〜第三者視点〜
104期生との別れを終えたバルトは調査兵団屯所へとやってきた。
そこには現存する調査兵団達が勢ぞろいしていた。
「全体注目!」
エルヴィン団長の発言にしんと静まりかえる広場。
「一部の者は噂程度には知っているかもしれないが、昨日私は1人の訓練兵を調査兵団へとスカウトした!」
その言葉に僅かにざわめく。
あのエルヴィン団長がわざわざ赴いてまでスカウトした人間なんて過去一人しかない。それは今も彼の隣で立つリヴァイ兵士長にほかならない。
そんな彼が今一度スカウトをした、という言葉に否応なしに期待が膨らむ。
「改めて紹介しよう」
その言葉と同時に壇上に一人の青年が上がる。
特徴的な跳ね癖のある髪型、珍しい黒髪と黒目。
そして鍛え上げられた肉体は小柄なリヴァイ兵士長とまさに対極的な印象。
リヴァイ兵士長を小柄で素早さを生かす細身かつ小柄な兵士とするなら、今現れた青年は高身長かつ筋肉質な戦士。
その身体は兵士と言うより格闘家を思わせる作りに見えた。
顔つきはどこか人懐こい印象だ。
彼は壇上の上で心臓を捧げる敬礼の構えを取り声を張り上げる。
「本日付で調査兵団への所属が決まったバルト・ロメオです!」
声から伝わる気迫に数名のベテランは目付きを変える。
「皆が気になるだろう実力だが、先日極秘に行ったリヴァイ兵士長との模擬訓練をした結果十分に実力ありと判断した! よって彼はリヴァイ班、そしてハンジ・ゾエ分隊長の班を掛け持ちで配属となった!」
まさかの掛け持ち配属。
これが意味するところは「バルト・ロメオは2部隊に耐えうる身体能力と技量を持つ」であると裏付けるものだった。
そもそも一つの部隊に所属するだけでかなりの苦労が起きる。
さらに言えばハンジ・ゾエ分隊は他の部隊に比べて労働量が地獄のようにきついと噂だ。
副官であるモブリットが4日も寝ずに任務に着くなどザラであることも、調査兵団の中では常識になりつつあるほどなのだ。
そこに加え、兵団のトップといわれるリヴァイ班。
ネームバリューだけで入れるほど生易しい部隊では無い。
なんせリーダーの速度は全兵団トップ。その部下に付くという事はそれに最低でも続いて行けるだけの立体機動技術が必要なのだ。
2つの部隊に配属されるだけのタフネスと応用性、さらに部隊トップクラスの技量と精神力を団長や兵長及び分隊長が太鼓判を押したということだ。
「後日、壁外での実践を行う! 同時にバルト調査兵の実力テストを兼ねた巨人捕縛任務を行う! 各員、英気を養い任務に挑むように! 以上、解散!!」
ーーーーーーーーーーーー
その号令と共に兵団は解散し、団長が声をかけた者だけを団長室に呼び出す。
もちろん俺も顔合わせに必要なので一緒に団長室へと移動する。
しばらくすると名を呼ばれた者たちが入室する。
そこには調査兵団の重鎮ばかり。
「……スンスン、っ!?」
気配を殺しながら俺の背後に立って匂いを嗅ぎ、なにやら驚く男。
「どうしたミケ」
エルヴィン団長がミケと呼んだ男は動揺を隠さず、その場にいるものだけに聞こえるように言った。
「なるほど、確かにこの男は底知れぬ力を感じる。現時点ですらリヴァイと同等……いやそれ以上の可能性すらある。しかもそれすらまだ発展途上と見た」
「お前の鼻がそう判断するか」
何やら話し合う2人をよそに、ハンジが説明のように耳打ちをした。
「彼はミケ・ザカリアス。君が来るまでは調査兵団のナンバー2と言っても差し支えないベテランさ。嗅覚が非常に優れていて巨人の接近を察知したり、人の素質なんかを大雑把に察することも出来る男だ」
改めて聞くととんでもねぇな。
しかも実力の把握は間違いなく俺の気を読む力とほぼ同質。野生の勘とも言える嗅覚の鋭さで一種の技の域までに昇華されてる。
改めて見ると漫画で見た顔ぶれが集まっている。
簡単に自己紹介を済ませると、そこにいる顔ぶれを把握できた。
リヴァイ班
オルオ・ボザド
ペトラ・ラル
エルド・ジン
グンタ・シュルツ
ミケ・ザカリアス
ハンジ・ゾエ
モブリット・バーナー
ハンジ班は主に研究部という部門を調査兵団の中に設立しており、実働部は主にハンジとモブリットの2人だと言うから驚きだ。
とりあえず挨拶を終えたあと、エルヴィン団長は本題に入る。
「まず最初に言っておくが、ここで見聞きしたことは他言無用だ」
第一声の警告に否応無しにその場の全員は身構える。
しかしミケだけは動揺はなかった。
「それはその新兵の秘められた力に関係することか?」
「そうだ」
「わかった」
それきり何も言わず聞く姿勢に入る。
「まず、前提としていくつか言えない情報があることを念頭に入れてくれ。今ここで開示する情報も厳正な精査の結果選び抜かれたものだ。時が来れば情報のさらなる開示も念頭に入れている」
そう言って資料を全員分配る。
そこには俺の身体能力、特殊能力について書かれていたが宇宙人であることなどの概念的に飛び抜けたことはふせられていた。
代わりにシッポや大猿化のことまで明かされている。
それを一通り見た全員の顔は「困惑」に尽きる。
冷静だったミケすら流石に眉をひそめている。
口火を切ったのはエルド・ジンだった。
「失礼ですが……」
「構わん、率直な意見を述べろ」
彼は険しい顔つきをしつつエルヴィン団長に意見をする。
「ここに書かれている事全てがあまりにも荒唐無稽過ぎて信じられないのですが、これは我々を試されているのですか? 何か重要な情報を明かす前段階のふるい落としなのでしょうか? だとしたら私はその意図が何一つ分かりません」
その言葉に俺は内心「そりゃそうだ」としか言えなかった。
重要な発表があると言われ見せられた資料がどこぞの厨2ノートだったら、そりゃ誰だってバカにされてるか試されてると思っても仕方がない。
しかし悲しいかな、そこに書かれているのは100%が事実なのだ。
「だいたいリヴァイ兵長と模擬訓練を行って有効討伐数84対16でそこの新兵が勝ちだなんて信じられませんよ! 数値が逆でも兵長から10以上取れただけで優秀と褒めていいレベルだ!」
オルオ・ボザドがエルドに追従するように否定の意見を告げる。
この意見も真っ当なものだ。新兵が最強と称される兵長と競わされてそこまでやれたら奮闘したと周りも一目置くほどだ。
むしろ皮肉屋な彼の性格を鑑みればむしろ素直な褒め言葉と言える。
「……見た目で判断するのは失礼かつ兵士としては良くないとわかった上で言うが、彼は兵長より本当に強いのか疑問です。そう言わざるを得ない程にこれまでの兵士とは質が違う」
グンタ・シュルツも同意するように意見を述べる。
ペトラ・ラルだけは言葉を選んでいる様子だが、やはりその態度には兵長より強いとは思えないというものだった。
その態度にハンジが楽しそうに「人気者だねぇリヴァイ?」と茶化す。
「お前らがどう思おうが勝手だが、そこに書かれていることは一字一句間違いねぇ。なんせ俺が見聞きしたことを全て書いたんだからな」
この荒唐無稽な報告書をリヴァイ兵長が書いたという事実は、彼らの言葉を完全に失わせた。
「ではひとつ見せてもらいたい。謎の光弾でダミーを貫いたという技を」
ミケのその言葉に全員の視線が俺に集まる。
「そりゃいい、あの時は俺もよく見れてなかった。この際だからよく調べさせてもらおうじゃねえか」
「えと、それは構わないんですが室内だとちょっと危なくないですか?」
「狭い空間だと出来ないのか?」
「いえ、できなくは無いんですが……よし、じゃあアレにしよう」
俺は皆にできる限り壁際まで離れて貰い、右手に力を込める。
さらに左手で右手首を抑える。
「ぐっ……ぐぐぐ」
鬼気迫る顔で力む俺に全員が警戒する。
「ふん!!」
次の瞬間、頭ほどの大きさの光球が手のひらの上で停滞していた。
「おお!?」
「ほんとに、出た」
「なんだこりゃ、まるで小さな太陽じゃねえか」
「信じられん」
「スンスン……匂いは僅かにバルトに似ているな」
初見組はそれぞれの反応を見せる中、ミケの反応に俺は確信した。
彼は気のコントロールをできる逸材だ。
アイコンタクトをエルヴィン団長に送ると僅かに頷いた。
「これはどういうものなんだ? クソをするみてぇに力んでたが」
「これは兵長との模擬戦で使った気弾より上に位置する『技』とされる物です。名前は繰気弾、と言います」
「繰気弾……」
俺は皆の前で気弾について説明する。
「そもそも気弾とは、その人間が身に宿す精神的肉体的エネルギーを凝縮して放つ奥義に該当します。命のやり取りをしてるとたまに経験ありませんか? 相手の気迫というか、強い意志の塊をぶつけられた様な感覚」
その言葉にその場の全員か瞠目する。
「それの事を俺は気合砲と呼んでます。コレをより濃密かつ圧縮、さらに指向性を持たせて放つ技を気弾と呼びます」
俺の説明にエルヴィン団長が更に続ける。
「君が構えてるそれは気弾の上に位置すると言っていたがどう違うんだ? 見た目では光の玉であることに変わりないが」
「いい質問ですエルヴィン団長。気弾と技の違いは威力と独創性です。
威力はもちろん気弾に比べて技の方が破壊力を増すことに繋がります。例えるなら気弾は基本直線しか飛びません。工夫すると軽くカーブ程度は出来ますが、激しく動く物体には当てにくいので数多く撃って弾幕として使うのがほとんどです。銃のようなものです。
対して技はそれぞれが破壊力を大幅に伸ばし、更に拡散性や貫通性などの追加効果をもたらしてより大きな効果を生み出すように作ることが出来ます」
「てことは、てめぇのその手に浮いてるそれも何か効果があるんだな?」
リヴァイ兵長の言葉に頷く。
「繰気弾は精密な操作性と弾性を極端に伸ばしたものです。代わりに貯めが長いのが欠点ですね。とりあえずお見せします……皆さん動かないで下さいね」
ふわりと部屋の中央に放つと両手の人差し指と中指をピンと伸ばし、剣指と呼ばれる形を作る。
それを振るう度に室内を高速移動で動き回る気弾。
「うぉぉぉ!?」
「なんだぁ!?」
「ひぃっ」
「落ち着け! 動くなって言われてるだろうが!」
エルド・ペトラ・オルオが取り乱す中グンタが諌めながら冷や汗を流す。
気弾は何度も何度もその場にいる全員の眼前まで急接近と方向転換を繰り返す。狭い空間で暴れる気弾は誰1人傷付けることなく俺の掌の上に戻る。
「とまぁ、こんな感じです」
「なるほど? ちなみに操作する間妙な動きをしてたがそれは必要なのか?」
「あー……これは試作で作った技なのでその辺は隙が大きいんですよ」
「成程……最後にそれを切ってもいいか?」
「構いませんよ、ブレードがダメになるかもしれませんので気をつけてください」
言うや否や一瞬で抜刀し繰気弾を縦に切り裂いた。
本来なら爆破しておしまいなのだが、危険なのでそれはせず消す。
「成程……筋肉質な巨人程度の硬度があるな。生半可な兵士だとブレードが折れるか手首を痛めるだけだな」
感触を確かめるように切ったブレードを何度か振って呟く。
「なるほど、これが操作性と弾性と言うやつだな」
「はい、他にも技はあるんですが戦闘用なので狭い室内だと被害が出そうなので」
「いや十分だ。少なくともこれで君の力を疑う者はこの場にいないだろう」
その言葉にミケ達は頷いて答える。
まだ困惑はありそうだが、それでも資料の真偽は確かめた。であるならばそれらを頭ごなしに否定するのではなく、目で見たものを信じる調査兵団らしい柔軟性だった。
「それで? この中に素質のあるやつはいたのか?」
リヴァイ兵長は先程俺とエルヴィン団長が行ったアイコンタクトに気づいていたようで、その事について追求してきた。
特に隠すことでもないのでエルヴィン団長の許可を確認した上で話すことにした。
「まだ内容は決め兼ねていますがここにいる皆さんは、前提としての気のコントロールは覚えられると思います。
ただ、どの程度まで行けるかはやってみないと分かりません。それなりに才能あるサシャですら時間の関係で気の抑制と解放までしか覚えられなかったので……」
「構わない、お前たちは今後作戦を共にする機会も増えるだろう。その際には合間を見て彼から技術を習うように」
『ハッ!!』
こうして俺は調査兵団の仲間として正式に迎え入れられたのだった。
キャラが……キャラが増えてきて書くのが大変になってきたァァ!!
日間ランキングに乗ることが出来ました。
皆さん本当にありがとうございます。
活動報告でもかきましたが、今後も進撃のサイヤ人をよろしくお願いします。