あとがきに軽く設定集を残しておきます。
轟音――!!
強化ガラスを、無理やり剪断応力によって捻り上げながらぶち壊す時のような不快な破砕音と共に、工房の一角が大穴を開けて吹き飛ぶ。
幸いなことに近くには凛もセイバーもおらず、人的被害は最小限に済んだのだが。
「おじさん、T1000の相手しばらくお願い!」
と叫ぶや否や、背負っていた散弾銃を構え、迷いなく撃ち出す。
――数発の重厚な破砕音。
ペシャ、ペシャと、まるで沼に石を投げ込んでいるような着弾音とともに、T1000は数回大きくのけぞる。
そのまま放置すればやがては形を戻し、T1000はそのすべてのダメージを回復させるだろう。だが、
――ゴッ!!
体勢を変えようと穴だらけの体を動かしていたT1000を、士郎の隣から歩み出たT800が蹴り飛ばし、セイバーや凛のいない方向の壁へとめり込ませる。
そのまま追撃に移行するT800を尻目に、士郎は撃ち終わって弾の切れたショットガンを背負い直す。肩から尋常じゃない量の血を流し、吐血しながらも立ちあがろうとするセイバーを担ぎ上げ、蒼白になりながらも汗をダラダラと流している凛を脇に抱える。
「戻ってくる!」
とT800に宣言して、工房を飛び出した。
それを確認したT800は、隣の部屋まで蹴り飛ばされたT1000の場所にまで歩み寄り、ほぼほぼ人型に戻りつつあるT1000の首を掴み上げながら、壁へと突進する。
ドガッという音を立てさせながら、何枚目かもわからない壁を破砕させていきながら、T1000を叩きつける。が、どうやらそのダメージは不十分だったようで、
――ガギンッ!
という音と共に、T1000の重量が一気に増加する。
その身体の傷を完全に修復させたT1000が、体勢を整えてT800に対抗するように逆に掴み上げたのだ。
ガコンガコンと数度の力比べが行われたが、さすがは新型というべきか、T1000がT800を持ちあげると、そのまま廊下の壁へと投げ飛ばす。
すぐさまの反撃が来ないと確認し、そのままその場を離れようと歩き出すT1000。T1000にとっての第一目標はあくまで衛宮士郎と今名乗っている少年の命であり、T800は重要ではないのだ。
だが、
――ズドンッ!!
走り出そうとしたT1000の脚部がその太もも部分から千切れて、バランスを崩して倒れてしまう。
投げ捨てられたT800が手元に対物ライフルを携えており、その銃口からは煙が出ていた。
素早く立ち上がりながら脚部を再び接合し直したT1000はT800に向き直る。
想定よりT800が障害になり過ぎてしまっている。ならば、まずは破壊したのちに衛宮士郎を追えばいい。そういった判断なのだろう。
T1000はその腕の形を剣のような形に変えて、対峙することにしたのだった。
・・・・・・
「……ん、んん、……ぅ」
何やら悪夢を見ていたようだ。
その内容は思い出せないが。
酷く理不尽で。
希望の光はすぐそこにあるというのに。
それでも、誰も救われないような。
だからこそなのか。
寝起きというのに、酷く怠い。
目を開けようにも、疲労で動かない。
諦めて再び眠りにつくには、身体中の痛みで悲鳴をあげたくなる。
柔らかく温かい地面。
鼻を歪ませるようなオイルと火薬の匂い。
口の中はひどく乾いていて。
耳鳴りの後のような――
「遠坂? ……起きたか、遠坂?」
「……ぅんえ?」
情けない声を出しながらも、なんとかして目を開けて上体だけは起こす。
どうやら自室のベッドに寝かされていたようだ。
声のする方向へと顔を向けると、ダブルサイズのベッドの自分のいない側で、何やらセイバーの傷口に処置を施している士郎がいた。
一番大きかったはずの外傷、肩から首にかけて刺し抜かれた場所はすでに包帯でぐるぐる巻きにされており、そのほか左腕を含めた数箇所も同様であり、英霊らしからぬ痛々しさだった。
処置を施されているセイバーは、士郎の処置に身を任せながら、浅い呼吸を保たせながらもしっかりと目は開いていた。
「目は覚めたか?」
「え、えぇ……」
現状に関していまいち把握できていないながらも、聞かれたことに対応する凛。
「体は動くか?」
質問に対して、手を握ってみたり、立ちあがろうと足を動かしてみたりするが、
「あまり、力が入らないかも知れない……」
「そうか。やばそうなら呼んでくれ」
「……わかったわ」
士郎はセイバーの口に指を入れて開かせながら、もう片手に握ったペッドボトルの中の液体を流し込んでいく。「大丈夫か?」という声に、わずかながら頷くセイバーの様子を確認しつつ、注意深く作業をする士郎に、
「それ、何やってるの?」
と尋ねる凛。
「スポーツドリンクだよ。これくらいしか今はできることがないから」
そしてそれをひとしきり終えたのちに、セイバーを寝かせると、
「一応応急処置はしたけど……、あとは任せてもいいか?」
「え?」
立ち上がる士郎に、気の抜けた返事をしてしまう。
「できれば救急車を呼びたかったけど、魔術の隠匿とかいうやつがあるだろ?」
「え、えぇ、そうね」
「だから、装甲車で用意した限りの器具で、肩の麻酔と消毒、縫合と、腕の麻酔、固定はしておいた」
「……」
「俺がもし生きて帰れたら、口の固い医者を紹介もできるけど、一番いいのは大きい病院にその子を連れて行くことだ。その判断は遠坂に任せていいか?」
「……うん。いいわよ」
肯定する凛だが、セイバーを病院に連れて行くことはないだろう。彼女は英霊であり、おそらく現代医学的な治療よりも、魔術的な治療法の方が効果が高い。
包帯でぐるぐる巻きにされたセイバーを見ながら思う。
先ほどのT1000の攻撃が、なんとか致命傷にならずに済んだようだった。さすがは幸運A+と考える凛だったが、実際には凛が放った数発のピストル弾のおかげだったりする。
意識は混濁ながらもまだ失われていない令呪と自らのサーヴァントにホッとしつつ、士郎が立ち去ったのちに魔術的な治癒を行う予定の凛。
確かにまだまだ魔力は回復していないが、先ほどのように結界によって閉じ込められた状態ではないのだ。自室には重要な宝石がいくつもあるし、工房ほどではないが、魔術師駅に適した環境でもある。
一方士郎はといえば、部屋の片隅に積まれた武器装備一式の山の前まで行くと、徐に上半身の着ていた服を脱ぎ捨てる。
傷跡だらけながらもギリシャ彫刻のような肉体を惜しげもなく曝け出しながら、今度はズボンにも手をかけて
「ちょ、ちょっと!」
「? なんだ?」
ととぼけた顔の士郎に、もし万全な状態だったらガンドを迷いなく叩き込んでいたであろうと思いながらも、指摘する。
「女の子の前で何をしようってわけ? もしかして、あなた、へんた――」
「あのなぁ。一端のレディーなら野郎の裸くらい見過ごせっての」
と言いつつ、ついには下着姿にまでなる士郎。
堪らず目を逸らし、セイバーの方に向く凛。
セイバーの面倒を甲斐甲斐しく見ていただけあって、心優しい筋肉モンスターだと思っていた矢先のことだ。幻滅もいいところである。
そう思い始めると途端に、先ほどセイバーにスポーツドリンクを飲ませていた行為の意味が変わってくるように感じてくる。
それに、包帯でぐるぐるまきにされていて気づかなかったが、よくよく見るとセイバーの上半身の服全てが脱がされており、下も肌着だけ残して剥かれているではないか。
いや、確かに医療行為のための致し方ない行為とはわかる。上半身は言わずもがな、下半身にも数箇所固定具をつけて包帯が巻かれているのだ。
だが、それだけの理由で許してはいいものか。
そう思いつつ士郎の方を睨むと、
「……?」
脇腹を、まるでパイプでくり抜かれたような傷跡が見えた。
直径は15センチを下らず、抉られているような傷なだけに、生還するなど不可能に思えるものだった。あれでは内臓ごと切り取られてしまうのではないだろうか。
「衛宮くん、その脇腹の傷……」
「ん、これか?」
軍用ブーツの紐を結びながら、士郎は答えた。
「昔、対物ライフルで狙われたことがあってな。流石に死んだと思ったけど、優秀な看護兵のおかげで助かったよ」
「……ふーん」
防弾チョッキを着て、備え付けられている袋にグレネードや小銃をしまって行く士郎。
果たして看護兵が救える傷なのか?
それこそ自身が持つ家宝を使用して、それでも運が良ければ助かる程度の致命傷に思えてならない凛だった。
携行型のロケランを腰にぶら下げ、散弾銃を引っ提げた上に、機関銃を担ぎ上げながら一度ポーズを取る士郎はそのまま凛の部屋を出て行った。
「アイルビーバック」
そう言いながら。
なぜポーズを取ったのか、なぜ英語なのか、そして、なぜ立ち入らないように言った自室の帰ってこようとしてくるのか。
凛にはわからなかった。
・・・・・・
T800とT1000の戦いは一方的であったはずだった。
膂力、俊敏力、判断力。
そのすべてにおいて、T1000は圧倒的である。
では、なぜ士郎がセイバーの治療をしていた十数分、T800がT1000の足止めを続けられたか。
それはひとえに、準備の差であった。
士郎たちの手によって、遠坂邸のあちらこちらには十分な量の火器が用意され、遠隔操作が可能な対人地雷も敷設されていた。……流石に対戦車地雷を設置するのは良心が痛んだためにやってはいなかったが。
だが、それも限界が近づこうとしている。
弾き飛ばされて壁にめり込んだまま座っているT800は見るからにボロボロであった。
表皮組織の損傷は深刻であり、体全体の半分以上が金属組織の剥き出し状態になっており、複数の関節部位が誤動作をし始めている。
さらに稼働時の騒音もひどくなっており、歩くだけでキコキコ音が鳴り始めている始末である。
そして、そのT800にトドメを刺そうと、ゆっくり近づいてくるT1000。
その体には傷という傷は存在せず、新品の工業製品という姿を保ち続けていた。
最後の手段として、T800が自身の胸部にあるバッテリーセルを抜き取り始めようとした時に、
「待たせたな!!」
外から遠坂邸に向かって装甲車が突っ込みながら、T1000を吹き飛ばす士郎。
そのまま、助手席まで手を伸ばして、T800を引きずり上げる。
その重量数百キロはあるのだが、伊達に鍛えた筋肉ではない。
「そこでくたばってる液体金属、よく聞け。冬木市の西にある城で待ってやる。俺を殺したければ来てみろ」
そう言い切ると、運転席奥に置いた火器を取り出す。
それは、おそらく世界で最も有名な対戦車ロケット擲弾発射器。
たとえ渋谷にいる女子高生であっても、その形を一度は見たことがある。
その名はRPG-7。
「いいか、おじさん。こういう時はこう言うんだ」
――
発射された榴弾は立ちあがろうとするT1000に吸い込まれ、
――ドカンッッッッ!!!
という音とともに、崩れ去っていく遠坂邸。
凛の自室とは違った区画の建物のため、療養中の二人には影響はなかろう。
想定して、一切の躊躇いなく発射した。
瓦礫に沈むT1000を確認して、士郎は装甲車のディーゼルエンジンを鳴らせながら去っていった。
登場(予定)人物の軽い設定集です。
【真名】衛宮士郎
【性別】男
【身長・体重】193cm・107kg
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力:A 耐久:C 敏捷:B 魔力:? 幸運:D
転生者だが、Fate関連の知識は皆無。そもそも元住んでいた世界にもFateという作品はなかった。
T800と出会って以降、訓練の一環として色々な戦場を渡り歩き、様々な特殊任務をこなして、数えきれない縁を結び続けてきた。だが、不思議にも魔術師一人も見たことがないという。
単純な膂力だけなら、人間の限界をとうに超えているが、育つ環境が環境だっただけに自覚があまりない。
【真名】T800
【性別】なし
【属性】機械・混沌・悪
【ステータス】筋力:A+ 耐久:A 敏捷:E 魔力:なし 幸運:E
未来から送られてきたサイボーグ。筋肉もりもりマッチョマンだが、士郎が逞しく成長しすぎたせいで、並び立つとあまり変わらない。
審判の日の後にスカイネットによって製造されるのだが、士郎の働きによってすでにスカイネット社の前身となる組織は破壊され、審判の日は数度延期されている。
霊体化したサーヴァントに対しては無力だが、膂力と耐久力は決して負けない。
【真名】T1000
【性別】なし
【属性】機械・混沌・悪
【ステータス】筋力:A++ 耐久:EX 敏捷:D 魔力:E 幸運:C
未来から送られてきたサイボーグ。すでに存在しないはずの未来から送られてきている。
T800と同じく、相性によってはサーヴァントをも圧倒する実力を有する。
【CLASS】セイバー
【マスター】遠坂凛
【真名】アルトリア
【性別】女性
【属性】秩序・善・地
【ステータス】筋力:A 耐久:B 敏捷:B 魔力:A 幸運:A+ 宝具:A++
保有スキル略。
Fate/Zero時空のセイバー。ブリテンの救済を願っていたが、第4次聖杯戦争でボコボコにされて今の願いは、選定のやり直し。
士郎との相性は最悪で、すでにその片鱗は現れ始めている。予定ではもっと悪くなる。
【CLASS】○○○○
【マスター】アトラム・ガリアスタ
【真名】○○○○○○
【性別】女性
【属性】混沌・中庸・○
【ステータス】筋力:B+ 耐久:A 敏捷:B 魔力:B 幸運:D 宝具:A
すでに召喚されたもう一体のサーヴァント。相性は最悪だが、アトラムならなんとかしてくれるさ!
彼女がいる限り、第5次聖杯戦争は平和裏には終わらない。
【真名】○○○
【性別】女性
【属性】秩序・善
【ステータス】不明。ただし、人の身でありながらサーヴァントを圧倒することもあるという。
監督役として冬木市にすでに来ている代行者。
士郎の知り合い。
以上です。
逆に言えばここまでしか決まっておりません。ひとまずは聖杯戦争が始まるまでの話に集中しようと思っています。
よかったらこのサーヴァントを見てみたいなどの意見があれば、遠慮なくメッセージでお教えください! ご意見待っております!
監督役からする匂いは?
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カレー
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麻婆
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監督役と匂いは関係ないだろいい加減にしろ