低俗スクランブル   作:かげのかげたろう

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(最近気温の変化が激しいので)初投稿です。


「ともあれ、シスター服とは至高である」

 

 何はともあれ。

 

「どうだろう」

 

「懺悔させろ」

 

「非常に気持ち悪い感想だね、ありがとう」

 

 固め濃いめ多め激ウマ家系ラーメンをキメて幸福感に満たされた俺は、我が家で奢りに対する報酬を受け取っていた。

 つまるところ、コスプレである。

 目の前には、死んだ目で煙草を吸って俺の事を見下しているエロいシスターが居た。

 

「しかし、ニンニク臭いシスターというのはどうだい」

 

「吸血鬼の弱点撒き散らしてるからまあ退魔してるんじゃね」

 

「ふむ、ならいいか」

 

「エロけりゃいいよ」

 

「そういう正直なところはワタシは好きだよ」

 

「おう、俺も好きだよ」

 

 ギシリ、と俺のベッドの上でヤニカスは足を組み替える。前垂れの間から見え、見え……ない。ちっ。

 黒基調のシスター服はその世界ドスケベ条約に反している体に抗いきれず、聖職者にあるまじき劣情を催す格好と化していた。いや、世界ドスケベ条約に則っているのかもしれない。

 まあ、ともかくえっちだ。

 

「しかし、キミもよくもまあこんなにコスプレを用意するものだ」

 

「リアルにコスプレをしている女からしか得られない栄養があるからな」

 

「彼女にさせればいいものを」

 

「彼女で出来る事ってセフレでも出来るって偉い人が言っていてな」

 

「その偉い人は最低だから暗殺された方いいよ」

 

「真理だろ」

 

「戯言だよ」

 

「実際彼女とセフレで出来る事の違いなんざねぇだろ」

 

「あるよ」

 

「何だよ」

 

「結婚」

 

「ディベートは俺の負けだ」

 

 何処かの世界線にはセフレと結婚する人間が居るかもしれないが、俺はそういう人間を実際に見た事は無いので反論を諦める。

 ベッドに腰掛けるヤニカスに対して、床に座り込んでいる俺は煙草を吸いながら改めてソイツのシスター服姿を眺める。

 エロいという感情しか湧かないその姿を、客観的に。

 

「お前、コンビニでそういう恰好した方が客足良くなるぞ」

 

「やだよ。働きたくない」

 

「流石お洒落すると化ける女」

 

「お洒落しなくても可愛いだろう」

 

「元が良いからな」

 

「そうだろう。少しでもメイクやお洒落をしてみろ、ストーカーがつくぞ」

 

「お前の自己肯定感だけは見習いたいよ」

 

「見習いなよ、自称天才ラノベ作家さん」

 

「自称じゃなく事実だっての」

 

 トゥニカなるローブ状の衣服をベースにしているらしいシスター服は、コスプレという舞台に立つと非常に扇情的なアレンジを加えられて形になっている。

 その長い黒髪を真っ黒なベールで覆い、胸元にはロザリオが垂れようとしてその双丘によって持ち上げられている。腰元へ流れるラインは細く、くびれたウエストから曲線を艶やかに描いてスリットによって白く眩しい太ももへ辿り着く。

 そして、その魅力的な肉感によって最終兵器絶対領域と化した白ニーソとの境界が思わず目線を釘付けにする。

 

「まあ、ワタシにご飯を奢ってくれるからそういう事にしてあげるけどさ」

 

「奢られている立場の癖に随分偉そうだな」

 

「いつからワタシとキミが対等じゃないと思っているんだい」

 

「ご飯事情に関しては俺の方が上だろ」

 

「ふ。廃棄弁当が主食がワタシを馬鹿にしているのかい」

 

「奢られる時はもうちょっと可愛げある言動の一つでもしてみろって話だ」

 

「どうか貧しく卑しいワタシにお恵みを♡」

 

「えっど」

 

「こんな事を毎回してたらキミの理性が大変だろう?」

 

「全裸で馬乗りになってから言えよ」

 

「そうしたら理性を崩せるんだね、覚えておくよ」

 

 吸い殻が長くなったソイツに灰皿を差し出せば、トントンと人差し指で煙草を叩いて落とす。

 

「良い心がけだね、下っ端根性がやっと芽生えたかい?」

 

「いつから誰が誰の下になったって?」

 

「言わせないでくれよ、恥ずかしい」

 

「明らかだろうが揉みしだくぞ」

 

「いいよ」

 

「それで弱みに握られそうだが」

 

「はは、そんな事しないよ。ホントホント」

 

「嘘つけ詐欺師」

 

「ワタシが嘘なんて吐く訳ないじゃないか」

 

「嘘つきほどそう言うぜ」

 

「ワタシをそこら辺の有象無象と一緒にしないでくれよ」

 

 嘘なんて吐いた事がないさ。そう言って紫煙を吐き出すソイツの目は、やっぱり奥底が見えないほどに濁っていた。

 …………なーんでこういう関わっちゃいけないような人間と知り合っちゃったんだろうなあ。

 溜息交じりに、煙を吐き出す。

 

「キミはよく嘘を吐くようだけどね」

 

「あー?噓も方便だからな」

 

「ワタシはあまり嘘を多用する人間は好きではないが、キミの嘘は好きだよ」

 

「……ごめん、ちょっとお前は彼女にするのは目が濁りすぎてて」

 

「いつ誰が誰に告白をしたんだい」

 

「なんだ告白じゃねぇのか」

 

「まあ好きだけど」

 

「あ?」

 

 目を見る。濁って真っ黒で感情も何も見えやしない。……少し、目が細められた。

 舌をペロ、とおどけるように出して俺を茶化すような表情でベッドの上から見下すソイツは、少しだけ愉快そうに口角を上げた。

 なんだコイツ。舌ピ見せつけやがってスケベかよ。

 

「ああ、そういえば」

 

 話を変えるように、ポンと手を打つヤニカス。

 

「最近火遊びがうるさいのだけれど」

 

 立ち上がって、俺を一層見下した格好でそう言うヤニカスに俺は首を傾げる。

 

「はて」

 

「ワタシは角部屋でお隣さんはキミしか居ないのだけれど」

 

「上の人だろ」

 

「ワタシ達より上は居ないよ」

 

「俺は火遊びするような相手は数える程しか居ないが」

 

「それがうるさいって言っているのさ」

 

「消火はちゃんとしてるぞ」

 

「線香花火だからしやすいだろね」

 

「線香花火だったか?」

 

「正直四尺玉だね」

 

「これからは消防車待機させとく」

 

「まず火遊びを控えろって話なのだけれど」

 

「花火大会は夜にやるもんだからそう言われてもな」

 

 はあ、と溜息を吐いてヤニカスは立ち上がる。すわ暴力か。

 

「困った鍵屋だよ」

 

「いて」

 

 デコピンをされた。割と優しかった。

 ふ。と笑ってから、こちらに身を乗り出して俺の傍らにある灰皿に手を伸ばす。吸い終わった煙草を灰皿に押し潰して、じりっと煙が上がる音がする。

 その際には、俺の目の前にはでかいおっぱいが視界に広がって、ちゃらりと宙に彷徨うロザリオ以外は何も見えなくなる。うおでっか。これが四尺玉?

 

「明日は、休みでね」

 

 ずいと顔を寄せられる。無駄に整った顔が目前に迫る。

 

「今日は飲み明かすつもりだけれど、付き合ってくれるね」

 

「…………」

 

 ぐるり、とその黒い瞳が俺を見据える。

 隈がある訳でも無く、表情が無い訳でも無いのに相も変わらずコイツの目だけには何も映し出されない。

 いや、映し出されているけど、俺がその中から見出せていないだけなのかもしれないけど。

 

「いいけどさ」

 

 その目が近いとそわそわする。肩に手を置いて、その目を遠ざけさせる。

 

「ニンニク臭いから退魔してこいよシスター」

 

 あと顔は良いけど少し臭かった。もっと甘い匂い垂れ流しにしろよ。

 

「……………………」

 

「……なん、待て何でこっち来んだよちょい待」

 

 

 

 

 

 少し強めに頬を引っ張られた。痛かったけど、ソイツの目には恥じらいの色が見えた気がした。

 

 

 




「カス」
・煙草のメンソールは苦手。お洒落するととてもカス。

「ヤニカス」
・煙草は何でも吸う。お洒落するととても綺麗。
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