ふと気付けばもう二月。バレンタインデーです。
恋人のいない作者には縁のない日ですが、でも不思議と祝いたい気分になってしまいます。特にFGOは推しカップルがいるのでメチャクチャ祝いたいです。はい。
そんな気持ちで書いたものです。諸事情からかなり短くてすみません。
後編はできるだけすぐに出したいと思います。
バレンタインデー。
日本に古く(?)から伝わる男女の色恋交わるチョコの祭典。
この日において世の女性らは意中の男の胃袋と心を鷲掴もうとチョコ作りに励み、その恋慕の思いを伝えるのだ。
それはここ、人理救済の日々に明け暮れるカルデアも例外ではない。
「2月14日。バレンタインデーということで、チョコを作ってみましたの。どうぞ食べてみて下さい」
「ありがとうラクス。でもこれ……」
食堂はサーヴァントでごった返しだ。
チョコを受け取り、感謝して味わう者。
チョコを作って渡して、食べてもらう喜びに心満たす者。
そんな両者が賑わう『カルデア・バレンタインデーチョコ祭』が開催されているのだから、当然だろう。
カップル又は夫婦関係にあるサーヴァント達と同じようにラクスとキラもこの催しに参加していた。
受け取って食べる側であるキラが食べるのはもちろんラクスの手作りだ
。
それ自体に何の問題もない。
ただ、そのチョコは惑星のように丸い形状から、なんと唐揚げに変形するという、意味不明の仕様になっている。
何もせずとも、コロコロと変わる。
絶え間なく。まるでそれが呼吸をするのと同じだと言わんばかりに『ギゴガゴ』やら『ジジジ』、『ガチャッキィンッ!!』といった明らかに金属的なSEを発生させているのだ。
おかしい。おかし過ぎる!!
確か、聖杯からの知識だと、僕達の世界とこの世界のチョコに大きな違いは何もない筈だ。
主な原材料であるカカオ、砂糖とかも一緒。
なのに何故、なんで、変形するの?
分からな過ぎて怖いよ?!
生前は三度の大戦を経験し、そのいずれも敵を打ち負かして生き残って来た猛者でも、この異常事態には恐怖を覚えてしまう。
「あ、あのさ、ラクス……なんで、変形するのかな……なんて」
オドオドしながら、しかし当たり障りがない様、冷静に愛する人に問いを投げる。
「? あー、それはですね、プライマス様のお力をお借りしたんです」
対して、動揺しているのに気付いた様子で疑問符を浮かべていたラクスは何てことない態度でトンデモ発言を投下してしまう。
「へ? プライマス……様が?」
プライマスはラクスの身体に宿る神霊。
その強大さは他の神霊系サーヴァントと比較しても遥かに高く、それ故に十全には力を発揮できないのだが……今は置いておこう。
知るべきなのは、何故プライマスが力添えをしたのか、だ。
「実は……最初どのようなチョコを渡すべきなのか、迷ってしまったのです。せっかくのバレンタインデーですし、単純なものよりかは凝った物を出したいと思っていた時にプライマス様が…」
『チョコとラクスが好きな物とを合わせて、尚且つ二つの味を楽しめるという嗜好はどうだろうか?』
「と、このように申されたので作ってみたのです」
「……それが、この、チョコから唐揚げに変形する料理……なの?」
「はい! どうぞ召し上がって下さい」
何してんだあの創造神!!
決して声には出さないが、それでもキラは心の中で叫んだ。
叫ばないとやってられなかった。
これには、自身の中にいるオプティマスも同感だった。
「(いやいやいや!! たぶん、あの神様のことだからまぁ善意で助言して手を貸したんだろうけども!! こう、もうちょっと普通のにはできなかったの?!)」
プライマスはトランスフォーマーの生みの親に等しく、生命を慈しみ、正義と平和を愛する善性を有した創造を司る神。
故に純粋な良い目的で何かを作ろうとするラクスの心意気に共感して、老婆心ならぬ神様心から力を貸したのだろうが、方向性が明後日の彼方をぶち抜いてしまっている。
「………いただきます」
抗議したい。したいが、愛する人の手料理を無碍にするのはもっと嫌なのだ。
だからこそキラは一言、この言葉に決意を乗せて食する道を選んだ。
はっきり言えば、恐ろしい。
構成する要素が肉、タンパク質やらカカオなど有機的要素しかない筈なのに機械的な音を立て、チョコと唐揚げの姿の間を行き来できるのは一体何故なのか。
創造神の成せる業、としか言えない。
実際耳を傾けてみれば『理屈とかよく分からないんですが、やってみたら出来ました!』と堂々語っている。
ラクスも恐らく……いや、確実に分かってはいないのだろう。
それでこんな代物を作れてしまうのは、ある種の才能なのか。
そんな言葉で片付けてしまっていいのか。
分からないからこそ、そう考えるしかない。
ヤバい。ヤバすぎて怖い!
でも、ラクス可愛い!
可愛さと恐怖が激しいロマンティクスを繰り広げる中、手に持った箸でチョコを掴む。
重かった。気分的にも物理的にも。
なんかこう、例えるなら、野球ボールの数段小さい鉄球を持ち上げているような。
そんな感覚が箸を通してキラの手に触覚として伝わる。
「(本当に食べれるよね?! これ、実際は金属でした的なアレじゃなくて、ちゃんと食べられるよね? 有機物だよね?!)」
改めて見ると本当に不思議だ。
視覚からはチョコと唐揚げにしか見えず、というか、摘まみ上げている状態でも絶えず変形を繰り返しているのも中々にシュールで不気味だが、持っている感覚としては完全に金属。
はっきり言って気が進まない。
進まないが、キラは勢いよく"ソレ"を口の中へと放り込む!!
果たして、その結果は?!