前々から書きたいなぁと思ってたコラボイベント。
近畿霊務局✖️FGOになります。
マスターはぐだ子ですが、ぐだ男(名前はオリジナル)と
もう一人マスターがいます。
ストーリー進行は基本ぐだ子です。
プロローグ
目を覚ましたら、全然知らない場所にいた。
カルデアでマスターになってからと言うもの、そうした異常に見舞われるのはもはや日常的と言っていい。
予め所持している通信端末を開いてもザーザーと砂嵐がなるだけで繋がる気配はない。
完全に孤立無援の状態が証明されてしまったわけだ。
「はぁぁ。いつものアレかぁ〜」
カルデアのマスターの一人、藤丸立香は赤胴色の混じった茶髪を揺らしながら頭をカクンと下ろす。
絶望というほど気は陥っていないが、沈みくらいはある。
恒例行事とばかりに起こる毎度の事でも、"起きてほしい"か"ほしくない
"かを選べるなら、迷わず"起きてほしくない方"を選ぶ。
生憎、生存に関わる予想外の事態を楽しむ精神性は彼女には無いのだ。
「最後の記憶は……普通にマイルームのベットで寝た……うん。これは間違いない」
とりあえず、一旦整理する立香。
彼女が認識している限りの最後の記憶はベッドに横になって就寝し始めた数分間だけ。
その後、何かが起きた、あるいは妙な異変と思わせる感覚や認識もない筈だ。
「だとすると……誰かが私を転移させたってことかな?」
転移自体は間違いない。カルデアではなく、
見知らぬ土地の雑木林なのだから、そこは間違いないがどうやって気付かれずに此処へ転移させたかだ。
「やっぱりあの時みたいに意識だけでレイシフトしちゃったのかな?」
実は前にも同じ様な事があった。
亜種並行世界と名付けられた特異点とは異なる『並行世界における下総国』。
異星の神の使徒であるアルターエゴ・リンボこと蘆屋道満の手で其処へレイシフトされた例がある。
あの時は寝ている時の意識を仮初の擬似的な肉体に入れる形でレイシフトされたが、その際の感覚は自覚症状として記憶している。
今回はレイシフト特有の浮遊感が全くない。
ということは少なくともレイシフトやそれに近い方法で転移した訳ではなさそうだ。
「レイシフトじゃないなら………ユニバース案件
?」
一応、レイシフト以外でも転移できないわけじゃないが、アレは自分が経験した訳ではなくもう一人のマスターが経験したこと……というか、色々意味不明な案件だったので立香としてはあまり考えたくない。
ともあれ、状況の把握はできた。
カルデアからのサポートが無く、サーヴァントも居ない最悪な状況だが
。
次にすべきことは周囲の散策と情報収集。
何も知らないより、少しでも知っていた方が何かと有利なのは違いない。
「あれ……光? もしかして人がいるかも!!」
一寸先は闇ばかり、と言うほど不幸ではなかったらしい。
西の方角に雑木林の木々の隙間から見える暖色の光。おそらく、人工のものだろう。
薄暗い夕方の時間帯のおかげで容易に見つけることができた。
「行くっきゃないか……よし!」
※
「……人がいない」
灯りの出所は人気のない村の街灯だった。
田舎らしく昭和の匂いを醸し出すレトロ風味なデザインで、一般的によく見るタイプではないが、田舎という場所にかなりマッチしていた。
ともあれ、村落に辿り着けたのは運がいい。
街灯があるということは、それは電気が一般家庭に普及している証拠になる。
時代的に大正以降か。
どの時代かは建物の古めかしさや街灯の形状で今のところ不明だが、調べて行けば分かるだろう。
しかし正直なところ、時代考証よりも立香には一つ気掛りなことがあった。
人の気配が無さ過ぎる、この村の状況についてだ。
人が少ないだけで、こうも無さ過ぎるというのはおかしいだろう。
まだほんのりと明るい藍色の空は、漆黒の闇夜じゃないので7時か8時辺りだろう。
加えて、蒸し暑さを内包した空気。
夏の時期の特徴である。
田舎でも夏の季節に家で閉じ籠ってるだけ、なんてことは無い。
子供は外に出て夏休みを遊びという形で堪能して、大人は、特に農家の人などは農業に勤しでいるだろう。
そうした光景がこの村には無いのだ。
しかも、外だけじゃなく、中にも人が居ない。
一軒一軒訪ねたものの、誰一人として出て来る気配がなかった。
居留守を使っている風にも見えない。
完全に無人の状態だった。
「10軒目の時点で誰も居ないって、なんかおかしいよねこの村……あ」
ふと、視界の先に立香も見覚えのあるモノが映る。色々な飲料を売るごく普通の自販機だ。
しかも、昭和を感じるデザインではなく、現代のもの。
立香が子供の時から見るモノだった。
しかも、ついでとばかりにその隣には公衆電話のボックス。
これも古い感じのものではなく、現代で使われているデザインだ。
「ここ、現代? でも人が居ないって……」
ウゥゥゥゥゥッッッッッッ!!!!
日本の街中でよく聞くような警報音。
それが立香の耳朶を叩く。
《時刻は、7時15分。これより『阿蘇村業櫃戦争』の開催を宣言します。各陣営勢力は準備が完了次第、直ちに戦闘行為を開始して下さい》
そんなアナウンスが2〜3回は繰り返し流れる。
阿蘇村業櫃戦争という謎の単語は大いに気になる。だが、その後の戦闘行為の四文字は簡単には流せない。
「と、とにかく、何処かに隠れ……」
「あなた、誰ですか?」
耳に誰かの息が掛かる。
至近距離まで近づいて来たにも関わらず、立香はその存在を察知することができなかった。
「誰ですか? だ、レ、ナん、デス、カァァ〜???」
グギィッ。ベギィィッ。ゴキッ。
湿った軟いものを潰して、曲げて、無理矢理に形を変える。
そんな生々しく嫌な音を鳴らなしながら、その存在が背後から首を伸ばして来た。
人間の男性。
一瞬そう思ったがその思考を振り払う。
首が異様に長いのだ。妖怪で有名なあのろくろ首のように。
「『ガンド』ッ!!」
咄嗟に立香は人差し指からガンドを放つ。
北欧に伝わる呪術の一種で、効果は体調不良を招くという、魔術としては低いレベルになる
。
しかし、目眩しや不意打ちと言う意味での効果はあった。
「キィィィィヤァァォォォォォッッッッッッ!!!!!」
ろくろ首の男は喪服姿の身体を捻じ曲げ、苦しそうにのたうち回る。
「今の内に……ッ!!」
好機は今しかない。
カルデア式の制服に備わった礼装機能で身体能力を一時的に高めて足に力を込める。
そして、地面を思いっきり蹴り出す。
強化された脚力から生じる瞬発性は常人以上。金メダルのアスリートよりも速く、瞬く間にろくろ男との距離を引き離す。
「アキレウスとかクーフーリンに比べたらッ!」
これが俊敏性の高いケルトやギリシャの大英雄のサーヴァント相手なら簡単に捕まって終わりだろう。
いや、多少鈍重なサーヴァントでも逃げ切れるか怪しい。それだけ人間と英霊には大きな差がある。
世間一般の人が鍛えて象や熊に勝てる訳がないように、この差はどんな方法でも容易く覆すことはできない。
もっとも、喚いてジタバタと足掻くだけの存在にサーヴァントと同等の脅威は皆無らしい。おかげで、半狂乱している隙にあっという間に
ろくろ男との間隔を引き離し、立香は振り返らず入り組んだ雑木林の方へと逃げ仰せた。