いや、後編書くのに何ヶ月かかってんだよ……もうバレンタインじゃなくて夏の前の梅雨シーズンだぞオイ。もうすぐ夏イベだぞ……なんて考えながら書いてました。
結論を言えば、まぁ、美味しかった。
口の中でも忙しなく変形するあの感触には抵抗があるものの、しかし、唐揚げとチョコの味は美味しかった。
美味しいのだが、よくよく考えてみればチョコと肉は組み合わせなど、有り得ない。
かの英国では『ミートパイ』と呼ばれるパイの一種がある。これは肉をデザートとして仕上げた代物で中々美味い。
ラクスの作ったこの料理もチョコと肉、より
正確に言うと揚げ物を組み合わせたことで生まれたデザートに似たようなものだと思えたらいいのだが、生憎、それは無理が有り過ぎた。
残念ながら二つの味自体が良くても、組み合わせが悪ければどう誤魔化してもダメなのだ。
それだけで、ダメになってしまう。
素材が良ければ、それだけで美味しいものが
出来る訳ではない。
組み合わせも非常に大切な要素なのだ。
それをきちんと伝えたい。伝えたいのだが…
…
「美味しかったよ、ラクス。ありがとう」
ソレを自らの口でありのままに話すのは憚かれる。
ラクスに傷ついてほしくなく、当たり障りの無い言葉で伝える以外になかった。
「キラ。良いのですよ? きちんと貴方の言葉で教えて下さい」
見抜かれていた。動揺するキラにラクスは続ける。
「私の前だからと気を遣わないで。さぁ、はっきり言って下さい」
「……ごめん。味自体は良かったけど、組み合わせが……その……ダメだったね」
「……それは仕方ありませんね。ありがとうキラ
。次の励みになります」
申し訳なさを込めた笑みを見てキラは罪悪感が込み上げて来るが、それを無理やり掻き消す。
伝える事は大事だし、思うあまり敢えて伝えないと言うのは時に大きな禍根を生む原因になったりするものだ。
前世の世界……CEで伝えられなかった故に起きてしまった諸々の出来事はサーヴァントになってもきちんと記憶の中にあり、経験としてよく身に染みている。
そんなキラにしてみれば、同じ轍を踏む訳にはいかない。
「組み合わせが悪かっただけで、美味しかったのは事実だから、次はもっと良いものができるよ。ラクスは料理上手なんだし」
勿論、ただ言うだけでなく、フォローも当然忘れない。キラの場合はほぼ無意識の素の発言
だが、下手に取り繕ったような言葉よりは全然良い。
「まぁ、キラったら……」
そんなキラの言葉にラクスは嬉しそうに頬を染め、笑みを浮かべる。
愛おしい伴侶からの本音の言葉だ。
ラクスにとってはどんな宝石やら花々にだって勝る価値あるモノになるのだから、嬉しくない筈がない。
「では、お口直しにこれをどうぞ。こんな事もあろうかとたくさん作って参りましたわ!」
ドンッ!
そんな重々しい効果音を奏でてテーブルに置かれたのは、唐揚げや天ぷらを中心とした揚げ物系料理の山。
その隣には相棒とでも言うかのようにキノコのスープが置かれ、揚げ物料理の山と同様ホクホクと暖かな湯気を立てている。
実は、試しのバレンタイン料理がダメだった事も想定してラクスは作っていたのだ。
抜け目ない。
しかし、どんな時であれ、こういった抜け目の無さは世紀末より世紀末してるCE世界において、無くてはならない強かさなのである。
だが量が量だ。一般人どころか普通のサーヴァントでも食べ切るのは難しいだろう。
よく食べるブリテンの騎士王やそのオルタならともかく、さしものキラでは……。
「ありがとうラクス! いただきます」
なんて事はなく、余裕だった。
断っておくが座っている人の顔が見えなくなる程の量だ。大量だ。
これを前に両手を合わせ、感謝を言える人物は何人いるだろうか。
愛の成せる業か。
あるいは、キラ・ヤマトという人物が持つ特異性とでも言えば良いのか
。
「ああ……やっぱりラクスの手料理は美味しい…」
「どんどん食べて下さい! おかわりはまだまだありますから!!」
見える。第三者からの視点では間違いなく二人の間にピンクのキラキラ空間が展開されている。
二人の幸せオーラというものはここまで煌びやかでピンク一色のホワホワとしたものなのか。
藤丸立香は一人、そんなことを心中で思いながらチョコ板を齧りる。
「おぉぉい! アルトリアぁぁ!! こいつ、むぎゃああああッ!!」
「こんの、バカッ……ぬぁぁぁぁぁッ!!!!」
「おかわりあるから、好きなだけ食べてよ!!」
「フフ……全く関係ないのに捕ま……!!」
「あるぇぇ?! 何故に拙者もッ?! でも女の子からのチョコだから嬉…うぐぉッ?!!」
鬼才(ある意味)、アルトリアが徹夜で錬成した形容し難き未知の存在Xと化した悍ましいチョコの異形。
いや、チョコと呼ぶのも憚れるソレに捕まり、あろうことか無理やり食わされるという地獄を文字通り味わう村正やオベロン。
その他諸々のサーヴァントたち。
彼等とチョコが織り成す地獄の光景を敢えて無視しながら、二人だけの微笑ましい空間に立香はやんわりと笑みを浮かべた。
いや、これどう収拾つけるんだよ。
ぐだぐだやん。