察しの悪いらでん   作:たかしクランベリー   

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2話・らでんを救うドリームチーム?

 

察しの悪いらでんに課せられたのは、

模倣の許されない『自己推理』。

 

突如彼女の元へ送られた

謎の絵画ファイルは、 

謎が謎を呼び……疑問の災禍がより強く

その渦の勢いを増すばかり。

 

絵の批評をマトモにした事がない

彼女にとってそれは、

何よりの拷問であり天井の見えない難題。

 

しかし、引くにも引けない理由が

そこにはあった。

 

自身を信じて

相談を持ちかけた知人、

美術館オーナーの柳沢の思い。

そして、他力本願で解決へ辿り着こうと

考えた浅はかな自分への戒め。

 

何より、道を踏み外そうとした

彼女を踏み止まらせたのは――

儒烏風亭一門の

『教訓』と『責任』であった。

 

幼き日、ばあちゃんに語った夢と未来。

それを裏切らんとするためにも

その肩書きを軽々しく捨て去る

選択肢は無かった。

 

だが一つ、ワトソン・アメリアが

残した指示に

ゆとりが含まれていた事に……

察しが悪いながらも気がついていた。

 

(『模倣』の禁止はしとうたけんが、

助力についての禁止令は出てない……。)

 

モノは言いよう。

揚げ足取りと思われようとも、

手段を選んでいる暇は無いっちゃん。

 

こうして

チンタラ時間を潰してる間にも

展覧会の開催日は刻一刻と迫っている。

 

やけん。やるしかあるまいよ。

 

アメリア先輩も意見が多い方が

良いと言ってたんだ。

やるなら徹底的に意見を集めるべし。

 

そうだ。

何を恐れている儒烏風亭らでん。

そんな臆病を変えたいが為に、

『今の自分』へ進んだんでしょうが。

 

反応に怯んで

噺を降りる噺家が何処におるよ。

寄席ってのは、前座見習いが

笑いの座布団掻っ攫う時にこそ

1番輝くってモンよ……!!

 

そうと決まれば……

 

ポチッ、ポチッ、ポチチチッ。

プルルルルル。

 

「あーもしもし、青くん。

今大丈夫だったりする?」

 

「あ、でんちゃんじゃん。

急に電話してきてどうしたの?」

 

「いやはや、わたくし急な

野暮用が出来てしまいましてね。

できれば青くんの力も借りたい案件

なんですよコレが……。」

 

「ほう、遂に僕のイケメンさに

ホロライブ運営も気が付き始めたか。」

 

いや、気付いたどころか

日に日に蛙化現象に拍車掛かってますよ。

自ら泥浴びに行く暴れ馬に

どう手綱を引けと?

馭者もお手上げレベルだぞ。

 

……それに、

電話口の向こうでキリッとした

顔付きになってんだろうけど、残念。

そうゆう案件じゃない。

 

けど、いきなり出鼻挫いて

助力チャンスを逃すのも大変勿体無い。 

 

取り敢えず

そういう体で話を進めておくか。

 

「まー、そんな感じかもです。

て事で、ちょいと一服

付き合ってくれませんか?」

 

「任せろってでんちゃん!

僕のあまりのイケメンさに、

可愛い可愛いホロリスたちは

いつもメロメロだからね☆」

 

「…………うん。

なんかありがとう。」

「?」

 

良かった。

みんなが美術できるできる言ってくるから

美術エアプの自分が可笑しいのかと

思ったが、可笑しいのは

らでんだけじゃないらしい。

 

いつもの青くんが見れて、

心が癒された。

 

「じゃあ、

家にお邪魔していいんだよね?」

「ああ! どんと来い……!」

 

というやり取りを交わし、

何とか火威・青……

もとい青くんの自宅へと入れた。

 

元々放浪をよくするタイプなので、

彼女の家へ徒歩で行くのは

そう苦労しない。

 

15駅くらいの距離感は余裕で歩ける。

 

「やぁでんちゃん。

結構歩いて疲れたでしょ?

ほら、そこのソファーに座りなよ。」

「う、うん……。」

 

玄関から出迎えてくれた青くんは

らでんをリビングまで誘導すると、

ソファーに座るよう優しく言ってくれた。

 

徒歩は慣れっこなのに、

中々の心配性だ。……まぁ、

そこが青くんのいい所でもあるっちゃんが。

 

「お茶要るかい?

僕のママがお勧めのヤツを淹れるよ。」

 

いや……え?

そこは自分で淹れる所じゃ無いの?

なぜ自ら蛙化行為に手を染めるんだ。

 

めちゃくちゃキメ顔してるけど、

今のセリフにときめく要素微塵も無いぞ。

せめて、自らの手で

おもてなしをして欲しかったよ。

 

「あー、じゃあ烏龍茶で。」

「ママァ〜、烏龍茶2人分〜♪」

 

「分かったわ〜〜♪」

 

てか、本当に母親が淹れるんかい。

そしてママさんも何故にノリ気?

 

コトッ。

 

向かい合って座った卓上に、

2つの烏龍茶が置かれた。

 

「ありがとね〜ママ〜♪」

「気にしないでいいわ。

お友達といっぱいお話楽しみなさい。」

 

「はーい!」

 

なんという無垢な笑顔。

否定したい気持ちが一切湧かない。

 

しかし抱える問題が問題。

この明るいテンションとも、

すぐにおさらばを迎える事になる。

 

まずはノートPCをバッグから出そう。

 

ガサゴソ……。

 

「ん? どうしたのさ

でんちゃん。急にバックから

ノートPCなんて出して。」

 

「今回の件に欠かせない

キーアイテムなんでね。

しのごの言わず、青くんには見て

もらいたいっちゃん。」

 

「……ああ、そっか。」

 

納得したように頷いたので、

余計な事は話さずに早速

例の絵画ファイルを開いた。

 

「青くん青くん。

ちょいとこの絵を見て欲しいっちゃん。」

 

「ねぇでんちゃん。もしかして

僕の力を借りたい案件って

絵画関係のこと?」

「如何にも。」

 

「えーとそれ。僕の力本当に必要かな?

そういうのを観察するのは、

一漫画家の僕より美術館巡りに慣れてる

でんちゃんの方が遥かに優れてる

ような気が……?」

 

「美術館巡りに慣れてる? らでんが?

青くん、エイプリルフールは

もうとっくに終わっとるばい!

慣れるのは

酒屋パチ屋寄席の3連ちゃんで充分!

これね! コレよコレ!

ガハハ……!!」

 

「…………。」

「ガハハァ! 冗談冗談!

もぉー青くん。らしくないけんね〜♪」

 

「だよね。僕の杞憂だよね。

まさかでんちゃんが美術館アンチに

目覚めたんじゃないかと思ったよ……。」

 

「んな訳ないじゃ〜ん。

ほら、一応漫画家の視点からしか

得られない見解ってもあるじゃん?」

 

みんなはさっきから

どこの同姓同名ちゃんと

勘違いしてるんだ?

その子が美術館巡り好んでやってるから、

今相当紛らわしい事になってるぞ。

 

「流石でんちゃん。

凄まじいハングリー精神だ。

多方面からの意見を蓄え、

更に絵の関心を深めようだなんて……

僕考えても見なかったよ。

いいよ。僕が力になれるのなら、

喜んで手を貸すよ。」

 

どんどんわたくしと

同姓同名ちゃん(?)の

齟齬が重なって大変な事に

なってる気がするが、

もう話を長引かす訳にも行かない。

 

絵に対する関心を深めようなどという

高尚な考えを持った瞬間は

生涯に一瞬もないが

この体で進ませて貰おう。

 

※彼女は美術関連ステータスが

『0』の世界線の儒烏風亭らでんです。

 

「頼みます……!」

「どれどれ。――ッ!?」

 

絵を見るなり目をハッとさせ、

青くんは一筋の冷や汗を頬に伝わせた。

 

「どったの青くん?」

「何なんだよ……この絵画は……。」

 

美術館オーナーや探偵だけじゃなく、

漫画家が一目見ても

そのヤバさに震え上がるのか。

 

ダメだ。

何度見ても何も知らないらでんには

有象無象の絵画にしか見えない。

 

「怖いのは分かるけど、

恐れて思考を放棄するのは危険だしさ。

青くんなりにトレースしてみてよ。

そしたらなんか

見えてくるんじゃないの?」

 

「ごめんねでんちゃん。

それは無理な相談だよ。

何故ならこの絵は……『正確』過ぎる。」

「正確なら、寧ろトレースしやすいん

じゃないの? 漫画家としての

基礎スキルみたいなモンでしょ。」

 

「誤解を招く言い方をしたみたいだね。

もっとざっくり言うなれば――

これは『製図』だ。

一つ一つの点や線が

計算され尽くして描かれている。

漫画家の描くラフとは全くの別物。

それこそ〝製図台を要する〟ような

尋常じゃないクオリティさ……。」

 

ほえー。令和のヨーロッパ画家さん達は

そげんレベルまで優秀なんか。

どうやら、

激しいインフレはソシャゲだけの

特権じゃないらしい。

 

美術界隈にもその荒波は 

確かに来ているっちゅー事か。

現代アート恐るべし。

こりゃあ、オーナーもとことん

展覧会へ取り入れたくなる訳だ。

 

って、納得して終われば

それでこの件は済むだろう。

……でも、助力の結果を 

ゼロで終わらすなんて事は

意地でもさせない。

 

まだ攻め手が無いと決まった訳ではない。

逆に考えよう。

正確って事は……

 

(あ、そうか。この手がある。)

 

「ねぇ青くん? 正確過ぎるって事はさ。

この絵を『間取り』として

捉えて描くことも出来たりする?」

「……あぁ、出来るっちゃ出来るけど。

そんな事してどうするつもりだい?」

 

「何かの手掛かりになるかなー……と。」

 

「分かったよ。どういう判断材料に

なるかは分からないけど、

やれるだけやってみる。」

「頼みます!」

 

青くんは一旦リビングから立ち去り

2階へと続く階段で上に上がって行った。

おそらく、

画材や白紙を取りに行ったのだろう。

 

お、戻ってきた。

 

「でんちゃん。ノートPCを

僕に見やすいように

ちよっとズラしてくれないか。」

「えっとぉ……こんな感じ?」

「良いよ良いよ、そんな感じ。」

 

狙いを定めたスナイパーの如く

双眸を鋭くさせ、彼女はペンを握った。

そこから先は早かった。

 

スッ、サッ、サッ、スーッ。

と紙に線が躊躇なく素早く引かれていく。

真剣に紙と向き合ってる時の青くんは

まるで別人なのではないかと

勘違いする程凛々しかった。

 

この瞬間だけは多分、

イケメンという言葉がピッタリだ。

 

そんな風に真剣に作業してる

青くんに魅せられていると、

時間はあっという間に過ぎ……

間取りが完成していた。

 

「まぁ、間取りとして描くなら

コレでほぼほぼ間違いはないかな。

でんちゃん、見ていいよ。」

 

手渡された間取り図を確認してみる。

 

「ん? この間取りって……」

「どうしたんだい、でんちゃん。

何か思い当たる節でも?」

 

「いやさ、この絵画の部屋って

勉強机もあるし、子供が居るしで。

色彩調整前は窓らしきモノがあるから

ついつい一般的な子供部屋と

考えとうたけんが……

どうみても間取り的に『和室』に

しか見えないっちゃん。」

 

「……成る程、そこまで踏み入ると

僕にも分からないね。」

「気にしなくていいよ青くん。

ここまでやってくれただけで、

らでんは充分助かっとるばい。」

 

「そっか。なら良かった。

じゃあ僕は一旦、邪魔な画材を

片付けに行くね。」

「行ってらー♪」

 

(ほんと、気が回る同期に

らでんは恵まれてるなぁ……)

 

て、しみじみと思ってる場合でもないか。

 

まず第一に考えるべきは

コレがどのような形式の和室か。

そっから

また新たなヒントを得られるかもしれない。

 

ここまで自由に

部屋の内装を弄れるとなると。

和室というカテゴリの中では、

質素ながらも

自由度の高い設計なのが窺える。

 

……待てよ。

あの丸みを帯びた区切りのような支柱は

もしや『面皮柱』なんじゃあないのか。

 

つまりは――〝数奇屋造りの和室〟か。

 

仮にそうだとして、

何故子供部屋にリフォームして

描く必要があるんだ?

 

床の間だったであろう

場所に縦型の電気ストーブを

態々設置する意味もまるで分からない。

 

ダメだ。謎はまだ深まるばかり。

 

(あ、帰ってきた。)

 

「進捗はあったかい? でんちゃん。」

 

「んー、それがぁ……

余計難易度が上がったって

言うかなんというか。

今改めて見て、

青くんは新たな発見とかある?」

 

「でんちゃんが理解不能な絵画を

僕が批評できるとでも!?」

「えーっと、じゃあ……」

「どうやら僕が力になれるのは

ここまでみたいだ。――ごめん。」

 

「良いって良いって!

快く付き合ってくれただけで

らでんは全然助かってるから!!」

 

(ええーっ! マジぃ!?

らでんコレからどうすりゃいいのぉ!)

 

万策尽きたか……!?

 

「――あ。」

 

絶望に沈みかけたその瞬間、

青くんが思い出したように声を漏らした。

 

「どしたん?」

 

「そういや僕さ。こより先輩と

それなりに話す機会があって……

色々お話してたんだよね。」

「それが?」

 

「んで、興味深いチームをホロメンで

勝手に組んでたんだよ。

今困ってるでんちゃんの力に

なれるかもしれないなーって。」

 

「え、何そのチーム。名前は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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