〜第三者目線〜
エルヴィン団長が訓練の視察に来た。
これには訓練兵全体が驚きを顕にした。
しかもその場でバルト・ロメオの調査兵団へのスカウトを行うと明言したのだ。
本来ならば本人の意思を尊重した配属をするのが訓練兵の通例だ。
しかしそれを無視してまで引き入れようとするエルヴィン団長の行動に自然と周囲の視線が集まる。
それゆえに申請を知った駐屯兵団ドットピクシス司令、憲兵団師団長ナイル・ドークらは共にその人物に興味を示し、一目見ようと同行した。
これにより最高責任者三名が同時に104期生を視察に来る大騒動になった。
「問おう、バルト・ロメオ訓練兵。君はどこへの配属を希望している?」
整列し皆が見ている前でその質問をされ、バルト・ロメオ訓練兵は敬礼と共に高らかに即答する。
「調査兵団です!」
その宣言に驚くもの、納得するもの、言葉を失うもの様々だった。
「あえて言うが、調査兵団は最も死と隣り合わせだ。新兵が命を落とす可能性が7割を超えるぞ」
「構いません」
「君は死ねと言われたら死ぬのか?」
「いいえ! 死ねと言われたら死ぬ原因をぶっ殺します!」
まさかの返答に周りが唖然とする。
つまり「部隊を生かすために命を捨てて巨人の餌になれ」→「嫌なんで巨人をぶっ殺してきますね」ということだ。ある意味理想だがそれを実行出来るやつはほとんど居ない。
しかし彼の言葉には何故か否定しきれない根拠のようなものを感じてしまう。
「……それが人間だったらどうするんだ」
「俺に敵対する愚行を知らしめます」
その発言は危ういものだった。
一歩間違えれば反王政と取られてもおかしくないのだ。
なんせ王政は調査兵団に命をとしての人類領域を広げる命令をしている。拡大解釈で言えば、調査兵団に死ねと言っているのは紛れもなく王政なのだ。
この発言を聞いて興味を持っていた憲兵団と駐屯兵団は一気に引き入れる選択肢を無くした。
誰が望んで獅子身中の虫を飼いたいと思うバカがいるだろうか。
であるならば、本人の望む調査兵団に入ってもらい早々に自滅してもらうのが一番無駄のない処理だ。
ナイル・ドークがそう考える中、ドット・ピクシス司令は面白そうに見ていたが、それでも実力をしれぬ若造のためにトラブルを抱え込む事は避けた。
結果として第104期バルト・ロメオ訓練兵は異例の1年短縮の表明式を終え、正式に調査兵団への所属が決まった。
ーーーーーーーーーーーー
ーーバルト視点ーー
「よく似合っているよバルト調査兵」
エルヴィン団長からの言葉に照れくさくなりながらも敬礼をする。
俺の胸と背中には自由の翼が刻まれた。
正式な調査兵団になったと強く自覚する。
「さて、これで君は晴れて我が団員となった訳だが、特殊な出自故に何も知らない部隊へ配属するのは不要なトラブルを招く。よって君はリヴァイ班とハンジ班の掛け持ちをしてもらう」
「掛け持ち……ですか?」
「ハンジの仕事は主に巨人研究だ。その為には巨人を生け捕りするなどの危険な任務が複数発生する。だが君の力であればそれは可能なのではないかな?」
「……そうですね。巨人は手足がちぎれても生えると聞きますし、適当に手足をもいで何かで縛れば行けるかと」
俺の言葉にハンジは目を輝かせ「今行こう! すぐ行こう!」と喚く。もちろんモブリットの「焦り過ぎです分隊長!」という声もセットだ。
「また、班として動く以上基本的な行動は立体機動装置を使ってもらう。常に空を飛び回るのは何も知らない部隊のものを動揺させる事になるからな」
「分かりました。ですが緊急だと判断した場合は構いませんね?」
「無論だ。守るべきは規律だが君の命を蔑ろにしてまででは無いからね」
良かった、これで壁外調査中にトロスト区への襲撃が起きた時は飛んで駆けつけることが出来る。
「さて、その前に改めて聞きたいことがある」
「ハッ!」
「君はなぜその力を使えるのか、誰かに学んだのか?」
「いえ、この力は独学です」
「……これほどの力を独学、しかも15になったばかりの少年にそれが出来たと?」
まぁ、そりゃ怪しいよな。
そこで俺はカードを切る事にした。
「10年前、南部の山奥に謎の落下物がありました。それはご存知ですか?」
「……ああ、確かそんなことがあった。正体不明の金属と細すぎる部品で組まれた玉だったとか。技術班が何一つ解析出来ずに悔しがっていたのを覚えている」
「それに乗って居たのが俺なんです」
「何?」
リヴァイ兵士長が眉をあげる。
「俺の来歴ですが、ウォールローゼ南部の村出身とありますが、厳密にはその森奥で謎の玉の中に意識不明の状態で発見されたのが俺なんです」
「なんと……」
驚くと言うより興味深そうにするエルヴィン団長に対し、警戒心を上げたリヴァイ兵士長が睨む。
「てめぇ、なんでそれを隠してやがった」
「もちろん初対面でそんな事を言ってしまったら怪しまれてこうやって話しすら聞いて貰えずに投獄……最悪、問答無用で処刑すら有り得ますから」
その言葉に思い当たる節があるのかリヴァイ兵士長は「まぁそうだろうな」と呟く。
否定して欲しかったよホント。
「で、それを今話したってことは打ち明けてくれるってことでいいんだよね?」
ハンジはワクワクした顔で話の先を聞きたそうに促す。
俺は頷き、続きを話す。
「アレの名前はアタックポッド。戦闘民族サイヤ人が使う強襲用の乗り物です」
「……は?」
「戦闘民族、さいやじん?」
「待って、あの玉が強襲用?」
エルヴィン団長は沈黙し、モブリット・リヴァイ兵士長・ハンジがそれぞれに疑問を浮かべた。
「俺の名前はバルト・ロメオ。ですが両親すら知らないもうひとつの顔があります……俺は宇宙の戦闘民族サイヤ人、この星の外から来た宇宙人です」
そこから俺は前提として星と宇宙の概念を説明し、その遥か外に生まれ、別の文明を築いた別の人間だと説明した。
リヴァイ兵士長は早々に「そういう難しいことはお前らに任せた」と紅茶を飲んで放棄。
対する知能担当であるハンジやエルヴィン団長は目を輝かせ、未知の知識欲を満たし始める。
「なるほど……では君は記憶を一時期失っていたが、時間の経過と共に少しずつ取り戻して行った。
本来はこの星を滅ぼす為の尖兵だったがそれまでに築き上げた関係を失いたくないと思い、本来の目的を放棄し平和に暮らしつつも自己研鑽に励み続けていた……と。しかし、ウォールマリア陥落の報を聞いてこのままでは家族や友に危険が及ぶと知り、調査兵団に入るべく訓練兵として志願した」
これ迄話した内容を的確にまとめるエルヴィン団長。
マジで頭がいいと思う。
普通なら正気を疑われるのだろうが、先日に見せた気弾や舞空術が信憑性を強めてるのだろう。
まぁ厳密には違うのだが、まるで技術体系の違う力など説明不可能だからな。
「宇宙やら星やらは知らねぇが殲滅の尖兵というのは理解できるぜ。そいつが本気でやれば平和ボケした内地なんて7日もあれば崩壊する。送り込むにしてもガキの方が油断を誘うに最適だ」
リヴァイ兵士長の言葉にエルヴィン団長も頷く。
「全く、彼を紹介してくれたハンジには感謝してもしきれないな。間違って憲兵団に入られて人類に失望などされていたと思うとゾッとする」
まぁ、そんなことは狂ってもないんだけどね?
あんな不正の温床行きたくない。
そして俺はサイヤ人の証拠としてシッポを見せることにした。
腰に巻いてきた尾を解いて見せると皆の視線が集まる。
「なんだそりゃ」
「シッポです。あ、ハンジさん、引っ張ったり強く握らないでください痛覚があるので」
「おっと失礼、いやぁそれにしても凄いなぁ……動かせるんだよね?」
「ええ、手足のように使えますし、その気になれば自分の身体をこれ一つで支えてぶら下がる事も出来ますよ。そういう時は痛みがないのが不思議ですよね」
器用に操って本棚から本を適当に引っ張り出して見せる。
「普段は腰に巻いてベルトと誤魔化してますが、間違っても切り落とされると暫く痛くて力が入らなくなるんですよ」
「……? まるで経験したような口ぶりだな」
「あっはい。何度か自分で切り落としたんで」
「何で、そんなことを?」
「えー、それはサイヤ人としての特性を封印する為です。まぁ、結論から言えば色んな意味で無意味だったんですが」
「どういう意味かな?それに特性とは何かな?」
「俺たちサイヤ人は肉眼で満月を見てしまうと大猿に変身してしまうんです」
「大猿? 変身?」
ハンジは興味津々と言った感じなのでスケッチ用の紙とペンを貰い、大雑把に大猿化した自分を書いて見せた。
「これが……?」
「全長およそ15m〜20mになり、腕力や身体能力を加味した戦闘力が人間時の10倍に匹敵します」
「大型巨人相当のサイズだね。しかも戦闘力、だっけ? それも10倍とは中々に恐ろしい数値だね」
俺の力を理解しているからこそ、ハンジはその驚異に気がついたようだ。
「本来だと理性を失って暴走してしまうんですが……どうやら俺は異端らしく、完全に理性で操ることができるようになってたんですよ。
まぁそれでも、万が一街中とかで変化したらヤバいんでシッポを斬りました。……まぁ何度切っても再生されちゃったんですけどね。流石に痛いですから諦めて今の形に落ち着きました」
「ふむ……今度それを見せてもらうことは可能かな?」
「いいですけど変化しちゃったら暫くは戻れないですよ?」
「なるほど、任意の解除は出来ないのか」
「いやできなくは無いんですが……痛いんですよ」
「聞かせてもらえるか?」
正直、言いたくない。
今後力を使う羽目になった時、急いで戻る必要があるなら間違いなくリヴァイ兵士長が切り落としに来るだろうから。
「……簡単ですよシッポを切ればいいんです。シッポはサイヤ人としての力の象徴。それを失うと大猿化出来なくなるんです。
まぁ切ったとしても2ヶ月程で生えますが……」
「なんだ、生えるなら良いじゃねぇか」
リヴァイ兵士長の言葉にやっぱりと思い、一言返す。
「リヴァイ兵士長、シッポを切られる痛みは股間を蹴りあげられるよりキツイんですよ」
「……命には変えられねぇだろ」
「そうですけど、切った後弱体化する上にまともに動けなくなるんで、諸々の後始末は全部お願いしますよ」
金タマ蹴り挙げられても尚動き回れるならやって見せてくれ。もしくは仕返しに蹴り上げてやる。
その想いが通じたのか舌打ちしながら「考慮してやる」と呟いた。
金タマ蹴られるリヴァイ兵長みてみたい