Fate/Genisys 新起動   作:全自動髭剃り

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ピンチの訳

 士郎とセイバーが対峙することになった数刻前。

 

 何重にも重ねた罠を、次々と発動させていった士郎とT800。その最後は、強酸部屋に士郎を一人残して、餌とすることであった。

 士郎自身を餌にしてT1000を誘き出す。

 T800はその役はできなかった。なぜならば、T1000に対する餌として十分に働くかが疑問であったのと、強酸はT800の身体をもいとも簡単に溶かし切ることができるからである。

 ゆえに、T800は強酸部屋の少し離れにある次の罠、強酸で仕留めきれなかった際の保険として用意した電磁場発生装置でスタンバイをしていた。

 すでにT1000とサシの勝負を数度繰り返し、ほぼ無傷での撤退を何度も成功させているだけあって、士郎の心配は必要ないと判断したのだった。

 

『次の罠の準備が完了した。そちらの様子はどうだ?』

 

 インカム越しに士郎へと通信を試みるT800。

 

『お疲れさま。俺の方は、まだみたいだ』

『了解した。油断をするな』

『獲物を前に舌舐めずりするカカシじゃねえよ』

 

 士郎をプロとして育て上げたのはT800なので、確認するまでもないことではあった。

 とはいえ、電磁場発生装置の確認も済んでいたので、念のためにと強酸部屋に赴くためにドアに手をかけるT800。

 

 だが、

 

 ――ガンッ!

 

 鈍い音と共に、開こうとした鉄の扉が、外から破壊されて宙を舞った。

 

 ガランガランと転がっていくから金属扉を少し確認して、T800は扉を破壊した主に向き直して口を開けた。

 

「850ドルだった」

 

 国際通販で取り寄せた、非磁性の金属で作られた防弾扉だっただけにかなり高価だった。

 

「それが?」

 

 T1000は首を傾げながら語る。

 T800は士郎が言っていたいつかの言い訳をメモリから参照しつつ返答する。

 

「備品だから問題ない」

 

 静寂を破る金属音が響き、空気を裂く火花が舞い散る。

 

 ――ガキン!

 

 と鈍い音を立てて、T800とT1000が互いにつかみ掛かるように対峙する。

 T800の鋼鉄の拳がT1000に叩き込まれ、衝撃でT1000の液体金属の体が波打つ。遠坂邸で行われた戦闘では起きなかった現象だが、おそらく金属疲労や蓄積したダメージによるバグだろう。

 だが、

 

 ――ジュワッ……!

 

 と音を立てて一瞬で体の形を戻し、無機質な目でT800を見据えるT1000。

 腕を長く変形させ、鋭利な刃にして襲いかかるその姿は、まるで死神のようだ。

 

 T800は戦闘の経験データとマシーン特有な状況判断力を活かし、一瞬でその攻撃をかわす。俊敏性に難があるとは言え、大ぶりに攻撃を避けられないほどではない。

 T800は背後に回り込み、強靭な手でT1000の頭部を掴むと、鉄壁に

 

 ――ドゴン!!

 

 と叩きつける。金属の壁が振動し、周囲にその衝撃が伝わる。しかし、T1000はその瞬間に液体金属の特性を活かし、壁に叩きつけられた水風船の如く液体金属を跳ね返させ、掴まれたT800のての反対側に自身を再生させる。

 T800は即座にショットガンを構え、即刻に発砲する。

 

 ――バン!! バン!!

 

 と轟音が響き、弾丸がT1000の体を貫く。しかし、液体金属の体は瞬時に再生し、その冷たい瞳には揺らぎがない。

 

 やがて二人の戦士の攻防は、一進一退の激しいものとなる。

 倉庫内の機械が火花を散らせながら次々と破壊され、壁が次から次へと破壊されていく。

 

 T1000は冷酷な微笑を浮かべ、さらに攻撃を加速させる。その冷たさは、まるで人間の感情を持っているような殺戮機械の本質を示しているかのようだ。

 しかし、その瞬間、T800はその機会を逃さず、T1000を電磁波発生装置に繋がれた高圧電線に押し付ける。

 

 ――ビリビリ!!

 ――パチパチ!!

 

 と電流がT1000の体を駆け抜け、液体金属が電気に反応して激しい破裂音が鳴り響く。

 T800は、息をつく間もなく次の一手を計算する。電力が切れてT1000が再び動き出す前に、士郎のいる罠に誘い込む方法を見つけなければならない。

 

 無理やりT1000を掴んで罠に持ち込むのが一番確実なのだが、近距離戦闘能力はT1000が圧倒的である。

 次点でT1000を相手に撤退戦を行い、誘導する。ところがこれについても不確実だ。T1000が士郎のいる場所に向かっていない時点で、罠について察知した可能性は高い。

 ならば士郎の増援を要求するのが最善と判断し、体内の電波送信機を起動したが、……。強力な電磁波を使用する予定だったこの場には、外部の電磁波が漏れ出ないように遮蔽剤が使われていて、連絡が難しい。

 

 ならば――、この場で破壊する!

 

 最も可能性の高い手段である自身の核融合電池バッテリーセルを取り出そうと、胸部のハッチを開くT800だったが、

 

 ――ガキンッ!!

 

 と、その取り出そうとした手ごと、T1000の腕の変形したやりによって貫かれる。

 一瞬先に体内の流体金属の抵抗値を変動させ終えて、高圧電流を無効化したT1000が、T800の道連れのための一手を封じた。

 

 万事休す。

 この場でT800ができるのはT1000相手に時間稼ぎにもならないような妨害。

 

 なおも戦闘を継続しようとするT800の脳天に向かって、T1000は腕を振り上げる。

 とどめの一撃になるだろう。

 その中央演算装置がある場所へ一直線に――!

 

 ――ドカンッ!!!

 

 その直前、金色の輝きが、一閃した。

 

 ・・・・・・

 

 意気込んでやってきた彼女たちの前には、無機質な目を光らせるT1000が立ちはだかる。

 その姿は擬態に失敗した銀色の液体金属がところどころ剥き出しになっており、今までアインツベルン城を犠牲にした士郎たちの戦いの成果ともわかるものだった。

 

 凛は冷静な表情でセイバーに指示を出す。

 

「セイバー、魔力補充については考える必要はないわ。宝具の力で一気に片をつけるわよ!」

 

 宝石を握り込んだまま、絶体絶命のT800からT1000を引き剥がしたのちに距離を取ったセイバーに語りかける。

 セイバーは剣を構え、深くうなずいた。

 

「わかりました、マスター。全力で参ります!」

 

 T1000はその瞬間、銀色の体を変形させて2本の刃を作り出し、セイバーに向かって突進してくる。

 俊敏性においては何倍ものアドバンテージのあるセイバーはその攻撃を難なくかわし、カウンターとしてエクスカリバーを振るう。

 

「――ッ!」

 

 しかし、T1000は俊敏さの限界ながらも、数瞬遅れで腕を使用し、その攻撃を受け流す。

 それは先ほどの戦いでは見られなかった反応であり、確実にT1000がセイバーとの戦いに対応を見せ始めている証左でもあった。

 だが、一切の油断を捨てているセイバーはそれだけでは驚かない。

 

 飛び交うは無数の剣戟。

 だが所詮は並の人間を相手にすることを前提とした設計のターミネーター。

 英霊のような想定外の存在相手にはどうしても討ち合いの相性が悪く、少しずつ押し込まれていくT1000。

 そして、セイバーの渾身の振り上げをもろに喰らい、そのまま大きくのけぞったT1000の隙を見逃さず、

 

「エクス――」

 

 セイバーは咆えた。

 魔力が集中し輝きを放つ聖剣。

 

「――カリバー!」

 

 黄金の光が一気に放たれ、T1000に直撃する!

 巻き込まれた銃火器の火薬がパチパチと爆発しながら、その光波を盛り上げる。

 光の斬撃はT1000の体を貫き、一部を蒸発させ、その形を大きく歪ませる。

 令呪によるブーストのかかった宝具の解放ではないため、その威力は不十分なものだったのか、T1000は再生能力を発揮し、体を再構成し始める。

 

「やっぱり一筋縄ではいかないわね……!」

 

 凛は唇を噛んだ。

 

「でも、まだやれる。セイバー、もう一度宝具を!」

 

 アルトリアは再び魔力を高め、二度目のエクスカリバーを放った。

 

「エクス――カリバー!」

 

 二度目の光の斬撃がT1000を再び貫く。T1000は形を崩しながらも、再生しようとする力は弱まっていた。

 

「少しは効いているようですね……」

 

 アルトリアは息を切らしながら言った。

 

「ですが、まだ終わりではありません!」

 

「もう一度行くわよ!」

 

 凛はさらに魔力を高め、セイバーに送る。

 

「これが最後の一撃になるはず!」

 

 セイバーは全力で三度目のエクスカリバーを放つ準備を整えた。

 彼女の体からは凛の魔力が溢れ出し、エクスカリバーに全ての力が集まる!

 

「エクス――」

 

 そして光は全てを包み込み。

 

「――カリバー!」

 

 その刃はT1000を完全にバラバラにするに至った。

 だが、

 

「まだ終わってないはずよ! 残骸を魔力で焼き尽くすわよ!」

 

 一度経験した失敗を繰り返すほど、馬鹿な遠坂凛ではなかった。

 

 ・・・・・・

 

 キリのないT1000の残骸焼きに辟易としながら、凛とセイバーは次から次へと大きい小さい関わらず残骸を探し続ける。

 

「魔術のデータがないため、その対処法がT1000に通用するかは不確定的だ」

 

 と、機械ながらボロボロで立ち上がることもままらならい瀕死に近い状態のT800の言葉はあったが、

 

「でも、やらないよりはマシでしょ」

 

 という凛の言葉に対しては、T800も同意するところであった。

 本来これだけの騒ぎになれば士郎が駆けつけてくる可能性も高かったはずなのだが、電磁波を遮るためのシェルターのせいなのか、まだくる気配はない。

 

「こんなのを相手しないといけなかったとか、衛宮くんには同情するわね……」

 

 先ほどまでは自身の邸宅を破壊された苛立ちでいっぱいだったはずだが、いざ戦いが終わればそんな感想に変わってしまった。

 

「あなたたちって、10年も前からこれに対処する準備をしたんだっけ?」

「肯定だ、遠坂凛。私は衛宮士郎の生命を守るために過去に送られた」

「それで、直接脅威となるT1000を殺す……壊す? ことがその目的達成に必要だったと」

「肯定だ、遠坂凛」

 

 サーヴァントを相手にしても遜色ない膂力と耐久性。

 それにサーヴァントには及ばずとも、人間では達し得ない俊敏性をかな備えた機械。

 自身は巻き込まれただけの立場ながらも、もしもセイバーがいなかった場合、碌な結末にならなかったであろうことが、凛たちが現場にたどり着いた時のT800の様子からもわかる。

 もしもこの部屋にたどり着いたのが一瞬でも遅れたら、T800は破壊されたはずで、そうなったときに、味方を失った士郎が単独でT1000を相手することが可能とは、凛にはとても思えなかった。

 

「あ、そういえば」

 

 思い出したかのように尋ねる凛。

 

「衛宮くんはどこにいるの?」

「一つ区画を挟んだ超酸部屋でT1000の襲来に備えている」

「……何してんのよ、あいつ」

 

 全てが終わろうとしているときに限って、現場にいない。

 彼らが10年かけた準備が失敗しただろうと思っていた凛の想定は確信に変わった。

 全く詰めが甘いなと思う凛だったが、他人のことを言える立場でもないので面と向かって言うつもりもない。

 

「よし、じゃあわたしはセイバーと合流して、衛宮くんを呼んでくるわ。それまでに壊れることはないわよね?」

「外部からの一定以上の破壊力を持った打撃がなければ問題ない」

「……大丈夫ってことね。では、ちょっと待ってなさい」

 

 そう言い捨てると、横たわるT800の近くにあるT1000の残骸を片付け終わった凛は、その場をさる。

 派手に宝具を数度使っただけあって、あちらこちらへと吹き飛ばされた残骸は、要塞と化した広いアインツベルン城のあちらこちらに散らばっており、セイバーはあちらこちらに飛び回りながらその対処をしていることだろう。

 だがそれもそろそろ終わりに近いとのことが念話で伝えられ、近くの部屋で落ち合うこととなっていた。

 

 最初からボロボロの残骸屋敷だったアインツベルン城をさらに破壊し尽くしたために、足の踏み場も少なくなっている中を、どうせならブーツではなく運動靴で来ればよかったと後悔しつつ歩く凛。

 この事件の事後のことを頭でまとめていく。

 魔術師の存在を知らせた手前、最低限弁えてもらうことを伝えなければならないし、軽く聞いた話では、どうやら今まで戦場を渡り歩いてきたらしい士郎に、日本で生きていくための一般常識も伝えなければならないかもしれない。

 同時に遠坂邸の修繕費とアインツベルン城の後始末も押し付けなければならない。ついでに使用した宝石類の補充用の費用も上乗せしてやろうなんて思いつつ、約束の場所へとやってきた凛。

 

「あれ、随分と早かったわね」

 

 と、すでに仕事を終えたらしい白銀の鎧を身に纏う自らのサーヴァントがそこにはいた。

 

「はい。T1000の残骸は確認できた限り焼き払ったので、ひとまずは安心していいかと」

「そう。さすがは最優のサーヴァントね」

「……」

 

 ほっと一息をつく凛。

 対して、セイバーは、

 

「マスター、衛宮士郎のところへ向かいましょう」

「そうね。全部が終わってるのに、いまだに待ちぼうけてる馬鹿に報告くらいしてあげないと」

 

 そう言うと、セイバーを隣にして超酸部屋へと向かう凛。

 セイバーが近くにいるために、T1000の襲撃はある程度対処できるという安心感から、凛の足取りは軽かった。

 おそらく落着している一件。些細なことかもしれないが、召喚後にいきなり襲いかかったセイバーに対する士郎の誤解も軽く解いておこうなんて思っていたが、

 

(そういえば、セイバーって衛宮くんの下の名前知ってたかしら?)

 

 という疑念にしては些細すぎるきっかけと、

 

 ――マスター、どこにいますか?

 

 聞こえてきた念話。

 そういえば。

 

『T1000は液体金属を変形させることによって、人間と同じ程度の大きさのものに擬態することが可能だ』

 

 T800はそんなことを言っていたが――!

 全力の警戒と共にセイバーへと向き直る!!

 

 だが、それはすでに時遅し。

 

「殺されたくなければ両手をあげて指示通りに動け」

 

 ところどころ擬態に失敗した()()の金属部分を残しながら、警官姿のT1000が武器庫とかしたこの城から鹵獲したであろう大口径のハンドガンの銃口を凛に向けていた。




切嗣「僕はね、正義の味方になりたかったんだ」
士郎「寝言言ってんじゃねえよ、ぬへへ」
エミヤ「そうか。ああ――安心した」

Apocryphaを今更履修したので、この作品に登場させられるサーヴァントの数がぐっと増えました。プロットをかなり改めている段階なので、亀更新になります

監督役からする匂いは?

  • カレー
  • 麻婆
  • 監督役と匂いは関係ないだろいい加減にしろ
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