長いからね!仕方ないね!
あと、主人公は物語が進むまでは猫被ります。
はっちゃけ始めるのはも少しあと。
サシャとの出会いをしてから2年目。
ついにあの日が訪れた。
シガンシナ区の崩壊と、ウォールマリア陥落の凶報。
50mを超える超大型巨人と鎧の巨人による襲撃が発生し、100年続いた歴史に終止符がうたれたのだ。
これにより人類の生存領域をウォールローゼにまで後退させられてしまった。
それにより大量の難民がなだれ込み、あっという間に食糧不足へと陥った。
その余波は俺たち狩人にも飛び火することになった。
狩場である森を切り開かれ、農地として開拓地にされたことで俺たちの仕事場が徐々に失われて行ったのだ。
確かに多くの人間を食わせる為ならば、狩りでは限度がある。
開拓して農地を作った方が長期的な目で見れば間違いないのだが、それに対し狩人として生活を立てていた者達からの反感は強かった。
特にサシャ、彼女は肉をこよなく愛する性質故にどうしても反対の様子だった。
対して彼女の父は時代の流れや人として、群れとして生きる以上逆らえない物の存在を理解していた。
それ故に反発する親子の間に立たされる事も1度や2度ではなかった。
そんなことを繰り返しているうちに、俺はサシャの兄貴分として認められてしまい……すっかりサシャに懐かれてしまった。
「バルトも一緒に兵士になりましょうよ! そしたら美味しいもの沢山食べれますから!」
「いやいや、飯も大事だけどそれ以上に死ぬ思いもするかもしれないんだぞ? そんな簡単な理由でいいのかよ」
あれからサシャは言葉遣いを改め、近く開かれる訓練兵募集の参加を俺に持ちかけていた。
元々俺は訓練兵として兵士になるつもりだったが、出来ればサシャには争いの道から離れて欲しかった。
原作では中々の兵士っぷりだったが、それはあくまで漫画の話。既に数年ときをすごした事で俺は彼女を漫画のキャラとしてではなく、一人の妹分として大切に思うようになっていたのだ。
そんな彼女が死と隣り合わせの世界だなんて、そう思う気持ちが強かった。
ちなみに彼女の父親は「サシャはもっと人の中で生きるべきだ」とサシャの意見を尊重するスタンスのようだ。
対する俺の両親も心配そうだが「バルトのやりたいようにしなさい。だが絶対に生きて帰れ、どんな卑怯な手を使っても」と言われた。
結局、あれこれ考え直すようにサシャに伝えたが意見は変わらず、彼女が13歳で俺が14歳の時に訓練兵へとなることが決まった。
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両親たちに別れを告げ向かったのはウォールローゼ南方にある訓練兵駐屯地のあるトロスト区。
そこには既に俺たち同様に訓練兵になることを目的として集められた男女が集合していた。
既に訓練兵候補生として参加した俺たちは兵士の革製ブーツとジャケットなどに身を包んでいた。
背中には2本の剣がクロスした所属兵団を明記する紋章が刻まれている。
ちなみにサイヤ人の証であるシッポは腰巻のように巻いて誤魔化している。
男のケツをガン見するような奴でも無ければ気づかない筈だ。
「お、多いですね……」
どこか怯えたような口調のサシャ。
「そうだな、まあここからどれだけ減るのかって感じだが」
「……随分と落ち着いとるけど、緊張とかしないんか?」
ふとした拍子に素の言葉がでるサシャの頭を撫でつつ答える。
「あのな、そもそも俺たちは俺たちのできることしか出来ねぇんだよ。だからここで他人と比べても意味は無いんだ」
「そう、なん?」
「そうだ。そんなことより緊張して動けませんでしたってほうが情けないだろ? 狩りだってリラックスしてないと緊張が獲物に伝わることあったじゃねぇか」
「あ! 確かに!」
俺の言葉にぱあっと表情を明るくさせたサシャは、先程までの緊張など無かったように明るくなる。
すると「ちょっと周りを見てきます」なんて言ってフラフラと歩き出した。
あまり離れるなよ、と告げると軽い返事とともに歩き去っていった。
……あいつの自由奔放さはいつまでも治りそうにないな。
そんなことを考えていると──。
「これより訓練兵入団式を執り行う! 各員整列!!」
ビリビリとした声で集められた広場に響き渡った。
慌てて整列するがサシャの姿がない。
あのバカどこに……とおもったら少し離れたところにいた。
よかった、入団式に間に合いませんでしたじゃシャレにならんからな……あれ、あいつ何持ってーー! そうだ、あのバカ原作だとふかした芋を食い始めて教官にみられるんだった!!
慌てて手に持ってるものを捨てるように合図を送るが、あいつは首を傾げるばかり。
「訓練兵、前を向け!!」
「ハッ!!」
くそ、俺が怒られちまった。
整列するとハゲ頭の怖い顔した教官が各訓練兵の前を巡回しだした。
「おい貴様! 貴様は何者だ!!」
「シガンシナ区出身! アルミン・アルレルトです!!」
「そうか、馬鹿みてぇな名前だな! 親が付けたのか!」
「祖父が付けてくれました!」
「アルレルト! 貴様は何しにここへ来た!」
「人類の勝利の役に立つためです!!」
「それは素晴らしいな! 貴様は巨人の餌になってもらおう!!」
「3列目、後ろへ向け!!」
こんなやり取りが行われる。
曰く「兵士として生まれ変わるためにこれまでの人格を完全否定する儀式」ということらしい。
まあ、この程度の暴言と叱咤で心が折れる様なら兵士はならん方がいい。そのふるい落としなんだろうな。
というか彼がアルミンか。すげー線が細いな、ちょっと殴ったらまじで骨が折れそうなくらいじゃないか。
あっちはエレンで、あれがミカサ……と。
そんなことをしていたら教官が俺の前に立った。
「おい貴様、貴様は何者だ!」
「ウォールローゼ南区ダウパー村から来ました! バルト・ロメオです!」
「そうか、役に立たなそうな木偶の坊! 貴様は何しに来た!」
その問いが来た時、ほんの少しだけ気を解放しつつ、教官の目を見る。
「巨人共に本物の化け物を見せてやるためです」
すると教官は僅かに目を見開くと僅かに口端を上げた。
「……ほう。よし、4列目後ろへ向け!!」
そんな感じでずっと続いた。
ちなみにコニーは敬礼を間違えたが、サシャは意外にも教官にバレずに芋を食い切った。
あいつ、狩りで教えた気の抑制を使ってまで芋を食いやがった。
サシャのやつ気弾や舞空術は使えなかったが、気の解放と抑制に関してはセンスがあったらしくすぐに覚えた。
抑制を完全に行うと、視界に入っていても存在感がぼやけるように薄くなる。サシャのはまだ未完成だがそれでもなかなかの練度で1人で多数の訓練兵を見ている教官ではついつい見落としてしまうのも無理は無い。
とはいえ、くだらんことに技術を使ったサシャには罰が必要だな。
『お・し・お・き』
と口パクでサシャにやってみせると青ざめた顔で震えた。
「第104期訓練兵団、よく聞いておけ! 今の貴様らはせいぜい巨人の餌になるしかないただの家畜!!
そんな貴様らに巨人と戦う術を叩き込んでやる! 餌のまま死にたくなければ、必死に食らいついてこい!!
今日は立体機動を使った適性検査を執り行う、出来の悪いやつは今からでも開拓地に移ってもらう! すぐ準備にかかれ!!」
通過儀礼を終えるなり即座に訓練が決まった。
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立体機動の適性に関してはマジで不安だった。最悪舞空術を使ってチョロまかそうかと考えていたが、どうやら修行の過程で三半規管やバランス感覚も鍛えられていたらしく、驚くほど体幹がブレずにこなせた。
「すげえ、アッカーマンとロメオの2人全然ブレてねぇぞ」
「スプリンガーとブラウスも中々だ。こりゃあ今年は才能があるやつが多そうだ」
そんな声が聞こえる中、物凄い音が訓練所に響いた。
見れば例のエレン・イェーガーが盛大にバランスを崩し転んだところだった。
訓練兵達は彼の無様な様を見てクスクス笑っていたが、俺は気を消してその集団をかき分けエレンの隣に立つ。
「大丈夫か?」
声をかけると緑の瞳が呆然とした様子でこちらを見上げた。
「あ、ああ……」
恐らくこの適性が無ければ兵士にすらなれないのだから、精神的動揺は物凄いのだろう。
しかし兵士を志すのならこの程度で茫然自失はいただけない。
「君は兵士になるのだろう? たった1度の失敗で諦めるのか?」
そう告げると彼はハッとした様子で俺を改めて見上げる。
「そ、そうだ……こんな所で躓いてる暇なんてないんだ。俺は絶対調査兵団になるんだ」
彼は自問自答のように呟きながら立ち上がる。
そしてもう一度トライしようとするが、その前に声を張り上げる。
「教官、よろしいでしょうか!」
「なんだロメオ訓練兵」
「彼は全くバランスをとることも叶わず倒れたと聞きます、しかしそれほど難しいのならばもっと脱落者がいてもおかしくありません。よって彼の装備に何かしらの不備があると思われます! イェーガー訓練兵の装備の点検を再度行ってもよろしいでしょうか!!」
「……よかろう」
キース教官の言葉によって駐屯兵団の兵士がエレンの装備を確かめると、確かに内部パーツの一部が破損していた。
急遽別の装備でエレンがトライしたところ、サシャやコニーレベルの良いバランス感覚を発揮して見せた。
これには影で笑っていた訓練兵達はバツが悪そうに目をそらすのが見えた。
「よろしい、イェーガー訓練兵合格!」
その掛け声と共にアルミンやミカサがやって来て彼の合格を喜ぶ。
「あ、さっきはありがとうな! おかげで脱落しないですんだぜ!」
「気にしないでいいさ。ただ一つだけ言わせてもらっていいか?」
「なんだ?」
「兵士だけじゃなく戦いに身を置く者は常に心を冷静に保つ必要がある。もちろん、激情のように燃える意欲も必要だが、一度の失敗やトラブル程度で茫然自失になるようじゃダメだ。今後はその辺を心がけて訓練すると君はもっといい兵士になれると思う」
俺の言葉に思うところがあるのか悔しそうに頷く。
「……たしかに、たった1度失敗した位で情けねぇ姿を見せちまったな。わかった頑張ってみるよ! お前名前はなんて言うんだ? 俺はエレン・イェーガーだ」
「バルト・ロメオだ。あそこにいるサシャと幼なじみなんだ。よろしくな」
そう言って遠目から俺の顔色を伺っているサシャを指さす。
「ひぇ!? なんでバレたんですかぁ!?」
「バカ、お前に気の抑制を教えたのは俺だぞ。お前の未熟な気のコントロール程度すぐ見抜けるわ」
そんな俺とのやり取りを横で見ていたエレンたちは唖然としていた。
「全然気が付かなかった」
「俺もだ……」
「というか、彼が最初エレンに駆け寄る時も直前まで気づかなかったよ。まるで突然現れたみたいだった」
3人はふんわりとだが俺とサシャが何かをやっていると感じ取ったらしい。やっぱりセンスが光る三人組だよな。
ミカサやエレンはもちろんの事、頭のいいアルミンは状況などから答えを導く才能がある。
「ほら、お前も挨拶しろ」
「えっとサシャ・ブラウスです、よろしくお願いします」
人見知り&なれない外向けの言葉遣いでオドオドした感じになったが、特に何かを言われることも無く受け入れられた。
「私はミカサ・アッカーマン、エレンとは家族」
「僕はアルミン・アルレルト。僕ら3人も幼なじみなんだ」
自己紹介を終えると同時にキース教官の声が響く。どうやら他のメンツの適性検査が終わったらしい。
何人か馬車に乗せられて開拓地へと連れていかれるのを見た。
失意やら悔しさを滲ませて立ち去る彼らを見て、今後起きる戦いを思うと残った方が良かったのか開拓地に送られた方が良かったのか判断に迷うところだ。
今後、この光景を何度見ることになるのやら。