進撃のサイヤ人   作:ただのトーリ

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この回から少しずつ主人公がふざけ出します。
具体的に言えば「1人で守らなきゃ行けない」から「仲間と守る」に意識が切り替わり始め、肩の荷が降りて素が出始めてる感じです。



追記:気の習得できなかったメンバーにユミルが漏れていたので修正。


善悪の問答

 私、メリーさん(オッス、オラバルト)

 今、内地のストヘス区にいるの。

 

 え? 電話? ねぇよンなもん。あったら欲しいわ。

 

 

 実は今月の小規模遠征なんだけどお留守番命じられちゃって暇なので、急遽お出かけに来ました。

 

 なんでも「お前に頼ってばかりじゃいつまでたっても他のやつが成長しねぇ。せっかくお前に鍛えられた奴らがいるんだから、ソイツらを連れて野外演習に行ってくる。お前は久しぶりの休暇でも楽しんどけ」との事。

 

 まあ、入隊してからずっと皆勤賞だったからね。多少はほかの団員を成長させるためにも俺がいてはヌルゲーすぎるのだ。

 

 

 ちなみに少し前に新兵として入ってきたエレンたちは日々過酷な訓練を受けつつ、着実に力を付けて行ってる。小規模壁外調査には連れて行けないらしいので、今も拠点で厳しい気の訓練中。

 

 とくに上位10に名を連ねていたメンバーの半数が気の扱いに長けており、舞空術だけならばゲルガーたちとも引けを取らないレベルにまでなりつつある。

 後から入ってきたのにすごい成長よね。おかげで先輩連中も負けてられるかと気合いマシマシよ。

 

 ちなみに気の習得ができなかったのはマルコ・ライナー・ベルトルト・ユミル・エレンの5人。

 

 

 マルコはおそらく単純に実力的な問題だろう。だが他の4人は偶然とは思えない。

 アニは残念ながら部署が違うため機密保持という名の元に教えることは出来なかったが、……多分、結果はライナーたちと同じだろう。

 

 

 仮説だが、体内に流れる巨人の血が気のコントロールを乱してる可能性がある。

 

 実の所、エレンやライナーたちの気はほかのみんなに比べて混ざりものを感じるんだ。

 近くに行かないと分からない微妙な違いだけど、それでも普通の人間とは明確に違う。

 

 

 気のコントロールは、優れた戦闘センスの他に高い集中力を必要とする。

 

 これらに関してはエレンやライナー達は十分に満たしている。

 

 なのに巨人の力なんて本来持ちえない物を身に宿しているせいで、人間が持つ気と巨人が持つ気のふたつが反発しあってるのではないか、と予想をつけている。

 

 

 では、なぜ巨人の力を持つはずのアッカーマン一族であるミカサやリヴァイ兵長は出来るのか?

 もうね、あの一族についてはあれこれ考えるのやめたよ。あいつらチートだ、生きたチート。

 ミカサのやつ、早くもリヴァイ兵長と空中戦でグミ撃ちしてんだもん。マジあのセンスなんなの?

 

 やっぱり戦闘経験やら教わった期間という点で兵長のほうが一日之長により優勢だけど、それでも食らいついている。

 

 

 リヴァイ兵長も遂に技の習得。かめはめ波ではなくまさかのギャリック砲。

 

 

 実力も伴ってきたんで、いくつか候補を見せたらこれを1発で模倣して見せたのよ。

 

 

 なんだかあの発射前の姿勢が、回転斬りの直前動作と似てて使いやすいんだとさ。

 

でも発動時の掛け声が「死ね」はどうかと思う。

必殺技を叫ぶセンスが理解できないのはわかるけど、普通に怖いわ。

 

 威力はなかなか高くて、俺の加減した通常かめはめ波と拮抗させるくらいに威力持ってた。

 

 まあ発射回数や射程、他にも問題は山積みだけどそれにしてもギャリック砲を使えたのは本気でびっくりした。

 

 

 ただ兵長は俺の本気や超かめはめ波について気づいてる様子で「お前の本気も打ち消してやる」と修行に打ち込んでいる。

 そのうちマジでやりそうで怖い。

 

 ……あんたやっぱサイヤ人とか言わないよね?

 

 

でも掛け声が「死ねぇ!」はどうかと思う。

 

 

 

 それはともかく、俺は休日を過ごせと命令を受けたので、給料(おちんぎん)を片手に両親に贈り物でもするかー! と買い物に行こうと思ったわけですよ。

 

 んで、内地には知り合い全然いないんだよね。俺の事めっちゃ避ける師団長くらい。

 なんか兵法会議の時、散々煽ったりビビらしたりしたせいですげぇ避けられてんの。かなしい。

 

 まあ、人さらい云々にかんしてはナイル師団長は無関係だとエルヴィン団長は予測していて、その裏取りをしてる最中。

 

 まあ、十中八九腐敗王政の仕業なんだろうなぁ。

 今度師団長には改めて謝りに行こうかな……いや、でもあいつ俺の事解剖するとか言ってたしな。やっぱいいや。

 

 

 それはともかく、俺の買い物を案内してくれそうな内地の子って言ったらもうアニしか居ないわけよ。

 

 そんでもって、俺の名声やら団長のコネとかをバンバン使ってアニに「内地で買い物したいからデートしよ」ってラブコールしてみた。

 

 断られるかなーって思ったんだけど、予想外にもあっさり受けて貰えて今日に至る。

 

 

 

 そんな訳でストヘス区へ来て、冒頭に至る。

 

 一応貴族なんかが住む区域ってこともあって、アニから「余計なトラブルに巻き込まれたくなければ相応の服を着ておいで」と言われたので、ハンジに頼んでそれっぽいスーツを用意してもらった。

 

 

「……あんた、意外とそういう服似合うんだね」

 現れたのは私服のアニ。

 

 ジーンズにパーカーとかなりラフな格好。

 

「ずりいぞ! そういうのでいいなら言えよ! 俺スーツ着ちゃったじゃん!」

「別にスーツとは言ってないでしょ。相応のものって言ってそれを用意したのはそっちじゃない」

 

 ぐぬぬ……俺だけバチコンオシャレ決めて滑ったみたいでヤダ。

 

 

 

「で、何を見たいの? 分かるものだったら案内するよ」

「あー、まずは親父の好きそうなのが欲しいな」

「……あんたの父親はどんなのが好きなのさ」

「猟師だからな〜……実用的なのがいいと思うんだよ。アニだったら父親に何を渡す?」

「……あんたの父親だろ」

「そうなんだけどさ、参考にしたいんだよ」

 

 そう言うと彼女は少し考えながら歩く。

 

「あたしの父親だったら……そうだね、ロケットとかがいいんじゃない?」

「ロケット?」

「家族写真を入れるペンダントさ。家族思いの人ならそういうのを結構喜ぶと思うよ」

 

 意外にもまともなチョイスを提案してくれた。

 多分、アニとしても家族の写真は欲しいって意味なんだろうな。しかしアニ、いきなり減点だぞ。

 

 

「なあ、アニ。シャシンってなんだ?」

「ーー」 

 

 

 パラディ島の文化レベルだと写真はねぇんだよ。

 足を止めて青ざめるアニ。

 なんとも言えない沈黙が流れる。震える手足が痛々しい。

 写真だけならごまかせるかもしれないが、ロケットの話までしてしまったのだ。誤魔化すにはかなり苦しいだろう。

 

 どうしよう。

 思わず指摘してしまったけどまずいよな。いやでもあれを放置するのは逆に怪しい……アニ、頼むからいい感じに誤魔化してくれ。

 

 そんなことを考えていると、祈りが通じたのか想わぬ乱入が起きた。

 

 

「あれー? アニじゃん、こんなところで何してんの? 今日非番だよね」

 

 曲がり角から現れたのは、憲兵団所属のマークを身につけた男女のペア。

 

 ウェーブかかった栗色の髪と、猫のような表情が特徴の女性。

 その隣にはおかっぱヘアーでちょいと神経質で生真面目を絵に描いたような長身の男。

 

 あ、ピンときた。

 こいつら原作でアニとそこそこ絡んでたやつだ。名前なんだっけ、ビッチとマルオだっけ? すげー組み合わせだなオイ。

 

 

「あ、あーーー!? もしかしてアンタ、最近噂になった英雄バルト!?」

「な、なにぃ!? あの英雄がなんでこんな所に!?」

 

 え、何、怖っ。すげー勢いで近づいてきたんだけど。マルオの方とか興奮で鼻息やばい。

 

「ちょっとちょっとアニ!? あんた英雄とコネなんて無いって言ってたじゃない!? それがなんで休日にデートとかしてんのよ!」

「いや、べつにデートとかじゃ」

 

 なにやらアニに鬼絡みするせいで、さっきまでの空気が流れてしまった。どことなくアニもほっとしたような顔をしてる。

 うん、この子嘘が吐けないタイプだ。顔に出すぎ。

 

 考えてみればエレンたちと同世代だから、たぶんウォールマリア陥落当時12歳とかだろ? まともな思考出来るわけねぇじゃん。

 

 そんな子を戦士として使い潰すマーレはやっぱ糞だわ。

 

 

 

「ははははは、初めまして! マルロ・フロイデンベルクと申します! え、ええ英雄にお会いできて恐悦至極でありありりり」

「アリーヴェデルチ?」

「何言ってんのアンタ」

 

 アニから養豚場の豚を見る目をされた。くやちい。

 

 いやしょうがないじゃん、あんなふうに言われたらボケたくなるって。っていうかお前の声だったらハーミットの方だろうが! いい加減にしろ!

 

 というか、めっちゃ緊張して自己紹介するじゃん。マルオって呼んじゃダメ? ズバリって言ってみ? もしくはハッピーうれピーよろぴくねー! とかさ。

 そんなに緊張する相手でも無いだろうに。

 

 

「初めましてぇ〜。私ぃ、ヒッチ・ドリスっていいます〜。バルトさんはアニちゃんとお知り合いだったんですねぇ」

「あ、うん、同期で組手とか相手してもらってたんだ」

「わぁ! 強いって噂ですもんね! 見てみたいなぁ〜」

 

 対するヒッチは名前の通り女オーラをめちゃくちゃ出してくる。

 いやさ、前から思ってたけどこの世界の女の子普通に可愛い子多いのよ。そんでもってヒッチは多分、上位クラス。それもグラドル系。

 ちなみにアニはクール系。スーツ付けて黒縁のメガネかけて秘書コスして欲しい。

 

 サシャ? サシャはなぁ……狩りをしてるか芋掘ってる姿が似合うと思うよ。

 

 

 

「なぁアニ、なんでこの2人めっちゃテンパったりお色気ムンムンなの?」

「……あんた、内地でなんて言われてるか知らないで来たの?」

 

 全然。

 

 

 するとマル()が敬礼の姿勢でクソデカボイスで俺の評価について教えてくれた。

 

「人類の新たな英雄、バルト・ロメオは正しく流れ星の如く現れたこのローゼ・シーナに住む全ての民の希望であります! 単騎で無数の巨人を討伐し、壁外調査ではその力を用いて拠点を複数築き! 更には民への配慮として食料調達等にまで尽力する人格者! 正しく人類の守護者たる振る舞いを行う英雄であります!!」

 

 

 あ、肉の件もバレてるんだ。

 もう俺にアホな要求をするやつはいないだろうから、エルヴィン団長が暴露したのかな?

 

 しかしちょっとばかりマル()君、オメーやかましいな?

 ちょっと場所変えようか、さすがに目立ちすぎだわ。

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 公園に移動した俺はベンチに腰をかける。

 アニが左側ヒッチが右に座る。

 マル()も座れば? って進めたんだけど「勤務中ですので!」と言われた。

 勤務中のお前の相方、絶賛俺の隣でハニトラしてくるんだけど……?

 めっちゃ胸が当たって幸せです。

 おっぺぇの感触にオラわくわくすっぞ!

 

 

 そこからトロスト区での戦いや、小規模壁外調査での功績の数々をマル()から聞かされて、うんうんと頷く。

 

 

「しかしなるほど、確かに客観的に見ると俺って英雄だな?」

 腕組みしつつ思わず呟くとアニがジッとこちらを見る。

「どした?」

「アンタ、どうしてそこまでして戦うのさ」

 

 その問いにはヒッチやマル()も興味があるのか聞きたそうにしてる。

 

「悪ぃけど劇的なドラマや理由はないぞ? 俺は単に家族や幼なじみを守りたかっただけだからな」

 

「……それ、だけですか?」

 

 マル()が困惑するような顔でこちらを見る。

 

「ああ、元々は猟師の息子でな。何も起きなければ狩りをして一生を終えてたかもしれない。

 ただ、ウォールマリアが陥落した時、親父や母さんが巨人に食われるのを何がなんでも防ぎたいって思ったんだよ」

 

「そ、それだけの力があるのに、時が来るまで何もしなかったんですか!?」

「ちょ、アンタまずいって」

 流石に俺への批判はよろしくないと判断したヒッチが間に入る。

 

「マルロ、お前の正義感は正しいと思うよ。ただな、正しさってのは物の見方のひとつでしかないんだ」

「どういう、事ですか……」

 

 

 俺は隣にいるアニにも伝わるように言葉を選ぶ。

 

 

「例えばだが、お隣さんが夫婦で盗みを働く家庭だとする。お前はどうする?」

「もちろん規則に則り逮捕します」

「うんうん、じゃあその盗みの理由が飢えて今にも死にそうな赤ん坊を育てるためだったら?」

「……それでも盗みは犯罪です」

「そうだな、逮捕は正しい。盗みを働いた親は逮捕される。だがその結果、赤子は飢えて死にました……さて、赤子の死の罪は誰に向かうのかな?」

 

 

 その言葉にマルロが言葉につまる。

 するとヒッチが助け舟のように意見する。

 

「で、でもマルロは悪くないですよね。彼は職務を果たしただけですし」

「その通り、彼は何一つ悪いことをしていない」

 

 

 その言葉にマルロが小さくほっと息を吐くが、俺は続けて言う。

 

「だが、最初に捕まった親はどう思うだろうな?」

「ーーっ」

「盗みで捕まった親はきっと時間はかかっても釈放されるだろう。そして帰ってきた頃には家も、赤子も亡くなっているわけだ。そんな彼らは誰を真っ先に恨むと思う?」

「そ、それは……」

「そんなのただの逆恨みじゃないっ」

 

 ヒッチの言葉にまた俺は頷く。

 

「でも恨むやつにはそれが正義なんだよ。手段の善し悪しはともかくとして、愛する子供を守る手段を妨害され、結果死んでしまったのだから。そもそも逆恨みするやつに『元はと言えばお前が悪いだろ』なんていう理屈は通用しないんだ」

 

 マルロとヒッチは俯いてしまった。

 

「すまん、ちょっといじわるが過ぎたな。ただこれだけはわかって欲しいんだ。物事には正義と悪の2つがハッキリ分けられているように見えても、実は立ち位置が変わるだけでその評価も裏返ることがあるんだ」

 

 

 そう言うと、ヒッチが小さくつぶやく

「そっか、私が親の立場だったら……確かに恨むかもしれない」

「……な、ならどうしたらいいんですか!?」

 

 マルロの苦しげな質問、静かにしているアニもこの答えに注目してる気がする。

 

「……そうだなぁ、俺だったらその親子を連れて逃げるかな!」

 

「は?」

「は?」

「は?」

 

 

 

 三人とも綺麗に重なりましたねぇ!!

 

 




極力やりすぎないようにはします!
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