Fate/Grand Cross   作:イビルジョーカー

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 改めて見ると近畿霊務曲ヤバすぎ。
 幽霊殴る、蹴る、撃ってキルするって……でもだからこそ最高だと思いますよ僕は。


第一節 違法幽霊と政府公認除霊師

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、……なんとか逃げ切った?」

 

 あのろくろ男の姿は見えない。

 一先ず、逃げ切れたらしい。

 

「これからどうしよう……あの放送の事も気になるし、なによりサーヴァントの誰かを呼べるかどうか……」

 

 藤丸立香を含めカルデアのマスターたちは英霊を召喚できるシステム・フェイトと呼ばれる技術で一人一騎という制約を超えて、複数のサーヴァントを使役することができる。

 英霊の座からではなく、あくまでカルデアに登録されているサーヴァント限定になるが、それでもサーヴァントを複数召喚できるというのは最大の強みだろう。

 とは言え、この状況下で呼び出せるかどうか。

 何らかの妨害やその場所の特異性が原因で召喚できないというケースがある為、召喚が失敗に終わる可能性もある。

 だから、賭けに出る。

 できるかどうか。

 武器を持たない子鹿も同然の立香に試さないという選択肢なんて無い。

 すぐさま令呪が刻まれた左手に意識を集中。

 そして、告げる。

 カルデアの英霊を呼ぶ為の詠唱を。

 

「星見の台より来たれ、人理の守り手よ!!」

 

 本来の英霊召喚とは異なるカルデア式の詠唱

。これが英霊を呼ぶ道標となり、顕現する為の門とも言える魔法陣が形成される。

 

 バチィィッッ!!!!

 

「ッッ?! ぐぅッ……」

 

 淡く光り輝いていた魔法陣は物が弾け飛ぶような乾いた音と軽い衝撃を響かせた。

 それは召喚成功の狼煙ではない。

 失敗を告げる音だ。

 召喚陣はその現実を強調するように消失。

 当然、願っていたサーヴァントの影も形もありはしない。

 

「召喚できない……これって……」

 

 詰み。ふとそんな二文字が頭の中に浮かんで来るが、それを立香は何とか振り払う。

 落ち着け。

 今までだって似たような状況を経験して来た。狼狽えるな。

 冷静に考えろ。

 そう思考しようにも、状況がそれを許してはくれない。眼前に先ほどのろくろ男が現れたからだ。

 

(……急いでたからちゃんと見てなかったけど、なんか、……ヘヴィメタ系バンドマン?)

 

 改めてろくろ男の格好を見ると、そういう系のバンドマンだった。

 突然の事態に際して、よく見る余裕がなかったからか、その風貌は思わず虚を突くほどにインパクトがあった。

 より分かり易く例えを上げるなら、核戦争後の世紀末な世界でヒャッハー言いながら銃やら凶器を振り回すモヒカン盗賊だ。

 実際、頭はモヒカンなので格好込みでそうにしか見えない。

 

「おぉぉい! あんたァァよォォッッ!! なにしてくれたか知らねぇけど、酷いんじゃねぇぇのか!! あぁッ!?」

 

「……えぇぇ」

 

 あの時の異様な喋り方は何だったのか。

 内心そうボヤいてしまうくらいに突然口から出たのは普通の輩口調だった。

 そこいらのチンピラが喋ってそうな感じに立香は思わず脱力し掛けるが

、曲がりなりにも相手が人外である以上警戒は捨てられない。

 

「人様に向け、つーか、幽霊だけど?! なんだったら悪霊だけどよぉ!! 悪霊なら暴力してもいいってか? ふっざけんなオイ!!」

 

「……ごめんなさい?」

 

「疑問系つけて謝んなクソ!!」

 

 言葉の意味を反芻すると、やはりこの男は人間ではないらしい。口調がアレだったので錯覚しかけたが。

 

「ぜぇ、ぜぇ、……まぁいい。どの道お前もお終いだぁ」

 

 パチンと指を鳴らしたかと思えば、立香と男を囲い込むように茂みから白い服を着た髪の長い女性達が現れた。

 しかも、何故かバットやらメリケンを装備している。

 

「俺の手下どもだ。まぁ、業櫃戦争がおっ始めてるこの村にノコノコ入ったってこたぁ、相応の覚悟はしてるって解釈でいいよな? つーかしてなくても関係ねぇーけど」

 

 ろくろ男の顔に張り付いた嗜虐的な笑みが深まる。気の緩んでしまった空気が再び張り詰めて行くのを感じつつ、とりあえず立香は構える。

 ガンドは一度使えば数分は使えない。

 他の攻撃手段は皆無。

 最悪の場合を想定しつつも、それでも足掻く覚悟は捨てないのがカルデアのマスターの一人である立香だ。

 

 ガササッ。

 

「あ、なんか始まってる」

 

 緊迫し、張り詰めた筈の空気がまたも予想外の介入で一瞬緩んでしまった。

 茂みから現れたのは、なんと女子学生。

 ギターケースらしきものを背負い、ふんわりとした茶髪のショートヘア

。高校生か中学生の判断はできないが、半袖のセーラー服とスカートを纏った一般的な学生服で特に異様と言うか、おかしな部分は一切ない。

 だが、ここに現れるという状況が不可解さが残り、それが異質感を際立たせていた。

 

「まぁいいか。えぇー、私、近畿霊務局所属の政府公認除霊師の『白石瑞希』です。もろもろ説明すんの面倒なんで端的に言いますね」

 

 そんな自己紹介をしながらドガッと音を立てて、ギターケースを地面に落とす。

 楽器に対してぞんざいな扱いだ。

 音楽家系のサーヴァントが見たら声を荒立てそうなものだが、中に入っていたのは立香の想像とはあまりにかけ離れていた。

 

「違法幽霊どもはとっとあの世に行け、カスが」

 

 手にあるのは、二丁の拳銃。

 宣言と共にその銃口から吐き出される連射音はどう聞いても拳銃の性能を軽く超え、もうそれ機関銃の類だろとツッコミたくなるレベルでの乱れ撃ちだ。

 

「ぎゃッ」

 

「ぐべぇッ」

 

 下手な鉄砲、数撃てば当たるなどという諺を

体現するソレは、もはや横から降って来る弾丸の雨だ。

 白い服の女性……『違法幽霊』たちの身体を容赦なく蜂の巣にしていく。

 

「あ、ジャムった」

 

 弾丸の雨という無双は早期終了らしい。

 早すぎだ。

 

「もうなんかアレだが好機だ! やっちまえ!!」

 

「これだけなワケないだろ頭幽霊」

 

 今度はなんとロケットランチャー。

 某コマンドー部隊の元隊長が無双するアクション映画などでよく見るタイプのアレを軽々と持ち上げ、照準を構える。

 

「ちょ、まっ……!!」

 

「OK」

 

 四角い筒から射出された四つのミサイルが青白い炎を吹き上げ、減速することなく突き進んでいく。

 無論、標的は前方の敵全て。

 着弾と同時に衝撃と高熱が太めの木々が軽枝のように吹っ飛び、辺り一面を火の海へ変貌させる。

 

「……ちょっと威力が強すぎるけど丁度いいか」

 

 惨状の原因は、しれっとそう宣う。

 顔にやり過ぎた後悔もなければ、何を思うでもない。極めて淡々とした結果に対する感想だけで、他に何もなかった。

 まとも、とは到底言えない。

 これがまともだと言えるなら世の中の凶悪犯は軒並み真面目で済まされてしまう。

 

「……あのモヒカン野郎逃げた? 君、大丈夫?

 

「すいません、撃つのはいいんですけど、こうなんか……合図とかほしかったです」

 

 まさか女子学生が一人、銃器はおろか、携帯型対戦車兵器であるミサイルランチャーをぶっ放す等、ハチャメチャトンチキな特異点の数々を潜り抜けて来た立香でも即座に予想して対処できる筈もなく。

 衝撃で顔面から少しばかり水分を含んだ地面へダイブしてしまった。

 おかげで顔や身体は枯れ葉や泥土でデコレーション状態。立香としては当然最悪だ。

 

「まぁ、仕方なかったってことで。あの違法幽霊どもは普通と違ってタチが悪いからこうでもしないと強制成仏できないの」

 

「………あの、やっぱアレって、幽霊……でいいんですか?」

 

 死霊タイプのエネミーに何度も遭遇しているので幽霊を見たことがないわけではないが、立香のイメージとこれまで相手取って来た死霊たちと比べて見て、アレらが幽霊だと正しく認識出来ていなかった。

 確かにソレっぽさはあった。

 髪の長い白服の女性の姿なんかテンプレートのソレだし、ろくろ男は幽霊というよりクリーチャー感が強めだが、頭には天冠(幽霊の頭にある定番の三角頭巾)と申し訳程度には要素はあった。

 だが、癖が強いというか、幽霊とは思えないほど情緒豊かで人外感が薄い。

 早い話、幽霊のイメージと乖離していたのでなかなか実感が湧かなかったワケだ。

 

「…………え? 幽霊、見たことないの? マジで?」

 

 おいおい、そんなヤツ、今時いないだろ?

 みたいな顔で言っているが、そもそも幽霊が当たり前のように闊歩することなど立香の世界ではありえない。

 一般人は幽霊含め神さまや妖精といった御伽話の存在は居ないモノと認知されているし、そういった存在が万が一でも現れたならば、魔術協会といった神秘を管理する組織が事実を隠蔽・原因排除という対応をして来る為、存在が一般社会に認知されるなど有り得ない。

 

「説明めんどいからざっくり言うね。アイツら、元人間。モヒカンも含めて。そんで死んで幽霊になった。で、この村にその幽霊どもが不法占拠してやりたい放題。OK?」

 

「NO。もっと詳しい説明プリーズ」

 

 立香が簡潔に即答すると女子学生……いや、政府公認除霊師『白川瑞希(29)』は露骨に面倒だと顔を歪めて来た。解せぬ。

 

 

 

 

 








次回はもうちょっと早めに更新します。



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