アンチテーゼ・ダービーガールズ   作:A・ジルー

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今の今まで迷走してました。本当にお待たせしました。

一旦これでルーザーズウェブ編は区切りです。


ひとりゆるりと歩んでいては

──それは、生徒間のレクリエーションを兼ねた競技大会のことだった。

 

時は障害物リレー。アンカーを任されたウェブへバトンが渡り、担当の種目『借り物競走』を遂行しようとしたタイミングだ。

 

「ハァ、ハァ、アァ……?」

 

封筒から、お題が記された紙を取り出した彼女が硬直した。

 

『おっと、現在トップのアンカー・ルーザーズウェブが止まった!かなり苦しいお題だったのでしょうか!?』

 

有望株として注目されていた彼女の大ブレーキに、実況の動揺がこもったアナウンスが響く。

 

(いや、妙だ)

 

いくら無茶を突きつけられたとて、ウェブがこうも取り乱すとは思えなかった。

疾患持ちとも見紛うその様子は、まるでアレルギーのような──。

 

『手にしたお題は──

 

 

 

 

()()()()()()()()()、です!

 

 

 

 

 

 

──それは、この学園ではありふれたお題。ただし、彼女に限っては不可能に等しい難題だ。

 

「……毎年のあれか。手を上げておくとす──おい!」

 

彼女の身に起きたことへ見当がついた自分は、場内に飛び込むようにして侵入すると、ウェブのもとへ駆け寄った。

 

『おっと客席より乱入──いや、学園のトレーナーです!どうしたのでしょう!?』

 

驚愕を示したアナウンスを浴びながら駆け寄ってみれば、ウェブの手から紙がこぼれ落ちる。

 

「ダービートレーナー……っ、おい!」

 

お題を視認して間もなく、ウェブの手の甲を見ると異常な腫れが浮かび上がっていた。

まさかジンマシンか、と勘繰る暇もなく医務班を呼び、保冷剤の用意を急かす。

 

『ああ、どうしたルーザーズウェブ!ドクターストップのようです!』

 

ざわつく周囲をよそに、搬送の用意を進めていくのだった。

 

 

 

 

 

「──けっ、向こうから自滅かよ」

 

「まあまあ……これで私たちの負けの目はなくなった訳ですから、ショウシンさん……」

 

遠巻きに聞こえた、ライバルのぼやきを、聞くことはなく。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

保健室まで運ばれたウェブが目を覚まし、最初に示した行動は怒りに任されたものだった。

ベッドのクッションへ拳を叩きつけた彼女は、やがてまだ感情を抑えられない様子で口にする。

 

「……なんと、苛立たしい」

 

それは自身に突きつけられた難題への呪詛か、それに踊らされた自分への憤りか。

 

同調はためらわれ、気まずい沈黙が流れる室内だったが、それは間もなく来客によって打ち切られた。

 

「失礼するよ」

 

短い挨拶とともに入室してきたのは、自分のよく知るベテランのトレーナーだった。ダービーウマ娘を何人も育成している腕利きだ。

 

「なに、知った名前だったものでね。責任を感じた、なんて言いたいわけじゃないが……まあ、やってきたということさ」

 

なにやら要領を得ないような物言いをする先輩へ、こちらもきょとんとしていると、彼はこう告白した。

 

「……君の母上を担当していたのが、私なんだ」

 

それは、ウェブが走る原動力となった人物に、かつて最も近い関係にあった、というものだった。

まさか、と呆気にとられながらウェブの方を見やれば、表情が憎悪に染まっていく様が現れていた。

 

「お母様を、約束を、お、お前がああああっっっ!!!」

 

目の前の人間が母の夢を奪う片棒を担いだ相手である、とみなしたウェブが吠える。

どもるようにしながら激昂する彼女の姿は、今までに見たことがないものだった。

 

「落ち着け、ウェブ──」

 

頼れる相手がひとり減るのはまずい、そう思い諌めようとしたものの、それは他でもない先輩によって制される。

 

「いいんだ、私は……あの娘に何もしてやれなかったからな」

 

自嘲するように口にされたそれは、まるでウェブの断罪を待っているようにも思える。

言葉を詰まらせた彼女に、新たな言葉が注がれた。

 

「あのとき、私は彼女の思うままに走らせてやれなかったんだ。家元の意向に逆らえなかった、と言えばそこまでだが……なんとかしてやれなかったものか、と今でも思わずにはいられないのさ」

 

「──なっ」

 

だからどうしたという話だろうがね、と迷うように話を着地させた彼を前に、呆気にとられたようにしてへたり込むウェブ。

 

いたたまれなくなったのだろうか、間もなく先輩のトレーナーは謝罪を繰り返すようにしながら退出していった。

 

「……」

 

自分と二人きりになっても、未だ黙り込むウェブ。それは今まで恨んできた相手すらも、ただ時勢に翻弄されただけの被害者でしかなかった、と知った故だろうか。

 

「……トレーナー、私は決めましたわ」

 

ウェブの心境に、どんな変化があったかは分からないが、彼女はこう宣言した。

 

「ティアラ路線覇者として、ダービーウマ娘に絶対に勝ちます。そして忌まわしい固定観念を完膚なきまでに破壊する。これからの世界のために、あの思想は不要ですわ」

 

改めてダービー打倒を口にした彼女の瞳には、前よりも強い執念がこもっていた。

 

 

──この決意が未来へ与える影響は、まだ分からない。




ウマ娘ストーリー編終わり。
キャリアやオリジナル(チケゾー)との邂逅についてはまた書く機会があれば。

次はアンケートの結果通りにやります。来週(28日23:59)を目処に終了しますのでよろしくお願いします。

以下、ちらっとだけ出したBNWアンチキャラのメモ

???(ビワハヤヒデ)

どんな困難も流動的に回避する頭脳派。小心者ゆえに、行動まで踏み出せないことも多いが、『負けない』レースは誰よりも得意な消去法のプロ。
全ては非才の実妹─────を知略を以て鼓舞するため、身に着けた能力である。

オースミショウシン(ナリタタイシン)

体の大きさを以てすべてを押し通してきたSっ気なウマ娘。
皮肉気かつやや粗暴な物言いは、相手を若干ナメている性根から来る悪癖である。

次のアンチキャラクターは誰がよいか

  • アイネスフウジン
  • アストンマーチャン
  • アドマイヤベガ
  • ヴィルシーナ
  • サトノダイヤモンド
  • タマモクロス
  • ライスシャワー
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