退き佐久間   作:ヘッツァー

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UA18000です!
なんか勝家があまりにもアレな感じになってしまったので、タグにアンチ・ヘイトを追加しようと思ってます。



第二十五話

まずい。非常にまずい。

ここで信勝軍に逃げられるのは良い。

信勝軍が立ち直り、攻撃を仕掛けてきたらひとたまりもないぞ!

その上暴走した馬をぶっ飛ばして士気を上げるとは!

注目も集めやすいし被害も食い止められる。

まさに一石二鳥。柴田勝家、恐ろしい子!

まぁ、あの脳筋が頭使う訳もねーから恐らく本能だろうけどな。

脳筋度は信辰や可成と良い勝負してる。

 

「皆、ここが正念場だぞ!怯むな突撃!かかれぇー!」

 

勝家ちゃんが戟を振り上げながら檄を飛ばす。

駄洒落じゃないよ!念の為。

ていうか、殿じゃなかったのかよ⁉︎

おとなしく撤退してろ!

 

「そ、そうだ!こちらには柴田勝家が付いている!」

「ああ、あの『かかれ柴田』だ!何を恐れる事があるのか!」

「皆柴田勝家に続けぇー!」

 

相手の陣が立ち直り始めた!

そうなっては、こちらは人数的に不利だ。

元々虚を突いて攻め込む作戦だったんだ。

騎馬隊が戦果を十分に上げる前に立ち直られてはきつい。

うう、苦しい戦いになった!

 

「予定より信勝軍の立ち直りが早い!足軽隊急げ!このままだと立ち直った勢いで騎馬隊が甚大な被害を被る!」

「させん!佐久間隊が合流する前にこの柴田勝家が片付ける!」

「クソッ!柴田勝家、討ち取られたくなければさっさと死ねぇ!」

 

それどう転んでも死ねって言ってるからね可成さん。

なんてツッコミかましてる場合か。

俺は敵兵を薙ぎながら進む。

きっとその中には致命傷を負った者も居るかもしれない。

しかし、背に腹は変えられない。

 

「後少し!もう少し持ってくれ可成・・・!」

 

その時、勝家の放つ鋭い突きが可成に向けて放たれる。

その突きをかろうじて躱す可成。

だが、完全に避けられなかったのか、手から血が流れ落ちる。

 

見れば、可成の右手の人差し指が無くなっていた。

 

「ぐぅぅぅぁ!あっぐ、うぁ、この、テメー良くもやってくれたなぁ!」

「痛いだろう。今、楽にしてやる。」

「ほざけ!やってみろぉ!畜生がぁ!」

「すまない。」

 

静かに謝罪をしながら、勝家は戟を振り上げる。

 

「やめろぉー!オラァ!届けぇ!」

 

俺は声を張り上げながら槍を突き出す。

勝家はそれを戟で防ぐ。

勝家が戟を振り上げていたため、自然と戟を振り下ろしながら防ぐ形となり、俺の槍がへし折れた。

えっ、マジかよあの馬鹿力。

 

「いってぇ・・・体勢を立て直すぞ!森可成を手当てしてくれ!騎馬隊後退!足軽隊は援護に回るぞ!」

「遅えぞ信盛!うっぐぁ・・・!」

「・・・すまない!」

 

もう少し早ければ・・・こんな事には。

しかし今はこの状況を打破することに専念する。

生きていなければ、謝罪もクソもないからね!

 

「くっ、合流されたか・・・!」

「ですが、森可成は手負いです!畳み掛けましょう!勝家殿!」

「応ッ!任せとけ!おおお!」

 

「あんま来ないでくれると助かるけどなぁ!足軽隊全員気合い入れろよ!」

「「「応ッ!」」」

 

俺は『岩通』を抜き放ちつつそう叫ぶ。

 

「そういう訳にはいかない!ここで死んでもらう、信盛!」

 

槍が突き出される。

想像よりもずっと速い!

ヤバい、と思ったその時。

咄嗟に、信辰の顔が思い浮かぶ。

そうだよ、約束したじゃないか。

絶対に帰るってさぁ。

 

「そう言われても、俺も死ぬ訳にはいかねぇんだよ!」

 

戟と『岩通』がぶつかり合う。

だが、優劣は火を見るより明らかだ。

リーチの差も痛い。

『岩通』は長身の刀だが、それでも埋めきれない。

 

次第に俺に傷が増えていく。

今はかすった程度だが、いつ致命傷が叩き込まれるか分かったもんじゃない。

死にたくないなぁ!

 

「しぶといなぁ!信盛!」

「言ったろ、死ねないってよぉ!」

「ふっ、いい覚悟だ!」

 

くぅぅ、このままじゃあ、いずれ・・・!

でも、必ず生きて、信辰に会うんだ!

 

「くそぉ!死んでたまるかよッ!」

 

その時、偶然向こうで狼煙が上がったのが見えた。

俺は嬉しくてたまらず、ニヤけてしまった。

すると勝家がマジ引きしていた。解せぬ。

 

「・・・今お前は私に殺されそうになっている。だのに何故だ、その不敵な笑みは⁉︎」

「おやおや〜、分からないのでございますかぁ?オホッ、本当に分からないのぉ?」

「・・・・・・殺ス。」

「危なッ⁉︎マジ勘弁!」

 

良いぞ、もっと挑発に乗って来い!

怒りのせいか攻撃も単調になっている。

いける!いけるぞこれは!

勝家の斬撃速度が目視出来ない域にまで達している事を除けば。

『岩通』で受け止めても痛いんだが!

それでも刃こぼれしない『岩通』はやはり本物だった。

買ってよかった!

 

「うおりゃぁぁぁああ!」

 

叫び声と共に勝家が戟を地面に叩きつける。

俺は間一髪それを避ける。

ドゴォォォン、と多分鳴ってはいけない音がした。

 

「お前どんだけキレてんだよ!怖えよ!」

 

戟の刃先なんか埋まって・・・あ、これチャンス?

 

「えい。」

 

俺が『岩通』を振るうと、なんの抵抗もなく戟の口金と銅金の間を切断する。

端的に言えば、槍の穂先を切り落とした感じだ。

 

「なっ⁉︎良くもやってくれたな!」

「いや、迂闊すぎるでしょ・・・。」

「どこがうかつだと言うんだ!まずうかつってなんだ⁉︎」

 

は?そっから?それは本気で言ってますのん?

 

「・・・・・・迂闊って言うのは、間抜けとかそんな感じで良いと思うよ。」

「そ、そうか。で、どこが間抜けだって言うんだ⁉︎」

 

えっとー、迂闊を知らなかった事ですかねー?

それはさておき。

 

「周りが見えてねぇんだよ。林さんや信勝様は撤退してる。それに、聞こえないか?お前らとも俺らとも違う足音が近付いているのが。」

「なっ⁉︎馬鹿な!まさか・・・!」

 

そう言って勝家は後ろを振り返る。

 

「何も聞こえないじゃ、あっ!」

 

勝家が気付いた時にはもう遅い。

ぴたり、と『岩通』の刃先が勝家の喉元に突き付けられていた。

 

「全く、俺が動揺を誘ったからって、引っ掛かり過ぎだろ。自分で考えないで必死に質問だけする子供かってんだ、落ち着けよ。まぁ、元が味方同士だから出来た事だろうけどな。」

「騙したな!ますます許せんッ!」

「騙される方が悪なのです。それで、だ。」

「くっ・・・!なんだ⁉︎」

「全軍を武装解除しろ。味方同士で争うっていう馬鹿丸出しの行為はもうウンザリだよ。」

「・・・・・・それだけで良いのか?」

「ああ?速くしろよ!今こうしている間にも、死に行く奴が出てるんだぞ!」

「・・・全軍、佐久間隊に投降せよ!繰り返す!柴田隊は武装解除しろ!」

 

ねぇ、気付いて?それ繰り返して無いよ。

分かってるかどうか知らないけど。

 

兵士達もあっさりと武装解除を受け入れた。

それはそうだ。誰も同士討ちなんかしたくない。

皆次々と槍を放り投げる。

この場はなんとか上手く行ったみたいだな。

 

ふと向こうを見れば、姫様の親衛隊がようやく到着していた。

 

「ふふっ、主役が登場する前に終わらせた俺は、脇役失格なんだろうな。」

 

俺は自虐的な笑みを浮かべながらそう呟いた。

それに対し、勝家が返事をする。

 

「な、何お前ニタニタしてるんだ?気色悪いぞ。」

 

泣いていい?

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