進撃のサイヤ人   作:ただのトーリ

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壁外調査~狩り~

 

 廃墟になった町に入り、俺たちは仮拠点としての設営を開始する。

 

 

 近くの森から資材を回収し、運搬する仕事は俺が行う。

 普通ならば馬や大人数を使っての大作業になるのだが、俺が居れば大木を気円斬で切り倒し、あとは担いで飛ぶだけ。

 しかも1度で数本運べる速度で1往復5分弱。

 これにもエルド達が苦笑い。

 

「今までの行軍がなんだったんだというレベルだな」

 そのつぶやきにリヴァイが応える。

 

「確かにヤツひとりで調査兵団丸ごと分の働きが可能だ。しかしやつの身体は1つしかねぇ。全て頼りきりじゃいつか倒れちまってもおかしくねぇ。そうならないようにできる範囲でお前らはコイツのサポートに回ってやれ」

『ハッ!!』

 

 

 あっという間に町をぐるりと囲う木の塀が出来上がった。

 元々小さな町だったこともあるが、それでも短期間で要塞化まで行ったのは驚異的と言える。

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

「ふぅ」

一仕事を終わらせた俺は汗を拭いつつ、舞空術で空から調査兵団のみんなを眺める。

 

 やりやすいなこの組織は。

 

 普通、突出し過ぎた者は異端扱いされて排除されるのが世の常だ。

 しかしこの調査兵団は驚き困惑しつつも、根本には「巨人を駆逐する頼もしい味方」という思いがそこにある。

 

 そのおかげもあって、俺の事をそれほど拒絶反応を示すことなく受け入れている。

 まぁ、団長や兵長が率先して俺を肯定する発言してくれたおかげってのも大きいかな。

 

 ともあれ、少しずつ俺という存在を受け入れて貰えるのは有難い。

 

 

 空を見上げるとまだ太陽は高く昇っており、時間的余裕があるのを感じた。

 降下して団長の近くに降りると、彼も気がついたようでこちらに視線を向ける。

 

「エルヴィン団長、俺少し狩りに行っても良いですか?」

「狩り?どういう事だ」

 俺の質問に、隣で聞いていたリヴァイ兵長が僅かに眉を寄せる。

 

 エルヴィン団長は大して気分を害した様子もなく質問する。

 

「狩り、とは食料確保の狩りということか?」

「ええ、少し離れたところに動物の痕跡を見つけました。

 地形や立地を見た印象だと鹿とイノシシが多く生息する猟場で、茸なんかもよく取れそうです。

 今回の遠征では既に検体確保という成果をあげれてますが、それはあくまで兵団としての成果だけです。民衆に対してもっとわかりやすいメリットがあった方がより支持を受けられると思うんですよね」

 

 

 その言葉にエルヴィン団長やリヴァイ兵長が考える。

 

「……たしかに、これまでだったら肉を持って帰るような余裕はなかったかもしれないが、お前がいる時と小規模遠征の時に限っては可能かもしれねぇな」

 

 その言葉にエルヴィン団長も頷く。

 

「しかしどうやって持って帰るつもりだ? 巨人ほどでは無いにしても、民衆に振る舞うほどの肉となれば相当の量となるぞ?」

「それについては問題ありませんよ。俺とサシャは狩りでつい多く取りすぎることがありましたが、そういう時は突貫で荷台を作って俺がそれを引いて走ってました。

 それと肝心の獲物ですが、どうやら人間という外敵がいなくなったせいか、やたらと繁殖しててむしろ間引かないと宜しくない様子です」

 

 

 普通ならば馬を使う必要があるが、馬力よりもはるかに優れた引手がここにいる。

 更に言えば、荷台はあくまで上に乗った肉を劣化させなければいいわけで、車輪やら見た目がしっかりしている必要は無い。

 極論、木箱に大きな木ゾリをくっつけて作り、俺が引っ張るだけでいいのだ。 

 

 

 そのことを告げるとしばらく考えたあと、許可を出された。

 

 ただし条件として30分だけで済ませる事。

 あくまで今回の遠征は俺の実力を確かめるものであって、それを把握しきるまでは単独の行動は避けるべきだと言われた。

 

 

 それを聞いて俺はニンマリと笑みを浮かべて一言。

 

「それだけ時間があればお釣りが来ますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 

 〜ミケ視点〜

 

「これは一体……」

 日が暮れる前にミケが指示されていた仮拠点へと帰ってきた。

 彼は引き連れてきた部下と共に、目の前で起きている出来事に思わず絶句している様子だった。

 

 小さな集落と言っても過言では無い町が立派すぎる木製の外壁に守られているのだ。

 ぐるりと一周されており、四方に出入口の門が簡易ながらに設けられており、調査兵がそこを警備していた。

 

 これではまるで小さなウォールマリアだ。

 

 しかも驚きはそれだけにとどまらない。

 

 街の真ん中で焚き火が焚かれていたのだが、その脇に目を見張るような肉の山が積み上げられていた。

 その脇には山菜とキノコなどが大量。

 

「ミケ分隊長……これはいったい……」

「肉があんなにいっぱい」

「これは夢か……?」

 

 部下たちもあまりの出来事に困惑している。

 

「エルヴィンの元へ向かう。お前たちは馬を休ませた後休息を取れ」

「りょ、了解しました!!」

 

 足早に拠点中央へ向かうとそこにはエルヴィン団長他主要メンバーが集まっていた。

 

 

「エルヴィン!」

「ーー、ミケか。ご苦労、よくもどった」

「ああ、それよりもこれはどういう事だ。たった半日で様変わりしすぎだ。最初来るべき拠点を間違えたのかと焦ったくらいだ」

 

 その言葉に答えたのはハンジ分隊長だった。

 

「バルトのおかげだよ」

「何?」

「あの子、一人で近くの森から木を調達したと思ったら丸太を先端尖らせて地面にブスッ! だもん。見てて思わず笑っちゃったよ」

「……これをあいつ一人でやったというのか? いや、やつの身体能力でならば不可能では無いのか……しかしこの大量の食料はなんだ? 町に残っていたものでは無いのだろう?」

「それもバルトがやったんだ」

 

 

 今度はハンジの補佐官が説明を続ける。

 何でも周辺に巨人が居ない事がわかった時点で大量の食料を確保したいと言い出したらしい。

 今回の遠征はあくまでバルトの試運転が目的だった。それ故に多くの戦果を求めていなかった訳だが、図らずも検体をふたつも手に入れる快挙をして見せた。

 しかしバルトは「わかりやすい一般人向けの手柄も必要だ」と進言し、大量の肉と山の幸を取ってきた。

 

 もちろんこれが一時的なものだという自覚はある。

 しかし食糧不足で喘いでいる現在において、我々調査兵団は援助を受けることはあっても援助する側ではなかった。

 

 だからこそ「調査兵団は外で目に見える利益を持って帰れる団体」であると二重の意味で表明する必要がある。

 

 これまでは徒に被害を増やし、税金泥棒なんて言われていた調査兵団だが、肉と山の幸などを持ち帰った事例を見せれば「もしかしたら次も」と期待させて反論の声を減らせるかもしれない。

 

 もちろん毎回同じ結果は不可能だが、バルトが居れば小規模調査と称して、民衆のご機嫌取りに肉や食料確保に動くことも可能だ。

 

 この効果はエルヴィンとしても見過ごせぬ政治的価値を見出し、許可した結果この有様だ。

 

 モブリットに内訳をまとめた資料を見せてもらったが、その内容に思わず目を見開く。

 

 イノシシ19頭 285キロ相当

 鹿35頭 525キロ相当

 熊13頭 1560キロ相当

 その他小動物系104匹 50キロ相当

 

 

 合計2400キロの肉が取れた計算だ。

 それだけじゃない。ここに更にキノコや山菜などの山の幸も含まれるのだ。

 

 炊き出しで100人分の肉でも2キロあれば事足りる現状、これはあまりにもふざけた量だ。

 ウォールローゼの民に行き渡らせるとなれば足りない……足りないがそれでも市場に流せば少なからず効果は期待できる。

 

 あの新兵、規格外だと思っていたがまだ認識が甘かったようだな。

 

 

 

 俺は美味そうに肉を頬張るバルトに近寄る。

 

 すると声をかけるよりも先にあちらが気付く。

「ふぁ! ふぃふぇふぁん、ふぉふぉっふぇひはんへふへ!!」

「飲み込んでから喋れ」

 すると彼は急いで飲み込むと「いやぁ、すみません」と笑った。

 

「待ってる間に中々頑張ったらしいな」

「まぁ昔からやってる事ですから」

「これだけの量を……?」

「いや、さすがに毎日これだけやったらあっという間に山から動物居なくなりますよ。ただ今回は数年放置されたせいで増え過ぎた野生動物を間引く目的もありました」

「ほう?」

 

 聞けば人の手が入らなくなってわずか数年でその生態系が大きく崩れつつあると言うのだ。

 このままでは仮に土地を取り戻しても、野生動物に荒らされた環境のせいで直ぐに作物が育たなくなる上に、縄張りが人間の生活圏にまで及んだ影響がしばらく残るそうだ。

 

 オオカミやクマの類が街中に当たり前のように入ってこようとするのだ。

 

「なるほど、盲点だった」

 取り戻すことばかりに目が行ってしまい、その後の事にまで頭が回っていなかった。

 

 まぁ駐屯兵団の管轄だが、事前に防げる範囲は手を回すべきだろう。

 

「なのでエルヴィン団長には小規模壁外調査では2回に1回のペースで今回みたいな間引きとゴマすりを兼ねた狩猟を許可してもらいました。

 報告書には調査の結果として土地の保全活動を上げられますし、民には避難の際に残してしまった思い出の場所が守られるし食料を得られてにっこり、俺たちは支持を得てにっこり、上層部には我々の有用性を知らしめることが出来てにっこり。いい事ずくめです。

 ついでに言えば小規模壁外調査の参加者は肉を沢山食えるボーナス付き。もちろん肉を多少持って帰り、家族や友人に贈る許可もエルヴィン団長に取り付けました。壁外調査っていう危険度ある仕事をしてるんですから、これくらいのメリットがないと」

 

 ヘラヘラと笑いながら言う彼を見て思わず俺も笑ってしまった。

 

 こいつは壁外調査をまるで危険だと思っていない。

 散歩か何かのように過ごしている。

 

 もちろんこれまでの苦労を思えば感じる事がない訳では無い。しかしそれでも彼の余裕の態度が実に心強いのだ。

 

「あ、そういえばミケさんこれ好きじゃないですか?」

 そう言ってバルトが差し出したものを見て俺は目を見開く。

 

「これはーー、ハーブか!? しかもこの香り、俺が知る中で最高品質だッ!!」

「あっ、やっぱりこれ好きなんですね。嗅覚が優れてるってことは香りにこだわりあるかもっておもったんですけど、正解だったようでよかったです。

 森の中で自生してるのを見つけたんです。ハーブティーとかにして飲むとリラックスできますよ」

 

 

 

 

 そう言って他にも持っていたハーブの葉をちぎってコップに入れると、焚き火の上で沸騰させた湯を注ぎ始めた。

 

「これは……」

 

「本当はもっとしっかりしたやり方があるんですけどね。飲む前に軽く湯をかき混ぜて、最後に葉を湯から上げて飲んでください。あまり長くやると渋くなるんで気をつけて」

 

 言われた通りにして1口飲むとこれは信じられないほど素晴らしい香りが口の中に広がった。

 

「素晴らしい」

 

「ですよね。苗を幾つか確保したので持ち帰って栽培しましょう。これを普段から飲めるようにしたいです」

 

 これだけでも今回の調査に参加した価値があったな。

 

 

 

 このハーブティーはエルヴィンやリヴァイも好んで飲むようになった。

 ハンジやモブリットは新しい資材が増えた事に喚いていたが。

 

 

 

 




お肉の量に関してはググッて出た数字を単純掛け算しただけなので、詳しい人からすると間違いだらけかも知れません。

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