察しの悪いらでん   作:たかしクランベリー   

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最終回・絵画の真相とおビンタの刑

 

「え、何そのチーム。名前は?」

 

「――『ホロ謎解き部』。

こより先輩が主催し、

ホロメンのみで構成された

謎解き好きの探究者グループだよ。」

 

それを最初っから教えて欲しかった。

教えてくれたら、

もっと段取りよく謎が解けそうなのに。

 

今喉から手が出るくらい欲しい

夢のようなメンバーじゃないか。

 

「それって、どういう先輩たちが

おるっちゃん?」

「まぁまぁ、そんな急がないでくれ。

すぐ説明してあげるよ。

そう、ホロ謎解き部の構成メンバーは――」

 

青くんから、説明が入った。

軽く纏めるとこんな感じだ。

 

[頭脳担当]博衣こより

[落下パズル解明担当]星街すいせい

[占い解明担当]大神ミオ

 

[金鯉解明担当]白上フブキ

[パワー解明担当]白銀ノエル

[SUSHI解明担当]常闇トワ

[GUESS解明担当]AZKi

 

「待って待ってェエ!?

ツッコミどころ満載なんだけどぉ!」

「そうなのか。」

 

「半分以上謎解き関係ない

担当しかいないよ!?

落下パズルってそれもうテ●リスじゃん!

あと金鯉とSUSHIに至っては

そっちの方が

用途不明のミステリーでしょ!!」

 

「じゃあ先輩たちの協力は

必要ないってこと?」

「必要です……!」

 

「だったら、そうだなぁ……

でんちゃんと面識ある先輩も

ちょくちょく居るし。

――あ、狂人ワードウルフ配信で

一緒に参加したすいせい先輩とか

良いんじゃないか?

多分、謎解き部の中でも

比較的〝釣り易い〟部類だしさ。」

 

「釣り易い……?

あのすいせい先輩が?」

 

「うん。まぁ、でんちゃんの

声真似クオリティに依存するけど……

上手くいけばちょいちょいのちょいだよ。」

「何それ?」

 

「まぁまぁ、取り敢えずやってごらん。」

 

 

――星街すいせい。

ホロライブ0期生にして、

ホロメン屈指の歌唱力。

そして、某落下パズルゲームの対人戦にて

世界5本指のランカーに匹敵する

激闘を繰り広げる。

 

彼女の圧には

凡ゆる猛獣をも平れ伏し、

その敵意の牙を捥がれる。

更に戦闘能力まで極めて高く

魔力【ソワレ・ビビデバ】により、

元から秀でていた戦闘力は

時が刻むに連れ

玉斧が紡ぐ旋律と共に上昇。

 

彼女の振るうハルバードは

巨龍の体躯であろうと、軽々しく

両断すると云われている――。

 

一見隙のない完璧超人にも

見えてしまうが……

彼女には明確な〝弱点〟が存在した。

 

その弱点とは、

ホロライブ2期生〝湊あくあ〟。

彼女の事になると平常時より

凡ゆるパフォーマンスが9割ほど低下し、

限界おじ状態となってしまう。

 

火威・青から伝えられた裏技は、

これを利用した悪質な策略である。

 

〝本来の儒烏風亭らでん〟も

一人前の噺家を目指すだけあって

演じる声質の

バリエーションは多々あるが……

〝美術に対する興味を

先天的且つ完全に捨て去る〟という

特大の『縛り』を

設けた儒烏風亭らでんの方は、

偶然にもそのステータスが結果として

飛躍的に高まっていた。

 

本来持ち得た美術に対する

ポテンシャルリソースを

全て削ぎ落とし、

他の才能値へと割り当てた事で

成し得た御技である――。

 

「――凄いよでんちゃん。

いつからそんな声真似上達してたんだ……。」

 

「まぁ、こう見えてらでん、

噺家の雛みたいなモンですから、

それなりに声の演技を鍛えてたんですな。」

 

「いやいや!

だからって本人そっくりなレベルの

クオリティまでなるか普通!?」

「良いじゃないですかぁ。

使える手はとことん使わんと……

で、どんな感じで釣るの青くん?」

 

「ああ。それなんだが――」

「ふむふむ。成る程。

そんじゃあ、やってみますかね……!」

 

作戦内容を早速実行に移す。

 

電話を繋いでみた。

 

プルルルルル……ガチっ。

 

「あーもしもし、すいせい先輩。」

「お、らでんちゃんじゃん。

珍しいね。私に何か用?」

 

「わたくし事もあるんですが、

とある先輩とお泊まり会をする事になって

それで……」

「それで?」

 

「その先輩がすいせい先輩と

お話したいそうです。

一旦ちょっと代わっても良いですか?」

「いいわよ。」

 

よし。

後は作戦通りに引っ掛けるだけばい。

 

「も……もしも〜しすいちゃん。

あっ、あてぃしだよ?」

「――あくたん!?」

 

うおっ、凄い食いつき。

こりゃあ

本当に上手くいきそうだな。

 

「あてぃしさ、青くんとらでんちゃんの

2人でお泊まり会をしようと

してるんだけど……

やっぱり不安だから、

すいちゃんと一緒に寝たいなぁ、なんて。

ごめん、あてぃし我儘だよね…………。」

 

「行く行く行く!

我儘なんかじゃないよあくたん!

心配だったら堂々と

私を頼っていいからね!!」

 

「うん。ありがとうすいちゃん……!」

 

ガチャっ。

 

電話口を切ったのち、

青くんが自慢気な顔つきで

問いかけてきた。

 

「ほらね? チョロかったでしょ?」

「チョロ過ぎてこっちが心配になるわ!

大丈夫なの……? 下手したら

ハルバードで報復とかされない!?」

 

「そこはほら、まぁ……

でんちゃんの

口八丁で何とか出来るでしょ。」

「相手が相手だから通じるか分からん!」

 

ピーンポーン!!

 

「「――速っ!?」」

 

突如なる青くん家のインターホン。

思わず目が飛び出しそうになった。

 

噂をすれば何とやらと言うが、

これは余りにも速すぎる。

ほぼ瞬間移動並の速度だ。

 

偶々近くを通りがかったのかと

疑うレベルにヤバい。

もう作戦会議どころの話ではない。

 

咄嗟のアドリブで何とかしなくては

斧で薪割りされる

薪のような末路を迎えるだろう。

 

「でんちゃん、後は頼んだ★」

 

ダダダダッ!!

 

「あっ、ちょっ、あああああっ!!」

 

何という全力疾走。

遂に信頼してた同期にすら見捨てられた。

これが巷で話題の散々亭ふびんで

御座いますか……!

 

(あはは……もうどうにでも

なれというやつだ。やるぞ、らでん。)

 

意を決し、心臓をバクバクとさせながら

玄関のドアを開いた。

 

「どうもです。すいせい先輩。」

「やほー♪ 遊びに来たよ〜!

……あれ? あくたんは

お出迎えしに来ないのかな。」

 

「あー、あくあ先輩なら

絵の勉強がしたいって言って

青くんとツーマンセルで

イラスト講座やってますね。」

 

「なーんだ。そういう事かぁ。

あくたん人一倍シャイだから、

仲良くやれてるようで良かったわ。」

「あはは……そうですね。」

 

よーし。なんとか第一関門突破。

しかし未だ水面下で釣竿の引き合いが

行われている事実は変わってない。

 

油断は禁物。

いつでもこちらが海中へ引きずられる

獲物となる可能性もあり得る。

 

「じゃあ折角だし、あくたんが

戻って来るまでらでんちゃんと

お話でもしよっかな。」

 

良いぞ良いぞ。

釣り糸相撲の優位が

こっち側に働いてきた。

 

この流れ、確実に掴めるばい。

 

「すいせい先輩、それなんですが……」

「なに?」

 

「絵画の謎を一緒に解明して

欲しいっちゃん。

偶然耳にしとうたけんが、

ホロ謎解き部の一員……なんですよね?」

 

「ええ。合ってるわよ。

それにしても、謎解きねぇ……。

最近やってない気もするし、

やってみるのもありかも。

丁度刺激が欲しかった所だわ。」

 

「つまり、オッケーという事で

よろしいでしょうか?」

「うんうん。是非ご一緒させて頂戴♪」

 

(釣れたぁあ!! 

怒涛の一本釣り、大成功ばい!!)

 

心の中で歓喜の舞をしながら、

すいせい先輩をリビングへ誘う。

途中先輩がばったりと

青くんママと遭遇したが、

軽く会釈をしソファーに腰をかけてくれた。

 

青くんママの方も、

あらあらといった風に1人和んで

おもてなしの準備に動き出した。

 

「新しいお友達ね。

あなたは何か飲みたいものあるかしら?」

 

「お気遣いありがとうございます。

では、お言葉に甘えますね。

この家にインスタントコーヒーとかは

置いてたりしますか。」

 

「置いてるわ。

私の旦那が好んで飲むのよ。」

「お願いします。」

「任せなさい!」

 

気前良く青ママが

インスタントコーヒーを

仕上げテーブルに置いてくれた。

 

「やっぱり謎解きには

これが欠かせないわね。

ほら、例の絵画見せてごらん。」

 

すいせい先輩の戦闘態勢も

整ったようなので、

遂に本題へと動いた。

 

ノートPCを再び再起動し、

『件の絵画』を公開。

 

アメリア先輩の推理と留意点。

青くんが手掛けた間取り図から

らでんの至った〝部屋のカテゴリ〟。

 

それら諸々の経緯を説明して、

共に絵と向き合う事約20分。

 

すいせい先輩から思わぬ推理が

組み立てられていた。

 

「ねぇ、らでんちゃん。

この絵を見てて思ったんだけどさ、

独特な彩色の線分化ばかりに

目が行くけど……これってあからさまな

『罠』じゃないかな。」

 

「罠? どういう事っちゃん。」

「私的にはね、彩色がこの世界で

大きな意味を持つとは思えないの。

真に見るべきは、絵のモデルとなった

『主人公』なんじゃない。」

 

「絵の……主人公。」

 

「ええ。彼が描かれた意味が分かれば、

和室を子供部屋として描いた理由も、

彩色の理由も、全てが芋づる式に

繋がるように見えるの。」

 

「そんな事言われたって、

あまりにも

ノーヒントが過ぎますよ……。」

 

「例えばの話よ。

この絵のモデルとなった少年は

実在し存命してる人物なのか、

それとも故人であるのか。

その可能性に触れるだけでも、

見方が大きく変わってくるでしょ。」

 

(存命……故人……。)

 

ふと頭の中に木霊する

ワードを引き金とし、

らでんは幼き日の事が過ぎった。

 

それは、おばあちゃんと

遠方へ出かけていたある日の思い出。

 

彼女は新郎新婦が並ぶ絵が

描かられた絵馬に、

何も知らず興味を示していた。

 

【ねぇねぇ、ばぁちゃん!

あの絵馬は何かなぁ!?

らでん、とっても気になる……!】

 

年相応に意気揚々と聞いてくる

孫に対し、おばあちゃんは

数秒伏し目がちにながらも

渋々と答えた。

 

【――あぁ、アレかい。

アレはなぁらでんよ。

当事者たちの理想を描いたものじゃ。

ああやって絵師に描かれる事で、

救われる者らもおるんじゃ……

覚えとけい。】

 

【へぇー、じゃあおまじないや

お願いみたいなモノっちゃんね!

らでんもいつか……】

【黙らっしゃい!

滅多な事は言うモンじゃないよッ!】

 

急に鬼の形相へと変貌した

おばあちゃんにびっくりし

怯むらでん。

 

我へと帰ったばあちゃんの方も、

申し訳なさそうな顔を浮かべた。

 

【おばあ……ちゃん?】

【ソレについての詮索は

齢が18を越すまで許さん。……じゃが。】

 

【?】

【名前だけは教えてやる。

いつか思い出した時、

あんたの世界は広がるけん。

だから、約束できるかい?】

 

【分かった。約束するばい。】

 

【うむ。良い子じゃ。

らでんよ、あの絵馬の名前は――】

 

ふと、思い出すように口ずさんだ。

 

「――『むかさり絵馬』」

「ふふっ。その線、強ち間違い

じゃないかもしれないね。」

 

「え?」

「私もそれに類似するモノと

仮定して推理を立ててみたのだけど……

話していい?」

 

「はい。是非お願いします……!」

 

 

 

火威・青、星街すいせいと共に

謎解きを深めた翌日。

 

パチ屋帰りの夕刻、

儒烏風亭らでんは自室で寛いだのち。

2階からリビングへ降り、遂に

ワトソン・アメリアから頂いた

挑戦状へ応えた。

 

〝三人寄れば文殊の知恵〟

 

紆余曲折を経て

紡いできた彼女らの考察は今、

真相へと迫っていた――。

 

プルルル……

 

(翻訳の魔法薬もキメた。

あとは全てを話すだけばい……!)

 

カチャッ。

 

「もしもし、アメリア先輩。

今お時間大丈夫でしょうか?」

 

「フッ、待っていたわよ。

らでんちゃん。

さぁ、力を取り戻したあなたの

推理をわたしに聞かせてみなさい。」

 

なんか上機嫌だなぁ。

そんなにシラフのらでんとやらは

期待されてたのか。

 

しかしまぁ、期待されるっていうのは

気分が良いものだ。

 

ちょうど本日のパチスロの方も

2ラウンド

プラス収支&小景品で上がれたし、

このままハッピーパッピーハッピーで

締めを飾るのも悪くない。

 

「はい。まさしくその件なんですけど、

アメリア先輩が立てた留意点よりも

先に触れたい部分があって……

そこから先に話して良いでしょうか。」

 

「いいわよ。」

 

そうだ。

この前提の話がなくちゃ、

3人で築いた推理の説明が成り立たない。

 

「まずこの部屋なんですが、

子供部屋じゃなくて『和室』

なんじゃないでしょうか。」

「確かに、言われてみればそうだわ。」

 

アメリア先輩が気が付きにくのにも

無理はない。

日本では極々見慣れた建築技法、

設計であるが……

文化や気候、立地、

歴史的要因によって

海外では殆ど取り入れられない設計。

 

勉強机や窓のようなモノがあり、

中央に少年が居るとなれば

子供部屋と考えるのが自然だ。

 

でもその仮説を立ててしまうと、

どうしても考察が行き詰まる。

だからこそこの部屋を一度、

クリアな視点で見直す必要があった。

 

「この部屋は襖や障子に

囲われたような設計の

和室であったから、

西洋的な窓を取り入れる改装が

難しかった。そうは考えられませんか。」

 

「とすると。窓に見える何かは

この部屋で暮らす彼に、

閉塞感を与えない為用意した

苦し紛れの擬似アイテムって訳ね。」

「えぇ、おそらく。」

 

「じゃあ、このモデルとなった

少年は和室の洋式や設計を好まないから

自分好みの子供部屋にリフォームした

ってあなたは言うの?」

 

「いえいえ。それも違うんですよ。

寧ろ彼は……いいえ。

彼らの一家は和室が好きだったん

じゃないでしょうか。」

 

「どう言う事?」

 

そう。その予測こそが、

この絵を解く大事なキーだ。

 

「そこで、アメリア先輩が注目した

留意点の話に繋がるんです。

色彩が区切られた1:1の奇妙な描き方……」

 

「えぇ。1:1の謎は、当作品において

大きな意味を持つわよね。」

「残念ながら、意味はあるものの。

実際大きいかと言われると……

そうでもないかもしれません。」

 

「――!?」

 

驚愕の絶句が、先輩から漏れた。

きっと電話口の先で

目をまんまるにしている事だろう。

 

「1:1よりもまず注目すべきは

絵のモデルとなった少年であると、

わたくしは考えております。」

「少年……それがどうかしたの?」

 

「胃が痛くなるような話では御座いますが、

ちょいと付き合ってくれませんか。」

「構わないわ。」

 

「モデルとなった彼は、

故人なんじゃないかと。」

「!?」

 

「要するにコレは、故人の救いや

弔いの意などを込めた

『むかさり絵馬』のようなモノだと

思っております。」

 

「……なるほどね。」

 

「はい。そしてその

むかさり絵馬なのですが、

ルールがきちんと定められていて……

タブーとされる行為も、

中には含まれています。」

 

「タブー?」

「若くして故人となった者を

婚姻させる日本の風習……むかさり絵馬。

しかし、故人と婚姻させる相手は

〝現存し今尚生きている人間〟を

選んではいけないんです。」

 

「選んだ場合、対象者が冥府に

連れ去られるとか

なんとか言われてるんでしょ。」

 

「その通りです。

もしこの絵画が似たような理由で

製作されたモノだとしたら、

独特な色遣いや

世界観に合点がいきます。」

 

「…………」

 

「故に画家さんは、

敢えて〝存在しない和室〟を

描く必要があった。

普通の色味で描いては、実在する

和室となってしまう可能性が高い。

……むかさり絵馬の様な

形式に則るのなら、

自然とそうするのも頷けます。」

 

「子供部屋に改造したのも、

その系譜って訳?」

 

「何割かの意図としては

そうかもしれませんね。

でもわたくしが思うには、

親心的な想いが大半かと。」

 

「親心……つまりあなたは、

件の作品を描いた画家が

両親のいずれかであると睨んでるのね。」

 

「ええ。

今までの推測から組み立てると、

一つのストーリーが成り立つんです。」

 

「ストーリー……ね。

是非聞かせて頂戴。」

 

らでんは、先輩の要望通り

推測の骨組みから

導き出したストーリーを伝えた。

 

何年前に起きた話かは

特定不可なものの、

過去の出来事として。

 

――何年か前。

両親とその息子である彼は

日本に旅行した。

 

日本の建築洋式が生み出す

自然と調和した『和』の街並みを

とても気に入っていた。

 

特に、宿泊先である

『和室』に感銘を受けた。

転びにくい床室の畳み。

美しい掛け軸が吊るされた床間。

 

木々の存在感がありつつも

スッキリとした内装。

 

木造ログハウスとは異なる

居心地の良さに、

興奮が止まらなかった。

その中でも息子さんは、

人一倍気に入ってはしゃいでいた。

 

そんな楽しい楽しい

思い出を写真に収め、帰国。

 

その数日後――。

 

彼は不慮の事故で亡き人となった。

 

両親は悲しみに暮れると

同時に、他界した

彼に安らかになって欲しかった。

 

「――そこで、彼の理想の部屋を

絵画としてプレゼントしたって事ね。」

「はい。むかさり絵馬に対する知識も、

観光の合間にガイドから

教えられたモノなのかもしれません。」

 

「泣かせる話じゃない……。

だとしたら、あなたはこの絵画を

どうするべきだと思う?」

 

「その件なんですが……

美術館のオーナーには、

展示をしない方針で

説得させます。」

 

「倉庫で静かに絵を眠らせて置くの?」

「それもそれで、残酷じゃないですか……。」

「ふーん。

なら、一体どうするつもり。」

 

「それこそ、最寄りの寺院に奉納して

供養して貰うべきかと。

きっと彼らは、そう望んでいる筈です。

……彼らは、何らかの形で日本に

この絵画を送りたかった。

『彼』に、もう一度日本を見せたかった。

――その結果、この美術館に

流れ着いただけですから。」

 

「ふふ。非の打ち所がないわね。

もうそこまでの答えが

出てるいるのなら、

わたしから言う事は何も無いわ。

……お疲れ様、らでんちゃん。」

 

「はい。お時間いただき、

こちらもありがとう御座いました。」

 

――カチャッ。

 

らでんの耳元から、

受話器が閉じられる音がした。

先に通信を切ったのは、

案の定アメリア先輩だった。

 

心地が良いゴール。

 

見納めの意を込め、改めて絵を見返し、

留意点を振り返ってみる。

 

閉塞感を与えない為に用意した偽の窓。

 

勉強机の側面に置かれた

折り畳み式の椅子(折り畳んだ状態)は、

彼がもう学校へ通える

状態でない事の暗喩。

 

部屋の凹みに置かれた

縦棒型の電気ストーブ(稼働中)は、

彼が亡き後、

火葬されたという事の暗喩。

 

そんな先の見えない世界に、

せめてもの安らぎと住まいを。

 

あったかい両親に愛され、

健やかに育って。

彼はとっても幸せだったんだろうな……。

 

「あ……れ?

急に……眠気が……」

 

酒をしこたま飲んだ記憶など

無いが、急激に襲ってくる睡魔が

らでんの意識を不意に沈めた。

 

ドサッ。

 

(……ここは、花畑?)

 

さっきまで寝落ちしたばかりなのに、

目が覚めたら花畑。

こりゃあ、完全に夢の中だ。

 

ざっと見た感じ。

黒い特徴的な風車小屋が点々と

軒を連ねてる。

そして、ひたすら広い満開の花景色。

 

まるで〝キューケンホフ公園〟だ。

 

ん?

それって確か、ヨーロッパの観光名所で。

世界最大の花の公園と言われたりしてて、

有名だった気がする。

 

「こんにちは、お姉ちゃん!」

「――!?」

 

少年のような声が

らでんを呼ぶので振り返ると、

件の絵画のモデルと

そっくりな男の子が笑顔を向けていた。

 

「き、君は?」

「僕はアンディ。お姉ちゃんは?」

「らでんです。」

 

「へぇー。ラデンって言うんだ。

なんか面白い名前だね。」

 

言われてみれば、

日本でも中々見ない名前してる。

 

「あはは……そうかもね。」

 

「お姉ちゃん。

僕を見つけてくれてありがとう。

それと……イタズラしてごめんね。」

 

「イタズラ……? 見つけた? 」

 

「そうだよ。ラデンお姉ちゃんは、

本当は『あの世界』の住人じゃないんだ。

僕がイタズラして

無理矢理連れてきたんだ。

周りのみんながいつもと違う反応を

お姉ちゃんにしてたのも、

僕の所為……。」

 

え? じゃあ同姓同名ちゃんが

筋金入りの美術熱狂ファンで

周りを乱してたとかではなく、

美術に熱狂してる世界線のらでんと

わたくしが入れ替わってたって事?

 

待てよ。

よくよく考えたら、周りの反応が

まさにそれだったぞ。

 

「そ、そうだったんだぁ……

所で。見つけたっていうのは?」

 

「パパやママがもう一度

僕を日本に連れてってくれたけど、

やっぱ1人で居ると寂しくて……

でもお姉ちゃんが見つけてくれたから、

もう寂しくないよ。」

 

「そっか……それは良かった。」

 

「だからね。ここは僕からのお礼だよ。

どう? 嬉しい。」

「うん。とても綺麗な景色で――

嬉しいよ。」

 

「やったぁ♪

喜んでもらって僕も嬉しい!

じゃあ1週間後、

元の世界に返してあげるね!」

 

カッ!

 

花景色の余韻に浸る間もなく、

視界が光に包まれた……。

 

 

 

謎の夢を見た日から1週間後。

アンディのイタズラから解放された

らでんは、本来の魂が現世へ帰還した。

 

だが、思わぬ災難が待っていた。

 

プルルルルル……!

プルルルルルルルル……!!

 

「――ハッ!?」

 

(やばい。寝こけてた。

大丈夫か……!?)

 

これで配信遅刻して

#ゆっくり休めらでん

なんてハッシュタグがバズったら

カメムシ以上にネタにされる……。

 

とりま早く応答して

マネちゃんに謝罪しよう。

 

カチャッ。

 

「はいっ! 儒烏風亭らでんです!!」

 

「らでんちゃん!

ちょっとコレどういう事ぉ!!

ぺこら先輩とクロヱ先輩から

それぞれ20万円の請求書が

一条コーポレーションに

届いてんだけど!」

 

「ええっ!! なんでぇ!?

らでん全く身に覚えがないっちゃん!」

 

「また酒飲み過ぎて二日酔い!?

酔うのはいいけど

トラブルは起こさないでよ!」

「だから身に覚えが……」

 

「先輩方は、パチスロ当てるから

投資しろとか言ってらでんちゃんが

徴収したって書いてあんのよッ!

なんで莉ヶ華が

尻拭いしなきゃなんないの!

ノリ打ちにも限度ってモノがあるでしょ!」

 

「う……ああ、それは……その。」

 

らでんのポケットマネー的に、

りりか社長へ請求書が来るのは

仕方がない。

 

「私のツテで

カニ漁のバイト入れとくから、

死ぬ気で働きなさい!

それまで酒もタバコもスロも禁止!

良いわねッ!!

サボったらおビンタの刑だからねッ!!」

 

「…………はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





どうも、たかしクランベリーです。
最後まで付き合ってくれた方々、
本当にありがとうございます。

当作品はタイトル通り、
完全に悪ノリとライブ感で
始めてしまった物語なので
色々と大変でした。
(特に落とし所&
執筆カロリー高すぎ問題)

自分なりに奮闘してみましたが……
やはりガバガバミステリーが
際立ってたなと、
今改めて実感しております。

という訳で御座いまして。
また何か面白い事思いついたら、
新作出すかもしれません。

その時はまたよろしくお願いします。
お疲れ様でした。
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