進撃のサイヤ人   作:ただのトーリ

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不思議だね
どんなに見直しても誤字脱字が減らないんだ。
声出して読みながら確認しても、指差し確認しても減らないんだ。
不思議だね
ダネフッシャ


暗雲

 

 身体が脈動し、徐々に大きくなっていく。

 更には身体は動物の体毛に覆われ、視点がどんどん上がっていく。

 

『ウォォォォォォォォ!!!』

 

 

 

 皆が驚いた顔で見上げる。

 手足を確かめると間違いなく大猿形態になっていた。

 

 巨人で言うところの17m級って所か。元々170cmくらいだったからその10倍と考えれば妥当か?

 

 

 

「随分とでかくなったな。おいバルト、言葉は通じるんだろうな」

 

 リヴァイ兵長は舞空術で浮かび上がり、視線の高さを合わせながら質問をしてきた。

 

 

『問題ないですよ兵長、そちらにはやや聞き取りにくいかもしれませんが』

 

 俺が冷静に答えると、周りを警戒していた兵士たちからも驚きの声が漏れる。

 

 リヴァイ兵長はしっかりと頷き、視線を見上げる兵士たちへと向ける。

 

「聞こえたなお前ら? これであとはコイツを守るだけで解決だ。配置に付け!!」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

 全員が動き出す。

 俺も巨体でうっかり街を破壊しないように気をつけながら大岩へと向かう。

 

 岩は17mになった俺から見ても充分巨大な塊で、両手で掴みあげるとそこそこの重さを感じた。

 ……でもやっぱり大猿化の効果はすごいな。かなり楽に持ち上げられる。

 

 頭上に持ち上げると、周辺の駐屯兵団達が雄叫びをあげる。

 

 

「持ち上げたぞ!」

「すごい、これなら行ける!!」

「今こそ、巨人どもに勝利するんだ!!」

「あの男を、バルトを守れ! 奴こそ人類の希望だ!!」

 

 皆が心をひとつにして俺の行先の道を開いてくれる。

 足元に5M級が近寄ってくる。

 

 蹴り飛ばすか悩んでいると、それをサシャとミーナが手早く切り飛ばす。

 

『無茶するなよ二人とも!』

「何言うてんの! うちらより無茶してるバルトに言われとうないわ!」

「そうだよっ! 一緒に帰るんだから、絶対やり遂げるんだから!!」

 

 興奮のあまり言葉遣いが元に戻ってるサシャと、死の恐怖に震えながらも必死に戦うミーナ。

 

『ったりまえだ! お前らも死んだりすんなよ!』

 

 俺は更に前へ進む。

 リヴァイ兵長が次々と10m級巨人を打ち倒していく。立体機動と舞空術により対空能力が上がったことで、もはやあの人は巨人絶対殺すマンとして完成されつつある。

 

 しかもあの人、直線飛行しか出来なかったはずなのに戦いの中でその能力が進化してるみたいで、S字飛行まで始めやがった。これだからアッカーマンの血は怖いんだ。

 

 

 それでも被害は出てしまう。

 ガスが切れ、不意の事故で命を落とす兵士が視界に映る。

 

『っ……くそ、早く、早く行かなきゃ行けないのに!!』

 

 穴までが遠い!

 街中のせいで建造物が邪魔だ。直線で突っ切りたいが、そうすると今度は壁際に寄せられた巨人共が倒壊音でこちらに意識を向けて集まってきてしまう。

 

 さらにはその影から飛び出てくる巨人が絡みついてくる。

 

 舞空術で飛んでいきたいが、パワーボールによる変身のせいで既に気を大きく消耗している。これで更に舞空術などで気を消耗しすぎると、途中で変身が解けかねない。

 そうなったら再度の変身はしばらく不可能だ。しかも気を消耗した俺が岩を持ち上げるだけの力を出すことも出来ず、作戦は失敗する。

 

 

 それだけはダメだ。

 

「よそ見してる暇があるなら前へ進むことだけを考えろ」

 

 リヴァイ兵長が俺の肩に降り立ち、そう告げてきた。

 

「アイツらはお前という希望に命をかけてるんだ。だから奴らが死のうと、お前はそれに応える義務があるんだ」

 

『……わかってます』

「ならさっさと穴を塞いで巨人共を蹴散らしやがれ。そのでかい図体は岩を運ぶだけに使うには勿体ねぇからな」

 

 その言葉に答えることなく、俺は力強く歩を進める。

 

 こうしてる今も、誰かが死んでる。

 俺を前に進めるために。

 

 この一年間でわかってる事だ。

 俺は全てを救えない。

 

 人より多くの力を持ち、守れる範囲も桁違いだがそれでも限度は必ず存在する。

 

 俺がやれることは死にゆく仲間たちの遺志を無駄にしないことだ。

 歯を食いしばれ、怒りを力に変えろ。

 己の無力を嘆く暇があるなら、その敵を打ち倒すことだけに意識を向けろ。

 

 徐々に穴が近づく。

 あと少し。

 

 戦え、エレンはそう自身に何度も言い聞かせていたじゃないか。

 そうだ、戦え、戦え、戦え。

 戦え! お前は戦闘民族、サイヤ人だろうが!!!!

 

『ウォォォォォォォォーーーー!!!!』

 あらん限りの雄叫びと共に岩を叩きつける。

 

 道中の巨人など無視し、穴へと押し付ける。

 大地を揺るがすような衝撃が走り、数秒の沈黙。

 

 

 土煙が晴れたそこには、大穴は存在せず岩によって塞がれていた。

 

 

 その直後、成功を知らせる煙弾が空へ目掛けて放たれた。

 

 この日、人類は初めて勝利を収めた。

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 

 その後、大猿化した俺とリヴァイ兵長、そして到着した調査兵団によってトロスト区内部にいた巨人は全て討伐された。

 

 

  恐らく舞空術を覚えていたことで、原作よりリヴァイ兵長だけが早く到着出来たが、正史だとここに兵長が混じっていたんだろうな。

 

 

 当然ながら作戦終了後、エルヴィン団長とピクシス司令の名のもとに今しばらくの箝口令を敷かれた。

 

 公式発表をするまではバルト・ロメオの存在はギリギリまで秘密にする事。

 

  

 その僅かに稼いだ時間を使い、ピクシス司令と仲間たちに俺の秘密を明かすことにした。そうして今後起きるだろうトラブルへの対策会議が開かれた。

 

 

 

 

「……まさか、未来まで見えるとは思わなかった」

「私もこればかりは予想外と言うべきか、朗報と喜ぶべきか混乱するよ……」

 

 エルヴィン団長とハンジは少し疲れた顔付きで、すっかり冷めつつある紅茶を飲んでいた。

 

 ピクシス司令は俺がこれ迄明かしていた秘密をまとめた全ての資料を見て難しい顔をしている。

 

「やれやれ1つでもホラ吹きと言われてもおかしくない爆弾だと言うのに、それが無数に転がり出て来よるわ。この調子なら超絶美女の巨人くらい本当に居てもおかしくないのう」

 

 ・サイヤ人(異星人+シッポ付き)

 ・気のコントロール(気弾+気功波)

 ・卓越した戦闘能力(巨人を瞬殺)

 ・変身能力(大猿+界王拳+α)

 ・予知能力(特大級の厄ダネ)

 

 ここに加えてエレンの巨人化についてだ。

 流石にここに来て隠す判断は無く、エレンは重要参考人として俺と共に会議に参加していた。

 

 

「お、俺……ここに居ていいのか? 明らかに場違いじゃねぇか? それにお前がサイヤ人? とかいうのもよくわかんねぇんだけど……」

 

 気まずそうにエレンが俺に声を掛けてくる。

 まぁ、ただの訓練兵が南方総司令と調査兵団団長、さらに兵長などのビッグネームに囲まれたらそうなるだろう。

 

「必要なことだ。ここで下手に隠し立てするのはこの人達からの不信を買うだけでなんのメリットも無い。先に手札を晒して信頼を勝ち得る方が大事だ。サイヤ人については人種くらいに考えてくれ。北方生まれと南方生まれの違いみたいなもんだ」

 

「よくわかんねぇけど、わかった」

 

 エレンはまだ頭のどこかで巨人化の出来事は勘違いや間違いだと思ってる節がある。

 それだけならまだ良いが、いつグリシャとの最後の記憶が取り戻されるか分からない。

 その時に発作的に巨人化されたらもう庇いきれない。そうなる前に彼との信頼を構築した上で、その力を味方の物だと知らしめる必要がある。

 

 

 

「なるほど……先の作戦でバルトが隠していた変身能力を使った理由はこれか」

 

 不意に、エルヴィン団長が確信した様子で呟く。

 ピクシス司令も同様の答えに行き着いたらしく、小さく「成程中々、よく考えられておるわ」と感心した様子でこちらを見た。

 

 

 俺は未来予知に関する追加情報を次のようにまとめた。

 

 ・未来予知自体は制御不能で様々なタイミングで行われる。眠りの中で夢として出たり、日常生活中に頭痛と共に現れたりする。

 ・その情報はかなり断片的で、これまでは要領を得ないものが多い上に大したことが無い微妙な物も含まれていた。

 ※サシャが寝坊した、俺が小さなミスで怒られた等日常レベルの出来事。

 

 ・問題はエレンの予知が出た時はやたらと鮮明に流れたことだった。

 ①敵巨人に飲み込まれ腹の中で無くなった腕を掲げながら巨人の駆逐を叫んだ瞬間、その巨人の体からエレンが巨人化して現れた。

 

 ②理由は不明だが、砲弾の弾がエレンとその幼なじみに迫った時、彼が手を噛み傷を作ると激しい閃光と爆発が起き、街で見た巨人の姿になり2人を守っていた。

 

 

「これらを観測した俺は咄嗟に巨人の絵姿をスケッチしました。咄嗟ではあったので顔だけですが」

 

 そう言ってゲルガーたちに見せた巨人エレンの絵姿を差し出した。

 

 

 ここに来て初めて自分の巨人姿を見たエレンは目を見開く。

 

「どうじゃ、この絵は実物と似ておったか?」

 

 この場にいて、尚且つ巨人エレンを見たのはナナバとゲルガーだけだ。ピクシス司令の質問に2人ははっきりと答える。

 

 

「かなり似ています、精度は高いと思われます」

「強いて言うならば、この巨人の目はイェーガー訓練兵と同じ緑の瞳、黒の髪をしていました。巨人化前の特徴が引き継がれるとするならば重要な情報かと」

 

 2人の言葉にハンジは「人が巨人化した際は、外観的特徴が引き継がれる可能性がある……」とメモを取っていた。

 

 これ、アニやライナーが変身した時バレるんじゃね?

 というか鎧の巨人については既に見られている、これはリーチかかってるかもしれん。

 

 ベルトルトの巨人はノッポであることしか共通点は無い。今危ないのはライナーだけか。

 

 しかし逆を言えばこれをそれとなく彼らに聞かせれば、警戒して変身しての活動を抑制出来るかもしれないな。

 

 

「なるほど、エレンの巨人化については不明な点が多いがそれも概ね理解した。では二つ目の砲弾から仲間を守るというシーンに着いてはどうなる? これから起きることなのか?」

 

 エルヴィン団長が俺に視線を向けてきたので、首を横に振りつつ答える。

 

「分かりません、という他ないです。私の見る未来というのはあくまで何もしなかったら訪れる未来なので、こうやって干渉したことによって何らかの変化が起きているはずです。回避したのか先延ばしになったのか……」

「なるほど」

 

「事前に先の予知を見ていた私は心に留めて過ごしていたのですが、トロスト区の方角から巨大な気を感じた事で予知の内容が今日であると確信を持ちました。

 その時点では予知能力について調査兵団に伝えていなかったこともあり、時間が迫った状態で説明する暇もなく……。

 その後、エルヴィン団長より特殊作戦班としての指示を受け、壁内に戻る途中にナナバとゲルガーに情報を共有し、巨人エレンを間違って殺さないように命令を出しました」

 

 ピクシス司令は再びナナバ達に質問を投げる。

 

「……本当かね?」

「はい、正直その時は理由がわからず混乱しました。襲撃した巨人の外観をピタリと言い当てた事実を受け止めるしかありませんでした」

 

 

 続けるように俺は状況説明を再開する。

 

「そして、最後に巨人エレンと対峙した俺は彼を殺さないように人気のない壁付近まで吹き飛ばしました。

 そのタイミングでエレンを巨人の体内から引きずり出し、壁の上で彼を観察していました……そこで再び予知が発動しました」

 

「そう何度も発動するものなのかい?」

 

 ハンジが気になったのか質問をしてきた。

 頭いい人を相手に嘘をつくの怖すぎだろ……いつ矛盾に気づかれるか分かったもんじゃない。

 

「いえ、これは今までの経験を合わせても、短期間もしくは同時期に数回見るというのは初めてのことです」

「それで、見たものはなんじゃ」

 

「こちらは先に見たものに比べて乱れが酷く不鮮明でした。しかし……彼は激しい戦いの末、地上から巨人を消し去っていました」

 

 その言葉が発せられたあと、長い沈黙が訪れた。

 

「な、おい、バルト……俺が巨人を消したっていったのか?」

「ああ、ただ酷い争いが起きたみたいな場所でお前が一人立っていたんだ。ありゃ、多分戦争みたいなのが起きたんじゃないかな……」

 

 その言葉に今度はリヴァイ兵長が口を挟む。

 

「その光景でなんで巨人が消え去ったって分かるんだ。戦場で一人生き残っただけとも取れるだろう」

「その通りなのですが、巨人が消えた後には……ただの人間がそこに倒れていたんです」

 

 ここまで説明すると全員が固まって言葉を失う。

 

「は? 人間が倒れてた? 巨人が消えたんじゃねぇのかよ」

 

 次々と飛び出す情報に脳が追い付かないのかエレンが首を傾げる。

 

 するとハンジが情報の確認を兼ねて、エレンに説明するようにひとつずつ言葉にする。

 

 

「必ず南方からやってくる、生殖器がないはずなのに減らない、急所を切り取ると死ぬ、その急所の位置とエレンが取り込まれていた位置、エレン巨人はエレンが取り出されると通常の巨人のように煙と共に消えた、予知の中の映像」

 

 紙に次々と書き連ねていく情報を眺める。

 コレらを並べていくとひとつの答えに辿り着く。

 

 

 

「巨人は……元々人間、だってのかよ?」

 

 ぽつりとエレンが口にした言葉を誰一人、否定する材料を持つものは居なかった。

 

 

 

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