宗教事業法(昭和26年法律第127号)30条1項に基づく有穢性祭具運用規則(昭和33年総理府・神祇庁令第13号)31条並びに32条及び附則1項の規定に基づく有穢性弾丸残穢基準改正専門委員会準備会   作:はまっち

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第 5 回会合議事要旨

[表紙]

 

 

 宗教事業法(昭和26年法律第127号)30条1項に基づく有穢性祭具運用規則(昭和33年総理府・神祇庁令第13号)31条ならびに32条および附則(昭和46年総理府・神祇庁令第4号)1項の規定に基づく有穢性弾丸残穢基準改正専門委員会準備会

 第 5 回会合議事要旨

 

 

秘文書

 

[1]

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1. 日時 令和 ? 年 ? 月 ? 日(月) 18:00~21:00

2. 場所 中央合同庁舎第八号館七階大会議室

3. 出席者

[委員]

上尾 慧曇 委員(国立研究開発法人極東境界異常・幽世事象蒐集研究所)

一条 統久 委員((株)アラサカ)

柏手 倫也 委員((株)柏手電気)

呉原 行雄 委員((株)ヤマブシヘビーインダストリー)

鴻犬 武史 委員((株)鴻犬コーポレーション)

佐々木 雅秀 委員((株)葦原工務店)

白金 九 委員(包括宗教法人神社本庁)

白木 英二 委員(成城大学民俗学研究所教授)

菅原 賢治 委員((株)浅間重工)

マリア・コシーニャ・ノルデンフリクト 委員長代理((株)カラビナジャパン)

 

(五十音順)

 

[政府]

中臣 千萱 環境庁環境参事官(境界防災担当)付参事官補佐

佾輪 穂張 環境庁神祇部境界対策課神祇官室付神祇技官

浅草 郁海 環境庁神祇部境界対策課祓穢係長

清墨 窓楓 環境庁神祇部境界対策課浄化係長

河原石 塔作 環境庁神祇部境界対策課特殊清葬係長

山神 凌太 環境庁境界対策課対界異装甲機動班長

勾津 日乃 環境庁境界対策課第一祓魔隊第四班長

■■ ■■ 環境庁神祇部境界対策課第一祓魔隊第八班長

春日居 幟 環境庁神祇部境界対策課界異共存研究会前線開発チーム長

物部 薙 環境庁神祇部研究開発課係長待遇

水上 井華 環境庁水・大気環境部環境管理課環境汚染室長

畠岡 康生 防衛省防衛政策課防衛政策企画官付企画官補佐

松岡 裕美 陸上自衛隊陸上幕僚監部防衛課防衛班長

佐々木 源五郎 林野庁鎮守部装備開発課禁域研究班長

上野 勇斗 警察庁警備局警備運用部警備第三課祓魔指導室長

山岸 弘人 資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー課穢晶・境界異常室長

水渡 歌歩 資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部穢エネルギー課供給拡大係長

 

 

 

4. 議事概要

(1) 論点説明に関して

○ 事務局より説明

(2) 委員意見開陳

 

 

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5. 議事要旨

(1) [検閲済み]

(2) [検閲済み]

(3) 第 5 回会合における専門委員会準備会出席者全員の合意は果たされず。事務局は第 6 回会合における合意を目標とする。

 

 

[3]

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〇中臣環境参事官補佐「定刻となりました。委員の皆様、政府職員の皆様は御着席を願います」

〇中臣環境参事官補佐「ただ今から、宗教事業法30条1項に基づく有穢性祭具運用規則に関する有穢性弾丸残穢基準改正専門委員会準備会第5回会合を開催いたします」

〇中臣環境参事官補佐「本日は▮▮委員長、▮▮境界対策課長、香宗我部結界管理課課長、白虹神祇官室付神祇技官、▮▮第一祓魔隊第六班長、三峰厚生労働省障害保健福祉部穢曝・障骸保険課課長補佐、岡林外務省地球規模課題審議官組織地球環境課穢化・境界問題係長、金田財務省主計局司計課広域災害実地監査官付部員は御欠席です」

〇中臣環境参事官補佐「議長は(わたし)、環境庁境界防災担当参事官付参事官補佐。中臣千萱がつとめさせていただきます」

〇中臣環境参事官補佐「でははじめに、▮▮委員長の代理として、マリア・コシーニャ・ノルデンフリクト株式会社カラビナジャパン顧客部渉外課長補佐より挨拶をいただきます」

〇ノルデンフリクト委員長代理「ご紹介に預かりました。マリア・ノルデンフリクトと申します。前4回の会議においては委員長である弊社渉外課長と共に参加させていただきました。

 昨今の界異頻発の情況から、今後の祓魔師の武装力強化は喫緊のものです。しかし日本における祓魔事業は1970年代からの有穢性祭具の残穢基準強化に伴う黒不浄弾および高度霊反応性祭具の規制によって閉塞傾向にあり、境界災害を未然に防ぐことすら出来なかった2011年3月の東日本大天災をはじめとして、民間祓魔組織を主として祓滅された2014年の御嶽山天災、祓滅が実行できず結界を構築することで対処していたところ1か月後に結界ごと詳細不明な要因によって消滅した2014年5月京都呪禍災害、恐山という立地から境界対策課祓魔隊班長複数人と機動班ならびに航空祓魔課による祓滅が成功せず神祇官による封印措置を必要とした2015年の五号級界異“鬼種五型”、東海地方で発生した同時多発的な界異の降着により民間祓魔師および祓魔隊に多数の死傷者を出した2017年6月の天災級界異“汐羅雲”、陸上自衛隊第3師団による祓滅作業が失敗した2018年大阪の四号級災害“大虎”、西日本豪雨を引き起こして派遣され、1個祓魔隊を喪失した末に儀式による祓滅が行われた2018年の天災級界異“流れを変える神”、直近では国外を含む複数機関の助力によって辛うじて封印措置が成功した天災級界異”天草崩れ”、および都内中心部で五号級界異“暝婚”の出現を招いた20■■年渋谷崇神級災害など、境界対策課を含む公的機関所属祓魔師による祓滅力の相対的減少が如実になるような境界災害が多発しています。

 また同様に国内外の呪詛犯罪組織も活発化を進めており、八咫ノ川市事件は発生後■年が経過した現在でも未解決のまま。これに加え呪詛犯罪組織“一切空”によって引き起こされた2016年9月下関天災、国外呪詛犯罪組織“オーケストラ”とその関連組織による横浜祓串銃乱射事件、そして呪詛犯罪組織“ミワシ部隊”によって引き起こされたとみられる2020年呉市日本製鉄瀬戸内製鉄所事件ならびに2022年の白道市事件および今年発生したことで記憶にも新しい内閣府国立界異研究・知識活用センター襲撃事件など、呪詛犯罪者による活動の過激化も顕著になっています。

 これらの境界災害ならびに呪詛犯罪者に対応するため一刻も早い黒不浄弾運用規制の緩和が必要であるとする意見は多数存在し、日本政府および各企業との連携協力によってこれを解決する必要があると考えています」

〇中臣環境参事官補佐「ありがとうございます。それでは事務局より論点説明を行わせていただきます」

〇中臣環境参事官補佐「これまでの4回に渡る議論の結果、黒不浄を含む有穢性祭具の製造に関わる労働災害と輸入および生産に関する財政的問題ならびに黒不浄弾の運用可能団体の制限に関する各議題に関して合意が図られました。第1回準備会でも提示しましたが、黒不浄弾の運用解禁においては有穢性祭具運用規則(昭和33年総理府・神祇庁令第13号)31条ならびに32条および附則(昭和46年総理府・神祇庁令第4号)1項および同附則(平成元年総理府・神祇庁令第8号)1項の規定の全てないしその一部を改正する必要があります。前4回の議論においては黒不浄を含む有穢性祭具の製造にかかわる幽侵労働災害の増加の懸念が訴えられましたが今次改正案として防穢装備の充実を果たしその着用を義務付けることで昭和46年改正の立法意図に合致することが確認され、また黒不浄弾の運用可能団体の制限に関しては有穢性弾頭ならびに穢性元素の規制に関する法律(平成元年法律第341号)ならびに同法施行令(平成元年政令第73号)および法律の優先原則に従い根拠法となる同法の改正を行うためには立法機関における法案提出を必要とするという形で即座の解決を果たせない事を確認し、直接的輸入にかかる財政的問題に関しては各機関の予算範囲内かつ当問題に起因する予算案の増額は原則として行わない形で合意を果たしました」

◯物部研究開発課係長待遇「なあなあチガヤ、これナギ様もいないとダメか? 政治なんかお主らがやっていればいいだろう。まあこんな、ほんっとうにつまらぬ会議を何回も何回も繰り返す好き者だからだとは思うんだが…………」

◯中臣環境参事官補佐「……薙君、もう少しだけ我慢してくれないか……? ほらそこ、吾が夜なべして作った資料に落書きしないでくれ給え」

〇中臣環境参事官補佐「……ごほん。それでは各委員ならびに関連部署担当職員による意見陳述を行って貰います。それに先駆け、上尾委員ならびに白木委員に、黒不浄ひいては穢晶についての基礎的解説を行って貰いたいと思います。

 それでは上尾先生、白木先生、よろしくおねがいします」

◯上尾委員「国立研究開発法人極東境界異常・幽世事象蒐集研究所の上尾です。前4回までの会議に引き続き、今回の議題となる有穢性物質に関する科学的説明を行わせていただきます。

 有穢性物質とは、18世紀末にイタリアの科学者アレッサンドロ・ディ・カリオストロによって発見された元素“穢素”を起源としています。これはデカルト的な帰納的化学観の視点から“神の作った物質は形を変えない”として当時中心的であった錬金術を衰退させるに至りましたが、同時にキリスト教的価値観の面から大いに批判され、発見者のカリオストロは宗教裁判に掛けられ獄死しました。現在ではカリオストロの発見した“穢素”自体は、元素番号i“霊素”の穢荷同位体であるところの穢化霊素ではなく鉄の穢化化合物、有穢三酸化二鉄であるとされており、霊素の発見は19世紀中頃まで待つこととなります。

 20世紀前半に第0周期元素としてのニュートロニウムが提唱されてからは霊素の物質的特徴を元に元素周期表への適用が求められましたがあまりにエキゾチックな元素であったため仮に虚数を意味するiと置き、この同位体ないし化合物として各種穢化元素の解析が進んでいきました。

 さて物質的特徴に移らせていただきます。現代科学において穢れは三次元的ないし四次元的なエキゾチック物質である霊子によって負の霊荷を帯びた三次元的原子であるということが知られており、正の霊荷を帯びた霊子(恩寵子)及び負の霊荷を帯びた霊子(呪霊子)ならびに中性霊子の3種類と結合し、うち負の霊荷を受けた原子がいわゆる有穢性物質となるとされます。

 霊子における魔法数は一般的に1、2、4、8、16、64、384の7つとなっており、うち霊子のみを有する安定した三次元的元素を一般的に元素番号i“霊素”(1価・3価)と呼称します。この霊素(Ⅰ)が所謂物質化した加護、霊素(Ⅲ)が物質化した穢れであり、霊素(Ⅲ)が穢晶・黒不浄と呼称されることがあります。また同じく原子量1の水素(^2)、ヘリウム4(^2)、酸素8(^2)などが三重魔法数を満たす霊的安定物質であり、炭素14(16)、カルシウム40(64)、鉄56(64)等が加護ならびに穢れと呼称される霊性物質の主要なものとなっているとされます」

〇春日井界異共存研究会前線開発チーム長「境対課の春日居です。質問よろしいでしょうか」

〇上尾委員「どうぞ。専門家ではありませんから、適切な返答になるかはわかりませんが」

〇春日井界異共存研究会前線開発チーム長「ありがとうございます。先ほど酸素と水素に三重魔法数が存在し霊的に安定すると仰られていましたが、これは正の霊荷を帯びた酸素ならびに水素が多く存在するという解釈でよろしいでしょうか」

〇上尾委員「その解釈で間違っていません。霊子は正の霊荷を帯びた恩寵子のみが単独で存在できるとされており、霊離反応(霊的イオン化反応)を経た霊素(Ⅰ)も基本的には恩寵子のみです。ただし霊素(Ⅲ)に見られるように呪霊子との結合の結果負の霊荷を帯びた同位体も確認されています。特に酸素8(^2)に関しては同位体が複数存在しており、霊子の増加と共に穢帯化が起こりやすくなっていることがわかるでしょう。水素と酸素からなる化合物であるところの水は特にこの霊荷に関わる霊的変化が多くみられているため研究者の間でも議論となっています」

〇白木委員「上尾さんの説明は民俗学的にも間違っていないと思います。一般的なのはマイナスイオン水や浄めの水などですが……これらは恩寵子……でしたっけ? これによって酸素と水素が聖化された水であると出来るかもしれません。また同じくキリスト教において水、特にワインは聖変化の末に聖性を得るという解釈が一般的ですが、これを霊的中性の水に恩寵子を加え、聖なるものとするという形での説明がつけられると思います」

〇上尾委員「白木先生ありがとうございます。これらは霊離反応(霊的イオン化反応)として総称され、負の霊荷を帯びた霊子……呪霊子が霊的核と結合することで穢れを帯びる事を穢帯化、逆にこれを喪い正の霊荷が如実に表れる事を聖帯化と呼びます。厳密には中性霊子の結合に伴う穢帯化反応もあるのですが…………さて本題であります、黒不浄および穢晶……化学的には霊素(Ⅲ)ないし穢化霊素についてご説明させていただきます。

 穢化霊素、いわゆる穢晶は一般的にTzという元素記号で表記されますが、今回は穢化霊素で通させていただきます。これは物質的特性として常温で気体の反応を示します。融点は室内においておよそ■■℃。沸点はおよそ■■℃。ただし霊的圧力化であれば固体として精製可能であることが知られています。危険性として穢荷霊子による周囲の穢帯化を伴う汚染が存在し、生物に対しては穢ばく症に代表される幽侵現象を引き起こしますね。また穢化霊素に含まれる穢荷霊子は境界異常、いわゆる界異および幽世において一般的な4次元的エキゾチック物質であり、境界異常を引き寄せる他物体に付着することでいわゆる“歩骸”、“鬼種”を含む受肉型界異などの境界異常を引き起こし、特に密度が高まった結果として禁域化という形で空間を異界化することが確認されています」

◯鴻犬委員「すみません。異界化、とはなんのことですか?」

〇上尾委員「一般的に、異界化とは三次元空間における現行のニュートン物理学および量子物理学が四次元空間における霊子物理学によって改変される現象を指します。いわゆる一号級界異などは霊子物理学の延長として仮想質量の三次元空間への投影を行い存在強度を維持することで知られていますが、二号級界異以上はそれに加えて独自の非三次元物理学的現象を引き起こします」

◯河原石境界対策課特殊清葬係長「それの最たる例が独自の法則による空間の掌握、いわゆる異界化……ないしは禁域化であるわけだ。天災級界異を見れば、なにもない晴れ渡った空を突然土砂降りの大雨に変えたり霊体を強制的に簒奪し殺害するなどすることからこれらが独自の法則を我々に押し付けて来ていることがわかるだろう」

◯鴻犬委員「なるほど……つまりなんか無茶苦茶なことをやるやつは、全部この霊子? ってやつでウニョウニョやってるってことで良いわけですか」

◯上尾委員「その通りです。今回は穢れについてのみですので説明は省きますが、神祇官及び祓魔師などにおける祓魔術も、当然その一部であると考えて良いと思われます」

〇佐々木委員「その意味では、祓串および注連鋼縄等もその一端を担っていますよね。結界と言う形で一時的に四次元空間上の霊体を現実に実体を持ったようとして機能させているんだから」

〇上尾委員「あれも祓魔術と同じく加護……正の霊荷を有する霊子による運動ですね。境対課さんの言う“境界を曖昧にする”とは言い得て妙で、三次元物理学と言う我々の境界を四次元側と混ぜ合わせてしまい有効打を与えるという発想はその危険性さえ考えなければ十分活用可能であると考えます」

〇山神境界対策課対界異装甲機動班長「まあ実際、それしか出来る事はないからな」

〇上尾委員「……さて、有穢性物質についての説明は以上となります。ご清聴ありがとうございました」

〇中臣環境参事官補佐「上尾委員、ありがとうございました。では次に人文学からの視点での説明を白木委員にお願いしたいと思います」

〇白木委員「人文学とは言っても、僕の専門は超心理民俗学なんですが……話せる範囲は説明させてもらいましょう」

◯白木委員「日本における穢晶・黒不浄の発見は8世紀の安芸国風土記(逸文のため一次史料としては未発見)まで遡ることが出来ます。平安時代においても『日本霊異記』『今昔物語集』等に“呪ひの黒石”等として登場し、同じく伊勢斎王の忌火屋殿における儀礼なども記載されていますね。

 日本最古の黒不浄は推定飛鳥時代の作である穢片(国立博物館所蔵)ですが、明確に刀の形として成立したのは鎌倉時代末期のことであると考えられます。これを示すように大阪の■■神社には現地の武士が奉納したと伝えられる黒不浄が残存しています」

◯白金委員「黒不浄はそんな昔からあったんですか?」

◯白木委員「当時は妖刀の一種として作成され、一般的には忌み嫌われながらも一部の祓魔師の間で存続し続けていたものと思われます。ただ、忌火屋の意味合いが変わったことや穢晶の危険性などから被差別部落として認定されることも多かったらしく、これを示すように戦国期における甲斐の国での被差別部落に関する記述には“黒鉄”という村名が幾つかあることがわかりますね」

◯鴻犬委員「すみません、忌火屋の意味合いの変化とは……?」

◯白木委員「いい質問です。そもそも忌火とは斎火の変化であり、本来は神に捧げる清浄な火のことを指したのです。現在でも神事においては忌火と呼ぶことがあり、民俗的にも斎戒の際には火に近づかないことや妊娠・月経中のいわゆる穢れ・障りがある女性を火に近づけず、また同じ火で炊いた飯を他人が食べることが出来ないなどの形で神聖さが担保されることもしばしばです。

 しかし仏教の民衆レベルでの拡大や社会構造の変化により忌火は単純な霊火としての意味合いより黒不浄という妖刀を作成するための被差別的な意味合い、即ち真の意味で忌み火となってしまったといえます。この傾向は江戸時代には穢多頭等社会化された被差別民を通じて江戸幕府により厳しく規制される形で続き、この間に黒不浄製錬の技術が消滅したと見なすこともできます。これを裏付けるように、穢晶はともかくとして近世期の黒不浄作成記録は1651年、由井正雪の乱が発生した時以降見つかっていません。幕府の統制により江戸期を通じて黒不浄の作成が規制された以上、公式に黒不浄の精製が為されるようになってきたのは明治政府による太政官制の復活からであるとされています」

〇一条委員「少々良いですか。民間警備会社アラサカの一条と申します。我々の任務の一つには古い文化財の保護がありますが、この中には江戸期に作成された黒不浄とみられる祭具も多々あります。これらに関しては近代の贋作であるとみてよろしいのでしょうか」

〇白木委員「ここに関しては刀剣技術史の範囲に含まれるのですが……古刀と近代刀・現代刀の大きな違いは美術品としての価値があるかどうかも含まれます。地金や波紋における美術的価値として古刀が優れているという意見もあるのですが、そこは美術家の審美眼次第とは言えるでしょう」

〇白木委員「それより祓魔的な意味合いでの違いについて述べさせていただきます。黒不浄はその性質上付喪神として成立しやすく、また穢れの問題に加えて黒不浄自体の加工の難しさも相まって古式黒不浄刀と現代黒不浄刀ではその鍛造方式が異なります。古式黒不浄刀では精製した魂鋼(たまはがね)……所謂黒不浄ですね。これを甲伏せ、本三枚、四方詰め等造込みと呼ばれる工程において日本刀鍛造の過程に混ぜ込むことにより、古来の方式での日本刀鍛造様式と黒不浄加工を融合させています。対して現代黒不浄刀は魂鋼の製錬及び加工技術が進歩したことによりほぼ百パーセント魂鋼のみでの鍛造が一般的です」

〇上尾委員「古式黒不浄で用いる魂鋼は化学的には穢化鉄炭化物および穢化ファイアライトならびに穢化霊素等の合金であるといわれますね。合金化にかかる配合は極めて専門的な分野であり未だに研究途上ですが……現代黒不浄刀においてはほぼ穢化霊素を中心として用いた合金です」

〇鴻犬委員「つまり古い奴は穢れを持った鉄や鋼が主要な元素であって、新しいものは穢れそのものが物質化したものが主要元素という事になりますね」

〇上尾委員「概ねその通りです」

〇白木委員「明治期になって西洋から先進的な穢晶加工技術が入ってきたことが主な変化点でしょうね。ならびに社会的事情としての廃刀令による古式日本刀の衰退も大きな要因でしょう」

〇白木委員「それで……なんでしたっけ。江戸期における黒不浄刀でしたか。これは比較的単純な話で、江戸幕府による穢多・非人を通じた黒不浄規制は必ずしも完璧な統制ではなかったという事です。特に西日本における穢多部落ではしばしば非公式的な黒不浄刀作成が行われていたらしく、実際の作例としても神社や美術品などに紛れて稀に残っていることがあります。アラサカさんは恐らくそれを見つけてしまわれたのでしょう」

〇一条委員「なるほど。よくわかりました、ありがとうございます」

〇白木委員「当然いつ造られたのかもわからない未登録の黒不浄が存在するという点では極めて悪いことではありますが……歴史的に見れば悪い事だけではなく、西日本における穢多部落において非公式的黒不浄の作成が行われていたという事は技術継承の面でも大きな意味を持ちます。明治政府による穢晶・黒不浄の製錬の際には穢多村出身者も多く動員されたと言われているらしいですね。ただし現代のような穢晶のエネルギー運用は技術的障壁が高く、また穢れの問題も存在したため、日本における穢力技術の発展は1950年代まで待つこととなります」

〇上尾委員「その点、石油の運用の歴史と似ている部分がありますね。あれも確か古来から“燃える水”として知られていたでしょう」

〇白木委員「そうですね。日本書紀にも越の国(現在の新潟周辺)から石油と思われる臭く燃える水が献上されたという記録が残っていますし、江戸時代にもこれを燃料として運用する試みがありました。しかし現実的な問題として爆発的燃焼に耐えられるだけの製鉄・加工技術が存在しなかったことや石油の安定精製の技術が未発達だったことなどを理由として、石油の運用は……まあこれは灯油としてですが、明治時代から始まったといっても良いでしょう」

〇中臣環境参事官補佐「失礼、白木先生。昭和30年代からの穢晶バブルに話を進めて貰ってよろしいでしょうか」

〇白木委員「ああ、これは失礼。えっと……1950年代からの穢晶バブルについてですね。太平洋戦争後、各地の闇市を中心に穢晶の大量発生が確認されました。特に1946年の飯米獲得人民大会事件と1952年に広島で発生した惨讐の河事件は重要なターニングポイントと言えるでしょう。ここで産出された穢晶は1950年代からの日本の産業復興に伴い1956年に中曾根議員(後に内閣総理大臣)の主導による霊子力基本法等霊子力法制が制定され、穢晶を用いた穢力発電の発達に繋がります。その穢力発電の一号機は島根県出雲市に建設され、現在でも中国電力の主要発電所として名を残していますね」

〇柏手委員「我が社(柏手電気)も元は電源開発(1952年に発足した特殊会社)から分離した穢力発電部門が祖業ですからね」

〇白木委員「1995年の電力自由化に伴う独立ですね。電源開発と主要電力会社は合弁会社として1957年に日本原子力発電を設立しましたが、穢力発電は1958年には既に各電力会社の主導で合計4箇所に設置されていました。このため穢力発電の統合的運用が出来なかったという事情があります」

〇白木委員「さて日本の復興と高度経済成長を支えた穢力発電でしたが、穢れによる環境汚染問題は一切解決の目を見ていませんでした。これが顕在化したのは1960年代後半の淡路穢力発電所事件です。ここにおいて住民と電源開発との間の訴訟問題に発展し、当時頻発していた公害問題訴訟とも関連したうえで1971年の環境庁設置に繋がります」

〇中臣環境参事官補佐「当時は神祇庁と環境庁が並立していましたから、環境庁における所轄業務は穢土汚染公害に関するもののみでしたね」

〇白木委員「そうですね。それに関連して1971年の神祇庁令に基づく有穢性祭具運用規則改正および1975年穢化元素等基準法制定に繋がります。前者は黒不浄等有穢性祭具の運用において免許制度を必要とすること、後者は穢化元素の排出量規制にまつわるものでした。これによる穢晶産業の後退が1980年代を通じた不動産投資、および巡礼旅行ブームに繋がっていくのですが……これはバブル崩壊の直接的原因となります。

 日本の穢晶産業を牽引していた三菱穢晶鉱業が1990年に破綻するのに前後して1987年に国際的枠組条約としてのウェストミンスター条約の制定ならびに1990年のルルド議定書発効、それと1989年の有穢性弾頭ならびに穢性元素の規制に関する法律施行令により、国内では所謂黒不浄弾および環境に対し有害な有穢性兵器の規制が為され、中央省庁再編後の2002年に国連総会において発効された特定有穢性兵器禁止条約を以て、日本における黒不浄弾不使用の原理が構築されました。以後日本では、公的機関・民間を問わず黒不浄弾の運用は為されていないこととなっています。

……そうですね、僕からの説明は以上です」

〇中臣環境参事官補佐「白木先生、ありがとうございました」

〇山神境界対策課対界異装甲機動班長「当時の社会党と共産党他野党からの突き上げによって自衛隊における黒不浄弾の規制が為されたというのは有名な話だな……。おかげで自衛隊の祓魔能力が大幅に削がれ、阪神淡路大天災も防げなかった。…………本当に、嘆かわしい話だ」

〇中臣環境参事官補佐「……話を進めます。次に各委員・政府関係者による意見陳述を行います。まずは……」

〇山岸資源エネルギー庁穢晶・境界異常室長「では意見をさせていただきます。資源エネルギー庁新エネルギー課穢晶・境界異常室の山岸です。20■■年の統計によると、我が国における黒不浄の原料となる穢晶石の自給率は100%を達成しています。これは2000年代以降の穢晶資源の運用がごく小規模であることや、現在境界対策課など祓魔組織において使い捨て黒不浄が用いられていないことなどに起因しています。

 これに対し黒不浄弾を使用する場合の年間使用量の予測と年間採掘可能量の予測がこちらになります。我が国における穢晶資源埋蔵量は奇しくも石名坂事件によって急増しており、穢力発電など穢れのエネルギー化が進展した1950年代から1980年代にかけての穢晶バブル期の年間穢晶使用量と比較しても十分に持続可能な埋蔵量である事が、これまでの調査によって判明しています。

 石名坂禁域単体での推定穢晶資源埋蔵量はこれまで日本国内で発見された穢晶採掘可能禁域の資源埋蔵量の数倍に匹敵しており、石名坂禁域が日本国における令和の石見・佐渡となることはまず間違いがないでしょう」

〇上尾委員「しかし石名坂は旧神祇庁の定義による荒霊禁域(活性禁域)であり、林野庁鎮守部による入山規制が行われているのではないですか」

〇山岸資源エネルギー庁穢晶・境界異常室長「その通りです。詳細に関しては佐々木源五郎禁域研究班長にお譲りしたい限りですが……」

〇佐々木林野庁禁域研究班長「林野庁鎮守部装備開発課禁域研究班の佐々木です。石名坂は確かに旧神祇庁による定義、“10年以内に新規ないし断続的に二号級以上の境界異常が発生した区域”および“現在活発な境界異常活動のある区域”に該当しております。この場合の統計的な平均大気中残穢濃度は49mg Tz/m4であり、成人男性の場合では凡そ2時間のばく露で致死量に到達します。しかし…………石名坂地区における平均大気中残穢濃度は統計的な活性禁域の平均値に対し2倍から3倍となる例がここ数年で多々見受けられました。現在まで確認された最活性状態150mg Tz/m4の条件下で非防穢装備での入山を行った場合、最小残穢致死量に到達するまでおよそ30分足らずとなる計算です」

〇鴻犬委員「つまり、現状石名坂禁域の開発は出来ない……という事でしょうか?」

〇佐々木林野庁禁域研究班長「その通りです。少なくとも穢晶バブルと同規模の大規模採掘を行うためには……鎮座禁域(休息禁域)に指定される事が必要不可欠でしょう」

〇水渡資源エネルギー庁穢エネルギー課供給拡大係長「少しいいですか。資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部穢エネルギー課供給拡大係の水渡と申します。

 その残穢致死量に関する基準はあくまで50年前の1970年に制定されたものであり、当時は狩衣の耐久可能残穢量13ppm以下であったことからこのような基準策定となったと記憶しております。対して現在は狩衣を含む各種防穢装備における技術革新によっておよそ10倍の130ppmまで耐久が可能となっており、事実海外における穢晶採掘境界異常においては平均大気中残穢濃度13mg Tz/m4における8時間以上の連続入山が確認されています。

 特に縫司紡績製の最新型狩衣と戦術祓魔インナー3型ならびに形代七枚を装備した場合での恐山禁域への試験入山では平均大気中残穢濃度21mg Tz/m4に対し4時間44分の無骸入山が確認されました。石名坂地区における穢晶採掘においても十分な産出量を維持できる計算です」

〇佐々木林野庁禁域研究班長「ちょっと。その判断は活性禁域と休息禁域の危険性を大きく見誤っています。50年前の穢晶バブル後期に巡礼ブームと称して禁域への民間人の大規模入山が行われていましたが、これらは全て残穢濃度9mg Tz/m4かつ民間人入会地周辺の一号級界異掃討が完了した場合に限っていました。活性禁域への入山は穢れによる健康被害のみならず、多数の一号級・二号級界異とそれと同程度の三号級・四号級界異……果ては五号級界異の出現可能性すらあるのですよ」

〇水渡資源エネルギー庁穢エネルギー課供給拡大係長「そのための祓魔組織ではありませんか? 40年前は民間祓魔師によって対応できた事例が、40年後の今界異の号級を超える形で発展した武装を保持し高度に戦術化された公的祓魔師によって実行できないとは考えられません」

〇■■第一祓魔隊第八班長「……いやぁ、いくらなんでも骨が折れるっすよその条件は。第八班どころか祓魔隊の班長みんな集めても祓滅出来るかどうかわからないっす」

〇勾津第一祓魔隊第四班長「おれなら できる」

〇■■第一祓魔隊第八班長「日乃ちゃんには出来てもそれ以外は無理っすよ。それにただ単純な四号級祓滅なんかじゃなくて、採掘を行うための人員や即席結界を貼る清祓班やら結界管理課やらを守りながらの戦闘でしょ? 人手も装備も足りないってレベルじゃないっすね」

〇水渡資源エネルギー庁穢エネルギー課供給拡大係長「そのために貴方がた環境庁神祇部には莫大な国税を払っているんでしょう。日本の経済の根幹たる天然資源の自活化がならずして、何が第三の公安ですか」

〇■■第一祓魔隊第八班長「経産省はおろか、エネ庁から給料をもらってるわけじゃないっすけどね。それに経済がどんなに良くなろうが、人死にが出ちゃなにもない。まずは人命が第一っすよ」

〇水渡資源エネルギー庁穢エネルギー課供給拡大係長「その人命を保護するために、莫大な穢晶を黒不浄弾として運用することで武装力の強化を図ることが何より重要なのです。その穢晶でどれだけの界異が祓滅出来て、どれだけの市民が安定した電力供給にありつけるかは大きな問題ではないですか?」

〇浅草環境庁神祇部境界対策課祓穢係長「そうは仰られるが、そもそも黒不浄は人体に有害だからな……必要がないならば無闇矢鱈と振り回すものではないよ」

〇春日井界異共存研究会前線開発チーム長「ですが黒不浄を含む有穢性祭具は近年の技術発展で更に効率よく残穢の抑制が出来るようになっていますよね? 擬似穢二型の開発もそうですし、1980年代と比べると黒不浄の浄化容量も大きく拡張されています」

〇水渡資源エネルギー庁穢エネルギー課供給拡大係長「神祇部境対課界共研の春日井さんが仰られた通り! 有穢性祭具残穢基準を遥かに下回る祭具が膾炙している以上、黒不浄弾の製造および運用時にかかる残穢は今後さらに小規模なものとなるはずです!」

〇物部研究開発課係長待遇「その通りであるぞ!何を隠そう、ナギ様が開発したこのハラエドくんMk6(特許出願中)があれば誰でも……」

〇中臣環境参事官補佐「おっと話が脱線しすぎたね。話をもとに戻して……薙君はとりあえず祭具を机の上に並べるのをやめてくれ給えよ」

〇畠中防衛省防衛政策企画官付企画官補佐「では防衛省よりよろしいですか」

〇中臣環境参事官補佐「どうぞ」

〇畠中防衛省防衛政策企画官付企画官補佐「防衛省防衛政策課防衛政策企画官付企画官補佐の畠岡です。現在、三自衛隊へ納入される銃砲弾の数は年間[防衛機密]発。うち小口径銃弾は旭精機ならびに昭和金属工業。12.7mm機銃弾から35mm砲弾に関しては日本工機。大口径砲弾ならびにミサイルに関しては旭化成ならびに日油がそれぞれ担当しています。これらの企業は有穢性祭具ならびに霊反応性祭具製造用の工作機械を保持しておらず、即座の弾薬国産化は不可能であると考えられております」

〇鴻犬委員「畠岡さん。それではこれまで自衛隊での祓滅はどのように」

〇畠中防衛省防衛政策企画官付企画官補佐「基本的には軍……士官刀、ならびに豊和67式祓串射出装置を使用しております。対界群に関してはスクラントン米陸軍弾薬工場製隕鉄使用型M107砲弾、ドイツラインメタル社製DM33祓串APFSDS砲弾など霊反応性祭具を主に使用しております」

〇松岡陸上幕僚監部防衛課防衛班長「陸上自衛隊陸上幕僚監部防衛課防衛班長の松岡です。少々情報を追加させていただいてもよろしいでしょうか」

〇中臣環境参事官補佐「良いですよ」

〇松岡陸上幕僚監部防衛課防衛班長「ありがとうございます。先ほど畠岡さんが仰られた通り、確かに陸上自衛隊においては隕鉄弾ならびに祓串等霊反応性祭具を運用しております。しかし現状として陸上自衛隊の対界群・祓魔小隊の霊反応性祭具運用回数は、祓魔科隊員一人当たり年間10発を下回っております。これらはひとえに祓串等霊反応性祭具を射出した場合基本的に使い捨てとなるという財政的都合に加え、自衛隊による実弾射撃が厳格な規則によって制限されているためであります」

〇鴻犬委員「境界異常への自衛隊出動は災害派遣ではないのですか?」

〇松岡陸上幕僚監部防衛課防衛班長「確かに自衛隊法第83条に基づく災害派遣として運用される傾向にあります。しかし師団付祓魔小隊の祓滅作業に関しては同法83条2項但し書きに定められる自主派遣の範囲であり、都道府県知事からの正式な文書無しに運用されることが多いです。これは祓滅作業の開始から終了までの期間が一般的な災害派遣と比較して極めて短い事にも起因しておりますが、これが地方自治体との間の不和を招きかねないという事は1978年境港祓串行政事件訴訟においても確認されています」

◯上野警察庁警備第三課祓魔指導室長「それでは自衛隊さんは黒不浄弾の使用よりもまず、立法の側から、祓串等霊反応性祭具および有穢性祭具とその運用可能化を問いかけるべきである。ということですか」

〇松岡陸上幕僚監部防衛課防衛班長「いえ。それよりもまず弾薬費高騰の面から黒不浄弾の使用については足踏みをすると考えております。

 先ほど畠岡さんが申し上げた通り、現在国内において有穢性弾丸を製造できる工場はありません。そのため購入するとなるとアメリカ……またはイギリス、フランスなどNATO弾を使用する国家からの輸入に頼る必要があると考えられます。その場合の弾薬一発あたりの価格変動は次の通りになると考えられます。また現在の5.56x45mm NATO弾1発あたりの値段は100円に満たない価格ですが、陸上自衛隊第1師団内のヒアリング調査によると陸上自衛隊祓魔科隊員……ひいては陸上自衛隊普通科隊員が小銃射撃をためらう理由の一つとして、たとえ警察官職務執行法第7条を準用した緊急避難の目的であったとしても小銃発砲においては複数の書類作成を必要とする点が挙げられるとされています。況や自衛隊備品である銃弾を消耗した場合は更にその必要性が増加するでしょう。このため私物として自費で祓串を購入し、祓串発射装置による自衛を行う祓魔科隊員も多くいるとのことです」

〇上野警察庁警備第三課祓魔指導室長「これは警察においても同様です。警視庁の対界異機動隊ならびに呪詛犯罪対策部隊(TET)においても同様の理由から発砲を自粛し、対界異職務質問に基づく一号級境界異常の祓滅を行っているケースが多々あります」

〇松岡陸上幕僚監部防衛課防衛班長「これらの制約下において、陸上自衛隊祓魔科による祓滅は有穢性祭具たる00式対異刀……いわゆる黒不浄によって為される近接祓滅が大半を占めます。当然これにより負傷・殉職、また障骸を負って退職した祓魔科隊員も多く確認されております。これらのことから、可能な事なのであれば、黒不浄弾の使用が解禁されることで自衛隊の本分を果たせるものと確信しています」

〇山神境界対策課対界異装甲機動班長「しかし松岡一佐、自衛隊の黒不浄弾運用には政治的問題が付きまとうものだろう。前回確認したことではあるが、全面解禁のためには国会で改正法案を通す必要がある」

〇松岡陸上幕僚監部防衛課防衛班長「……まさしくその通りです、山神元一佐。この難局を乗り切るためには背広組、制服組、また国会議員諸氏と共に法案改正のため邁進する必要があります」

◯水上環境庁環境管理課環境汚染室長「失礼。防衛上の問題は兎も角、環境上の問題から話させて貰ってよろしいでしょうか」

〇水上環境庁環境管理課環境汚染室長「申し遅れました。環境庁環境管理課環境汚染室の水上です。穢れによる土地汚染――所謂穢土汚染問題は1971年の環境庁設置から絶えず我々環境官僚の頭を悩ませてきた問題です。特に1980年代には第2次オカルトブームと穢晶産出量の減少に伴う既穢晶採掘安定禁域(神祇庁の定義に基づく休息禁域)関連産業構造の不動産への転化、そして巡礼ブームの活性化に伴う禁域外穢土流出問題が極めて大きな社会問題となりました。1985年の衆議院有穢性兵器調査特別委員会による『未回収有穢性弾等が周辺環境に与える悪影響の調査ならびに有穢性祭具による汚染に関する報告書』は当時の日本社会党所属議員を中心として提出されたものであり、当時の社会党・共産党による平和主義追及姿勢のあおりを受けたものであります。これの結果として自衛隊を含む公的機関での黒不浄弾の使用が自粛されたことは記憶に新しく、また穢力発電所や穢化元素及び穢荷霊子炉の規制に関する法律施行令(昭和31年法律第89号)第22条および第23条の規定に基づく穢晶貯蔵施設からの穢土汚染を理由として有穢性弾頭規制法が制定されました。また同様に2003年の土地汚染防止法制定をさかいとして、平均土壌残留穢染濃度10mg Tz/kg以上ないし平均土壌溶出穢染濃度0.01mg Tz/L以上を検出した土地面積は年々減少傾向にあります。これらは長年に渡る除染作業や時間経過に伴う穢帯化元素の半減期等もありますが、主な要因として有穢性弾丸の不使用化が大きく影響しているものとされています。今後の環境汚染を防ぎ人間の居住可能な環境を維持し続けるには有穢性銃砲弾の不使用継続が必要不可欠でしょう」

〇佾輪境界対策課神祇官室付神祇技官「これに関しまして儀式的観点から一つ。境界対策課神祇官室に所属する神祇官の主要な任務は穢れに汚染された地域の除染作業です。ご存じの通り神祇官資格を用いる者は、儀式を用いた界異の祓滅の他、土地の大規模浄化や摩耗した結界および三次元境界の修復などを実行する事が国によって認可されています。このうち土地の大規模浄化に関しては官民を問わず神祇官法(昭和23年法律第49号)に基づく神祇官資格保持者による業務独占の範囲内であり、穢荷霊子炉主任技術者資格や穢化元素取扱主任者資格とも関連する範囲はあれど基本的には一定以上の加護出力を持つ神祇官のみが大規模浄化を執り行う事が出来ます」

〇鴻犬委員「神祇官だけが穢れの浄化を実行できるのはどうしてなんですか?」

〇佾輪境界対策課神祇官室付神祇技官「単純に必要となる加護出力の大きさと適切な儀式実行が必要不可欠であるためです。浄化は主に特定の霊反応性祭具を用いた穢荷霊子の分離、ないし大規模な加護……即ち恩寵子の発出に伴う霊的にミクロなレベルでの四次元的反応、特に霊的核子崩壊や霊的核反応による聖帯化質量数の総体的増加によって成立します」

〇上尾委員「霊理学における基礎ですね。医霊技術の発展により生体内の霊離反応ならびに霊的核反応が比較的安全に行えるようになってきたのも現代霊理学の発展に大きく寄与しています」

〇佾輪境界対策課神祇官室付神祇技官「要は穢れ自体を別の場所に弾き出すか穢れと加護を反応させて中性化するかのどちらかとなります。加護を用いた穢土浄化は必要なエネルギー絶対量が多くなる代わり、穢帯化元素自体の直接的な無害化が実行可能であるというメリットがあります。そのため今現在であっても神祇官資格保持者がこれに従事する事が主となります」

〇中臣環境参事官補佐「神祇官が重要視される要因の一つだね。さて穂張君、本題を頼むよ」

〇佾輪境界対策課神祇官室付神祇技官「失礼しました中臣神祇官。本題としましては、神祇官の業務量のうち既に大部分を占める穢土汚染浄化業務を更に増やすことは他の重要な業務である麾下祓魔隊の監督や封印作業および境界異常の根本的対策等に差し障るという事です。

 環境庁神祇部所属の神祇官の退職理由のうち主なものは界異との戦闘による後遺症および穢ばく症等ですが、次いで近年多重化を続ける神祇官関連業務の多さによるものです。これによってここまでの10年間のうち、少なくない数の神祇官が退職し民間企業ないし宗教団体への就職を果たすことが多くなっています。この状況は極めて由々しき事態であり、同業他団体への人材流出が神祇部の祓魔力減退に大きな影響を与えています」

〇清墨境界対策課浄化係長「有穢性祭具の使用による浄化能率の低下は浄化係の側でも確認していますねぇ。これは主に清祓班が作成した簡易結界内部における浄化作業についてですが……黒不浄を主として使用した結界においては穢れの濃度が濃くなりやすく摂食に時間がかかると発言する班員が居るわけです。加えて聞く話によれば、結界構築の難易度に関しても穢れの増加が大きな不安要素を担っている事があるとされます。このような不安要素の高い黒不浄の更なる運用は快いものとはならないのではないでしょうか?」

〇中臣環境参事官補佐「現場の目線からの意見陳述、ありがとうございます。

 それではこれまでの意見を踏まえたうえで、準備会全体の中間評決として当会合における意見評決を取らせていただこうと思います。……各参加者の皆さんは、挙手によって採決を行ってください」

〇中臣環境参事官補佐「…………ありがとうございます。ちょうど半分に分かれましたね。参考までに……ヤマブシヘビーインダストリーの呉原委員とカラビナジャパンのノルデンフリクト委員長代理、それぞれ賛否の理由をお願いできますか」

〇呉原委員「ではまず私から。黒不浄弾と祓串とをその発射装置も込みで経済性を考慮した場合、黒不浄弾を使用する場合の経済性ならびに対界異攻撃性能は祓串発射装置のみの運用のそれを大きく上回ります。また携行性に関しても祓串発射装置の場合は射出用ペグと敷設用ペグとの二種類を携行する必要がありますが、黒不浄弾の場合その射出装置の装備移転の容易さや改造の有無の面から優れている他弾薬携行性と咄嗟の装備の間違えを防止する効果があります。また我が社が海外において製造しているNAYUTA-155小銃の黒不浄弾発射可能カスタムは既にフィリピン・アメリカなどにおける残穢基準量を下回っており、黒不浄弾の国内運用に関してさしたる障害はありません。

 これらの点から、私は黒不浄弾の運用解禁について賛成票を投じさせていただきます」

〇ノルデンフリクト委員長代理「カラビナ社を代表しまして発言させていただきますと、現行生産タイプの射出用ペグはその用途に応じて形状と大きさを敢えて変更して運用上の問題を解決しております。また現在日本で主に使用されているカラビナORZ90等祓串発射装置に関してはバッテリーと射出用ペグとをパッケージ化したマガジン式装填方式を採用しており、射出用ペグのみによる単独携行はメーカーとして推奨していない運用方法です。また黒不浄弾に比して射出用ペグの対界異殺傷能力が低いと仰られますが、1マガジンあたりの穢装貫通力では最大で穢装等級Ⅳに対し傷害を加えることが可能であるとの実験結果が存在します。無論有意に射撃が効果を及ぼす穢装等級は従来通り穢装等級ⅡからⅢにかけての範囲内ですが、射撃武器をカラビナORZ90からカラビナLW2000への変更することによって一号級界異“怨霊武者”の一撃祓滅が見込めます。射出用ペグの含有恩寵子は近年増加傾向にあり、黒不浄弾を敢えて使用する必要はないでしょう。

 以て、国内における有穢性祭具運用規制の緩和を行う必要はないと考えます」

〇中臣環境参事官補佐「ありがとうございました。ではこれで……」

〇山神境界対策課対界異装甲機動班長「待ってくれ。そもそも黒不浄弾をここまで厭う理由は何だ? 霊反応性祭具に比べて黒不浄弾等有穢性祭具の方が量産が利く上、黒不浄弾においても高等級の穢装貫徹は見込める。工業化された現代においては対界異戦闘能力がより高くなりやすいのは黒不浄銃砲弾であるはずで――」

〇■■境界対策課第一祓魔隊第八班長「ちょっと凌太くん、ここじゃ抑えるっす」

〇河原石境界対策課特殊清葬係長「確かに黒不浄弾は重要なダメージソースになりうるが……今現在でさえ旧式黒不浄刀による慢性穢ばく症が取り上げられる時代だ。これ以上に穢れによる障骸が発生してしまうのは神祇部全体にとって悪手となってしまうぞ」

〇物部環境庁研究開発課係長待遇「ナギ様にとってはどっちでもいいことだがなぁ」

〇上野警察庁警備第三課祓魔指導室長「御言葉ですが境対課さん。あくまで第三の公安である貴方がたが警察はおろか自衛隊の祓魔科を越す武装を単独で保持しているという状況は我々からしても如何なものかと」

〇水渡資源エネルギー庁穢エネルギー課供給拡大係長「しかし警察はあくまで人命を守るのが主であり、穢晶採掘にかかる生命と財産の保護を行わないではないですか。天然資源の少ない日本国において、穢晶産業の復興なしには経済の好調はありえません」

〇菅原委員「その通りであると思います。つきましては我が社のサキモリシリーズを……」

〇浅草環境庁境界対策課祓穢係長「申し訳ありませんが、ここは商品プレゼンの場ではないんですよ」

〇水渡資源エネルギー庁穢エネルギー課供給拡大係長「それは先ほど自社製品のプレゼンを行っていたカラビナさんとヤマブシさんにも仰るべきでしょう」

〇佐々木林野庁禁域研究班長「それは貴女も同じではないか。噂は庁外にも伝わって」

〇中臣環境参事官補佐「はいはい。両者落ち着いてくれ給え」

〇中臣環境参事官補佐「評決は取ったし、今日の所はこれで終わりとするよ。次の日程は既定の通り、▮月▮日午後18時から。

 異論は……特にないようだね」

〇中臣環境参事官補佐「それでは皆様、長い時間お疲れさまでした。以上を以て宗教事業法30条1項に基づく有穢性祭具運用規則に関する有穢性弾丸残穢基準改正専門委員会準備会第5回会合を終わります」




 本議事録は関係者以外への公開を厳禁とする。



 環境庁境界対策課課長 ▮▮ ▮▮[印]

 環境庁環境参事官(境界防災担当) ▮▮ ▮▮[印]

 環境庁環境参事官(境界防災担当)付参事官補佐 中臣 千萱[印]
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