Fate/Grand Cross   作:イビルジョーカー

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今回はジャンプ屈指のサムライ、白髪頭のアイツです!



第一特異点『邪竜百年戦争オルレアン』/宇宙一バカな侍

 

 

 

 

「〜〜〜〜〜〜ッッッッッッ!!!!?!?」

 

 声にもならない悲鳴が廃墟と化した村に虚しく広がっていく。

 第一特異点オルレアン。

 何者かによって齎された人理焼却。その基点となる七つの特異点の一つにレイシフトでやって来た二名のカルデアのマスター。

 『藤丸立香』と『岸波夏亥』は、英霊の力を宿したデミサーヴァント『マシュ・キリエライト』と共に特異点の歪みとも言える存在、竜の魔女ジャンヌ・ダルクと邂逅を果たした。

 まずもって、敵なのは間違いない。

 自身を裏切った故国のみならず、目につく人という人を見境なく虐殺し、村々や町を従えたワイバーンの軍勢で破壊する姿はかつての聖女とは思えないものだった。

 その言動も、冷酷の一言に尽きる。

 口を開けば他者への悪意が込められた呪いの言葉を吐き出し、その存在を否定するように嘲笑う。

 その姿は、まさしく邪悪な魔女そのもの。

 なのだが……。

 

「あ、あ、ああああアンタ! な、な何してんのよ!!」

 

 ようやっと吐き出した言葉は、上擦って動揺しまくり。

 これが精一杯という感じだ。

 

「いや、なんつーか……俺が聞きたいっつーか

……え、なに? ここどこ?」

 

 まず目につくのは白髪の天然パーマだ。

 見ようによっては銀髪にも見えなくもない、ふんわりとした天パの男。 

 白の生地に青い波模様の着物を上に羽織り、

左半身は着崩した状態で、その下は黒のインナー。

 まるで洋服と和服を同時にバランスよく着た風貌だが、問題なのは格好ではない。

 なぜ、突然現れてたのか。

 なぜ、この時代には決して存在しない筈の洋式便座があり、その上に座り、用を足しているのか。

 無論、ズボンはきちんと下ろした状態だ。

 そして当の本人は困惑した様子。

 彼の雰囲気、言葉から考えるとおそらく何か異常な事態に遭って、今この瞬間にやって来たのかもしれない。

 しかし、それを察せられる都合の良い人間はこの場には誰一人としていない。

 悲しきかな。

 天パ男は今、自分が置かれている状況を説明してほしいのかもしれないが、生憎説明して欲しいのはカルデア一行に竜の魔女だ。

 おまけにこのカオスな状況のせいで混乱を極めた男はあろうことか、立ち上がってしまった。

 ギリギリ見えない角度だった『ブツ』が立ち上がったせいで、もろ丸見え。

 その股間に聳り立つブツを、ジャンヌを含め、この場にいる女性全員が視界に入れてしまったのだ。

 

「まぁ……立派ね」

 

「こんな場所でそんなモノを見せるなんて。ふ〜む、大胆なことをするなあの男」

 

 この時代に人理から召喚され、カルデアに協力している男女のサーヴァント『マリー・アントワネット』と『ヴォルフガング・アマデウス

・モーツァルト』は、それぞれ感想を零す。

 マリーは赤面しつつも取り乱した様子はない

。モーツァルトの場合はただ素直に感心していた。こんな公の場でブツを曝け出すなど、生前だってした事がない。

 恥ずかしい下品な手紙を従姉妹に送り合っていた男だが、天パ男のような真似をするほど非常識ではなかった。

 だが、名誉の為に訂正しよう。

 彼は、天パ男『坂田銀時』は見せたくて曝け出した訳ではない。

 ただ、パニックになって取り乱しただけだ。

 

「あのぉぉぉ!! すんません! 誰か説明してくんない?! ここどこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッッッ!!!!!」

 

 悲しい男の絶叫が虚しく響いた。

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 刀と槍が交差する。刀とは言え、それは木刀

だった。下手すれば修学旅行とかで大体三千円

くらいで売っているアレだ。

 柄の部位には『洞爺湖』と書かれているが、

ぶっちゃけ洞爺湖と関係は一切ない。

 

「この私に木刀とは。舐めてるのか貴様」

 

「はん、木刀舐めんな。極めれば大体のもんは切れんだよコノヤロー」

 

 白髪の天然パーマ男、坂田銀時は相手取っているのは竜の魔女こと黒いジャンヌ・ダルクが

聖杯で召喚したサーヴァントの一騎。

 クラスはバーサーカー。

 幽鬼を思わせる長い白髪と黒い貴賓のある格好は彼がかつて貴族であった証。

 名を『ヴラド三世』。

 日本では『ヴラド・ツェペシュ』と呼ばれる場合もあるが、ツェペシュは姓ではなく、あくまで呼び名。ニックネームに過ぎない。

 ルーマニアにあったワラキア公国を苛烈な手段で守り抜いた護国の英雄ながら、同時に誰もが知る怪奇伝記小説『吸血鬼ドラキュラ』のモデルとなった人物。

 彼は謂れのない悪名であるドラキュラの名を嫌悪しているが、今バーサーカーとなった彼は

その側面が強く表れ、言動も振る舞いも吸血鬼のソレだ。

 

「異国の剣士……侍、だったか? その血がどんなものか楽しみだな!」

 

「あっま甘だぜ、糖尿病予備軍のは!!」

 

 一撃、二撃、三撃、どんどん打ち合う回数が多くなっていく。しかし両者共に疲労など一切ない。

 繰り返していく剣戟の中で疲労で衰える所か、ますます上がっていく。

 

「しかし、分からんな」

 

「あん?」

 

 木刀と槍の剣戟が一旦止まる。

 ヴラド三世は構えも解かなければ、警戒心、注意すら一切緩ませない。

 しかし、攻撃を止め、銀時を睥睨する。

 

「貴様、あの場で召喚されたサーヴァントなのだろ? おまけに聖杯から何の知識も与えられておらず、成り行きでカルデアに力を貸しているらしいが……何故だ?」

 

 あの時、坂田銀時は便座ごと……それも用を足しながらの状態で召喚されるという、史上類を見ない珍妙が天元突破過ぎる召喚を果たしてしまった。

 しかも、どうやら成り行きで、特にこれといった願いもなくカルデアに協力しているらしく、それがヴラド三世には解せなかった。

 実力の程は打ち合って分かった。

 サーヴァントとしては神代出身ではなく、どちらかと言えば近代のソレに近い。

 サーヴァントは人類史の伝説や伝承、歴史に名を残した偉人先人の魂が仮初の身体をもって現世に顕現した存在。

 しかし、ヴラド三世の知識や聖杯からの知識をもっても坂田銀時という英霊は存在しない。

 日本の侍でありながら、まるで別の世界から来たとでも言うのか。

 そんな有り得ない疑念が浮かんで来るが、最も解せないのは仮にそうだとして、何故カルデアに協力する?

 この男の損得勘定はどうなっている?

 何故、容易く命を掛けられるのか。

 こうしてヴラド三世と相対しているのも、竜殺しのサーヴァントであるジークフリートを連れたカルデアを逃す為だ。

 

「はっ、そんな事かよ」

 

 今まで死んだ魚のような目だった男の瞳が、真っ直ぐな輝きを宿してヴラド三世を見据える。

 

「頭のテッペンから股間に真っ直ぐブッ刺さってるもん……魂ってヤツを見たんだよ。アイツらに」

 

 銀時は一切目を逸らさずに断言する。

 

「聞けばアイツら、人理なんとかってヤツ? まぁ、世界を救う為にまだちんちくりんのガキのくせにして頑張ってるって話じゃねぇか」

 

 皮肉でも何でもなく、そこにあるのは素直な賞賛だった。まだ学生くらいの子供だというのに、今まで平凡な日常で生きて来た筈なのに。   

 それが世界の救済の為に奔走している。

 それは普通の少年少女が背負うにしては、あまりに重過ぎる使命だ。投げ出したって誰も咎められない。

 だが、それでも彼等は人理を、未来を救う道を選んだ。

 それは、周りに流されただけの曖昧な気持ちじゃない。取り戻すべき未来を切に願って、足掻いて、その為に歩み続けるという強い意志から来る覚悟。

 それこそが銀時が言う『魂』という名の在り方なのだ。

 

「そんなもん聞かされて、覚悟見せられちまった以上、手ぇ貸さねぇ訳にはいかないだろーが」

 

(!ッ……こやつ……)

 

 その双眸から射抜く赫の視線はヴラド三世を捉えて離さない。

 何を引き換えにしても、ここを通す訳にはいかない。

 鋼の如き一つの信念が、確かに見えた。

 

「お主、名前は?」

 

 気が付けば、自然と名前を聞いていた。

 

「坂田銀時。宇宙一馬鹿な侍だよ」

 

 にんまりと。嫌味ったらしく。

 どう見ても煽りにしか見えない笑顔を曝け出しながら自分の名前を言う銀時。

 大抵なら憤怒が湧き起こって来るだろう。

 神経を舌で舐め回された挙げ句、唾を吐き捨てられたような屈辱を覚えるに違いない。

 だが、今のヴラド三世にそういった感情は皆無とは言えないものの、言うほどあるわけじゃない。

 それよりも、些細な苛立ちよりも。

 彼のような剛の者に出会えたことが、誰かを守ろうとする『守護』の信念があることを感じ取り、その者に出逢えたことが。

 ヴラド三世の内心を歓喜と闘争心が支配する。

 

「ふ、ふふ、フハハハハハ!!!! よくぞ言った! 言わしめた!! だが!!」

 

 槍を天へ掲げる。

 

「その発言、成し遂げてこそのモノと知れェ! 我、ドラキュラの名を冠するヴラド三世を討ち倒して見せるがいいサムライィィィィィィ!!!!

!!!」

 

 怒髪天もかくや、とばかりに咆哮する。

 そして天へ掲げていた槍を、今度は地面へ向けて突き刺す。

 瞬間、体内の魔力が活性化し、槍へと流れ込むように収束していく。

 ソレが何を意味するのか。

 サーヴァントとしてはイレギュラー過ぎる銀時には分かりかねるが、これだけはハッキリと分かる。

 

"アレを喰らうのはマズイ!!"

 

「させるかァァァァァァ!!!!」

 

「遅い! 血塗れ王鬼(カズィクル・ベイ)!!」

 

 発動されたのは、ヴラド三世の宝具。

 その本質は彼の護国の信念の証である無数の『杭』を地面から出現させ、対象へ突き刺し、血祭りへと挙げる対人宝具。

 幾百。幾千。幾万。幾億。

 もはや数えることさえ億劫な程に膨大な数の杭が大地から勢いよく顔を出し、まるで東洋の龍のようにうねり曲がり、無情にも銀時を飲み込んだ

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 は?

 

 

 

 

 え? え?

 

 

 

 

 困惑の極み。

 今のヴラド三世はそんな心情に陥っていた。

 血塗れ王鬼(カズィクル・ベイ)の無数の杭を受けて全身を貫かれ、蜂の巣状態になっただろう坂田銀時が、どう言う訳か山のようになっていた杭の群れを弾き飛ばしていた。

 いや、それはまだいい。

 何かしらの魔術なり奇策なり。

 手練手管か、何かしらの切り札で難を逃れた

と言う方がまだ筋が通っている。

 意味が分からないのは、銀時の姿。

 まるで何かに釣り上げられるように出て来たのだ。ケツに突き刺さった刀らしきモノが、その原因らしい。

 

………………………意味が分からない。

 

 何故ケツに突き刺さっている?

 

 っていうか、そんなのあった?

 

 お前の宝具って、木刀じゃないの? いや宝具は一人一つって訳じゃないが?

 

 確かに二つ三つ持ってる奴もいるよ?

 

 別に珍しくはない。ただ、仮に持ってたとしてさ、お前なんでそれがケツに刺さってる?

 

 趣味? 趣味なのか?

 

 そうすることでなんか、こう、儀式的な力を

発揮させるタイプなのか?

 

 もはやキャラ崩壊も同然。ヴラド三世の思考は突然銀時のケツから生えた刀のソレに持ってかれて、まともな思考が回せない。

 それがダメだった。

 刀が銀時から離れた。そしてまるで見えない

使い手に操られるかのようにその切先をヴラド三世の心臓ごと胸から背中を貫通せしめた。

 しかし衝撃も痛みも、やられる熱さも何も感じなかった。

 消滅していく霊基の中、最後に思い浮かべたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 えええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ?!?!!?

 

 余、こんなんで退場すんのォォォォォォ?!?!!

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

「いや〜ホンマ危なかったな〜銀さん。わしが咄嗟に出てこんかったら今頃……」

 

「俺を殺す気かクソ刀ァァァァ!! てゆーかなんでお前いんのぉぉぉ?

!! もう何なんだよ本当に!! 誰でもいいから、説明プリーズゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

 勢いつけて地面に突き刺さした刀は柄の底、頭と呼ばれる部位からニョキっと目玉一つ飛び出して、フランクな方言口調で話しかけて来る。

 軽くホラーなのだが、銀時はこの刀についてはよく知っている。

 エクスカリバー星人『クサナギ』。

 銀時の世界は汎人類史(型月世界)とは全く違う異世界に該当するのだが、その世界は江戸時代に開国を迫ったのが外国人ではなく、異星人だった世界。

 その数多くいる異星人こと天人(あまんと)の一種がエクスカリバー星人なのだ。

 簡単に言えば、刀剣類の形をした金属生命体で、生物の血を食糧とし、武器として使われることで生計を立てている種族。

 色々あって出会い、一時期共に戦ったこともあるが戦いの後、限界を迎えて砕け散り、息を引き取った筈。

 なぜ、そのクサナギがいるのか。

 なぜ、自分のケツからヌき出て来たのか。

 グルグル頭を回転させて、ほんの数分ばかし時間を置いてから、答えを捻り出した。

 

「お前、さてはア◯ビス神だな! まさか、D◯Oの命令で…?!」

 

「ジョ◯ョ違うわボケェェェェ!!!!」

 

 人様のネタに走る天パに勢いよくツッコミを炸裂させたクサナギは、目玉を血走らせる。

 

「お前ホンマええ加減せぇぇよ?! きちんと現実受け止めんかいワレェェェェェェッッ!!」

 

「嫌だァァァァァッッッ!!」

 

 大人気なく、恥も外聞もなく叫んだ。

 

 なんというか……実に見苦しい。

 

「まともに受け止められるかこんなん?! 俺に呪いの装備持てる素質も度量もねぇーんだよ!!」

 

「おうコラ。誰が呪いの装備やアホォッ! わしはお前の宝具になったんや!!」

 

「ほ、宝具?……たしか、なんか必殺技的な……」

 

「どや、嬉しいやろ?」

 

「チェンジでぇぇぇぇぇッッッ!!!! 死神◯行が持ってる斬◯で

お願いしまーーす!」

 

 悲しいかな。宝具はサーヴァントと一心同体も同然。

 銀時の切実な要望はそもそもが叶えらない為、どうしようもなく。

 自分の宝具であるクサナギを恨めしそうに見ては、腰に巻いたベルトに差し、カルデア一行を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 







ヴラドファンの皆さん、すんませんでしたァァァァァァ!!




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