低俗スクランブル   作:かげのかげたろう

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(パチンコ負けたので)初投稿です。


「ともあれ、メイド服とは至高である。」

 

 何はともあれ。

 

「ふーん、えっちじゃん」

 

「殺せ」

 

 俺の目の前にはビキニメイド服を着たパチカスが居た。

 愉快で仕方が無い。俺はあの後先バレ(期待度四十パーセント)の演出を引き、五十五パーセントを通してラッシュへとぶち込み大捲りして脳汁びゅっびゅして気持ち良くイベント日を終えたのだが。

 目の前のこの敗者は、何も引く事が無く、いや正確には当たりを引いたもののラッシュには入れれずに単発で終わったのだ。正しく敗者。

 

「どうだ負け犬、屈辱か?」

 

「この悔しさ、いつかアンタに返す」

 

「ラッシュ入れれない貧弱な女が何抜かしてんだよ」

 

「クソ、神頼り戦法は駄目だったか」

 

「結局引きなんですわ」

 

「覚えてなさい。次はアンタを負かす」

 

「弱い犬ほどよく吠える」

 

「何を」

 

 無様に正座しているビキニメイド服の姿をベッドに腰掛けながら、優雅に煙を吐きながら俺は眺める。

 胸こそ無いもののスタイルは良く、黒地に白いフリフリが付いたビキニに連なる薄く割れた腹筋の下には明らかに短い前掛けがビキニとメイド服という相反する服装をミックスさせて眼福と言える格好を作り上げていた。

 白いカチューシャは金髪によく映え、その健康的な脚には白レースの輪が可愛らしくあしらわれている。総合的に見て、大変可愛らしいメイドさんとなっている。

 

「で?生活費もぶち込んで?俺に何か言う事があるんだったか?」

 

「ぐ」

 

「言わなきゃ分からないよなぁ、言葉ってのは口に出して初めて意味を成すんだからなぁ」

 

「……そ、その」

 

「んー?」

 

「………パチンコに生活費を注ぎ込んでしまって一文無しになってしまった哀れな私目に、どうかお金を恵んで頂けないでしょうか」

 

「一つ、言葉を忘れているだろうが」

 

「……お願いします、ご主人様」

 

 敗者が媚びへつらう姿を見るのは楽しいなぁ!

 恭しく頭を下げる肌色面積多めの顔が良い女、もといコイツの姿を見ると笑いが止まらない。フゥーハハハ。高笑いが止まらない。

 顔がいい女にコスプレをさせて頭を下げさせて吸う煙草は美味いか?美味いよ。

 

「全く、これだからパチカスは」

 

 何はともあれ、今日はイベントも終わったので茶番終了である。パンと手を叩く。

 

「いいよ」

 

「ありがとうございますいや本当に」

 

「まー今日は惜しかったよな、ラッシュ入れれたら話は変わってた」

 

「いやまじでそう」

 

 破顔。朝の喧嘩上等なムードとは一転して、和やかな口調でお互い健闘を称え合う。さっきまでの険悪煽り合いムードなんぞ茶番である。

 

「まあ抽選の引きが悪かったし、今回は結局運ゲーだったし」

 

「あそこで引けてたら多分スロで変わってた」

 

「んな。パチンコは天井が無いし投資が際限無いもん」

 

「パチンコにも天井あればいいんだけどね」

 

「んねー」

 

 かんぱーい、と缶をかつんと鳴らして一口。

 染み渡るアルコールは勝利した後の脳汁と相まって非常に格別で、何度味わってもこの瞬間が一番美味しいと思わざるを得ない。

 勝利の美酒とはこの事。

 

「しかしこの『ドキ!真剣パチンコ対決!』で片方は絶対に勝てるってジンクスは当てにならんな」

 

「普通にどっちも負けたりするからね」

 

「片方は勝てるってのが旨味のムーブの筈が、ほぼほぼ二人で負けてるしな」

 

「俺が金持ちじゃなきゃ借金まみれだぞまじで」

 

「そこは本当にお世話になってます」

 

 ぺこりと一礼。よいよい。パチカスには健全なパチンコライフを過ごさせるのが俺の役目じゃ。

 暫くはコイツとも険悪ムードで過ごしてみたものの、どうもこのパチンコオカルト実践は失敗に終わったようだ。

 こうすれば勝てる、というのはやはり無いのだろうか。

 

「お前が働いてからのんびり返して貰えればいいよ」

 

「大丈夫、勝って返す」

 

「また負けても貸してやるから安心しろよ」

 

「ひりつかないなあ」

 

「じゃあ次負けたら本当にメイドさんにさせるからな」

 

「……メイドカフェで働かせるって事?」

 

「いんや、知り合いのコンカフェにぶち込む」

 

「えっちじゃん」

 

「えっちじゃないらしいぞ」

 

 本人談。脳内で酒カスが笑いながらサムズアップしてくる。でもコンカフェってなんかえっちだよな。

 

「今のバイトの調子は?」

 

「ぼちぼち」

 

「モデルも大変だろそれなりに」

 

「まあシーズンの一個前には撮影しなきゃだしその辺はね。あと体形管理」

 

「一時期豆一つしか食ってなかったもんな」

 

「それはアンタが夜飯に連れ回すからでしょ」

 

「その時はお前しか居なかったんだよ連れが」

 

「そう言ったってウチのお腹は大変な事になったんだってば」

 

「奢ってやってたんだから許せよ」

 

「うん。正直助かったからお礼しか言えないけどね」

 

「素直な奴」

 

「ありがとうが言える女の子だからね」

 

「グッボーイ」

 

「ガールなんだけど」

 

 モデルやっててここまで金無いのも不思議だと思うけど。パチンコの魔力ってスゲー。

 

「てか、お前パチンコの演者やった方が儲かると思うけど」

 

「今はモデルで精一杯だから、もう少し落ち着いてからかな」

 

「いつかはやるつもり?」

 

「まあ、多分その方が向いてるし。モデルが演者やってもいいでしょ」

 

「パチンコ打てるしな」

 

「その時はお金貸してね」

 

「早めに返って来そうだから投資してやるよ」

 

「わあい」

 

「今度借りたらマイクロビキニな」

 

「…………それはちょっと恥ずかしいかも」

 

「写真撮られないだけマシだと思え」

 

「限度があるでしょ限度が」

 

 モデルって布あれば何撮られても恥ずかしくないんじゃないのか。

 ぱち、と肩紐を弾いて身を捩らせるパチカスは、どうも大きく露出をするのには慣れていないらしい様子だ。確かにコイツの出る雑誌は季節の服装とか流行りの服装とかしか見ない。

 脚こそ出すものの、水着などの全体的な肌色多めなものはあまり得意では無いのかもしれない。

 

「おっぱいさえあれば仕事でももっと露出してたかもな」

 

「その貧乳弄りだけは本当しつこいねアンタ」

 

「だって無いし」

 

「その貧乳にビキニメイド服着せて愉悦感じてるのは何処の誰」

 

「此処の俺でーすご馳走様でーす」

 

「変態め」

 

 罵倒のオプションも付けてくれるなんて優良店だなぁ。またリピートしよっと。

 パチカスは俺をじとっと呆れた目で睨んだまま、地べたに無駄に綺麗な姿勢の正座のまま電子タバコを用意する。手にちかりと光る機体を持ち、タネを入れようとしているのを目にしながら俺は今吸っていた煙草の火を揉み消し。

 ふと、閃いた。

 

「ティンと来た」

 

「何?」

 

「その電子タバコ、ちょっと待った」

 

「えぇ何……またろくでもない事思いついたでしょ」

 

「いや、ろくでもない事は無い。寧ろ天才的とも言える思考だ」

 

「アンタのそういう思い付きの時って大体ろくでもなくてしょうもなくてやらしい時しかないんだけど」

 

「そんな事は無い」

 

 無い筈。多分。

 こほんと仕切り直して、俺は懐の煙草を二本取り出して一本をパチカスへ、一本を俺の口元へ。

 こてりと首を傾げながら手に持ったパチカスへ、俺はお願いをする。

 

「シガーキスをして欲しい」

 

「…………はっ?」

 

「お前が煙草に火を点け、その点いた煙草で俺の煙草に火を点けて欲しい」

 

「なっ、…………なんで?」

 

「なんかメイド服の女に火点けて欲しいなーって」

 

「発想がすけべ……!」

 

「ありがとう」

 

「褒めてないっ」

 

 髪をくるくると手で弄び、恥じらうような様子のパチカスに首を傾げる。

 

「変な事言ったか俺?」

 

「言ってるっての」

 

 言っているらしい。はて、ヤニカスは恥じらいもせずにやるが。

 今でこそビキニメイド服という中々恥ずかしい恰好をする時はあまり恥ずかしがらなかった癖に、何故恥ずかしがる。初心な処女じゃあるまいし。

 ……ん、待て。

 

「お前処女?」

 

「しょっ処女じゃないし!!!」

 

「声でか」

 

「アンタが変な事言うからでしょ!」

 

「お前そんなギャルみたいな見た目して初心なの詐欺だろ」

 

「詐欺って何、詐欺って……」

 

 ぱたぱたと手で顔を仰ぐパチカスを俯瞰して、ふむと顎に手を当てて考える。

 

「分かった。酒口移ししてくれるならいいよ」

 

「ハードル上がってるし!」

 

「わかめ酒でもいいけど」

 

「わかッ……!?もっとハードル上がってるじゃん!」

 

 わかめ酒分かんのな。むっつりかよ。

 

「ハードルは高くてなんぼだろ」

 

「超えられるハードルに設定して!」

 

「つまんねぇだろそんなの」

 

「面白いかつまんないかの話をしてるんじゃないの!」

 

 可愛らしく照れた様子のパチカスに心の奥底に居る嗜虐心が少し疼いた気がした。ステイステイ。

 しかし、普段はドライなパチカスだが、今日は何故だか感情豊かだ。酒が入るとこんな感じだったろうか。

 ふむ。…………どうだったっけ。

 

「で、どうでしょう」

 

「……火ぃ点けるだけ?」

 

「うん」

 

「…………それをアンタの煙草に移すだけ?」

 

「そう。先っぽだけでいいよ」

 

「………………やらしい」

 

 言いながら、煙草を口に咥えて俺のジッポで火を点ける。

 やってくれんだ。思いながら煙草を咥えると、立ち上がったパチカスは俺にずいと身を寄せる。

 ふう、と煙を何故だか俺の顔に吹き掛けながらソイツは目を細める。

 

「一回だけね」

 

「焦らすなよ」

 

「うるさい」

 

 立ち上がると改めてそのスタイルの良さが視界に広がる。全体的に細身だ運動をしている適度な筋肉もうっすらと除く健康的ボディは、控えめに言ってもビキニメイドという装いがとても似合っていた。

 でもおっぱいが無い。ありさえすれば。あれば良かったのに。

 そう思考する俺に、顔をほんのり赤くしたパチカスは更に距離を縮める。

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 煙草の先が触れ合う。

 静寂。互いの呼吸とじりっと火が燃え移る音が、何故か耳に大きく聞こえて、視界には金髪が垂れた顔立ちの良いソイツが広がっていた。

 何で目閉じてんだ。吸って、俺の煙草に火を点ける。

 

「「……………………」」

 

 煙をくゆらせる。ぼんわりと立ち上る煙が俺達の合間を昇り、また煙を少し吸って。

 俺は煙草を持って、肺の煙をいつまでも目を閉じて固まっているパチカスの顔面に吐き出す。

 ばちっ、と目が開かれる。

 

「お前、顔は良いよなほんと」

 

「……………………うるさい」

 

「何だよ褒めてんのに」

 

「うるさい。変態、クズ、ギャンブル中毒」

 

「うるせぇよ初心女」

 

 そう言葉を交わして、パチカスは俺からそっぽを向いて身を翻した。

 また来た静寂に俺は眉を上げて、今日は情緒不安定だなぁ、とソイツの心境を慮った。

 …………まあ、今日はかなり負けてるから情緒も不安定になるか。俺はソイツの心境をそう仮定して納得した。

 

 

 

 

 

 

 

 じゃあ褒めてやるかと「良いケツしてんな」と褒めたら蹴りが飛んで来た。手は出さなかったのは褒めてやる。痛いけど。

 

 

 




「カス」
・煙草吸ってる系のメイドさんが好き。

「パチカス」
・初心むっつり。大きい露出は恥ずかしい。
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