退き佐久間   作:ヘッツァー

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今回、書いてて思った。
難産でしかも他の話より長いのにちっとも面白くない、と。

あ、つまらないのは今に始まってないな。



第三十二話

「なんで、あんな事したんですか?」

 

ザ・ワー◯ドみたく時を止める能力でもあったのか。

そう思うほどシーンってなってしまっていた。

それと、そう聞いた時の林さんの顔ったらなかったね。

滅茶苦茶偉そうに仕事押し付けてくるあの林さんが、あんな苦々しい表情をするなんて!

こんな緊迫した場面でなければ満点大笑いだったわ。

まぁ、残念ながらここはその緊迫した場面なんだけど。

 

「・・・おいおい、それを聞くのかよ?さっき裁かれたばかりの奴に向かって、それは傷口を抉るどころかその後塩を塗り込む様な真似だぜ。少しは自重しろ馬鹿野郎。」

「だからやってんじゃないですか。それに、あんた俺に嫌がらせばっかしてたろうが。これぐらい我慢して下さいよ。」

「あぁ?あー、仕事を増やした事か?あれはお前を試してたんだよ。ほら、ポッと出の奴が果たして僕と同格の職につけるだけの力量かどうか、な。」

「じゃあ仕事こなした時点で元に戻して下さいよ。なんでそのまま俺の管轄になってるんですか。」

 

あれ本当キツかった。

それこそポッと出に聞かれても知らんわって仕事もあった。

平手さんがいなかったら俺は過労死してたな、多分。

 

「いやぁ、面倒臭くてさ。それに割と良く出来てたからいっか、と思って。」

「張り倒すぞ・・・・・・。」

 

ボソッと愚痴を漏らす。

こうでもしなきゃやってらんねぇ。

ていうかちょっと待て。

 

「と言う事ははあなた仕事が減ったって事ですか?」

 

それは聞き捨てならんぞ。

 

「いや、そんな事はなかった。むしろ人が減った分、お前より古参の家臣である僕に外交とかの重要な物がわんさか回ってきた。だからお前に仕事を回したのは手が回らなかったってのもある。」

「・・・なんか、すみません。何も知らず食ってかかっちゃって。」

「いや、良いってことよ・・・。こっちこそ、ろくに説明もせずすまなかったな。」

 

なんか林さんと少し仲良くなった気がする。

ちゃんと話してみたら良い人だった。

今度飲みに誘おうかな。

でもおっさんと二人きりとか嫌だな。

その時は色んな奴誘う事にしよう。

 

「じゃあ、それに対する不満が今回の件の動機ですか?」

「いや、それもあるんだが・・・・・・。」

 

あるんだ。

林さんは言うなり顔を近づけてくる。

あ、俺そっちの趣味はなアッー!

まぁ、耳打ちする為ですけどね。

やがて、俺に向かってボソッと理由を語る。

 

「姫様の障害になりそうな奴は消しておこうと思ってな。」

「は?何言ってんのあんた?」

「おい、それは流石に失礼だろ・・・。」

「あ、失礼いたしました。でも、は?」

「おい・・・・・・。」

 

いや、だって意味分かんないし。

障害排除するとか言って自分が障害になってりゃ世話ねえぜ!

ミイラ取りがミイラになるよりまぬけだ。

あっちは感染者が相手だからな、仕方無い。

あ、それ違うゲームの話だ。

 

「僕にだって分かる、姫様の才能は本物だ。お前なんかよりずっと多くの人を見てきたが、あれはそのどれとも違うものだ。まぁ流石にあんな格好で街をうろつくのはやめて頂きたいがな。」

「それは同感ですね。後、さりげなく俺を落とすのやめて下さいよ。」

「くだらん事で話遮るなよ。」

「あ?」

「やんのか?」

 

話進まねえなこれ。

 

「それもあってか、姫様は母親の土田御前様と仲が悪い。それで土田御前様は信秀様が存命の頃から弟の信勝様を後継者に推していたのだが、信秀様はそれを聞き入れなかった。今思えば、信秀様は姫様の才能を見抜いたんだろうな。」

「凄いな、親子揃って非凡という訳ですか。いやむしろ、あの親あってのこの子ありって感じでしょうね。」

 

さらに金持ちって事が拍車を掛けたのだろうな。

世の中金がなければ何も出来ないからな。

鉄砲揃えられるほど金持ってるなんてなぁ。

 

「それで信秀様が亡くなってしまわれた際、土田御前様は姫様を当主から蹴落とし、後釜に信勝様を据えるっていう事を画策していた訳だ。そこで。」

「そこで?」

「信勝様の陣営に近付き、その情報を得て流し、計画を頓挫させようと思ったんだが、思ったより計画が進んでて、たとえ情報を流そうとも止められない域にまで達していた訳だ。」

「へ、へぇ、意外と攻めますね、林さん。」

 

その情報を段蔵が伝えてきた訳ね、分かります。

 

「それで、これはむしろ武装蜂起させてからわざと負けさせて信勝様に二度と謀反を起こさないと誓わせるか、いっその事打ち首にして貰おうって思った訳よ。」

「死ぬのが怖くは無かったんですか?」

「そりゃあ怖いよ、死ぬ程怖いさ。でもよ、どうせならそういう風に役に立ってから死にたいじゃないか。」

「あんた、頭おかしいんじゃないんですか?それじゃあただの戦犯として裁かれるだけですよ?」

「よくもまあずけずけと先輩に向かってよ。でも、主君に忠義を尽くすのは当たり前の事だ。今回はこんな事になってしまったがな。」

「確かにそれで今回は救われましたが、あなたはどうなんです?あれでもし死んでたら悔いはないと言えるんですか?」

「僕は信秀様の為なら命を懸けられる。それは姫様でも変わらない。それでいいと思っている。」

 

これが、この時の価値観?

これが武士道なのか?

頭では変だと思ってるのに、その姿勢に俺は今共感している。

これはおかしい事じゃないのか?

 

そう悩んでいる俺を尻目に、林さんは話を続ける。

 

「しかし、姫様は優し過ぎた。許してしまった。信勝様自体とは仲は良かったしな。でも、今回は許すべきでは無かったのかもしれない。」

「それはまた、どうしてですか?」

「信勝様が成長するかもしれないという事だ。人は覚悟すると強い。出来ればそうならない事を祈っているのだがな。」

「そうか、信勝様だって信秀様の血を引いている。化ける可能性は高いという訳ですね。」

「ああ、願わくばこのまま諦めて欲しいものだがなぁ。今のままでは信勝様は土田御前様の操り人形だ。そうして潰しあっていくのは悲惨すぎる。」

「そうですね・・・・・・。」

 

しばしの沈黙。

 

林さん、実は。

俺が知っている歴史では。

姫様はこの後、信勝様を。

 

そんな考えを林さんが遮る。

 

「まぁ、考えても仕方の無い事だ。じゃあ、お互い頑張ろうぜ。」

「と、唐突ですね。それに少し嬉しそうですし。負けたくせに。」

「おい。いやさ、念願の外交専門になれたんだ、まさしく怪我の功名ってヤツだな。」

「さっきの話感動したのに・・・。もしかして本当は筆頭家老の仕事から逃げたかっただけじゃ無いですよね?」

「そ、そんな訳あるかよ。」

 

嘘っぽいなぁ。

さっきのもでっち上げてたんじゃねえのかな?

まぁ、きっと本当の動機は林さんしか知らないのだ。

聞いて損したぜ。

 

別れ際に、俺は振り向きながら林さんに言う。

言うかどうかは迷ったが、言わなければならないだろう。

 

「その、林さん。」

「なんだ?まだ何かあるのか?」

「・・・妹さん、残念でしたね。」

「何だと?お前、それをどこで知った?」

 

そう、林さんの妹、林通具はこの騒動で命を落としている。

そう報告が入って来ている。

突然ガラリと表情を変え、林さんが問い詰めてくる。

それに俺は動揺しつつキッパリと答える

 

「誰が戦死者の報告をまとめてると思ってるんですか。全員が集まってるわけではないですが、大将とかの戦死報告は早めに来るので。」

 

てっきり、一発くらい殴られると思っていた。

しかし、林さんは一通り思案した後、話し出した。

 

「なるほど、なぁ。まぁ、お前ならいいか。佐久間、一つ良い事を教えてやろう。僕の妹、林通具は、別に死んじゃあいない。」

「え・・・?じゃ、じゃあ、どうして?」

 

どうして戦死報告が来ているんだ?

すると林さんはやれやれ、といった風なジェスチャーをした後、語り出した。

 

「なんでも、城下町の男と恋仲になったんだと。でも、身分もあるだろう?そこで、だ。駆け落ちする事にしたらしいんだが、生半可にやればバレちまう。そこで、この騒動に目を付けたってわけだ。」

「戦死したと偽って駆け落ち、ですか?林さん、妹さんの事心配じゃないんですか?」」

「そりゃあ心配だし俺としては行かないで欲しかったけどよ、あんな辛そうな顔見せられて黙っていられるかよ。それが兄ってもんだろうが。」

「林さん、あんた、それが一番の動機でしょう?」

 

ああ、この人シスコンかな?

でも、忠義に身を捧げるとかよりは全然共感は持てる。

 

「悪いか?まぁ忠義だ何だと語っておきながらこれだものな。幻滅したか?」

「いえ、むしろ尊敬致しました。だからあの時すぐに撤退したわけですね。」

「ああ、陣形的には通具の部隊は勝家の隊と一緒にいた事になっているからな。実際途中まではいたしさ。」

 

なるほどね、そういう理由があったのか。

だからあんな事しても少しも悪びれてない訳か。

良かったですね、通具さん。

理解の出来る兄貴で。

 

「だからお前に頼みがあるんだよ。このまま通具を、戦死にしておいてくれ。」

「分かりましたよ、任せてください。」

 

それにしても、あの事件の後の初仕事が不正とは。

前途多難だな。

でもまぁ、うん、悪くない。

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