人の特権であり、過去に殺戮マシーンを、それも複数送るようなことができるかは定かではないし、そもそもそんな回りくどいことをわざわざやる理由も見当たらない。

 ならば目の前にいるこのホムンクルスもどきはなんなのか。

 凛がそれに対する合理的な説明を持ち合わせていないことも確かであった。

 

「確かににわかには信じ難いよなぁ。ターミネーターだなんて、聞いたこともないだろうし」

 

 運転しているマイクロバスの暖房を少し下げながら、士郎は困ったような声をあげた。

 この際、実は凛と年齢が変わらない士郎が運転をしているのかという疑問を上げるものはいない。T800はそういった法律に対して遵守しようなどといった殊勝な心掛けなど存在しないのは当然として、士郎の190センチを超える巨躯とこんがりと中東の砂漠で焼けた小麦色のスキンヘッドから自分よりも年齢が数回りは上だろうと考えている凛もわざわざツッコミはしない。

 

「でも、なんでわざわざT1000を追いかける真似なんてしたんだ? 警察の尾行なんて、普通じゃ考えられないぞ?」

 

 ターミネーターについて理解してもらおうということについてはひとまず諦めた士郎は凛に尋ねた。

 

「T1000?」

「あの警官に化けた方のターミネーターの型番だよ」

「T1000。流体多結晶合金製の汎用型殺人兵器。隠密擬態作戦のために製造されたが、大量生産はされなかった」

 

 T800は武器庫へと丸々改造されたマイクロバスの後部座席部分に座りながら、士郎の言葉に補足を入れる。

 

「たまたま俺たちがいたからなんとかなったけど、そうじゃなかったら用済みとして処分――抹殺されてたぞ」

「……」

 

 対して凛は口をつぐんでしまう。

 説明できないわけではない。冬木のセカンドオーナーとしての立場、何かしらの魔術が関与する事件が発生する可能性。

 だがそれらの理由の説明は、同時に魔術の隠匿を破る事態になることを意味する。それは魔術師として受け入れたくないこととあると同時に――。

 

(世の中には知らないほうがいいこともある…………けど……)

 

 知らぬが仏、その言葉が果たしてこの殺戮兵器とスキンヘッドの筋肉ダルマコンビに通用する言葉なのか。

 そんな凛の憂慮を知ってか知らずか、士郎は押し黙る凛に続けて言った。

 

「好奇心は猫をも殺すって話もあるんだ。巻き込まれたからには最後まで安全を守ってやるけど、そんなんじゃまたいつか大変なことに巻き込まれるぞ?」

 

 一瞬ギリっと士郎を睨みつける凛。士郎は運転していて、気づいていないようだったが、上から目線で守ってやるなどと言ってくる目の前の男に、凛の堪忍袋の糸が緩んだのが見てとれた。

 こちとら親切心で考えてやったというのに――。

 

「ねぇ、衛宮くん」

「? なんだ?」

「わたしがあの警官を追った理由、知りたいわよね?」

「ん? いや無理にとは言わな――」

「――知りたいわよね?」

「え? あ、はい……」

「実はね、わたしは――」

 

――魔術師なの。

 

 

 ・・・・・・

 

「荒唐無稽な話だなぁ。信じろって言われても困るぞ。おじさんもそう思うだろ?」

「ああ、そうだ。魔術とは空想上の産物であり、遠坂凛が先ほど述べた内容に事実としての信憑性は認められない」

「あのねぇ……! アンタらの未来から来た殺人マシーンの話の方がよほど信じられないわよ!」

 

 という先ほど繰り広げられていた光景が再現される。疑う側と疑われる側は反対だが。

 

「証拠は見せられないって言われたら、信じるものも信じられなくなるぞ」

「それは言ったでしょ、今ここで見せるのは無理だって。車を降りて人気のいない場所に行ったら見せてあげるわよ」

「はあ……。期待せずに待っとくよ」

 

 深夜にも関わらずそれなりに交通量がじわじわと増え始めている国道で3人を乗せたバスは徐行運転していた。

 

「おじさん、もしかしたら遠坂疲れてるかもしれないから、軽くチェックしてやってくれないか?」

「疲れて幻覚が見えてるわけじゃないわよ!」

「いや、そうじゃなくて、……先ほど殺されかけてただろ? それがちょっと心配だっただけだよ」

「ふーん、……どうだかね」

 

 そう言うと足を組んでそっぽを向いてしまう凛。

 対して、T800は言われた通り装備されているセンサーで軽く凛を走査し、

 

「遠坂凛の心拍数は平常値だ。魔術に関して説明していた時同様に」

「……? どういう意味だ?」

「遠坂凛は嘘をついていない可能性が高い」

「へ?」

 

 間の抜けた声を上げたのは士郎だった。

 あくまでこっち側だと思っていたT800がまさかの凛を擁護する行動に出ていた。

 

「へぇ、心拍数までわかるの。けれど、これでわたしが嘘なんてついてないってはっきりしたわね」

「うーん……。もしかして虚言癖が身について、嘘をついても心拍数が変わらないとか?」

「そんなわけないでしょ!?」

「肯定だ、遠坂凛。たとえ遠坂凛が虚言癖を持っていても、人体センサーによって99.7%の確率で真偽の判定は可能だ」

「そうかぁ……」

 

 なんだか釈然としない士郎に対して、思わぬ助太刀によって得意げに胸を張る凛。

 凛から説明された魔術についての知識。

 ざっくばらんな説明なために大凡でしか理解はできていないが、

 

「“根源”という世界の因果の因の部分に辿り着くための、神秘性という名の手段、てのがなぁ……」

「また何か文句があるわけ?」

「いや、そういうわけじゃないさ。……ただもしも遠坂の言ってる話が本当だとしたら、その魔術ってのは過程が観測されてはいけないんだろ?」

「そうね。と言っても、あなた如きに解析できるとは思えないけどね」

「ふーん。まるで観測者効果の文脈だな」

 

 T800によって叩き込まれた知識を思い出しながら、士郎は意味深に唸る。

 

「観測者効果……?」

 

 対して、いかに学業優秀とはいえ、所詮は中学卒業程度の優秀さである凛は聞きなれない単語を反芻した。

 

「ものすっごく雑に説明すると、世界は見られるまでその形を定めないって話。見る行為によって初めて世界の形が定まるから、見るという行為が世界の形に影響を与えている話と、そもそも見ていなくても世界はそもそもその形を定めていない話とが同時にあるんだ」

「……? 見るまで世界の形がわからないのは当然の話じゃない?」

「それはそうだけど、じゃあ見るまでは世界に形はあったのかって話だよ。遠坂の言う魔術ってのは神秘性を失うと効果を失うって考えていいんだろ?」

「ええ、大雑把にはそうね」

「だからなんとなく、まだ形が定まっていない世界に対して何かしている技術のように思えたかなって話だよ。……って、こういう考察をしたらダメだって話か」

「……」

 

 目の前のスキンヘッドの筋肉ダルマが、案外脳味噌まで上腕二頭筋に侵食されていない事実と、なんならそれなりに魔術師っぽい理屈的な言動が可能なことに対して、若干唖然とする凛。

 人は見た目によらないとはいえ、この200パウンドボディーには物理学(筋肉ではない方)なんてのは似つかわしくなさすぎて少し吹き出しそうにもなる。

 対して士郎は真面目にもT800から言われた通り、もしも凛の話が本当だとしたら、ということに考察を重ねる。

 

 未来から来た殺人マシーンであるT800だが、その全身にはありとあらゆるセンサー類が搭載されており、ゆえにうっかり凛が行使した魔術を目視した際にその原理を暴き切る可能性があるのだ。

 実際その可能性は非常に低いのだが、念には念をという言葉が悪い事態を引き起こすことはないだろう。

 

「それにしても混んでるわね……。平日の深夜なのに」

「普段はこんなことないんだけどな」

 

 遅々として進まない車にイライラした凛の声が上がる。この勢いでは士郎の目的地には日が明けるまで着きそうもない。

 ここは一度目的地を変えるべきかと悩んでいると、

 

「冬木市全体に警察機関による厳戒態勢が敷かれた」

 

 後部座席で静かに鎮座していたT800が声を上げた。

 

「厳戒態勢……? なんでこんな時間に?」

「というか、なんでそんなことがわかったのよ?」

「カーラジオをつけてみるがいい、遠坂凛」

「へ?」

 

 指示される凛。

 後部座席にいるT800は当然手が届かない。渋滞の中四苦八苦してでかい図体のマイクロバスを運転する士郎の手も忙しい。

 故に凛にその仕事が回るのが当然の帰結だった。

 

「おじさんは確かラジオを受信できるんだっけ?」

 

 などという日常会話ではありえない疑問に対して、

 

「当然だ。現在放送されているすべてのラジオ局を録音している」

「それって著作権的にどうなのよ」

「私的利用のためノープロブレムだ」

「あら、そう? だったらその録音を再生した方がいいんじゃないかしら?」

「それは不可能だ、遠坂凛」

 

 と、わずかな光明を無惨に消されてしまう凛。

 遠坂凛という少女は、ほぼほぼあらゆることに対して優秀という天賦の才の塊のような女の子なのだが……。

 

 (カーラジオって……どうやって付けるの?)

 

 こと電子機器に関していえば、常識はずれなレベルで苦手――壊滅的であった。

 だがその場にそのことに気づいている人は本人以外いない。

 

(冷静になるのよ、遠坂凛! 貴女ならきっとできるわ! まずこのカーラジオを観察しないといけないわね……。FMとAMのスイッチはなんとなくわかるわ。確か聞ける局が違うんだったわよね。けどその隣に並ぶ3つのスイッチはなんなの!? ボタンには何も印字されてないし、……車の操作系統に何かの支障をきたすんじゃないわよね! ……いや、今はそのスイッチのことはいいわ。まずは電源スイッチを探さないと……!)

 

 ガチャガチャとカーラジオを触り出す凛。

 凛たちがのっているマイクロバスを改造した武装車だが、機械的信頼性などを考慮した結果、枯れた技術の水平思考的に、その車体はかなり年季の入ったもので、故にラジオもかなり古い骨董品であった。

 だからこそ最近の小型で便利でかつ操作しやすいラジオにしか見覚えのない凛が操作に戸惑うのも無理ではない話だが。

 

(つまみが二つしかない!? ということはこの3つのスイッチのうちの一つだけが正解……! もしもハズレを引いたのなら――車が故障……! いや、爆発する可能性も否定できないわ……!)

 

 と、無意識的に士郎の方へ恨みのこもった視線を送る凛。

 もちろんだが運転中の士郎はそんなものに気づいたりはしない。

 

「どうした遠坂凛。カーラジオに問題が発生したのか」

「あ、いや、そういうわけじゃ……。…………ええい、ままよ!」

 

 と意を決して3つのうちの真ん中のスイッチを押下する凛。

 対してラジオといえば。

 

 ……………………。

 

 ――ガシャン!!!

「ひゃっ!?」

 

 と轟音が鳴り響いたものだから、猫のように飛び上がる凛。

 

「え!? こ、壊れたの!? スイッチを押しただけじゃない! 車は大丈夫なの!? 爆発しない!?!?」

「お、落ち着け、遠坂」

 

 軽くパニックを起こしかけている凛をなんとか片手で押さえつけながら落ち着かせる。

 対して、轟音を鳴らした犯人といえば、

 

「車輌にT1000の金属組織が付着していた」

 

 と、おそらくその付着していたであろう部分を殴り飛ばして、装甲車に拳大の穴を開けていた。

 

「何かまずいのか?」

「位置情報を追跡されていた可能性が高い」

「マジかよ……。渋滞がどんどんひどくなってる、これじゃ追いつかれるのは時間の問題だ」

「この渋滞もT1000による工作の可能性が高い」

「どういうこと?」

「ラジオを確認することだ」

 

 言われるがままかーラジオのボリューム兼電源スイッチのつまみを回し、波長調整用のつまみを回して交通ニュースが放送されているチャンネルに合わせる。

 

 “本日夜に発生した警官殺人事件および警察車輌盗難事件により、冬木市では全地域にわたって24時間の交通規制が敷かれることになりました。ドライバーの皆様には徐行運転を心がけ、所用のない方は一刻も早く帰宅されますよう、ご協力お願い申し上げます”

 

「警官殺人事件……。T1000の仕業ってことか」

「肯定だ。T1000は液体金属を変形させることによって、人間と同じ程度の大きさのものに擬態することが可能だ。おそらく先ほど擬態していた警官はすでに死亡している」

「……、これ以上犠牲者が増える前になんとかしないと……」

 

 という会話を横耳に聞きながら、なぜ電源スイッチが独立していないのだとカーラジオに苛立ちを隠せないでいる凛は、ふとした疑問を抱き、二人に尋ねることにした。

 

「そういえば空気に流されてこの車に乗ったはいいけど、わたしたちは今どこに向かってるの?」

「あれ、言ってなかったっけ? 俺とおじさんがターミネーター対策に作った武器庫、要塞みたいなところだよ」

「武器庫? ……あまり深く突っ込んでなかったけど、現代日本でよくそんな銃なんて所持できたわね」

 

 と、座席の端に差し込んである数丁の銃を見ながら言う凛。

 

「それを貯蔵してる場所ってわけ?」

「確かに十分な量の武器は貯蔵してるけど、主要な目的はターミネーター対策の罠だよ」

「ふーん。で、どこにあるわけ?」

「深山町の西側の郊外に人の住んでない森の、その奥に西洋風の城があるんだ。そこだよ」

「郊外の森……、西洋風の城…………」

「そうそう。最初はただの城と思ってたけど、中を調べれば各種携行可能な銃火器から対人地雷、対戦車ミサイルに、組み立てが途中の8.8cm高射砲なんかもあって、要塞にするのにぴったりだったんだ」

「…………ちなみに、ちなみに衛宮くん?」

「なんだ?」

「そのお城って壁が白くて、円錐型の突き出た屋根がいっぱいあったりしない?」

「お、知ってるのか遠坂。中はかなり豪華だったぞ」

「……」

 

 アインツベルン城。

 士郎たちが要塞にした城の名前である。

 第四次聖杯戦争の舞台にもなった城であり、セカンドオーナーである凛が知らないはずのない場所。

 アインツベルン家が冬木市に構えた、文字通りの西洋城。

 

「……なんで魔術結界に弾かれなかったのかとか、そもそも所有者から許可をとったのかとか……そういうことはもう今はいいわ。とりあえずその城には二度と近づかないこと、いいわね?」

「え? でも――」

「――でももこうもないの。あそこに関わり続けるのは、アンタの言ってるターミネーターとかいうやつとデートに行くようなものよ。碌なことにならないわ」

「けど……」

「この渋滞じゃ日が明けてもアインツベルン城にはつかないだろうし、それに要塞が必要なんでしょ? 近くにいいのを知ってるわ」

「近くにいいの?」

「そう。だからあそこで右に曲がってちょうだい」

 

 と、士郎たちの行動に対して指示を出し始める凛。

 対して困惑する士郎。

 自分たちが用意したプランでは、ほぼほぼ問題なくT1000を破壊することができることはわかっているのだが、そのプランから外れるとどうしても液体金属型のターミネーターに対抗する手段が限られてくる。

 それこそ、溶鉱炉で溶かすくらいしか方法は無くなるが……

 

「その要塞ってのに溶鉱炉ってあるか?」

「溶鉱炉……? あるわけないじゃない」

「じゃあ、強酸性の薬剤とかは?」

「強酸性……。なくはないけど」

「ドラム缶何缶分あるんだ?」

「試薬なんだからドラム缶一個分もないわよ! ……こいつらアインツベルン城に何を持ち込んだの……!」

 

 だとすれば、その“要塞”ではその場凌ぎの対策法しか取れないだろうことが予想される。

 

「どう思う、おじさん?」

 

 ここはT800に聞くことにした士郎。

 

「遠坂凛の述べた“要塞”の性能による。我々が準備した要塞に辿り着くまでに交通規制が終わる24時間は必要と想定されるため、休息を取る場所は必要だ。この装甲車よりも耐久性があるのならば、使用するべきだ」

「流石にあるわよ! そもそも耐久性勝負で住居が車に負けるわけないじゃない!?」

「……そう言うなら、案内してもらおう」

 

 と、話がまとまり、士郎たちは当初の予定とは違い、凛の指示で目的地を変更した。

 渋々ながらも運転する士郎に対して、完全な状態で魔術の存在を証明できるという魔術師にしては少し矛盾した軽い気持ちで“要塞”へと向かう凛。

 両者の要塞という単語に対する解釈の違いもありつつ、凛としては、自らの工房のある場所では、いかに月霊髄液擬きであろうとも、我が物顔で闊歩などさせないだけの用意と自信はあったのだ。

 そしてその目的地とは、遠坂邸であった。

 




勝手にアインツベルン城を魔改造する士郎くん。イリヤたちが来たらどうするつもりでしょうね

ヒロイン誰にしよう?

  • 王道を往く遠坂凛
  • HFよりハードかもしれないイリヤ
  • 鬼道を逝く桜ルート
  • 幻のハーレムルート
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