なんか勝家があまりにもアレな感じになってしまったので、タグにアンチ・ヘイトを追加しようと思ってます。
まずい。非常にまずい。
ここで信勝軍に逃げられるのは良い。
信勝軍が立ち直り、攻撃を仕掛けてきたらひとたまりもないぞ!
その上暴走した馬をぶっ飛ばして士気を上げるとは!
注目も集めやすいし被害も食い止められる。
まさに一石二鳥。柴田勝家、恐ろしい子!
まぁ、あの脳筋が頭使う訳もねーから恐らく本能だろうけどな。
脳筋度は信辰や可成と良い勝負してる。
「皆、ここが正念場だぞ!怯むな突撃!かかれぇー!」
勝家ちゃんが戟を振り上げながら檄を飛ばす。
駄洒落じゃないよ!念の為。
ていうか、殿じゃなかったのかよ⁉︎
おとなしく撤退してろ!
「そ、そうだ!こちらには柴田勝家が付いている!」
「ああ、あの『かかれ柴田』だ!何を恐れる事があるのか!」
「皆柴田勝家に続けぇー!」
相手の陣が立ち直り始めた!
そうなっては、こちらは人数的に不利だ。
元々虚を突いて攻め込む作戦だったんだ。
騎馬隊が戦果を十分に上げる前に立ち直られてはきつい。
うう、苦しい戦いになった!
「予定より信勝軍の立ち直りが早い!足軽隊急げ!このままだと立ち直った勢いで騎馬隊が甚大な被害を被る!」
「させん!佐久間隊が合流する前にこの柴田勝家が片付ける!」
「クソッ!柴田勝家、討ち取られたくなければさっさと死ねぇ!」
それどう転んでも死ねって言ってるからね可成さん。
なんてツッコミかましてる場合か。
俺は敵兵を薙ぎながら進む。
きっとその中には致命傷を負った者も居るかもしれない。
しかし、背に腹は変えられない。
「後少し!もう少し持ってくれ可成・・・!」
その時、勝家の放つ鋭い突きが可成に向けて放たれる。
その突きをかろうじて躱す可成。
だが、完全に避けられなかったのか、手から血が流れ落ちる。
見れば、可成の右手の人差し指が無くなっていた。
「ぐぅぅぅぁ!あっぐ、うぁ、この、テメー良くもやってくれたなぁ!」
「痛いだろう。今、楽にしてやる。」
「ほざけ!やってみろぉ!畜生がぁ!」
「すまない。」
静かに謝罪をしながら、勝家は戟を振り上げる。
「やめろぉー!オラァ!届けぇ!」
俺は声を張り上げながら槍を突き出す。
勝家はそれを戟で防ぐ。
勝家が戟を振り上げていたため、自然と戟を振り下ろしながら防ぐ形となり、俺の槍がへし折れた。
えっ、マジかよあの馬鹿力。
「いってぇ・・・体勢を立て直すぞ!森可成を手当てしてくれ!騎馬隊後退!足軽隊は援護に回るぞ!」
「遅えぞ信盛!うっぐぁ・・・!」
「・・・すまない!」
もう少し早ければ・・・こんな事には。
しかし今はこの状況を打破することに専念する。
生きていなければ、謝罪もクソもないからね!
「くっ、合流されたか・・・!」
「ですが、森可成は手負いです!畳み掛けましょう!勝家殿!」
「応ッ!任せとけ!おおお!」
「あんま来ないでくれると助かるけどなぁ!足軽隊全員気合い入れろよ!」
「「「応ッ!」」」
俺は『岩通』を抜き放ちつつそう叫ぶ。
「そういう訳にはいかない!ここで死んでもらう、信盛!」
槍が突き出される。
想像よりもずっと速い!
ヤバい、と思ったその時。
咄嗟に、信辰の顔が思い浮かぶ。
そうだよ、約束したじゃないか。
絶対に帰るってさぁ。
「そう言われても、俺も死ぬ訳にはいかねぇんだよ!」
戟と『岩通』がぶつかり合う。
だが、優劣は火を見るより明らかだ。
リーチの差も痛い。
『岩通』は長身の刀だが、それでも埋めきれない。
次第に俺に傷が増えていく。
今はかすった程度だが、いつ致命傷が叩き込まれるか分かったもんじゃない。
死にたくないなぁ!
「しぶといなぁ!信盛!」
「言ったろ、死ねないってよぉ!」
「ふっ、いい覚悟だ!」
くぅぅ、このままじゃあ、いずれ・・・!
でも、必ず生きて、信辰に会うんだ!
「くそぉ!死んでたまるかよッ!」
その時、偶然向こうで狼煙が上がったのが見えた。
俺は嬉しくてたまらず、ニヤけてしまった。
すると勝家がマジ引きしていた。解せぬ。
「・・・今お前は私に殺されそうになっている。だのに何故だ、その不敵な笑みは⁉︎」
「おやおや〜、分からないのでございますかぁ?オホッ、本当に分からないのぉ?」
「・・・・・・殺ス。」
「危なッ⁉︎マジ勘弁!」
良いぞ、もっと挑発に乗って来い!
怒りのせいか攻撃も単調になっている。
いける!いけるぞこれは!
勝家の斬撃速度が目視出来ない域にまで達している事を除けば。
『岩通』で受け止めても痛いんだが!
それでも刃こぼれしない『岩通』はやはり本物だった。
買ってよかった!
「うおりゃぁぁぁああ!」
叫び声と共に勝家が戟を地面に叩きつける。
俺は間一髪それを避ける。
ドゴォォォン、と多分鳴ってはいけない音がした。
「お前どんだけキレてんだよ!怖えよ!」
戟の刃先なんか埋まって・・・あ、これチャンス?
「えい。」
俺が『岩通』を振るうと、なんの抵抗もなく戟の口金と銅金の間を切断する。
端的に言えば、槍の穂先を切り落とした感じだ。
「なっ⁉︎良くもやってくれたな!」
「いや、迂闊すぎるでしょ・・・。」
「どこがうかつだと言うんだ!まずうかつってなんだ⁉︎」
は?そっから?それは本気で言ってますのん?
「・・・・・・迂闊って言うのは、間抜けとかそんな感じで良いと思うよ。」
「そ、そうか。で、どこが間抜けだって言うんだ⁉︎」
えっとー、迂闊を知らなかった事ですかねー?
それはさておき。
「周りが見えてねぇんだよ。林さんや信勝様は撤退してる。それに、聞こえないか?お前らとも俺らとも違う足音が近付いているのが。」
「なっ⁉︎馬鹿な!まさか・・・!」
そう言って勝家は後ろを振り返る。
「何も聞こえないじゃ、あっ!」
勝家が気付いた時にはもう遅い。
ぴたり、と『岩通』の刃先が勝家の喉元に突き付けられていた。
「全く、俺が動揺を誘ったからって、引っ掛かり過ぎだろ。自分で考えないで必死に質問だけする子供かってんだ、落ち着けよ。まぁ、元が味方同士だから出来た事だろうけどな。」
「騙したな!ますます許せんッ!」
「騙される方が悪なのです。それで、だ。」
「くっ・・・!なんだ⁉︎」
「全軍を武装解除しろ。味方同士で争うっていう馬鹿丸出しの行為はもうウンザリだよ。」
「・・・・・・それだけで良いのか?」
「ああ?速くしろよ!今こうしている間にも、死に行く奴が出てるんだぞ!」
「・・・全軍、佐久間隊に投降せよ!繰り返す!柴田隊は武装解除しろ!」
ねぇ、気付いて?それ繰り返して無いよ。
分かってるかどうか知らないけど。
兵士達もあっさりと武装解除を受け入れた。
それはそうだ。誰も同士討ちなんかしたくない。
皆次々と槍を放り投げる。
この場はなんとか上手く行ったみたいだな。
ふと向こうを見れば、姫様の親衛隊がようやく到着していた。
「ふふっ、主役が登場する前に終わらせた俺は、脇役失格なんだろうな。」
俺は自虐的な笑みを浮かべながらそう呟いた。
それに対し、勝家が返事をする。
「な、何お前ニタニタしてるんだ?気色悪いぞ。」
泣いていい?