エレンたちとは入団が決まってからも少しだけ交流する時間を貰えた。
「まさか1年早く入団しちまうなんてなぁ」
エレンの言葉に周りのみなも頷く。
「まぁバルトは俺たちの中でも飛び抜けて優秀だったからな。間違い無く成績上位10名に名を連ねて居たはずだ」
ライナーの言葉にコニーやジャンも「そうだな」と零す。
「エレンは確か将来的には調査兵団に来るんだろ?」
「ああ! 出遅れちまったが必ず追いつくつもりだ、待ってろよバルト!」
「待ってるよ、俺も向こうで研鑽を積んでいるさ」
そう言って同期の仲間たちと別れの挨拶を行う。
ジャンは皮肉を言いながらも最後には死ぬんじゃねえぞ、と身を案じてくれる優しさを見せてくれた。
マルコも俺の新たな門出を笑顔で見送る。
ライナー、ベルトルトの2人は異例の出世に驚きながらも負けないと意気込む。ベルトルトだけはちょっとなにか思案した様子だったが。
アニは少しだけ不満そうだ。なんだかんだいって対人格闘戦では中々楽しくやらせてもらってたから、相手が居なくなるのがつまらないのだろう。
ミカサには暴走しがちなエレンのストッパーとしてお願いをしたついでに、エレンの特徴や癖、やっては行けない言い回しなどを簡単にまとめた手帳を手渡した。
「これを見てエレンの扱いを勉強してくれ」
と言うと、今までで一番の目の輝きで「感謝する」とお礼を言われた。
その上でアルミンには「二人の衝突は多分今後も起きるだろうから、これまで通りよろしく」と頼んだら苦笑いされた。
コニーには一言「たまには家族の元へ顔を出せよ」と告げる。このまま行くと彼にはこの先訪れる苦難が待っている。まだ起きてもいない事件を話す訳には行かない為、それとなく家族への意識を向けるように告げる。
兵団に所属するとその家族限定だが、住処を所属する地域付近に移動する権利が与えられる。これは兵士の家族を保護する目的と同時に死亡した時に遺族への連絡を速やかに行うための措置でもある。
あわよくばそれを利用してもらい、家族だけでも……と思う。
イマイチ理解できていない様子のコニーだが、首を傾げながらも「たしかに兵団決まったら自慢に戻るのもありだな!」と笑った。
最後にサシャ。
「なんで……まだ一年あるやろ……」
動揺から最近は慣れた言葉遣いも忘れ、うわ言のように呟く彼女の頭を撫でる。
「悪いな、俺は強いからその分の働きが求められるんだ」
「せやけど! なんで調査兵団なん!? 調査兵団って新兵の大半が死ぬ言う場所やろ!? そんなところになんで志願するんや!?」
ずっと一緒にいた兄妹同然の俺が居なくなる事と、その行き先が地獄への片道切符とされる調査兵団という事もありすっかり参っているようだ。
周りの皆がいつもと違うサシャの様子に面食らっている。
「安心しろって、俺はここにいる誰よりも強い。ーーいや、リヴァイ兵長よりも強い。そんな俺がそうそう簡単に死ぬわけねぇだろうが」
リヴァイ兵長より強い、という言葉に周りの皆は真に受けた様子は無い。
恐らくサシャを安心させるための方弁だと思っただろう。しかしサシャだけはその言葉の意味を知っている。
なんせ、彼女は俺の本気で大熊相手に肉弾戦したのを見た事があるからだ。
「ほんま、やろな」
「おう、むしろ壁外調査に出た時は野生の動物を狩って土産に肉を持ってきてやるよ。その時はみんなで食おうぜ」
そう言うとしばらく沈黙が続き……。
「約束ですよ!? 私にはいちばん大きな肉を頼みますからねバルト! おチカヅキのシルシってやつを楽しみにしてますからね!!」
ようやくいつもの様子を取り戻した彼女のことをクリスタとユミルに任せる。
人の良いクリスタはこの提案を快諾してくれた。
ユミルには「お前がどうしようもなくなった時、一度だけ全力で助けてやる」と告げた所信じられないものを見るような目で見てきた。
「アンタ……」
「理由はなんだっていいだろ? 借りを作ったんだ、いざって時に最大限に活用してくれよ」
そう言うと、神妙な顔つきで「分かった」と頷いた。
「じゃあな、お前たちが1年後入団式を無事迎えられるのを楽しみに待ってるぜ!」
その場にいる全員の顔を見て告げる。
願わくば、ここにいる顔ぶれが変わらないことを。
こうして俺はひと足早く調査兵団となるのだった。