進撃のサイヤ人   作:ただのトーリ

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逆鱗

 今、なんて言った?

 俺の実家に押し入り強盗?

 

 なんでだ? あそこは確かに山の幸や獣が多数いるから立地としては優秀だけど強盗をするにはあまりにも場所が悪い。

 さらに言えば金品での扱いは少なく、基本的には物々交換が主流だ。

 

 金が欲しいのなら、実家と取引をしている麓の村の方がまだ金がある。

 

 

 頭の中に嫌な予感が離れない。

 喉が張り付くような緊張を堪えながら声を出す。

 

「エルヴィン、団長……その押し入り強盗は、どのタイミングで来ましたか」

 

 落ち着け、冷静になれ。

 

「君が会議に招集を受けて拘束されたタイミングと一致するね。また、その人物らは『金で雇われた』と言っていたよ」

 

 ーーーーーーーーーーーー

 〜第三者視点〜

 

 

 

 直後、金属が砕けるような音が響いた。

 

 ガラン、とバルトを地面に縫い付けていた手錠と杭が飴細工のように引きちぎられた。

 

 ゆらりと立ち上がり、手はだらんと下に下ろしたままで表情はうかがえない。

 ただその身体から立ち上る気が徐々に密度を上げているのがリヴァイやナナバといった気を習得しているもの達は察知した。

 

「ああ、そういうことかよ。俺を確保したあとは親父たちを人質に言うことをきかせるつもりだったってか? ……随分と、舐めた真似してくれるじゃねぇかクソッタレがぁ!!!」

 

 狭い会議所の中に暴風が突然現れたように荒れた。

  

 ニック司祭や力のない人物は気による衝撃で壁まで吹き飛ばされる。

 何とかこらえている他のメンツも、まるで戦場で巨人に囲まれた時のような恐怖感を味わう。

 数名の商人などは恐怖から失神するものや腰を抜かしてガタガタと震えている。

 

 

 彼の怒りが爆発すると同時にリヴァイ兵長、ミケ、更には彼の部下2名が動いた。

 

「落ち着けこの馬鹿野郎が!!」

 

 落ち着かせるためにリヴァイは文字通り飛び出し、バルトの横っ面を殴り飛ばすがビクともしない事に内心舌打ちをする。

 

 

 むしろ殴った自分の拳の方が痛みを覚えるなんて、それこそいつ以来だろうかと妙な感覚にすらなった。

 殴ってダメならば全力で動きを止めるまで、と後ろから羽交い締めにするがこれまた効果があるのか不明。

 

 両腕を後ろから羽交い締めにしながら、背中に膝蹴りを繰り返すが、まるで丸太を蹴るかのような硬さにあきれ果てる。

 

 バルトが本気で暴れれば間違いなく止められない。それどころかこの部屋諸共吹き飛ぶ。

 しかしそうなっていないのは、おそらく無意識下で理性がまだ残っているのだろう。

 本気で暴れたらリヴァイ達はともかく、エレンたちは耐えられない。だから激昂しながらも被害がこの程度で済んでいる。

 

 

 

「ここで暴れたらこっちまで被害が出るだろう!」

 

 ミケは正面から胴体にタックルするように抱きつき、押さえつけようとするがまるで大地に根ざした大木を押し倒そうとしてるかの如く微動だにしない。

 その力の差に舌を巻いた。

 

「班長、俺ァまだ死にたくねぇんですよ!!」

「お願いします班長、落ち着いてください!!」

 

 ゲルガーとナナバの二人は殴るなどの力技は無意味とリヴァイの動きから判断し、両足へと縋り付くように抱きついた。

 

 

 バルトが現れるまでであれば間違いなく人類最強の男であるリヴァイ。

 その次に強いとされるミケが本気で羽交い締めにしている。

 

 さらには彼の部下2名が今にも泣きそうな顔で彼の足に抱きつくようにして止まるように言う。

 

 本来ならば彼ら程度で抑え込めるような力では無いはずだが、もし力任せに振りほどけばどうなるかは考えなくともわかる。

 

 怒りに我を忘れかけていたとしても、仲間への配慮を忘れずにいたお陰で二次被害は避けれた。

 

 

 結果としてバルトの暴走を身を呈して止めることに成功していた。あくまで時間稼ぎに近い措置だが。

 

「離せ! この勘違いした馬鹿野郎共は生かしちゃおけねぇ! 誰が人類を守ってるかわかってねぇんだ! 酒と肉を食らって肥えた豚を出荷するいいチャンスだろうが!」

 

 加減しつつも4人の抵抗など関係がないとばかりに引きずって憲兵団側へと歩み寄る。

 

「ひぃ!? ば、化け物めっ!」

 

 すると気迫に飲まれ、銃を武装した憲兵がバルトに向かって引き金を引いた。引いてしまった。

 

 炸裂音が響き、一瞬の沈黙。

 硝煙をあげる銃口の先には首だけを仰け反らせて固まるバルト。

 

 ミケ達は不意に先程までの力が嘘のように大人しくなった事実に青ざめる。

 リヴァイも余りの出来事に目を見開き、目の前で起きた事に言葉を失う。

 

 やってしまった。

 

 そこにいるみんなが理解した。

 

「あああああああああ!!!!」

 

 今度は別のところから悲鳴が上がり、動き出した。

 サシャ・ブラウス。

 

 彼女は青ざめた顔で席を飛び出し、跳躍ひとつで銃を構えていた男たちを一瞬のうちに叩きのめしてしまった。

 

「何してくれとんのやワレ! 自分が何したかわかってるんかこのクズが! バルトをなんで撃った! お前の命とバルトじゃ釣り合いも取れへんのやぞ!」

 

 怒りのままに憲兵を殴り飛ばすサシャ。

 続けてミーナも涙を流しながら飛び出し、エレンやミカサ、まさかのアルミンも参加しての大乱闘。

 

 エレンにとっては命の恩人、ミカサはエレンを守るために、アルミンは単純に人類の希望を安直に殺した愚か者に対する怒り。

 

 流石にリヴァイもこれには怒りを覚え、標的を憲兵団側の人間に向ける。

 ミケも同様に信頼していた仲間を警告無しで殺害した男へ、過去最高の殺気を放つ。

 

 その流れでニック司祭も吹き飛び、後ろに控えていた貴族や商人も少なくない被害を受ける

 

 

 しかしまた別の理由で時が止まる。

 

 

「あ゙〜……痛ってぇな!! びっくりしたし痛ぇもんはやっぱ痛ぇなクソ!!」

 

 その声は銃で額を撃たれたはずのバルトのものだった。

 さすがのリヴァイやミケも固まり、ナナバやゲルガーに至っては腰を抜かす。

 

「……ばる、と?」

 

 呆然とこちらを見るサシャ。

 

 バルトはいつの間にか解放されていたことに気が付き、首に手を当ててゴキゴキと音を鳴らせながら周りを見る。

 

「だがこれで正当防衛だよな? 俺がそいつらをボコしてもいいんーーあれ、なんかすげぇことになってる」

 

 原因とも言える男の呑気な言葉が出た瞬間、反応は大きく二つに分かれた。

 

「化け物だぁああああああ!?」

「撃たれても怪我ひとつないなんて!!」

「ひぃぃ!?」

 

 恐怖から壁際に逃げようとするものや扉の外へ出してくれと恐慌する者が続出。腰を抜かして失神するものも現れた。

 

 ちなみに怪我ひとつない訳ではなく、ほんの少し赤く腫れていた。弾丸で額を撃ち抜かれてその程度で済んでいる時点で十分化け物だが。

 

 

「いぎでだぁぁぁぁあよがっだぁぁぁ!」

「……ばるとぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「心配かけるんじゃねぇよバカやろう!」

「……すごい、おでこがちょっと赤くなるだけで終わってる。血すら流れてない」

「ははは、もうダメだ。僕、夢を見てるんだ。弾丸を頭に受けて赤くなるだけで済むとか訳が分からないよ」

 

 中央で揉みくちゃにされるバルト。サシャが泣いて背中に飛びつき、ミーナは腕に抱きつきながら鼻を鳴らす。

 

 エレンは涙目で彼の無事を怒りながらも喜び、ミカサは何やら感心している様子。

 アルミンは現実逃避しているが、直ぐに戻るだろう。

 

 

「……規格外、なんて言葉じゃもう言い表せられないのう……」

「いやぁ……ほんと無事でよかった」

「ああ」

 

 ピクシスは遠い目で中央のやり取りを見つめ、ハンジは口元がビクつくのを感じながら何とか軽口を叩いた。

 そしてエルヴィンは冷や汗を流しながらも真っ直ぐバルトを見つめる。

 

 実の所、撃たれる可能性を考慮していたエルヴィンは事前にそのことを相談していた。

 するとバルトから帰ってきた言葉は次の一言。

 

『あ、だいじょぶ。効かないですから』

 

 聞かされていたとはいえ、彼が撃たれた瞬間は内心穏やかではなかった。しかし直ぐに撃たれたにしては出血がないことに気がつき、飛び出そうとしていたハンジを押し留めていた。

 

 ちなみにちらりと天井を見れば、彼の額から弾かれた弾丸が天井に突き刺さった弾痕が見えた。

 

(むしろ跳弾で誰かが負傷していた可能性すらあったな。そうなったらもっと酷い事になっていたかもしれない)

 エルヴィンの人生で過去最高のクソデカため息が漏れた。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 ーバルト視点ー

 

 

 結果として会議は無効となった。

 理由は俺を吊るしあげたい団体がこぞって手のひらを返して「全力で支援するので勘弁してください」と全面降伏を示したからだ。

 正直、1人くらいは殴ってやりたかったのだが、団長から「死人が出るからやめろ」と言われ渋々従った。

 

 

 ちなみに両親はエルヴィン団長が前もって手配していてくれた護衛によって護られており、襲ったやつらも手を出す前に逮捕された為、怪我はなかったらしい。

 これを聞かされてマジで感謝した。団長まじリスペクトっす。

 

 

 ただ今回のことを受けて、俺とサシャの家族は第一級保護対象として登録されることになった。

 一歩間違えればバルトブチ切れ(壁内人類滅亡)スイッチをその辺に野放しは危険と判断されたようだ。

 

 

 

 出来れば内地で守らせて欲しかったらしいが、先祖から受け継いだ土地を捨てられないと両親はそれを拒否。

 困り果てた末に俺への負い目もあって、駐屯兵団の派遣という対応に決まった。

 

 本当は騒動の責任を取って憲兵団が行くべきなんだが、俺が奴らを信用出来ないのでピクシス司令に頭を下げて代わってもらった。

 

 ナイル・ドーク師団長は苦虫を噛み潰したような顔でこちらを睨んでいたが知らん。

 

 解散間際「贖罪のチャンスもやらんとはえげつないのう」という司令の言葉が印象的だった。

 

 

 親父に手紙でその事を伝えたら「猟師として鍛えてやるか」なんて呑気に返事を返してきた。人の気も知らないで。

 

 ただサシャの親父さんは侵入者に気づいたらしく、エルヴィン団長の派遣した兵よりいち早く反応して返り討ちにしていた。

 

「彼がもう少し若ければ調査兵団にスカウトしたかった」

 

 そうこぼした団長の目は割とマジだった。

 

 

 

 他にも色々なことが起きた。

 まずザックレー総統から私的な手紙を貰った。

 

 要は「貴族共やムカつく商人共をぶっ飛ばす時は声をかけろ。できる範囲で手を貸そう」との事。

 あの人、人生をかけた趣味がクーデターだからなぁ……。

 

 

 ほかにも、以前捕まえた検体の巨人が殺された。

 これについては原作通りで、アニとライナーが「研究の結果、巨人の正体が人間であるとバレるのは巡り巡って自らの正体がバレる可能性がある」と思っての事だ。

 

 しかし残念ながら既に俺たちは巨人の正体が人間という可能性に気付いている。

 

 さらに言えば人が巨人化すると多かれ少なかれ、その面影が巨人に反映される事も。

 

 だがコレは内部に敵が潜入してることを警戒させるには十分だった。

 エルヴィン団長はそれとなく信頼出来る者の選別に動き始める。

 事情を知る俺やエレン達は既にその内側に数えられた。

 

 アルミンやミカサ、サシャとミーナはミケ班に組み込まれる形となった。

 サシャとミーナは俺と同じ班を希望していたが、舞空術や気を操れない2人は特別作戦班に入る前提を満たしていないため却下された。

 

 

 

 また、所属兵科を問う勧誘式が行われた。

 

 コニー・ライナー・ベルトルト・ジャン・マルコ・クリスタ・ユミルなどの主要メンバーを含む25名が調査兵団への入団を決めた。

 

 うん、なんでかマルコも調査兵団入りした。

 君、憲兵団所属希望じゃなかったっけ?

 

 

 勧誘式には俺もいたので聞いてみたら、俺が大暴れした兵法会議の噂を聞いて憲兵団に失望したとか何とか。

 

 それで悩んでいたところ、ジャンが調査兵団行きを決意。

 

 

 なんでも憲兵団への配属を願っていたらしいが、トロスト区での防衛戦を経験した事でクソ度胸がついた上にマルコ同様に憲兵団の不正具合を知って躊躇が生まれた。

 

そこで「俺みたいな凡人はバルトみてぇな働きはできねぇ。だからこそバルトがやらなくていい仕事をやるやつが必要なんだ」と考えた。

 

 なにそれ泣きそう。

 

 それを聞いてマルコも調査兵団行きを決意。

「僕はこれからずっとジャンの副官であり続けるよ。凡人同士、やれる事をやっていこう」

 

 こうして彼らは友情の名のもとに調査兵団へと参加した。

 

 

 

 もうね、これ聞いて俺大泣きだわよ。

 絶対死なせない。

 

 どんな逆境でも死なない訓練をしてやると言ったらサシャが慌てて「訓練で死にますから! 程々でいいですから!」と止めてきた。

 

 なんでや。

 

 

 

 調査兵団で俺の立場がさらに変わった。

 

 調査兵団特殊強襲部隊という何とも言えないチームが組まれ、そこの隊長となったのだ。

 

 

 やることは簡単だ。

 立体機動と舞空術を併用し、気による空爆や巨人の背後から攻撃を仕掛ける遊撃が主な仕事だ。

 

 メンバーは主に俺が鍛えたメンツで構成されており、最低でも舞空術と気弾は撃てるようにしてある。

 

 まだ一部のメンツは立体機動の方が早いが、ガス切れ時に空へ逃げれるのは大きなアドバンテージだ。

 またブレードがダメになっても個人差はあれど攻撃手段として気弾がある為、非常に継戦能力は高い。

 

ちなみにリヴァイ兵長やその班は別扱いだ。

流石に戦力を一極集中させるとバランスが崩れるからだ。

 

 

 

 

 これを知った時のライナーたちの顔は面白いくらいに青ざめていた。

 そりゃそうよな。お前の国、頑張っても飛行機とかだもんな? それが個人規模かつ小回りきいて襲ってくるんだから怖くて仕方ないよな。

 

 だけどこの俺バルトさんは油断せず追い討ちする男。

 調査兵団の新たな希望と知られ始めた俺は、対外的なデモンストレーションとして多くの民が見てる前でその力を見せつけることにした。

 

 やったことは空に向かってかめはめ波をぶっ放すだけ。

 

 ちなみに全力を出せば超かめはめ波も撃てるが、周りへの被害が大きすぎると判断しデモンストレーションでは少し加減したかめはめ波を撃って見せた。

 

 それでも空を切り裂くような青白い光というインパクトに民たちは大興奮。これで人類は安泰だと、笑顔で俺を認めてくれた。

 

 ただ、王政の豚どもはなにやら苦虫を噛み潰したような顔をしていたが。

 

 




めちゃくちゃ難産でした。
ちなみに予想されていたスーパーサイヤ人化は無しです!

流石にここでなっちゃうのは盛り上がりが足りないなーって思ったのと、実力的にはまだ遠いかなって思ったので!
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